ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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異端の交渉

 フェルズ製地図の魔道具(マジックアイテム)から異端児(ゼノス)の反応が消えた。ダンジョンに入ったのだろう。

 

 それを確認するとリリウスはヘスティアを地上に降ろしダンジョンへ向かった。

 

 

 

 

 睨み合う【ロキ・ファミリア】と異端児(ゼノス)。仮面のエルフの片割れは視線から逃れるように怪物の陰に隠れる。

 

「剣を納めろ………」

 

 フィンの言葉に【ロキ・ファミリア】の団員達も武器を下ろす。異端児(ゼノス)達はどうするべきかとフェルズを見る。

 

「貴方達も、爪を下げて………」

 

 不意に響く声。振り返れば柔和な笑みを浮かべた牛人(カウズ)の女性が青銅鎧をまとう巨人とともに現れた。

 

「エウロペ………」

 

 エウロペと呼ばれた女性は【ロキ・ファミリア】の視線に気づくとニコリと微笑む。男女問わず思わずドキリとしてしまう。地上にいれば神々が間違いなく騒ぎ立てる美女だ。

 

「あら………レイ!?」

 

 と、血を流すレイに気づく。アリシアはハッとフィンを見る。

 

「あの、団長……………その、秘薬を………」

「必要ありません」

 

 と、現れるはアミッド。世界最高の治療師(ヒーラー)の魔法は不治の呪いも傷も容易く癒やす。

 この騒動において【イケロス・ファミリア】、闇派閥(イヴィルス)を除き一人だって死者を出すわけにはいかないとフィンを癒した後付いてきてくれたのだ。

 

「貴方は、『異端』のモンスター達の代表か?」

「この子達の王はリリウスちゃんよ。小さいのにとても強いの」

「…………知っている」

「あら、有名なのね」

 

 ポヤポヤしているエウロペに毒気を抜かれていく団員達。フィンは彼女の反応から、彼女は地上ではなくダンジョンで過ごしているのだろうと当たりをつける。地上に住んでいればリリウスが有名なことぐらい知っているはずだ。

 

「…………では、やはり代表は」

「俺だな」

 

 と、リリウス。先程のレヴィスへの攻撃は地上からだったのに、もう12階層まで来たらしい。

 

「…………交渉がしたい」

「……………………なるほど」

 

 武器を構えていない団員達を見てからフィンに視線を戻す。

 

「僕達は人造迷宮(クノッソス)を攻略したい。鍵を手に入れた今、本格的に乗り出す。オラリオの安寧を守りたい『ギルド』を巻き込んでね」

闇派閥(イヴィルス)の壊滅は望むところだが、名声大好きな勇者様が怪物と手を組むと?」

「武装したモンスターは人を襲わないと言葉でなく行動で理解させられてしまった。何より此方にはもう彼等に剣を向けられない者もいる」

 

 リリウスはレイを支えるアリシアとその周りのエルフを見る。

 

「もし交渉を結んだとして……我々との繋がりが露見した時、君の名声が地に落ちることを理解しているのか?」

 

 それこそベルとは比べ物にならない零落となるだろう。一族の再興など夢のまた夢になる。

 

「その時はまた返り咲いて……………いや………いや。違うな、まず何より言うべきことがあった」

 

 と、フィンはリリウスへと歩み寄る。

 改めてここまで近づけば、彼はこんなにも小さかったのか。大人と子供なのだから当たり前だが、見上げるなんてことはなくこちらを見上げる顔を見下ろす。

 

「…………英雄になりたかったんだ」

「…………………?」

 

 唐突な子供じみた告白に首を傾げるリリウス。それでも言葉を遮ることはなかった。

 

「一族の皆が顔を上げくれるような英雄に………最初で最後の小人の英雄(フィアナ騎士団)に憧れた子供が、自分もフィアナの様にと槍を取った」

 

 打算はあれど、それでも怪物に挑むのは間違いなくフィンの勇気。その背中に多くの者が惹かれ、その名声は確かに多くの小人族(パルゥム)を奮い立たせた。

 

「出来たと思った。出来ると信じてた………全てを背負ってる気になって、取り零したものから目を逸らしていた」

 

 そうして取り零した小人(同胞)が産み落とした子供達もやはり勇者の背中など見えていなくて。

 

「そんな事関係なく、君は進んだ。それだけの力があるのに、それなのに一族を見ないなんて、勝手に怒って……だから、君が人に歩み寄れる機会に邪魔をした」

 

 リリウスを人と遠ざけて、小人族(パルゥム)の再興に関わらせないことで優位に立とうとしていた。

 

「君の強さを言い訳に、君は大丈夫って一族を背負っているからと救えなかった事実から目を逸らした。目を向けなきゃならない子供から逃げた…………見ないことで自分を肯定しようとした」

 

 団員達は話についていけず困惑している。

 

「そのうえで、恥ずかしげもなく君に頼む。力が居る。 数が居る………だから……」

「…………なあ」

 

 と、リリウスは口を挟む。

 

「今更だからって理由をつけられてもどうでもいいんだよ。言いたいことをまず言え」

「…………今までごめん」

 

 そう、頭を下げた。ざわざわと騒がしくなる。

 

「これまで言えなくて、このタイミングで、信じられないかもしれないけど、本音だ。君の強さは僕の憧れそのもので、今、勝つために必要な力を守ってきて………都合がいいのはわかってる。でも、力を貸してほしい」

「……………俺がお前に怒るのは、()()()()()()事じゃない。お前が()()()()()()

 

 その発言に団員達が反応するがリヴェリアが制する。

 

「そしてそれは、最強を騙ったお前達だけじゃなくあの時大人だった全員に言える」

 

 あの時代が来ることを防げなかった。悪の隆盛を許したあの日あの時、オラリオに冒険者ありと示せなかった全ての冒険者の責任だ。

 

「強くなるよ。今度はちゃんと、前を見てそう誓おう。一族の子供が憧れたことを、間違いにしないために。再戦を約束してくれた、彼のためにも………」

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