ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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死神タナトス

 【イケロス・ファミリア】は全滅した。

 異端児(ゼノス)平均(アベレージ)は元々彼等より上なのだ。彼等があくまで生まれたてに狙いを絞り、かつ迂闊に攻め込めない人造迷宮(クノッソス)に籠もっていたから今日まで生き残れただけ。

 

 久方振りに、新入りとは言え『群れ』の一員に手を出した結果、殆どがリド達に殺されディックスも偶然であったアステリオスにやられ、しぶとく生き残っていた大男もリリウスに殺された。

 

 仮に異端児(ゼノス)達が沈黙を貫いていたとしても、いい加減に鬱陶しく思ったリリウスにより「突撃! お前等晩御飯!」されていただろうが。

 

 さて、そんな【イケロス・ファミリア】という闇派閥(イヴィルス)有数の戦力を失った訳だが………

 

 

 

 

見事素敵最高愉快(コングラチュレーション)!!」

 

 タナトスは相変わらず気持ち悪いなぁ、とテンションの高いディオニュソスを見つめる。

 

「まさかあの場でモンスターもどき共の正体を暴露するとはね! ああ、おかげで【ロキ・ファミリア】は全力で隠す必要ができた」

 

 ただモンスターを引き連れただけならギルドはともかく【ロキ・ファミリア】は隠そうとはしないだろう。ギルドの命令である程度隠匿しようとするだろうが、少なくとも彼の弟子同様オラリオから批判される程度には噂が流れていただろう。

 

 後は彼の恐ろしさを知らない子供が石でも投げれば………。

 

「子供が投げた石でしょ?」

「彼は力ではなく意思で返す。死んでしまえと投げた小石なら、それがどれだけ弱々しくとも死んでしまえと投げ返すよ」

 

 何故なら彼は最強である前に一人の人間だから。

 最強だから弱者を相手にしないという考えが、そもそもない。

 

 敵意を向ける相手に敵意を返す。子供に甘いところがあるから一度は警告。されど愚かな民衆は『攻撃された』事しか理解しない。

 

 2度目はない。殺意を以て行動した愚者は最強の殺意をその身で味わう。誰にも止めることは出来ない。

 ギリギリ可能性があるとすればLv.7が増えた【フレイヤ・ファミリア】。獣化を使ったオッタルなら、その牙を届かせることは可能だろう。

 

 まあ、その牙を阻むだけの怪物達があの場に居たわけだが。

 

「そもそもさぁ、リリウスちゃん孤立とか無理でしょ? あの子モテるしね」

 

 あはは〜、と笑う死神に知っているさ、とグラスを傾ける酒神。

 残念ながらただの()()()()()()。デメテルの育てた素材なくして完成された神酒は造れない。少なくとも、他神(たにん)の権能前提で造ってきたディオニュソスが地上で完成された神酒を作り出せるようになるのはソーマより後だろう。

 

「ああ、別に孤立出来なくても問題ないしね」

「あれ、そうなの?」

「彼がここを通路代わりでしか利用しないなら、それを見過ごすしかない以上、彼と私が関われるのは最後の戦いだけだからね。それはとっても寂しいからね」

 

 つまりリリウスにちょっかいをかけたかっただけなのだろう。そのためだけに都市に混乱をもたらした。

 

「気持ち悪いね、ディオニュソス」

 

 タナトスは呆れた。

 

 

 

 

 

「さて、どうするか」

 

 当然と言えば当然だが現在バベルは封鎖。封鎖している【ガネーシャ・ファミリア】の主神と団長、副団長やハシャーナなど一部はこちら側だから、そこは問題ないがやはり他の【ファミリア】の目があるな。

 

「…………堂々としてるな」

「なら俺を捕まえてみるか? 実力も口実も足りてねえだろ」

 

 屋根からダンジョンの入り口を眺めるリリウスに忌々しげに呟く【ロキ・ファミリア】の団員。コソコソ隠れるより姿を晒したほうがいいとでもフィンに言われたのだろう。

 

「しゃべったところで、所詮彼奴等は…………っ!」

 

 モンスター、とまでは口に出さない。流石リリウスの監視を任されるだけあり、フィンの言葉に忠実だ。

 

「どうして………あんたは、小人族(パルゥム)の、人類の英雄だろ………! そんなに人が許せないのか!?」

「別段人は嫌っちゃいねえよ」

 

 【アストレア・ファミリア】とかヴァルマ姉妹とか、【ヘスティア・ファミリア】に『学区』、それにアマンダ、ロルフ、もう一人のリリルカ。

 

 嫌いな人間もいれば好きな人間もいる。どうでもいい人間だっている。

 

