ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「……………まあ、防ぐか」
3つ連続に放つ斬光・六花。その弱点は連撃技のため一撃一撃の威力が落ちるということ。無論総合的な破壊力は上がるが、範囲は3倍、威力は1.8倍と言ったところだろう。
最近、リリウスとの鍛錬で『人の身体能力』に慣れてきたタケミカヅチならほぼほぼ同威力の三連撃をほぼ同時に認識するレベルで振るってきたが………。
「相殺………」
4つの残光で打ち消された。Lv.7がまだ最大の【ゼウス】と【ヘラ】でありながら、Lv.9のリリウスの初撃を防ぐ…………。
リリウスは、黒の獣達に神の鎧、穢れた精霊を取り込んだ下界の神秘を独占する沼の王に果ては偽神、特別な縁を結ばれたが故の上位な
「はっ。今更…………」
己より才覚に優れた者などいくらでもいた。己より才覚に劣る者は死ぬか何もしていないかでしかない。第一級冒険者の中で、己が一番才能がないことぐらい自覚している。
相手は歴代最強の派閥。未だオラリオに並ぶ派閥が存在しない神時代を象徴する神軍。だが黒竜に負けた。だからここで思い知らせる。遥かな上がいる事を。
「…………次は…」
これまでの戦いでリリウスが数の共に戦ったことは少ないが、その中でも特に
「斬光だと………!? ザルドから【
「別段驚くことではないだろう。所詮は技術だ………」
技術である以上、再現性はある。誰にでも習得は可能だ。まあ小生意気なパルゥムなら貫いて老け顔のドワーフなら打ち砕くなど、多少の差異はあるだろうが。剣を使うならそうだろう。
「
と、その時。まだ距離があっても姿を確認できる超巨大な蛇、ヴァースキが動く。動いたのだが、後ろ向きに…………まさか、引っ張られてる?
そのまま回転したかと思うとその巨体が浮き上がった。
「「「──────は?」」」
先の世にて、陸の王の後継が行った質量攻撃がある。その体躯を敵に向けて傾けるだけで凡百な英傑をすり潰す、そんな攻撃。
ヴァースキはベヒーモスに比べれば小柄だがその質量は圧倒的。そんな存在が空を舞い、【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】の頭上に降ってくる。
「た、退避ー!」
「速度を少しでも落とせ!」
退避しながら落下速度を抑えようと高威力の魔法を放つ。狙いなど大雑把でいい。だいたい当たる。
「うおおおおおおお!!」
「彼奴、こんな時だけ本当疾いな!?」
赤目のサポーターが物凄い速度で逃げていた。なんなら皆が一瞬呆ける前………ヴァースキが動いた時点で逃げ出してたりするのがこの男。
「げぶぅ!」
「…………お」
そんな彼に追いつき制動のために足場にした白髪の
「…………まさか彼奴は」
当然その隙を逃すはずもない【ゼウス】と【ヘラ】。退避をそっちのけで直ぐ様攻撃に移る。
ヴリトラことリリウスは己に迫る武器に対する対処を一瞬で決めた。
ドワーフの男の叩き上げるような戦鎚は踏み砕かれヒューマンの男のハルバードは逆手に握った剣に防がれ、アマゾネスの振るったシミターは片手で摘まれ女エルフの放った槍は噛んで止められた。
「歯ぁ!?」
「バギン! ボリボリ、ゴクン」
「ああ、高かったのに!?」
俗っぽいことを言うエルフである。と、影が差す。ヴァースキが頭上に到達したのだ。リリウスは跳ね上がるとヴァースキの体を駆け上がっていく。
轟音を立ててヴァースキが地面と接触。距離があるオラリオにまでその振動は届き、ヴァースキを中心に大地が砕け小山サイズの地面の破片が乱立する。
「シャアア………」
落下の衝撃で空気を吐き出したヴァースキが苦しげに呻くのを見つめるリリウスの背後に迫る剛剣。振り向きざまに弾く。
「っ!!」
大男と小人の子供………誰もが結果を分かりきっていると判断するであろう力関係が逆転し弾き飛ばされるザルド。だがタタラを踏みながら勢いを殺す。
「ぬぅん!」
「おお!!」
「────!!」
