ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
時を少し遡る。
少女を助けるために群から離れ、ティオナに見逃されたウィーネを助けに来たベルと春姫。春姫は現在ベートと戦闘中で、ベルはウィーネを連れダイダロス通りを進むが、ここでアイズに見つかった。
リューの事が心配になりつつもベルはウィーネを庇うように前に出た。
戦闘は常にアイズが圧倒。なのに、ベルは確実にアイズに食らいついていた。
アイズが教えた『自分を守る強さ』でも、リリウスが教える『敵を倒す強さ』でもなく、ベルが自分で育み育てた強さ。『誰かを守る強さ』!
「………!」
それがモンスターの為に振るわれている。薬指がまた痛む。
「どうしてそこまでするの………」
「あの娘を助けたいんです!」
逡巡なく返された応えにアイズは奥歯を噛み締める。
「本当に、本気で言ってるの………? 人じゃない、
「普通のモンスターとは違う! 話せるんです、笑い合えるんです! 手を取り合える──僕達と同じ感情があるんです!」
「違う! 同じなんかじゃない! みんなはそんな事出来ない!」
モンスターは人を殺す。沢山の人を殺せる。沢山の人が泣く。
「でも、それは………それは冒険者だって同じじゃないですか!? アイズさんの剣だって、僕のナイフだって!」
冒険者が一度それを振るえば、ただの人間なんて容易く死ぬ。リリウスやオッタルなら街一つ容易く滅ぼす。
「僕は、あの娘達と暮らせる場所が欲しい。ウィーネ達が笑える世界が欲しい!」
理解出来ない。理解したくない。
言葉を交わせる、それだけで手を取れて。かわいそうだから、それだけで世界を相手にするその姿は、まるで………。
「ベル、は………怪物の英雄になるの?」
まるで英雄のようではないか。ただし、守られているのは怪物だ。
「英雄………かは、わかりません。でも、僕はあの娘達を守りたい」
「……………なんで………」
──約束をしましょう。アイズさんが、また何処かで悲しんでいる時、泣いている時、僕が助けに行くって………この指輪に
「なんで…………!」
──僕は弱っちくて、格好悪くて、どんな人も救えないですけど………この指輪に誓って、貴方を助けに行きます。いつか、『英雄』のように
「約束したのに!!」
頭が痛い。薬指が疼く。頭の中がごちゃごちゃにかき乱れる。
「嘘つき!!」
「────!!」
冒険者ではなく、剣士でもなく、ただの少女の叫びにベルが思わず固まる。
「っ!? はや──!」
警戒を解いてはいない。だが一瞬で接近された。先程より遥かに速い。
「ぎっ!!」
咄嗟に防御するも吹き飛ばされる。
威力が先ほどとは比べ物にならない。何だ、何が起きている!? 魔法、ではない。詠唱はなかったし、魔力を感じない。ならスキル?
「滅罪大黒天女」
「え………」
不意に聞こえた声。同時に魔石灯の明かりが消える。いや、違う。魔石灯の明かりが照らす壁や地面に影が伸びている。
「…………!?」
アイズが纏う魔力とも異なる何かの力が唐突に萎みその場に倒れる。
「っ! アイズさん!」
が、あくまで消えたのは異質な力だけ。すぐに立ち上がりウィーネの後を追おうとするアイズの前に立ちはだかるベル。
「聞いてください!」
「やだ! 聞きたくない! ベルなんて知らない、あっちいって!」
説得でもなんでもない子供の癇癪のように叫ぶアイズ。
こんな事言いたいわけじゃないのに。こんな事したいわけないのに。どうして? 自分とベルは、どこで間違えた。どこでこうまで違ってしまった?
私は、本当は………君と、もっと………
脳裏に過ぎる早朝の市壁。約束をした、夜の市壁。
あの時自分を見つけてくれた、見つめてくれた目は、別の誰かを守る意志を宿しこちらに向けられる。
「本当に、斬るよ? すごく、痛いんだよ…………だから………」
だから? だからなんだ。何を言えばいい。
脅しになってない脅しでベルが退くわけもなくて、ならやっぱり戦わなきゃいけなくて………。
「だめっ! ベルをいじめないで!」
そんな声が響いた。
駆けてくるのは逃げた筈の……ベルに逃された筈のヴィーヴル。
「お願い、ベルを傷つけないで!」
そんな目で見ないで。どうしてそんな目を、怪物が私に向けるの。
「どうしてあなたみたいな存在がいるの………」
そんな怪物が、恐れ、怯え、震える怪物がいたら、自分は………。
「私は………ベルと、一緒に………いたい………」
「そんな事させない!」
心に浮かぶは漆黒の厄災に挑む両親の背中。両親との最後の記憶が、アイズにモンスターの存在を許させはしない。
「あのモンスター達のように地上にのさばるなんて……そんなの許さない!」
まるで当たり前のように地上にモンスターがいるなんて、そんな事アイズじゃなくても多くの人間が認められない。何故なら……
「あなたの爪は誰かを傷つける! あなたの翼は多くの人を恐れさせる! あなたのその
そう剣を向けるアイズの前で、怪物は己の爪を剥がす。力任せに翼を千切る。途轍もない激痛に耐えながら、叫び声を上げ、倒れそうになる体をベルが慌てて支えた。
「また、私が私じゃなくなったら………今度はちゃんと、消えるから………」
ずっと一人だったと『少女』は言う。
誰も助けてくれない。誰も抱きしめてくれない。怖くて、暗くて、寂しかった。そう泣く少女は…………
「でも、わたしを………ベルは見つけてくれたの。ひとりぼっちの私を、ベルが助けてくれたの。真っ暗な私を、ベルは助けてくれたの!」
私には、現れなかったのに。
目の前の少女が幼い自分と重なる。誰にも助けてもらえなくて、震えるしかなかった幼い自分と。
でも、アイズには英雄は現れなかった。少女には英雄が現れた。
アイズの英雄になると言ったベルが、少女の英雄として…………。
(ずるい………ずるい! ずるい! ずるい!)
なんで
自分と重なる少女を否定する事は、アイズには出来なかった。
「世話が焼ける」
「何もしねえのかよ」
「俺に彼奴は救えねえからな」
背後に立つ獣人の青年にそう言った。
「逃げやがったぞ、てめぇのペット」
「今回は逃げるが勝ちだからな。倒して進めなかったあたりは躾け直し……いや、お前相手なら褒めてやるか」
「負けた雑魚を褒めんじゃねえよ」
「じゃあ仕置きか」
「必要ねえだろ」
「…………………」
「鍛え直すのは仕置じゃねえ」
ベートはそう言うと屋根から飛び降りた。リリウスはさて、とダイダロス通りから離れようとした時だった…………。
「……………グロス?」
モンスターの咆哮が聞こえ振り返るとグロスとほか2名の
何やってんだ? 何やら覚悟を決めているようだが…………。殺気はない。怒りは僅かにある。
決死………。なぜこのタイミングで? 口の中の石………感じる魔力の共鳴するかのような波動。何かの位置を知らせる
ヘルメスか。さて、操られているわけではなく、決めたのはグロスのようだが…………。どうするべきか。
ヘルメス、一応リリウスのギリギリのラインはちゃんと見極められる程度にはリリウスをみてるんだよね。
気持ち悪いね。
ところで半殺しを二回やれば実質全殺しにならないかな? 慈劑医王善逝をチラ見