ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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2つの作戦

リリウスはディース姉妹を妖魔ではなくエルフと呼んでいたけど、マジで気に入られる対処法だったんだなぁ

 

なんなら前世で高潔とされる相手を嫉妬して貶めようとするところまでそっくり。俺は預言者だった?

 


 

「リリウス君は帰還に協力できない。ここから先は僕達がやらなきゃね」

 

 と、神様然とするヘスティア。ついこの前滅茶苦茶取り乱していたのに。まあ、神血(イコル)を通してベルが死んだ事を察したと思ったら直ぐに戻って本人が一番困惑していたし。

 

 死してなお神血(イコル)の繋がりは残る。消えた命に再び火が灯り絶望から一転困惑をさらしたヘスティアにリリ達も対処に困ったものだ。

 

「それと、【ロキ・ファミリア】は釣れなかったみたいだ」

 

 ベルが囮となり気を引く予定だったが、【ロキ・ファミリア】はベルを基本的に無視する事に決めたらしい。

 全くの無視ではないだろうが、監視は恐らく数人だろう。

 

「Lv.3のベル君に平団員が一人ってことはないだろうけど………」

 

 それでも大手の【ロキ・ファミリア】。戦力は大して減っていないだろう。

 

 

 

 

「よいではないか。私は戦うの好きだぞ。雷の君より強い者が居なかろうと、我が身もまた雷の君やヴリトラに劣る」

 

 雷を思わせる金の髪を持つドラゴニュート、タクシャカは囮作戦の失敗の連絡を聞き、しかし楽しそうに笑う。

 ヴリトラやアステリオス同様戦いが楽しかった。それだけを理由に記憶を保持し復活した彼女は強者が現れる、それだけで十分地上に出た甲斐はあった。

 

「戦闘狂め。戦いを好むなど我には理解出来んな」

 

 そう呆れたように言うのはマーメイドの亜種マナサー。

 竜の特徴と脚を持つ水陸両用の女妖は本来戦いを好まない。地上に住むのに必要だから力を蓄えているが、出るのはまだ早いという考えを持っている。

 

『それでも一目地上がと言って外に出たのはお前だろう』

 

 眼晶(オクルス)からキシキシと笑い声が響く。

 

『我等は等しく、我欲の為に()()()()()()()()()()()()。常識があるように振る舞うな……だから牛の小僧などに力で負けるのだ』

「………殺し合いなら我に軍配が上がるぞ」

 

 ムッとするマナサーの負け惜しみにタクシャカもケラケラと笑う。

 

『そういうわけで俺はダンジョンには帰るが、その間は好きにやらせてもらう。あの槍の小僧は俺の獲物だ』

「ああ、雷の君に似た生き物? ぱるぅむだっけ? 強いよね、あの中じゃ並ぶの髭達磨くらい?」

『フェルズの言っていた【勇者(ブレイバー)】だろう。何やら強化魔法をもつらしい』

「リリウスの魔法に似た、理性を代価にする魔法だったか? 上がり幅自体はあちらが上らしいが………」

 

 同じ種族で同じような魔法。そういうものなのだろうか?

 

 

 

 

「俺とあのショタジジイは似てるところがあるからな」

 

 と、ケートゥの疑問に返すのはリリウス。

 

「そうかな?」

「根本がな。向いてる方向が違う」

 

 イスカは訝しみリリウスは腹が減っているので気怠げに返す。

 

「色々世界が見えるようになりゃ見えるものも増える………初めて会った時は気付けなかったことも見えてくる」

 

 リリウスがフィンと初めて接触したプロポーズ紛いの事件。あの時はなんだこのジジイとしか思わなかったが。

 

 実際目向けてみれば、実年齢はともかく内面は自分より遥かに子供。

 

 

 

 

 時を同じくして、フィンもまたリリウスとの出会いを思い出していた。

 将来有望の同族に求婚紛いの行いをしたあの時…………()()()()

 

 それより前に、フィンはリリウスにあっている。

 フィンがリリウスをただの破落戸と判断していた時期よりももっと前。一桁の年齢でランクアップしたという小人族(パルゥム)の噂が流れ始めた頃。

 

 その噂を聞いた時、フィンは嬉しくなった。

 一族の中にそれだけの偉業をなす子供が現れたことを。自分達でも出来るのだと証明してくれたことを。

 

 どんな子供なのだろう。【ゼウス】と【ヘラ】が糧となるために立ちはだかりオラリオを去った後、漸く世界に名が知られ始めてきた自分に憧れてくれていたのなら、なんて、思い上がりだろうか。ガリバー兄弟のような前例もあるわけだし。

 

 その子は何を目指し、何のために強くなろうとしたのか。憧れる英雄などはいるのだろうか?

