ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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激突

「うお、っとお!」

 

 飛んできた投げナイフを剣で弾くリド。逸らされたナイフはそのまま地面を抉る。これ、オレっち達のせいにならねえよな?

 

「ヒリュテ姉妹か! やばいのが来たぞ!」

 

 護衛のヴェルフ達が叫ぶ。第一級の中でも上位に組み込まれるLv.6の戦闘種族(アマゾネス)

 成り立てとは言え、それらは間違いなく強力な冒険者。

 

「ラアアアアアア──!!」

 

 対してこちらにはレイとリド、それにグロス。どちらもLv.6に匹敵する異端児(ゼノス)の中でもトップクラス。特記戦力にも並ぶ彼等ではあるが他の仲間を守りながら戦わなくてはならない。

 

「投擲してくるのは一人だけ?」

 

 レイが疑問を口にする。どうにも髪の短い方はやる気に欠けている。あ、髪の長い方に怒られてる。とは言え、このままでは追いつかれ………。

 

「あ、いた……」

 

 リリウスパーティ回復要員(ヒーラー)、マナサーが散歩でもするように路上の角から出てくる。息が切れた様子もない。

 

 ここに来るまで冒険者に出会わない筈はなく、恐らく特に苦労することなく倒してきたのだろう。

 

「追われているのか。強いな、あれは」

「のんびりしてないでお前も逃げろ!」

「ここは我々におまかせを!」

 

 ヴェルフと命が叫ぶ中、マナサーが懐から取り出すのは竜の鱗。カリッと指を牙で千切り、流れ出るは亜種とは言え『マーメイド』の血。

 

 それが怪物の死骸(ドロップアイテム)に触れる。

 

()之沼」

 

 ゴボリと鱗が泡立ち質量を無視して竜種の群れが大量に生み出される。

 死体から無理矢理蘇生した魔石なき肉体は体表がドロリと溶け崩れまるで沼にでも落ちたかのようで、数分しか持たぬ偽りの命。

 

 大幅に弱体化した()()の竜の群れはそのままヒリュテ姉妹を濁流のごとく飲み込んだ。

 

「ふ、ざけんなああああ!?」

「うえ〜! ヌルヌルする〜!?」

 

 牙も爪も使わず質量のみで迫る竜の群れ。ヒリュテ姉妹は命の濁流に押し流されていった。

 

 

 

 

「うう、ベトベトする〜」

 

 竜の群れはやがて文字通り溶け崩れるも、灰の代わりに残ったヌメヌメにティオナはとても嫌な顔をしていた。

 

「ぜってえぶっ飛ばす!」

「え〜、もうやめようよ〜」

 

 やる気ならぬ殺る気満々な姉に対して妹はもうヤダ〜と言いたそうな顔だ。それでも姉に従い屋根をかけていくのは、まあ良い子だからだろう。と………

 

「私あっち見てくる〜!」

「あ、おいこら!」

 

 中央地帯から北西に伸びる黒い靄を見てティオナが進路を変える。モンスターが靄の中を進み避難が済んでいない北西に向かっては危ないからとか、そんな理由だろう。

 

 武装したモンスター、リリウス曰く異端児(ゼノス)が人を襲うとは思っていないくせに! 要するにモンスターを捕まえる気なんて最初からなかったわけだ。

 

 

 

 

 さて黒い靄の中、異端児(ゼノス)達の帰還を阻むはガレス。種族特性、力や耐久に偏ったアビリティ。

 単純な膂力ならオラリオでもトップクラスな剛力はヴェルフの魔剣『氷燕(ひえん)』に氷漬けにされながらも力で破る。

 

 ヘファイストスの命で異端児(ゼノス)達の支援に来たという口実に魔剣の試し打ちをガレスに行う椿曰く出し惜しみで封じれる相手ではないという。

 

 人間相手に加減してしまうのは【ヘスティア・ファミリア】の甘さだろう。相手はLv.6………人外の領域など軽く超えた第一級冒険者なのだから。

 

「っ!! 『氷鷹(ひよう)』!」

 

 ハイエルフのLv.6(リヴェリア・リヨス・アールヴ)の魔法に匹敵する吹雪が放たれる。恐ろしいのはこれが魔剣に封じられた魔法の解放………魔力が尽きるまで連続で放てるということ。

 

「ガレスさん! 極彩色のモンスターが………!」

「ぬぅ! 闇派閥(イヴィルス)共め、便乗してきおったか!」

 

 『鍵』を持つ異端児(ゼノス)を【ロキ・ファミリア】に捕まえさせるわけには行かないという判断だろう。

 

 極彩色のモンスターが魔石を求めて異端児(ゼノス)まで襲ってるが、タナトスは『だってほら、俺も人造迷宮(クノッソス)守る為にリリウスちゃんに通っていいよーって言ったわけでね?』とか言うのだろう。あくまで狙いは【ロキ・ファミリア】で、異端児(ゼノス)は仕方なく巻き込んでしまったと言い張るつもり。

 

 証拠に人間は異端児(ゼノス)を無視している。

 

「【重傑(エルガルム)】だ! 潰せえええ!!」

「『氷鷹(ひよう)』!」

「ぬん!」

 

 バキィ!