Lv.7の集団が襲いかかる。一人一人はステイタスを極めているオッタルに比べればやや劣る身体能力。されど、技量は同じか、上もいる。
それが一つの生き物のごとく襲いかかる。そこに当たり前のように交ざってる
口元に血の匂い………その血はザルドのものだが、ヴァースキの鱗を噛み砕いて無理に飲んだようだ。
「おおお!!」
「…………!!」
「よし、いけるぞ!」
弾き飛ばされるリリウス。体重差故に仕方ないとは言え、それが出来る
「!!」
ガクリとリリウスが僅かに姿勢を下げる。身体が重い、これは、
「魔力が吸われ………
「おおおお!!」
リリウスは迫る女剣士の剣を斬り裂くと刃を
一人一人が役目を理解し、一つの存在へと迫る。
【ロキ・ファミリア】の一つの指揮のもと動く連携とは異なるが練度は変わらない。それでいて個々の実力も高い。
「………………やめだ」
リリウスは剣を握り直した。構えを変えた。
そもそも『先』を生きていたからといって『先』に生きていた者達の『先』にいるわけではない。
導きに来たのではなく阻みに来たのに、わざわざレベルとステイタスだけが格上として同じ戦い方をするのが問題なのだ。同じ戦い方をするから挑戦者に落ちる。
「「「────!!」」」
前衛全員が連携も忘れリリウスへ迫る。握る柄の長さを変えた。開いていた足の幅、腕の角度、体幹……それらを変えただけ。たったそれだけで表面化する圧倒的な脅威。
3方向から振るわれるLv.7の圧倒的な破壊力を秘めた斬撃、打撃、刺突。竜種の命すら容易く奪う英雄達の一撃。
ヌルリ
「は?」
ザルドの横でアマゾネスが呆然と声を漏らす。
「なんだ今の、攻撃がすり抜けた!?」
かと思えば吹き飛ばされていたマキシム含めた3名。
「違う………」
外から見て、気付いたのはザルドだけ。
「受け流された………」
振るった中で、気付いたのはマキシムだけ。
『相手の力に逆らわず受け流す』。言ってしまえばそれだけの技術。
「だが、確かに触れたはずの剣にまで空気抵抗並みの感触すら伝わってこないのはどういうわけだ!」
「技術」
教えてくれるんだ、と誰もが思った。
「しかし防ぐか。流石、【ゼウス】の団長」
「防げてないさ。おもっクソ血が出てるわ」
「戦闘不能に追い込むつもりだった。意識があるなら、防がれている」
会話に応じる少年のその背後から迫る双子の女。鏡写しのように迫る二本の剣は、やはり標的をとらえることなくすり抜ける。
ユラリと動いただけにしか見えない。それだけで剣を躱し、因果が反転したかのように斬り掛かった筈の相手が斬られる。
「いい加減起きろヴァースキ。お前も神殺しの獣なら、怪物の王の矜持を見せてみろ」
「ギャッ!?」
バチチと足元から雷が走る。ヴァースキが身震いをする。その巨体故に僅かな身震いだけでマキシム達が跳ね飛ばされる。
「さて、行くぞ?」
当たり前のように空を駆ける。破片ではなく、何かを蹴り空中で加速、方向転換。防げたのはザルド、マキシム、他Lv.7数名。
現在神時代最高到達地点のLv.7ですら地上に降りる間に一方的にやられるのはどういうわけだ。
「はあああ!!」
「おおおお!!」
剣士が、槍使いが、弓が、魔法が迫る。髪の毛一つ傷つけることなく流される。
ステイタスの差………だけではない。技量の差。
トントンと次の手を惑わせる足運び。ゆらりと流れる体幹。まるで踊りのようだ、と誰かが思う。
合理的にして必然的。極めた果の流麗な動きを舞と錯覚する。その技を知る者は…………
「はは、はははは! マジかよ、マジか!? どこの誰だ? 人にあれを教えた奴は!!」
【ゼウス】と【ヘラ】に挑むという命知らずを笑ってやろうとしていたルドラはゲラゲラと笑う。
「ヴリトラを名乗る身の程知らずかと思えば、あれをあそこまで使いこなすかよ。ああ、でも待てよ? 見覚えがあるぞ。あの動き………」
『い、いったい何が起きてるんでしょうか。俺にはさっぱり意味がわからない!』
『…………カーリー?』
『ガネーシャ様?』
『あれは、カーリーか!?』
『そこはガネーシャか!? じゃないんですね! 知ってるんですか、ガネーシャ様!?』
『あれは………