ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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神の計略

 神ヘルメス。

 暇つぶしに訪れた神々の中でも少数派な下界救済を願う神の一柱(ひとり)

 

 ゼウスやヘラのパシリをしていて、その2柱が落ちた後は有力な英雄を見つけることができずウラノスの走狗として世界を回り英雄候補を探しながら来たる日に備えている、そんな神。

 

 そして漸く見つけた英雄は、怪物の手を取ろうとしている。それ故に人々から見放されそうになっていた。

 

「馬鹿を言うんじゃないぜ! モンスターとの共存? 一度は滅びかけたんだぜ人類は!? 男も女も子供も老人も誰も彼も殺され尽くした! 他ならぬモンスターによって!」

 

 怪物との融和? 何十世紀も続く憎しみと因縁を覆して何になるというのか。

 

大神(ゼウス)もきっと言うだろう。『無茶を言うな』と! 『異端の英雄』なんて誰も望んじゃいない!」

 

 世界にもはや猶予はない。万人が受け入れ夢を見て、立ち上がる『最後の英雄』……それこそが下界救済の希望。

 

「さあ! モンスター退治(原点回帰)だ! 英雄になろうぜ、ベル君!」

 

 

 

 

 

「……………?」

 

 攻撃がやんだ。血だらけのフィンの意識は走馬灯から現代に戻ってくる。

 

 ケートゥはフィンから目を逸らし何かを見つめている。フィンが視線の先を追えば、ベルと戦うガーゴイル。あれは、異端児(ゼノス)の仲間? ハーフエルフを狙っているようだ。

 

 なぜ民を襲うのか。ベル・クラネルが庇う以上、異端児(ゼノス)達の『安全性』は保証されているようなものだ。故にフィンは住民を守る為の戦力を割かなかったのだから。

 

(……神ヘルメスの計画(シナリオ)か…………)

 

 あの光を放つ腕輪を持つギルド職員を狙うように洗脳されている? 【万能者(ペルセウス)】ならそう言った魔道具(マジックアイテム)を製作出来てもおかしくない。

 

 茶番だな。

 題目は禊? 住民は観客、冒険者は端役。

 並の冒険者では敵わぬ理性なき怪物から少女を守る。

 モンスターと戦う。それも誰かを守るために。分かりやすい活躍。欲にかられて他の冒険者からモンスターを庇った少年が、今度は正しく力を振るう。そんな筋書き。

 

 ケートゥは何故何もせず操られている同族を眺めているのか…………。

 

 

 

 

「さぁさぁ! モンスターを倒そうぜベル君! 倒して救って英雄に返り咲こう! 『異端児(ゼノス)』を見捨てよう! なぁに一匹殺せば割り切れるさ! 一時は苦しんでも立ち上がれる! 俺とフレイヤ様が君を退屈なんかさせないぜ!」

 

 ベルは純粋ゆえにこの醜悪な観測に気付かない。モンスターの爪に貫かれるか、殺して英雄となるかの二者択一。

 

 決断出来ないベルを置いて事態は進む。【ロキ・ファミリア】が集まりだした。ベルより高位の冒険者も居る。これ以上長引かせれば、ベルを応援する今の民衆は一転、ベルを疑う懐疑の声を漏らすだろう。

 

(決断しろ小僧! さもなくば、私はお前を殺すぞ!)