 

「このドワーフさえ消せばあああ!」

「『氷鷹(ひよう)』!!」

「ふん!」

 

 ドーン!

 

「こ、この化物を止めろおおおお!!」

「『氷鷹(ひよう)』!!」

「むん!」

 

 ギンッ!

 

「だ、騙し討御免!」

「我等もいくぞリド!」

「お、おう!」

「はぁ!」

 

 バンッ!

 

「あのドワーフはちょっとやそっとじゃ死なん! 全員でかかれえええ!!」

「「「うおおおおおお!!」」」

「どうりゃあああああ!!」

 

 ドッカーン!!

 

 拳一つですべて吹き飛ばす。耐えたのはリドやレイなど異端児(ゼノス)の上位陣。Lv.6として既に極み………試練を待つのみのLv.7へと至る片鱗を見せる豪傑。

 

 が、流石に肩で息をする。

 

「ええい! どいつもこいつも、少しは老人を労らんかぁぁ!」

「我は前世合わせれば数百年生きてるし」

 

 一人安全圏から眺めていたマナサーがポツリと呟く。肉体年齢は2桁にも届かぬ若い体だが。

 

「ははは! なら労ってやろう! 電気、まっさーじ? だ!」

「ぬっ!!」

 

 と、空から何かが落ちてきた。落雷と見紛う速度、光。大気が弾かれ靄の一部が広がる。

 

「遊ぼう冒険者! 私を楽しませろ!」

 

 

 

 

 一方別の場所。

 姿を確認できない。匂いも消されているが、音だけで何かが大した速さで駆け抜けている。

 ベルと判断し追いかけたベートだが立ちはだかるのは狐人(ルナール)の女一人。

 

 戦う力もない弱い女に苛立ちながらベルに出てくるように叫ぶも、私は一人だと叫んでみせる。拳を振り上げるベートを気丈に睨む女にベートは口角を吊り上げた。と………

 

「ガア!」

「ああ?」

 

 屋根から降ってくる巨大な影。数は3つ。内一つは生物の範疇を超えている。

 

「ガルルル………!」

「サーガラ様!」

「犬っころ………いや、あの時の竜か?」

 

 獣を思わせる体毛をまといながら、四肢の先は竜の鱗に爪を持つ。背中から生えた翼やしなる尾も竜のもの。確か深層で見たことがある。

 

「そんでてめぇ等か………」

 

 その獣竜と共に唸るのはシャバラとシュヤーマ。明らかに前回より纏う気配が増している。ランクアップでもしたか。つまり、Lv.5(第一級)

 

 獣竜を含め、Lv.6にはまだ及ばない。が………

 

「【大きくなれ】【ウチデノコヅチ】!!」

 

 シャバラが光を纏った。これでLv.6が1枚、Lv.5が1枚。Lv.6まであと一歩の怪物が1体。

 

「ベート!」

 

 対してこちらはLv.6と5が1枚ずつ。他の連中も追いついてくるだろうが………

 

「ウオオオオオオン!!」

 

 シャバラの『咆哮(ハウル)』。Lv.5となり手にした発展アビリティが資格なき者達の心に恐怖を刻む。ベートはやはり、口角を吊り上げた。

 

「吠えてんじゃねえぞ犬っころ! てめぇも『こっち側』なら、牙を剥いて証明してみせろ!!」

 

 

 

 

「連絡が途絶え始めたな………」

 

 そして都市から響く戦闘音。明らかに第一級同士のぶつかり合い。

 先程の風も気になるが………さて何処から動くべきか。

 

「ああ、いたいた」

 

 思考を巡らせようとしたフィンの耳朶を打つ短い悲鳴と、落ちていたものを見つけたかのような気楽な声。

 

 気絶した団員から毒針を抜く蟲人型のモンスター。

 

「俺の名は月を喰らう者(ケートゥ)。遊ぼうぜ、冒険者」

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