ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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漆黒の蛇竜

 音とは振動。その振動に同調させて打ち消す………なんて芸当は流石に出来ない。

 ただ、音の衝撃波を突破出来れば良い。

 

 細かく、鋭く砕いた水晶に電気を流し振動させ、放つ。付与された雷は水晶を振動させたまま音を弾き突き進む。

 

 が、所詮水晶の欠片。不意をついたのならともかく、来ることがわかれば簡単に弾かれる。

 

「キュオオオオオオオオオオオッ!!」

「!!」

 

 と、デルピュネの炎弾が複数飛んできた。

 闇派閥(イヴィルス)の計画のために生み出されたとはいえ、その本質は神殺し。母なるダンジョンの敵を滅ぼす存在であり、見境などある訳が無い。

 

 その馬鹿げた威力の砲火は、階層そのものを破壊しかねない。

 

「うざってえ………」

 

 リリウスの瞳が紫紺に染まり、角が生え髪が黒く色付く。大地を殺す怪物の力、その欠片ほどの模倣にデルピュネが反応した。

 

「溶けろ」

 

 最大出力の黒風(かぜ)。漆黒の大槍の如く突き進む竜巻に対して、デルピュネは煌々と輝く黒い炎を吐き出した。

 

 竜巻を焼き尽くしながら突き進む炎。リリウスが立っていた場所を吹き飛ばし………既に背後に回っていたリリウスが翼に『釣り針』を引っ掛け登り、マーダで鱗を引っ掛け引き剥がす。

 

「ギュウウ!?」

 

 剥き出しになった皮膚にマーダを突き刺し切り裂く。が、浅い。鋼鉄の如き鱗に守られているくせに、肉も途轍もなく硬い。

 

「キィィアアアアアア!!」

 

 体を回転させリリウスを引き剥がし、爪を振るう。咄嗟にマーダを構えたリリウスだったが、そのまま吹き飛ばされた。

 

「ギウウウ………」

 

 毒を流し込まれ溶かされた傷口から感じる熱に唸るデルピュネ。リリウスが吹き飛ばされた方向に再び炎を吐こうと口を開く。

 

「────うああああああああっ!!」

「アイズ!? 待てっ、行くな!」

 

 漆黒の竜を前に目を見開いて固まっていたアイズが走り出す。

 金の瞳に強い憎しみの光を灯して。

 

「邪魔っ、邪魔っ! 邪魔!! 消えて!!」

 

 神たるエレボスを狙い闇の眷属と争っていたモンスターが軒並み()()()()()()()

 

「なんだ、驚いたぞ。モンスターを葬ってくれるとは敵である俺を助けて──」

「フーッ、フーッ!」

「聞こえていないか。小娘の皮を被った狂戦士(バーサーカー)………」

 

 リリウスに対して、ではないだろう。あの瞳は、もっと深い。

 どちらにしろ、エレボス達には丁度いい。デルピュネの足止めぐらいにはなる。

 

「この隙に移動させてもらうとしよう。そうだな………行くのなら見晴らしの良い場所がいい。この地獄を見渡せる、特等席が」

 

 どうやら、エレボスはまだこの地獄に居座るつもりらしい。

 デルピュネに特攻する幼女を背に、神は悠然と歩きだす。

 

「キィイイイイイ!!」

 

 アイズの存在に漸く気付いたデルピュネは、リリウスに放とうとしていた炎をアイズに向ける。触れれば第一級冒険者でさえ焼き尽くしかねない炎を、第二級のアイズは…………切り裂いた。

 

「ああああああ!!」

「アイズ! クソ、こんなところであの子の『怒り』が爆発するとは!」

 

 リヴェリアは、しかしその圧倒的な力に対して顔を歪める。器の力を超えた出力……埒外のスキルが齎すは………。

 

「壊れるぞ、あのガキ」

「わっ、びっくりした!? …………壊れる?」

 

 手頃なモンスターの肉を食いながら戻ってきたリリウスがアイズの特攻を見て呟く。

 あれには覚えがある。ザルドの腕を喰らい、その肉を未だ侵し続けていたベヒーモスの血肉(もうどく)を食らったリリウスに近い。

 

 リリウスは毒という要素もあったが、それがなくとも桁外れの力は器そのものを破壊しようとしていた。

 

「その前に殺されるか」

 

 気合やスキルだけでLv.3が倒せるなら、闇派閥(イヴィルス)の計画には使われないだろう。

 『闇派閥(イヴィルス)の戦力で潜れる最深階層』産まれとは言え、それでも神殺しのモンスターなのだ。

 

「っ……!!」

「行って!」

 

