ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「………………」
妙だ。
モンスターの群らしき反応を捉えたかと思えば直ぐに探知範囲外に逃げられる。
最初は7体。次に4体。今は1体。
だんだんと正確に逃げられる。まるで此方の動向をある程度把握しているかのように。
それとは別に極彩色は襲いかかってくる。逃げているのは
レフィーヤが抜けた今、襲撃に備え
「運が悪いですね………」
ヘルメスから齎された『ダイダロスの手記』が偽物であった以上、ルートは自分達で散策するしかない。だというのに度々リヴェリアの感知圏内に入り慌てて引き返すを繰り返す。
「とはいえ、優先すべきはクノッソスの情報をできる限り持ち帰ること…………」
リリウスにより人類との敵対の意思がないことを示された怪物を優先してオラリオの崩壊を望む
今ならもれなくリリウスとの敵対という世界一欲しくないおまけ付きだ。そう、【ロキ・ファミリア】だけなら接敵にさえ気を付ければ問題なかった。問題はここには【ロキ・ファミリア】以外がいるということ。
「っ!!」
扉が一気に開く。通路の向こうから現れるのは食人花の群れと
「まずい!」
フェルズの叫びにダイダロスオーブを取り出しかけ止まる。ここで扉を閉めれば【ロキ・ファミリア】が助からない。鍵を持っているとはいえ、明確な隙が出来る。
その僅かな逡巡を嘲笑うかのように
「神タナトス………!」
忌々しく死神の名を叫ぶ仮面のエルフ。その叫びに今更何の意味もありはしない。
神タナトスは理解していた。リリウスという存在がモンスターを肯定しようと人類は納得などしないと。話し合いは決裂する。ましてや話す機会さえ与えなければ【ロキ・ファミリア】は必ず
誰も彼もリリウスのように『種族』を『個』で見ることは難しいのだ。ましてや人類の不倶戴天の敵であるモンスター相手ともなれば。
「後はリリウスちゃんが【ロキ・ファミリア】を『分かり合えない』から『潰すべき』と判断してくれるのが理想だけど、それは高望みし過ぎだね…………」
更にいえば今回の件を
このまま
「ま、これで【
「っ!!」
漆黒の雷霆が食人花を焼き滅ぼす。魔剣から放たれる氷が食人花を貫く。
「…………」
白と黒の仮面のエルフ。強いな。片方は動きからしてLv.4。オラリオでも有数の実力者。もう1人は身体能力自体はLv.1………良くて2だが動けている。
ランクアップこそ果たしていないがその動きはベテラン。それも相応の修羅場を抜けている。このチグハグさはなんだ?
「罪深き冒険者に断罪をおおおお!!」
「っ!!」
「リヴェリア様!!」
そんな考え事をする暇など与えるはずもなく、魔法で穿たれながらも
魔導師とはいえLv.6の彼女でもそれなりのダメージを負う。これが繰り返されれば間違いなく死人が出る。
「くっ!」
「っ!! 近付くな、異端の怪物め!」
暴れ回る食人花から距離を取ったセイレーンに接近したアリシアが短刀を振るう。アリシアの拒絶に傷ついたかの様に顔を歪めその表情にアリシアの胸に深く棘が突き刺さる。
「我々を惑わすな!!」
怪物を信用してはならない。でも傷つけていいのかと、2つの心がせめぎ合う。
優しい者から死んでいく。勇者の評価の通り、彼等の言葉に耳を傾けてみるべきではと思えてしまう者から動きが鈍り始めていた。
其処に追い打ちをかける死神の切り札。
「ここか、羽虫ども」
扉が開き現れるレヴィス。投擲されるは不治の呪剣。怪物も
「ぐぅ!?」
「!!?!?」
その凶刃からアリシアを庇うはセイレーン。怪物という強靭な肉体。Lv.6に迫る
「……………何故」
「私の
「!!」
それはまごうこと無き尊き
「出来損ないのモンスターが………」
そんな茶番にただ苛立つレヴィスは新たに呪剣を構え、天井を貫き落ちる雷光が片腕を吹き飛ばした。
「!!?」
超圧縮された雷。アダマンタイトすら蒸発させるプラズマ。魔力への変換を通さず直接雷として顕現させるスキルの為魔法減衰効果を受け付けず
「チィ………!」
それがセイレーンから当たりにいったが故に見逃すという警告だと死神の忠告を聞いていたレヴィスは理解した。
故にこそ大人しく引き下がる。されど食人花共はその場においていく。レヴィスが去っても動揺したエルフ達では………。
「いいや。悲劇はいらない………怪物の手を取るのなんて荒唐無稽、とびっきりの喜劇が丁度いい」
ならば、そこに現れるは援軍。傷こそ既に癒えているが装備はボロボロのフィンに髭の一部が凍りついたガレス。それが【ロキ・ファミリア】の援軍。
ならば当然
「邪魔だ」
「あっちいけ」
雷が走り、モンスターの濁流が起こる。
「タクシャカ! マナサー!」
「……ん?」
マナサーはレイの様子に気付くと自分の血をかける。あらゆる傷を癒やすマーメイドの血は、しかし呪いを打ち消さない。
「解呪薬ならあるよ」
「…………………そうか」
フィンの言葉に暫し彼を見つめた後、マナサーはレイを抱える。
「フィン………鍵はレフィーヤから受け取ったのか?」
「? ああ、そうだけど………」
「……………そうか」