ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「………キィー」
空を飛ぶスパルナの声を聞きながら、リリウスは目を閉じる。
【ロキ・ファミリア】を釣ることは失敗。が、アイズはリューが足止め。ランクアップはリューが先。負ける事はないだろう。
魔法を使ったアイズは確かにフィンやガレスを
スパルナからは見えないが、
「本当は鍵をこっちで回収したいんだけどねえ。リリウスちゃん怒らせたらやばいしなぁ………」
神の娯楽、そして眷族達の献身故に
(問題は
都市崩壊という目的が重なっていても過程が重なるとは限らない。最終目標が昔のように死が溢れて懸命に生きて真っ黒になった魂を洗う仕事をしたいタナトスはまさに死神。
酒神のディオニュソスは?
「天界の頃の病気の続きかね………」
話に聞いただけだがロキなど一部の神々が退屈に晒され発症していた病気。神々を殺し合わせる
問題はディオニュソスが何処まで『駒』を見るかだ。
「…………………あ〜、きみきみ」
「はい?」
タナトスはちょいちょいと眷族の一人を手招きする。
「鍵って残り、いくつあったっけ?」
状況がまた動いた。
ラウルがフィンの指示で包囲に穴を開けてしまったのだ。そしてフィンはそんな命令は出していない。
(あの子かな………)
リリウスの妹、リリルカ・アーデ。調べれば彼女のものと思われる盗難事件やパーティー解散は、手口は同じなのに姿の証言が異なっていた。
(誤認………或いは幻惑かな? 完全に後手に回っている)
速いのではなく、『早い』。確かに第二級どころか第一級に匹敵するモンスター達の動きは迅速だが、行動一つ一つの対応が早い。
「ティオナ達を呼び戻せ。残っている守備隊と前後から挟撃する」
それでもフィンの対応も迅速かつ的確。この差し合いはハンデ戦。そのうえで、フィンがやや優勢。
「敵の進路は?
「はい! えっと………直進! 現れた西の地点からまっすぐ東進しています!」
「…………直進?」
少なくとも【ロキ・ファミリア】は発見できていない。
神イケロス曰く、ダイダロスの手記なる
となるとモンスターを
「フィ〜ン」
と、ロキが思考を巡らせるフィンの下へやってきた。
「何処へ行っていたんだい、ロキ」
「色々やー」
今は放っておいてほしい、そういうフィンに
見極めろ、と。その果てに出した答えにロキは何も言わない。
それはモンスター? それともベル・クラネルか。或いはリリウス?
その疑問をしまい、フィンは指示に戻る。ラウルを呼び戻し、アキに網を張らせる。狙いは…………
「当然、リリですよね」
「────!!」
匂いのない小柄な少年。フィン曰く
「どう、やって………」
「兄様曰く匂いがないのは逆に目立つそうなので、何人か匂い消しをかけた背格好の似たサポーターの周りでチョロチョロと」
網を張ったつもりが、逆に網を張られかかっていた。
「貴方が
人混みの中から匂いがないものを見つけ、それがフィン………そしてリリと背丈が同じものと瞬時に見抜く判断力。
「でもリリは『
或いはリリがただ金を稼ぐ為だけに冒険者と関わり騙し続けていたなら、アキに捕まっていたかもしれない。しかし、リリは冒険者を
騙し合いの経験ならフィンが上だろう。だがフィンの命令で動くだけの冒険者一人、逆に騙すのは容易い。
「【ロキ・ファミリア】の動き………狙いは
あはは、と嘲るように笑うリリ。これがラウルなら叫んでいたのだろうが、アキは客観的にフィンを見ることが出来るのでただ悔しそうに歯ぎしりする。
「英雄のフリって疲れないですか? 完璧を求めるのは苦難ですよ。器じゃないのに大変ですね…………協力してあげてもいいですよ?」
「……………どういうつもり?」
「
と、リリはノエルの頭を撫でる。ノエルは嬉しそうにリリに頭をグリグリ擦り付ける。
「……条件は?」
「リリの魔法を誰にも話さないでください」
「…………団長はもう知ってるわよ」
「知ってますよ? でも、
ニコリと笑顔で、しかしリリは確かな敵意を醸し出す。
「先ほどリリと勘違いした相手に好き勝手。兄様を考えなしだのなんだの………その通りなところもありますが、考える余裕すら奪われる生き方の要因の一つはお前達の団長でしょう?」
そのまま突き進み一々考えるまでもなく力でどうにか出来てしまう存在になったわけだが。
「それでも協力してあげますよ。
「…………私の方に得がありすぎると思うけど」
真意を探ろうとするアキに、リリはイタズラっぽく笑ってみせる。
「そうでもないですよ。協力するなら、あの勇者大好き地味男に、
ジワジワと心を蝕む甘い声。結局どんなに策謀を巡らせようとまずは『力』に頼る冒険者のくせに、冒険者の頂点たる兄を侮辱する者をリリルカ・アーデは許さない。必ずその心に毒を残す。
「さぁさぁ、女でありますか? 最大派閥の団員であることを選びます? 卑劣なよく居る冒険者に成り下がりますか? リリは優しいので、特別に選ばせてあげますよ【
一方、アイズとリューの戦い。
レベルは互角。しかしステイタスはリューが上。
短文詠唱であり、しかし強力な【
「………貴方は、正義の味方じゃなかったの? どうしてモンスターを」
「……正義を捨てたつもりはありませんよ」
なんなら【正義の派閥】にいた頃から関わっていたりするのだが…………そこは口に出さないリュー。
「私は彼等を悪と断じるつもりはありません。何より、クラネルさんがそう決めた」
「………………ベル?」
その名にズキリとアイズの薬指に痛みが走る。
「彼が決め、彼が歩く道を、支えてあげたい。不思議と、そう思えるヒューマンだ。師事する者の贔屓目があるのかもしれませんが…」
「………の……で…………」
ピリッと場の空気が変わるのを、リューは肌で感じとった。
「私の前でベルを、自分の
アイズとベルの繋がり………それはあの早朝の市壁の上。彼を鍛えた時だけだと、アイズは思っている。
師弟の関係。リリウスもベルの師ではあるけど、それは仕方ない。でも、他の誰かがベルと自分の繫がりに入り込むのは嫌だ。
頭の奥が熱をもつ。胸の奥が気持ち悪い。その感情の名前をアイズは知らない。
ベルが怪物を庇って、理解出来なくて、寂しいのに理解しているみたいにいうこの女が嫌いだ。
その感情が強くなるほど薬指の痛みがまして、頭の熱が強くなる。考えがまとまらないほどに。故に、無意識に
「
開いたのは一瞬。霊力の欠片も欠片の残り滓。されど
「……………」
都市そのものを軋ませる風の暴威。ほんの一瞬だけ吹き荒れたそれにリリウスは目を細める。
「………面倒事な予感」
何時ものことだった。
あれ、ここのリューさんアイズに負ける要素なくね? せや、次のイベントの伏線利用しよ