 と、リヴェリア達に向かい叫ぶアリーゼ。

 

「ガレスのおじ様、【九魔姫(ナイン・ヘル)】、【剣姫】を助けに行ってあげて! ここは、アルフィアは私達で何とかする!!」

「馬鹿を言うなアリーゼ・ローヴェル! Lv.3に過ぎないお前達が、Lv.7の怪物をどうやって……!」

「大丈夫、【勇者(ブレイバー)】の()()ならしっかり覚えてるわ! どんなに倒されても、挫けずに立ち上がってあげる! 強く美しい私たちは、不滅よ不滅! だから、信じて! ガレスのおじ様!」

 

 そして、今度はリリウスに視線を向けるアリーゼ。

 

「それに、第一級なら一人いるもの! ね?」

 

 バチコーン☆とウィンクしてくるアリーゼ。

 リリウスはデルピュネと戦うアイズを見て、次にアルフィアを見る。リリウスの逆転可能の魔法、如何なるモンスターも当たりさえすれば殺しうる魔法がある限り、アルフィアはリリウスを2度も通させたりしないだろう。

 

 先程もリリウスの魔力を感じていれば、デルピュネごと音の砲撃で叩き落されていただろう。

 

「そうだな」

「ほら、こう言ってるわ!」

「……行くぞ、リヴェリア! どちらにしろ、お主はアイズを放って戦えまい!」

「……っ! すまない、【飢鬼(ラークシャサ)】、【アストレア・ファミリア】……!」

 

 リヴェリアは心苦しそうに礼を言い、詠唱を唱え始めた。

 

「【集え、大地の息吹。我が名はアールヴ】! 【ヴェール・ブレス】!」

 

 リヴェリアの持つ防護魔法が【アストレア・ファミリア】の面々を包んだ。

 

「効果が持続しているうちはお前達を守る! 頼む、死ぬな!」

「任せたぞ、小娘共に小僧! 帰ったらドワーフの火酒をたらふく飲ましてやる!」

 

 そう言い残し2人はアイズの下へ向かった。

 

「やったわ! 【九魔姫(ナイン・ヘル)】から餞別をもらったし、ガレスのおじ様と飲む約束もした! リリウスもいるし、完璧ね!」

「今の状態が完璧だと、勝ち目がないから不完全にしておけ。成長性がある」

「そういう問題じゃねーよ! アリーゼてめえ、ふっざけんなこのすっとこどっこい! こんなどうしようもねえ負け戦、安請け合いするんじゃねー! 絶対に死ぬじゃねーか、アタシ等」

「安心しろライラ。勝てば死なない」

 

 アリーゼに文句をいうライラに、リリウスは淡々と返した。

 

「諦めたらそこで何もかも終わりよ、ライラ! 大丈夫、まだ私達は死んでないわ! いけるいける!」

「本来ならば、そこの小人族(パルゥム)と並んだ私も罵倒する側だが──今回ばかりは団長側につこう。あの女には、借りがある。たとえ生首に成り果てようとも、あの首を噛みちぎってやる……!」

「リヴェリア様の懊悩を取り払えるなら、勇んでこの身を捧げましょう。何より、誰かがあれを討たなくてはならない」

 

 【アストレア・ファミリア】スリートップはやる気らしい。わざわざ会話が終わるまで待っていたアルフィアも声をかけてきた。

 

「茶番は終わったか?」

「ええ、終わったわ。茶番ではなく、決心が!」

「そうか、ならば、屍を晒せ。二度と雑音を生まないよう、その生命を摘み取ってやる」

「残念ね! 私達、やかましいことに関しては自信ありまくりなんだから! 貴方が音を上げるくらい、ジャンジャカ戦い抜いてあげるわ!」

 

 アリーゼはこんな時でも調子を崩さない。

 

「おいリリ坊、お前のその黒い姿、ステイタスは上がるのか?」

「使える力が増えるだけだ。ステイタスは上がらん」

「…………黒?」

 

 ライラがリリウスのスキルを確認しようと尋ねると、アルフィアがピクリと反応し片目を薄く開く。

 

「……………黒髪(その姿)は、気に入らん。戻せ」

「…………………」

「うぉい!? なんであっさり戻してんだよ!?」

 

 角が崩れ髪が白く染まるのを見て思わず叫ぶライラ。

 

「もとより混戦では黒風(かぜ)は使えん。毒素を弱めても、お前等程度の『耐異常』は突破する」

「あら、ひょっとして私達って足手まとい?」

「いや、全力の猛毒(かぜ)使っても、彼奴を一人で相手するのは無理だな。だから、手を貸せ【アストレア・ファミリア】」

「ええ! もっちろん!!」

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