「俺は俺を脅かす全てが敵で、奴等は違った。それだけだ…………で? お前はどっちだ?」

 

 敵対するか、おとなしくするか。

 その言葉に動けなくなる【ロキ・ファミリア】を見て、その程度なら文句言うなと飯を食べるリリウス。

 

 タケミカヅチ特製『ジャガ丸くん(旨辛肉味噌味)』だ。後で異端児(ゼノス)に持っていこう。

 

 冒険者の目を逃れるためにバラバラに、かつ冒険者同士が足を引っ張るようにギルドが高額の賞金をかけたことにより今は動きがないが、そう長くは持たないだろう。

 

「………………」

「え!?」

 

 瞬間、リリウスの姿が消えた。文字通り目にも留まらぬ速さだ。

 

 

 

 

 ダイダロス通りのある廃墟。眷族の作ったホカホカのホットサンドをうちわで扇いで匂いを外に出す死神。窓枠を小さい手がつかみ、ヒョコリと顔を出すリリウス。

 

「や、リリウスちゃん久し振り。懐かしい匂いかな?」

「まだ生きてやがるのか、その親」

 

 以前タナトスがリリウスを勧誘に来た時リリウスに渡したサンドイッチと同じ味付け。確か生きていたらリリウスと同世代の息子がいるとか言っていた。

 

 タナトスの眷族など直ぐに死ぬだろうに。まだ生き残っていたらしい。

 

「いつか君の勧誘再チャレンジに使えるかな〜って」

 

 タナトスも手を伸ばすがリリウスが皿をひょいと持ち上げた。タナトスは無言でリリウスを見つめ、肩を竦めた。

 

「ここで俺が捕まえるとは思わねえのか?」

「捕まえてもいいけど、都市中の俺の眷族が死を振りまくよ」

「……………………」

 

 死を恐れない………なんならむしろ望む死神の自爆兵は本当にめんどくさい。

 

「君が下界最速最強でも、時間を操れるわけじゃないんだ。連絡手段もわからない数百の自爆兵に対処できるかな?」

「………………」

 

 舌打ちして皿をテーブルに戻し席に座る。タナトスはニコリと笑う。

 

「君がそういう手段を取るのは、むしろ誇っていいよ。ここで俺を見逃しても、最悪()()()()()()()()()()()()()()んだろ?」

 

 リリウスはどちらかといえば、実は情理より合理を選ぶフィンやライラに近い。正義、野望、自分の周りと基準の違いこそあれどより多くの命を助けるのは変わらず、そしてここで逃がせばさらなる被害が、なんて考えない。

 

 何故なら自爆兵が引けば最悪どうとでも出来るから。だからこそ動けないとも言える。

 

「で? なんのようだ」

「交渉しに来たんだよね。リリウスちゃんが人造迷宮(クノッソス)通るとヴァルカちゃんが発狂しちゃうから通行禁止を言い渡しにね」

「もう直るだろ」

 

 ヴリトラに調査させた結果、あれは形状変化魔法ではなく修復魔法。修復する時の形をただ粘土を捏ねるように、から無数に棘が伸びてなどいじれはするが、そこまで脅威はない。

 

 事前に壁を壊しておいて修復で閉じ込めるなんて使い方も出来なくはないが超硬金属(アダマンタイト)に大穴を開けられる相手は限られるし、そもそも自分で迷宮を破壊するなんて出来ないだろう。

 

「彼処は呪縛で強制されたとは言え、ヴァルカちゃんがちょー頑張ってる場所だからね。あんまり壊して欲しくないんだあ…………そろそろヴァルカちゃんにディオニュソス殺せと言われそうだし」

「殺せよ」

怪人(クリーチャー)眷族にしてるのディオニュソスだけなんだよねえ」

 

 つまり精霊の分身(デミ・スピリット)を操れる人材がいなくなる。現状リリウスを狙撃した『あれ』の封印が解かれるのは避けるべきか。

 

「リリウスちゃんが通らないならあのモンスター達が通る分には俺達は邪魔しないよ。そもそもリリウスちゃんが本気で攻略に乗り出したら、どの程度オラリオを巻き込めるかの勝負。冒険者は生き残り、多少の混乱の後元通り。割に合わない」

 

 そしてリリウスは下手な自爆をされるより、計画が実行されてから止めたほうが人を救える可能性が高い。

 どのみち『あれ』は既に存在するわけで………。

 

「…………いいだろう。そのヴァルカとか言うお前の眷族が生きている間、俺はあの迷宮に入らない」

「オッケー、交渉成立。モンスター達は好きに通るといい。俺達は邪魔しないからね」

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