ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
因みにヘルメスはガチでグロスの覚悟と献身を尊いと思っている。それはそれとして『じゃ、ベル君に殺されてきてくれ』と平気で言う。それが神という存在
光が見えたんだ。
モンスターの爪牙から両親が自分を庇ったあの時に、眩しいと思ったんだ。
あの光に憧れて、立ち上がれた。俯いてばかりの同胞にあの光を見てほしいと思った。
活躍し続ければ、強さを証明し続ければ、勇気を持って挑み続ければ、皆がついて来てくれると信じていた。
実際多くがついてきて、冒険者の街オラリオでも同じように活躍できる…………そんな思い上がりは初日で潰えた。
理不尽の化身としか表現出来ない圧倒的な強者達。作戦とか連携とか、出来ない訳では無いがそんなもの無関係にただ強い強者達。
挑んで敗れ、気に障ったとかで蹂躙され、五月蝿いと幼女にすり潰されて………。
分かっていたつもりだ。オラリオの外に【ゼウス】と【ヘラ】以外の名を聞かないほどに、ゼウスとヘラか『それ以外』で分けられるほどに絶対的な存在であると。
都市外で多少名がしれただけの自分達は挑戦者側である。それを理解した上でオラリオに飛び込み、浮気した男を追いかける女というあれな騒動に巻き込まれ強者の洗礼を浴びた日から、まずは強くならない事には始まらないと改めて自覚し直した。
目標は居る。そこに向かって走って、追いかけて、
一歩追いついたかと思ったら2歩も3歩も先に進んで……背中が遠いのに、追いかけるのは楽しかった。
だけど突然その背中は消えた。
「次は僕達の時代だ」
張りぼての勇者風情が、どの口でほざいた。
何故立ち塞がった。ただ死ぬだけの君達を、責める冒険者等いないのに。いたとしてもそれはただ君達が嫌いなだけか、何も知らないただの愚者。
戦って分かる。ああ、本当に君達は死ぬのだと。だってそうじゃなきゃ、僕達が
「これでウチ等が最強派閥やな………」
嘘を吐くなよ悪神。影すら踏めてないのは分かっているだろう?
「君達が次代の英雄だ」
思ってもないことを口にするな旅神。だから今も英雄を探し続けていたんだろ?
「………………………」
何か言え創設神。足りないのはわかってるんだ。追いつけてないのは知ってるんだ。僅かな期待なんていらないから、いっそ失望の一つでもしてみせろ。
「【ロキ・ファミリア】こそ最強だ!」
「【フレイヤ・ファミリア】だと俺は思うぞ」
冒険者を外から見るだけの民の声に、今日も
「自分、フィンさんに憧れてて! こんなふうになりたいって思って!」
憧れの目を向けられるようになった。理解なんて微塵もない。こうに違いないと、その目に映る自分は型に嵌っていて、だけどその型を作ったのは他ならない自分で………。
そうして人が集って大きくなって、仲間が死んだ。冒険者として暮らしていて、珍しくもない事だ。
非難はある。侮蔑もされる。けど『最強』という肩書が、それを減らす。最強だろうと『敗北者』は認めない民も、終焉に敗北する前の挑戦者ですらない候補を崇める。
それを利用すると決めたんだ。次は僕達と、そう言ったんだから。誓ったんだから。
人を集めて、鍛えて、かつての英雄達に匹敵する戦力を作らなくてはならない。
ならないのに、これ以上進めない。後進の育成? 十把一絡げの上級冒険者など餌にもならない。
なのに声がするんだ。
貴方に憧れている。貴方みたいな冒険者になりたい。貴方のおかげで馬鹿にされなくなった。貴方の存在が勇気をくれた。
貴方に、貴方が、貴方を、貴方の………。
追いかける背中を見失って、気付けば追いかけられていて…………今日も勇者を演じる。追いかけてくれる彼等が少しでも前に進めるように。目標である自分が進まなきゃ…………。
「どけ………」
けど自分を追い抜いたのは、自分の背中なんてまるで見ていない同族の子供だった。
一人で戦って一人で強くて一人で勝って………仮面なんて被らないのに何時しか彼の周りには人が居て、先に進む彼の為に彼女達も走って………。
