ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
尾の先端に毒針。蟲と人の
「ギルタブルルの亜種か………」
「さて、どうせ話せぬ同族にはあまり興味ないのでね」
虫の甲殻に、育った個体はリザードマン・エリートのように駆け引きを使いこなすモンスター。ましてや理知があるとなれば、それは冒険者にも匹敵するだろう。
というか自分のもとに送られてきたことを考えれば、最悪あの漆黒のミノタウロス以上の脅威。
「行くぞ?」
「っ!!」
ピシッと石畳に亀裂が走ると同時にフィンは槍を構える。金属音が響き、次の瞬間には空にいた。先程までいた屋上があんなにも小さい!
「構えろ」
「ぐっ!?」
響く声。とっさに防御。地面が一瞬で接近する中神速の反応を以て槍でいなし衝撃を殺す。殺しきれなかった衝撃が槍を軋ませ腕にミシミシと鈍い痛みが走る。
小柄とは言え第一級の防御を容易くぶち抜く驚異的な力に、フィンさえ気付いたら空にいたとしか認識出来なかった速度に追いつく疾さ。
「Lv.7…………!」
「ああ、俺や牛の小僧はそのあたりらしいな。リリウスを除き、お前達冒険者の今の最高位なのだろう? それでもヴリトラには及ばぬが」
「ヴリトラ………あの蛇か」
「そうとも。会話から情報を引き出す気だな? いいぞ、俺はお喋りが大好きだ!」
と言いながらも手を緩めない。あるいは緩めてこれなのか。
「ヴリトラの奴め、ムカつくんだ! 俺もタクシャカも、リリウスともっと殺し合いたいのに負けたから譲らなくてはならなかった! おまけに『リリウスが勝ったらしばらく殺し合いはなし』などと約束をして負けおって!」
「彼と殺し合いがしたいなら、僕を相手にしてていいのかい?」
「これは違う。言ったろ、遊ぼうと。言ったよな? これは遊びだ!」
一瞬で背後に移動し振り上げた足を下ろす。槍で防ぐもフィンの足元が陥没した。
「お前強いだろ? 強い奴は好きだ! 俺は前回、その為に生まれたからな!」
「前、回………?」
「あ〜………知らないのか。俺達はな、前世で怪物の本能以上の何かを見つけたモンスターが、その思いを引き継いで生まれてくる」
階層主を倒すと暫くして新たに生み出されるように、実はモンスターは絶対数が決まっている。ではその数の判断は? 決まっている。戻ってくるのだ、魂が。その魂に新たな体を作りモンスターは再び生まれる。
永劫にダンジョンの神と神の被造物への怒りを体現する……その役目を忘れるほど何かを胸に秘めた異端の怪物。
「俺とヴリトラ、タクシャカはリリウスとの殺し合いが楽しかったからなあ。ヴリトラに至っては何度死んでも記憶を持って生まれる程だ」
なら、もしや遠征の際に出現した蛇竜と似ているどころか肉体が違うだけで中身は同一? あの後死んだのか。つまり、殺したのだろう。仮面の少年………リリウスが。
「恨みはないのかい?」
「俺達は自分の力に誇りを持っている。それを打ち破る相手に敬意こそ持てど、恨む理由などどこにある」
自分達の力を疑わない。故にそれを超えるさらなる強者を素直に賞賛する。言葉にするのは簡単だが、果たしてそれができる人間はどれだけか。ゼウスやヘラを知るオッタルやフィン達なら一応は理解できる。
「こちらから話してばかりだな。お前も話せ! 互いに話してこその話し合いだ!」
「なら、手を緩めてほしいものだけどね!」
振るわれる爪が石壁を容易く引き裂く。冒険者の身でも、まともに受けるべきではないだろう。
「手を緩める? 馬鹿を言うな。これ以上抜くのはお前という戦士への侮辱だ」
既にある程度は抜いているらしい。
