ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
ベルは囮。それがフィンの出した結論。
武装したモンスターから目を逸らすように動くだろう。ならば【ロキ・ファミリア】が動くのはベルと反対。
「おいフィン! 本当にウサギ野郎も化け物共と繋がってんのか!」
「機嫌が悪そうだな、ベート」
「うるせえ!」
セレニアはベートがここまで他派閥の冒険者を気に入るなんて珍しい、とちょっと驚く。リリウス以来だろうか?
強くなった姿を見せるいい機会があるとヘルメスに唆され【アポロン・ファミリア】との
「いっそ先にベル・クラネルの身柄を押さえておくことってできないんですか?」
「ん〜。表向きにはモンスターのドロップアイテムを独占しようとしただけだからね。そんなことをすればこちらが非難されるし、リリウスが口実を得て攻めてくる」
これはフィンの客観ではあるが、リリウスは規模的に一人、或いは数人で試練を超えることが多かったからか大概の苦難は本人達で乗り越えるべきと思っている節がある。
安全マージンを取り緩やかに、確実に育てるフィンとは真逆の冒険者に冒険をさせるあり方。だからこそ、今回はベル達を注視すれば済む訳だが。
「【
「そう見られているね」
ならそこを突かせてもらう。
リリウスの監視は形だけに、本命に戦力を投入する。
まずは間違いなく今後脅威になるであろう漆黒のミノタウロス、及びリリウスが連れていた武装したモンスター達の主戦力であろうモンスター達の排除。モンスター達が持っているであろう
ここまでは表向き。
本命の作戦は『武装したモンスターを囮に
リリウスと交渉したタナトスと言えど、【ロキ・ファミリア】に『鍵』が奪われかねないとなれば動くしかない。
モンスターを直ちに殲滅することも、取り逃すことも許されない。本命を釣り上げるまで生かさず殺さず。
クノッソスに向かうモンスターを足止めしつつ、最悪モンスターを援護する為にクノッソスから現れる
まあ
第一目的はあくまで鍵。モンスター、
ミノタウロス含むモンスターの特記戦力と遭遇した場合は単独で戦わず時間稼ぎするように言い含めておく。
「危惧している通り、今回の作戦は非常に高度かつ危険と困難が伴うものとなる」
ゴクリと誰かが飲むツバの音が聞こえそうな静寂と緊張が場を包む。
そんな彼等にフィンは告げる。
「
その言葉に顔を上げ、まっすぐこちらを見つめるフィンを見つめる団員達。
「7年前を覚えている者も居るだろう。話で聞いただけの者も居るだろう。連中は、あの時以上の地獄がお望みだ。そんなことはさせない! 僕達は
「「「はい!!」」」
不安が消えた。【勇者】は健在。
過去の災禍をも利用して団員達のやる気に火を付ける。そんな中、手を挙げる少女が一人。
「………ティオナ?」
「あたし、あのモンスターと戦いたくないんだけど」
「は?」
ティオネがポカンと固まる。
まるでカーリーに逆らったあの日のように、フィンの作戦を拒否する妹にティオネは大混乱。
「ティオナさん?」
「あ…………」
当然説明できないティオナは言葉に迷う。
「ちょっとティオナ。あんた、こんな時に………」
「やだ!」
「はあ!?」
「絶対にやだ!」
「子供か!? 団長が命じてるのよ!」
「いーやーだ!!」
梃子でも動きそうにないティオナに青筋を立てるティオネ。フィンは仕方ないというように肩を竦めた。
武装したモンスターが言葉が通じる存在と知った時点で、こうなる可能性は考えていた。
「だとしても、モンスターを狙うのは僕達だけじゃない」
「う………」
「ティオナ、君ならあのモンスター達を捕獲出来るだろう?」
事情を知らぬ者達の目がある故に保護とは言わない。だが、ティオナは察して、うむむと唸る。
要するに他の冒険者と殺し合わせたくないなら捕まえるしかないということだ。
「って、騙されるところだった! あのモンスター達、強いじゃん!」
「全てではないけどね」
「え? あ、そっか…………う〜ん。じゃあ、捕まえるだけなら………」
察しは良いくせにお馬鹿なので流されてしまうティオナ。まああくまで他の冒険者に襲われてたら保護すればいっか、と一人納得。
「ティオナ……」
「あ、アイズ」
作戦開始まで待機を命じられたティオナに声を掛けるアイズ。振り返ったティオナは何やら暗い顔のアイズに首を傾げる。
「どうして、あんな事言ったの?」
「あんな事って?」
「戦いたく、ないって……モンスター、なんだよ?」
「でも……リリウスの言うように言葉通じるんでしょ? あたし達からリリウスを庇おうともしてたし」
リザードマンとハーピィ………人類に嫌われていると自覚しながら、自分達の味方をしたリリウスを庇っていた。
「でも、モンスターで…………」
ここで「あたしも
「モンスターは、許せない?」
「……………うん」
「じゃあさ、アルゴノゥト君達を信じてあげよう」
「ベル達を?」
「アイズはリリウスやアルゴノゥト君のこと好きでしょ? あの二人が信じてるってことを、信じてあげよう?」
ベルが、モンスターを信じてる。
その言葉を思い出し胸がズキリと痛む。
この状況に於いても、アイズはベルを信じている。
モンスターが関わることじゃなければ、案外アイズはベルの味方をしていたかもしれない。
だがモンスターが関わるのは駄目だ。止めなきゃならないし、彼を止めるのは他でもない自分でやりたいと思っている。
それがどんな気持ちなのかアイズ自身答えが出せない。
モヤモヤする。あんなモンスターが居なければ、今日だって街で偶然であったベルと少し話して、ダンジョンに向かう彼を見送って………全部、モンスターのせいで。
モンスター……………ベルに庇われていたヴィーヴルを思い出す。
ベルはあのモンスターを守ろうとしていた。愚者を装いながら、自分達という脅威から守ろうと立ちはだかった。英雄のように…………。
──この指輪に誓って、貴方を助けに行きます。いつか、『英雄』のように
「ねえ、ベル………今、悲しいよ………」