 

 そんな事を考えながら、遠征。帰ってから調べようと決め、帰りに出会った。上層にて………強竜(インファント・ドラゴン)の肉を喰らう小人に。

 

 小人族(パルゥム)が上層最強の竜に襲われているという、逃げてきた冒険者の報告を聞き誰よりも早く駆けつけ見たのは竜の肉を食いちぎりながら戦う幼い子供。

 

 全身を己と敵の血で汚すその子供は力尽きた竜を喰らう。魔石を砕いてしまったのか、灰となった竜の死骸から顔を上げた子供はフィンに気付くとただ一言。

 

「どけ………」

 

 自分に憧れてくれたら、とか、思い上がりも甚だしい。輝くディムナ(フィン・ディムナ)も、古代の英雄だってその姿を映しはしない。

 

 栗色の髪と同じような茶色い瞳。なのにその目は黒く昏く。

 光など届きはしない。

 

 惨めになった。

 仲間を死なせようとした事はなくとも、死すら利用して名声を得てきた。乗り越えて強くなってきた。なのに同族の子供一人にその姿を届けることはできず、救うことも出来ない。

 

 あいも変わらず世界は小人族(パルゥム)を見下し、小人族(パルゥム)は世界に搾取される。

 現状は何一つ変わっていないのだと突きつけられた。

 

 彼女……彼だったが…………その子供に求婚紛いな事をしたのはその子供がLv.3になってから。あんな戦い方、あんな生き方、すぐ死ぬだけと思っていたのに。

 

 生きていてくれたことに安堵しつつ、あんな生活を続ける事に不安を抱き、守りたかったんだ。嘘じゃない。

 

 口説くような台詞になったのはまあ、当時モテるように振る舞ってたからクセでつい。返答は「うぜえ」の一言だったが。

 

 結局自分の不安も保護もまるで必要とせずに彼は進み、自分の光なんて必要とせずに彼は闇の底から上がってきた。

 

 最後のきっかけは闇に堕ちた英雄だというのだから、皮肉な話だ。フィン・ディムナは彼の人生にさしたる影響を与えなかった。認めてしまえばいいのに、これまでの歩みを否定出来なくて、称賛する声を拒絶出来なくて………逃げた(距離を取った)

 

 表向きには普通に接しながらも決して彼に心を傾けないように、優先順位を間違えないように。

 

『流石っす団長!』

 

 尊敬が胸を刺す。

 

『団長〜♡』

 

 敬慕が胸を抉る。

 

『【勇者(ブレイバー)】だ! 本物だ!』

『すげえ、かっけえ!』

『僕も貴方みたいになれますか!?』

 

 賞賛が胸にたまらず溢れていく。

 

『どけ………』

 

 分かってもらえるだろうか。

 

『1週間でLv.5から6になった………アルフィアとの戦いがそれだけ特別だったのだろう』

 

 いっそ握り潰して欲しいとさえ思うこの気持ちが。憎んでさえくれない惨めさが。

 結局怒りを向けてくれたのは暗黒期の終盤頃だけ。アルフィアとの出会いが、今を悪くないと思わせた出会いが、正当な怒りすら鎮めた。そこに自分は、やはり関わらない。

 

 怒り続けてくれなかった。憎み続けてくれなかった。

 なんでこんな時代にしたって、小人族(パルゥム)を救いたいと吠えるなら 周りを見ろって………言ってくれなかった。叫んでほしかった。

 

 間違えてると殴ってほしかった。

 そっちは違うと手を引いて欲しかった。

 

 全部自分で気づかなきゃいけないくせに。

 

 

 

「!!」

 

 怪物の咆哮が都市に響く。彼等も動き出したようだ。フィンは団員に告げる。

 

「………いくぞ」

 

 2面作戦開始。

 

 

 リドの咆哮を聞き、参加しないリリウスは都市に散る異端児(ゼノス)達に彼等のリーダーとして一言。

 

「………いけ」

 

 帰還作戦開始。

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