 

 高く飛び上がり勢いを生むための距離を作る。本気だ。この爪を凌ぐには、もう殺すしか選択肢は与えない。

 

「行くんだグロス君! 英雄の刃が君を待って──」

 

 ドゴォ! とヘルメスの腹にめり込む細く短い子供のような足。内臓を潰し背骨を砕き破壊の限りを尽くしながらしかし引き千切り衝撃を逃がすなんて手心を許さずヘルメスの身体が吹き飛んだ。

 

 石の屋根を砕き石の橋を砕き石の壁をぶち抜き肉塊へと変わる神は反射的に肉体を癒そうと神の力を使おうとして………

 

「【四の弾(ダレット)】」

 

 ()()()()()()()。傷一つなき肉体に神の力を使う必要などなく、故にヘルメスは送還されることなく下界に残る。

 

「……………リリウス君」

 

 なかったことになったとは言え常人なら発狂しそのまま死んでもおかしくない激痛を味わったヘルメスは、しかし普通に話しかける。

 

「わかってるよ。ヘスティアから、俺が偽物の手記を渡したことを聞いて異端児(ゼノス)の皆を逃げられなくした上で脅したと思っているんだろ? それは誤解だ」

 

 リリウスに引き摺られているアスフィがどの口で、と思ったがヘルメスは確かに『君達がどう答えようと、抜け道は用意するとも』と伝えているし、その約束を違える気はなかった。

 

「話をする場を設けるためさ。誓って彼等を逃げれなくするためじゃない」

 

 ヘルメスは嘘をつかず真実を語る。リリウスを怒らせれば最悪自分が天に返るどころか、万が一の可能性ではあるが眷族まで危険にさらされる。

 

「『今度はベルくんを救ってほしい』……俺のそれは脅迫でも、交渉ですらない。彼等の情に訴えかけた、確かに卑劣な言葉さ………でも、断っても何の不利益もないその願いを、彼等は聞いてくれた」

「…………………」

「だからリリウス君! グロス君の覚悟を、献身を無駄にしないでくれ!!」

 

 リリウスは自分がズレていることに自覚的だ。そしてそれを世間に合わせる気はないが、友人知人には合わせる。その合わせ方も相手の意志を尊重する形。

 

 だからこそ脅迫、交渉は断念しあくまで懇願のみにした。ここがヘルメスが導き出したリリウスの逆鱗に触れないライン。返答やいかに?

 

「まあ、お前が俺の知り合いを脅す勇気はねえか」

 

 セーフ! と内心で叫ぶ。一回ぐちゃぐちゃにされたけど、そこはまあ仕方ないと割り切ろう。ムカつかれたんだろうな。

 だが都市外との交渉に情報収集………ウラノスの駒として動く自分はリリウスにとっても有用な筈。

 

「まあ、それはそれだ」

「え?」

 

 さぁて、後はベル君の活躍見るぞ〜。まだ終わってないといいな〜、と戻ろうとしたヘルメスの背後からリリウスの声が聞こえた。

 

「で、お前が情に訴えた(それやった)理由だよ……」

「俺はベル君が心配なんだ。彼の歩む道を、英雄の手助けを」

「それだ馬鹿」

 

 ギュルっと瞳の針が動き銃に弾が装填される。

 

神々(てめぇ等)人類(俺達)にこうなって欲しいと思うのは勝手だが、こうあれと押し付けるんじゃねえよ」

「え、いや………俺はその………」

「神風情が、全知如きが、英雄(俺達)の進む道を阻むんじゃねえ」

 

 異端児(ゼノス)に脅迫を行わなかった。どちらにしろ逃がす為にやれる事はやるつもりであった。なるほど、確かに『そこ』はギリギリ、リリウスも受け入れるライン。くっそムカつくが一回肉塊にする程度で我慢しよう。

 

 だが人の在り方をこれこそ最適だと、全知如きで決めつけ望んだ道以外への邪魔をするのは、普通に許容範囲外。

 

「お前が自覚してるように、お前を殺すと代わりがいない。痛めつけるだけじゃ、神のお前が反省するわけもねえ………だから、これはそうだな。本当に反省しろとか、今後するなとかでもねえ………単純にムカつくし殺したいけど他に迷惑だから、殺さない程度に殺す。八つ当たりだ」

「……………すっかり人間になったね、君も」

 

 ヘルメスはお手上げだ、と両手を上げる。

 

「獣のように食い荒らせたら、とは思うがな。今は飢えがないのも一因だ」

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