「それで? 聞かせろ! お前は何のために戦う小人の戦士!」
「…………搾取される
「………ああ、最弱種族、だったか? その一人が今やお前達人類の最強だというのだからな」
ならば少しでも手を抜かせるために会話を行う。蹴り一つで建物を幾つも打ち抜いた。
「種を救うか! たかが一人で? 大言は良いぞ! 身に合わぬ夢は身を高みへ押し上げる! だが………」
と、攻撃が止まりケートゥは首を傾げていた。
「ならなぜリリウスはお前に頼らない?」
「………………っ。彼の行いを………モンスターとの融和を、認めるわけには行かない………」
「種族のためと宣いながら、種族のあり方を決めるか。それは救済ではなく支配というのでは………その結果救われることもあるのだろうが」
人の世を知らない自分だからか、と首を反対に傾げる。フィンの言葉に困惑している。
「お前が言ってる
「──【魔槍よ、血を捧げし我が額を穿て】」
「お?」
「【ヘル・フィネガス】!!」
狂化魔法。怪物の咆哮も斯くやな雄叫びとともにフィンが迫る。理性を代償に、ランクアップに等しい超域強化。
Lv.7にも匹敵する膂力がケートゥの甲殻に亀裂を走らせる。
「ほう?」
「アアアアアアアア!!」
理性など捨てた獣の猛攻。そのくせ体に染み込んだ技は最低限使ってくる。
「話し合いは終わりか? 悲しいな! 殺し合いか? 楽しいなあ!」
ケートゥの身体から青白い月光のような魔力光が噴き出す。片手を前に突き出すと、矢のように迫る。フィンが槍で弾くも大きく後ろに吹き飛ぶ。
「まあ殺せないのだがな!」
「ガルル!」
「ガウギャウ!」
「ヴワン!」
獣竜の爪を避け、シュヤーマの牙を避けるベートに襲いかかるシャバラが放つ音の砲弾。ベートは蹴りで砕く。
片足を振り上げ動きが止まるベートに向かい大きく口を開けるサーガラ。竜らしく、その口内に炎が溜まる。
「はっ!」
「グルゥ!」
セレニアが斬りかかり、炎はボシュウと無意味に散る。せまる追撃に距離を取ろうとするも、壁を駆け背後に回ったベートが魔剣の炎を纏う蹴りを放つ。
「ガッ!?」
背中から蹴られたサーガラに炎による外傷は少ない。熱、或いは魔力に対して高い耐性。反して物理耐性は深層の竜と同等。
深層の竜すら蹴り殺すベートの攻撃に吹き飛びセレニアの剣が獣毛を裂く。
シャバラが追撃しようとする冒険者に襲いかかり、シュヤーマの背に乗る春姫がポーションで傷を癒す。
「チィ………」
純粋なスペックの総合力ならモンスターと猟犬達が優勢。ランクアップしたてに加えて
問題はそれを埋めるように3匹の連携が完璧で春姫がサポートに回っていること。モンスターではなく、連携の取れる冒険者パーティーを相手するつもりで挑まないとこちらがやられる。
「面白え………」
「…………う〜ん」
一方、ティオナは怯える竜の少女の前にいた。
たまたま見つけて追いかけたが、そもそも捕まえる気はない。でもなんか他の
「……………?」
何時までも何もしてこないティオナに、竜の少女は顔を上げ困惑に目を向ける。
「うん。よし、やめた! フィンが保護するかわからないし!」
モンスターとは人類にとって絶対悪であるということぐらい理解している。フィンが捕獲と言っていたが、何時までも捕獲して生かすとは限らない。
「早く逃げな。みんな、私みたいに馬鹿じゃないから」
「………」
「それにさっき、子供を守ってたもんね。うん、君はひどい目に遭っちゃ駄目だよ」
ティオナがほら、早くと促すと竜の少女は立ち上がる。ある程度かけると振り返り、頭を下げた。良い子だ。
「アルゴノゥト君達もこんな気持ちだったのかなぁ」