ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
Q.リリウスは前回の話でどうやって空を駆けたの?
A.技術
フィンを背負いダンジョンを駆けるリリウス。
多層構造の密林の峡谷や水の都を、壁に触れることなく駆け上がっていく。
「………新しいスキルかな?」
「技術」
ドゥルガー曰く、空気も水も石も、この世に存在するならそれは小さな粒子の集まりなのだと。
動けば空気が当たる感覚があるのは当たり前。
一塊となった粒の集まりが動きにくいのが固体、粒が引き合っているが隙間があり動くのが液体、粒が離れ影響を与え合わないのが気体。
だが、粒は粒だ。風の動き、温度、密度の差……その時に生まれる粒の動きに合わせれば一瞬だけ蹴るのも可能。そして、空気の粒の動きを把握すれば音速を超えながら空気を揺らさず進むことも可能。
怪我人のフィンに一切の負担をかけず、それでいて音速で突き進む矛盾。
「黒竜は空の王とも呼ばれてるからな。お前等も覚えろよ」
ベルに教えようとしたが無理だった。タケミカヅチは普通にやってた。その応用で空気の粒を薄く並べて弾いて斬撃飛ばしてた。流石武神である。
あっという間に地上に戻る。と………
「団長!」
「ティオネ…………」
ティオネ、以下数名の【ロキ・ファミリア】団員達。
「…………てめぇ、団長に何しやがった」
ボロボロのフィンを見て睨みつけてくるティオネと団員達。何名かは睨むことも出来てないが、それでも逃げ出さないだけマシだろう。
「階層主と戦わせてきた」
「はぁ!?」
「気が抜ける前に試練与えておこうと思ってな」
「なんでてめぇがわざわざんなことすんだよ!」
他派閥のリリウスには関係のない話ではある。だというのに、リリウスはわざわざ【ロキ・ファミリア】のホームにまで侵入しフィンをさらい深層にまで。確かに、我ながら自分らしくもない。
「………子供」
「ああ?」
「俺は馬鹿なことしない子供には、無条件で甘いところがある…………から?」
リリウスはなんだかんだフィンを志を得た日から進めていない子供扱いしていた。進み始めたからといって、いきなり大人になるわけでもない。
「団長が子供だと!? わかってねぇなあ、幼い容姿の奥に感じるオトナの渋みが良いんだろうが!」
「? …………うん」
ていうかランクアップしそうな試練として階層主と戦わせるの、リリウスの中では甘い行動なのか。
「返す」
「…………!!」
バッと手を広げるティオネを無視して後ろの団員に渡すリリウス。ティオネに睨まれた団員はひぇ、と震える。
「こんなことしてただで済むと思ってんのか?」
「思ってる」
だって【ロキ・ファミリア】の総力よりリリウス一人のほうが強いし。なんならそもそも、半端な強さではリリウス相手に挑むことすら出来ない。
「何より決めるのはフィンだ」
「事を荒げるつもりはないよ。何度か体験した感覚だ……壁を越えたと、そう確信している」
「それって………」
「まあ、今日は休んで明日にしろ」
「……………優しいところもあるんだね」
「? お前俺が無茶ぶりばかりする鬼畜だとでも思ってんのか」
思ってた。フィンの脳裏で白髪赤目の少年もウンウンと頷く。
「あ、あの………リリウス、さん」
「ん?」
「………私も、強くしてください!」
そう告げたのはアイズ。リリウスは暫く彼女を見つめ、空を見つめる。
「…………俺も備えるからな。経験が欲しいなら、『彼奴等』に頼むことになるが」
「っ…………大丈夫、です」
「…………何があった?」
「………ベルと、お話ししました」
それで、迷いは晴れたわけではないが過去よりも前を向けるようになったらしい。彼女の中でベルの存在は思っていたより大きなようだ。
「明日、朝にここに来い。連れて行ってやる」
「っ! はい!!」
翌日、アイズは先日の夜に済ませていた支度を背負う。数日も潜るのだから食料にポーション、武器の簡単な手入れができる道具。
「……………あ、そうだ」
それから、お守り。大事に大事にしまっていた指輪。ベルがくれた、大切な指輪。あの時の約束を思い出し、そっと胸に抱く。
「…………よし。頑張ろう」
「………………きひ……きっひっひ。きひひひひひ。さて、さて、ではわたくしたちも、彼女達をお呼びしなければなりませんねえ」
「うん! がんばる、よ。わたし! そしてね、あのひとのくすりゆびもらうの!」
「…………? ダンジョンがまた何か苛立っているような」
「お前が神殺しを無理やり産ませたからじゃないのか?」
リリウスの言葉にエピメテウスは呆れたように呟いた。