彼が民衆と触れ合えるかもしれない、そんな時、彼を天才だと噂を流した。民衆の話題はあっという間にそれに染まる。結局彼等は最後には冒険者の強さと、可能性にしか興味がない。
彼という例外を救えない。歪なまま固まり、強くなった彼は勇者には導けない。
嘘を吐くなよディムナ。民衆が今更彼に寄り添うのが嫌なだけだろ。自分は彼の本質に気付いて、逃げたのに彼の本質を知らぬまま掌を返して擦り寄る光景が見たくなかっただけ。
彼を一番特別視しているのは、他ならぬフィンだ。
現代のフィアナ……それが彼だと、噂を聞いた時点で察していたさ。敵じゃない民に溢れた外で、彼が優しく振る舞えるなんて当たり前じゃないか。でもその背中は自分が見えない場所にある。
両親の記憶は過去となり、追い続けた背中は残滓になり、現れた光は遠くに。
光がない道を、果たしてどれだけ歩いたか。そんなある日、彼が戻ってきた。更に強くなって。
自分は? アビリティこそ極めたが、あの時のまま。
しかも彼はすぐに更に強くなったし。
彼よりも弱くて自分よりも未熟で、なのに、格好良くて。
本気で挑んで本音で生きて本質を晒して。
光って見えたんだ。眩しく見えたんだ。
彼が曇るのを見て胸が痛む。
逃げて、勇者として振る舞おうとして、あの光景を見た。
光が見えたんだ。眩しく思ったんだ。
仲間の為に、少年の為に、命を捧げようとしたモンスターに。最後までモンスターを信じた少年に。両親と同じ、ずっと憧れていた光を見たんだ。
で?
どうだった?
────……。
いい加減に気付けよ。変わった気になるな。俺達は、
うん、そうだね。
あれがリリウスの弟子。牛の小僧の獲物。
未熟、未完、未達………故に未知。成る程、将来が楽しみだ。
「…………ん?」
と、気配を感じて振り返る。半死半生の小人が立ち上がった。
「なんだ!? まだ遊べたか! これ以上は遊びで済まなくなるぞ?」
これ以上は死ぬ。殺したらリリウスにとても怒られる。1回ぐらい殺されるかも。それはそれであり?
「…遊び………そうだね。君の遊びで、
「む?」
「でもこのまま
ビリッと甲殻が震える。何かが変わった? 何が変わった?
「君にとって殺し合いが遊びなら………気兼ねなく付き合ってもらう」
「ほう………」
ソワッとするケートゥ。
「挑みたいんだ………挑み続けるべきだったんだ。僕は……」
「いいだろう。付き合ってやる! 見せてみろ、フィン・ディムナ!」
楽しそうに笑う。戦うために生み出され、戦うために生まれ変わった生粋の戦士は覚悟を決めた戦士を前に愉悦を感じ得ないなどあり得ぬのだから。
「【
紡がれる詠唱。迸る魔力にキチリと甲殻を鳴らすケートゥ。
「【
膨れ上がり続ける魔力。長文………否、超長文詠唱。
魔法の効果、威力は詠唱の長さに比例する。
「【轟く馬蹄、終わらぬ蹄跡、騎士達の歌は今もなお高らかに響く。すなわち誓約、
正面から受ける必要などない。詠唱を邪魔しようと、魔法から逃げようと、それもまた『戦い』。だがそれは、ケートゥにとっては『雑魚の思考』。
「【一族よ、集え。この御旗のもとに。同胞よ、続け。聖烈の光は今も先前に】
我は強者。力を以て蹂躙を成し、蹂躙を以て力を示す。小賢しき策も、勇猛な一撃も、蛮勇の突撃も、全て正面から受ける。
ケートゥは高く高く飛び上がった。
「【我が名は
ケートゥから溢れる月光を思わせる魔力光。異変に気づいた冒険者達も、吹き荒れる魔力で近付くこと叶わず、輝く魔素に視認すること叶わない。
「【もし許されるならば────今ここに、女神の
放たれるは下界最強の槍。Lv.6でありながら、或いは
膨大な魔力が亀裂の走る甲殻を砕く。そこから魔力が噴き出す姿は、まるで命を燃やしているかのよう。
「【ティル・ナ・ノーグ】!!」
「【スヴァルヴァーヌ】」
轟音。閃光。
雲すら貫かとんと空へと迫る黄金の巨槍とダンジョンまで穿たんと落下する月の矢がぶつかり合い、大爆発。
「名を聞いていなかったな………知ってはいるが、お前の口から言え」
「………フィ──…………ディムナ。フィン・ディムナだ」
「ディムナ………」
と、その名を反芻するケートゥ。キシッと楽しそうに笑う。
「ではなディムナ。次はもう少し強くなっておけ。そしたらまた、遊んでやる」