ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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久しぶりの再会(デアラコラボII)

「いきますよ〜!」

 

 明るい声で迫るフィア。元々空中機動に優れたハーピィの強化種たるフィア。その速度は閃燕(イグアス)すら凌駕する。

 

 Lv.6のなかでも機動力に優れたアイズをして、油断出来ぬ速度。ちょっと前にベルと秘密の修行してる時襲いかかってきたアレンさんみたい。あの時のアレンは忠告だけで本気ではなかったが。

 

「【目覚めよ(テンペスト)】」

「おお!?」

 

 風を使い回避するアイズ。風の精霊の血を引くアイズはリリウスの言う大気の動きをつかむ、というのが何となく分かるのだが、移動には使えない。やはり普通に魔法で空中機動。

 

 移動と同時に身を守る鎧にもなる。2人は空に浮かんだまま、再びぶつかりあった。

 

 

 

 

「……………強い、ね」

「私なんてまだまだですよ。リリウスは、私を連れて行ってはくれませんからね。ヴリトラは兎も角、他の皆はずるいです! リリウスと一緒に!」

 

 この人、口を開くとリリウスのことばっかりだな、とアイズは思った。

 

「何を隠そう、最初にリリウスと仲良くなったのは私なのです」

「お〜」

 

 昔のリリウスはリヴェリア曰く【ロキ・ファミリア】に来たばかりのアイズよりも剣呑な気配を纏っていたらしい。そんなリリウスと仲良くなれるなんて凄い。

 

「………どうしたら、男の人と仲良くなれますか?」

「う〜ん? そうですねえ」

 

 アイズはふとベルを思い出し、そんなことを尋ねる。ベルとリリウスじゃだいぶ条件が違うがアイズはでも同じ白い髪だしとか思っちゃってる。

 

「やはり、触れ合うことが大切です!」

「触れ合う、事?」

「ええ。最初の頃のリリウスも、仲良くなる為に何度も抱きついた私を蹴り飛ばしたり殴り飛ばしたり噛み付いたり! でも繰り返すうちに、今では抱きしめさせてくれるし持ち上げても抱えても問題ないのです!」

「抱きしめても、持ち上げて………も!?」

 

 アイズは気絶している間に膝枕してあげても目を覚ますと逃げ出すベルを思い出す。そんなベルも、めげずに繰り返せば抱きしめ放題撫で放題!?

 

 アイズの中の小さな………………

 

「………………あれ?」

 

 普段ならアイズの中の小さなアイズがうさぎさんを抱き締めてモフモフするのに、何故か今はいない。

 

 不思議に思うアイズ。でもベルの事を思い出し胸元の…………胸元の…………胸元……………。

 

「あ、あれ? …………………!?」

 

 ない!

 慌てて服のなかに手を突っ込むアイズ。やはりない。

 

「? どうしました?」

「な、ない………」

「? それは確かに、私やレイの方がありますがアイズもありますよ。びにゅーと言う奴ですね!」

 

 そうじゃないし気にしている余裕もない。アイズは慌てて周りを見回す。それらしきものは、ない。戦闘中に落としたわけじゃないのかも。まさか、地上から深層までの何処か?

 ここまでの道のりを思い出しサッと顔を青くする。

 

「わ、私………探し物!」

「ア、アイズ!?」

 

 ビューンと物凄い速さで走り去るアイズ。

 

「夕飯までには帰ってきてくださいねー!」

 

 レイは片翼をパタパタと振った。

 

 

 

 

 

 ダンジョン???階層。

 『魔界』を抜けたリリウスとエピメテウスは緋色の鱗を持つ龍と戦っていた。

 

 全長20メドルの大型種。凄まじい膂力と堅牢な鱗、鉄をも溶かす炎。されど2人の英雄を殺すに至らず。

 

「モグモグ…………」

 

 魔界に向かう怪物の一団。怪物の宴(モンスター・パーティー)もかくやな竜種含めた怪物の群れはリリウスからすれば入れ食いである。

 

 それは穢れた精霊も同様で今も魔石を喰らい力を溜めている。一点突破ならともかく、戦闘ともなると中々に面倒なレベル。

 

 エピメテウスもいる今なら殺しきれないことはないだろうが………。環境そのものを変えているから厄介さで言えばクランプスなんぞより遥かに上だ。あれでさらなる力を求めてリリウスやアイズを食おうとしているのだから面倒だ。

 

「いい加減に殺すか?」

海竜(やつ)との戦いも近いのに確実な消耗は避けたい」

 

 大概食えばすぐに体力を回復するリリウスがそう判断する程度には『蒼の魔界』と推定海竜はヤバいのだ。

 

「そう言えばエピメテウスは戦ったことあるんだよな?」

「無様な敗走だがな」

 

 攻撃が一切通じない階層主以上の化け物に生きて帰るだけで十分凄いと思うが。

 

「どんな感じ?」

「強さもそうだが、環境も厄介だな……陸の王は歩く、吠えるだけで陣形が乱れる程に大地を揺らすが、奴は其の比ではない。なにせ世界を呑む巨躯と称される大きさが海で暴れるのだ。奴が顔を水面から出しただけで島が砕け、通り過ぎれば海流が変わり漁村が飢え滅んだ、なんて話が当時から囁かれていた」

 

 迫る敵に気付き海面に向かい移動する際の波だけで英雄達は海に沈む。暴れれば弾丸の如き水粒(すいりゅう)が飛び回る。

 

「………………そんなに大きかったか?」

 

 海竜の封印(リヴァイアサンシール)を思い出し首を傾げるリリウス。とぐろを巻いた形でなお10メドルは確かに超えていたが、世界を呑むかと言われると明らかに足りない。

 

 しかし学区(フリングホルニ)に使われている『海覇竜(リヴァイアサン)蒼鰭(そうき)』は直径7()0()0()()()()の学区に備え付けて違和感のないサイズ。『カドモスの皮膜』などを思えばあれでも鰭の一部の筈なのだ。

 

 そう考えるとあの骨、小さ過ぎる。案外リヴァイアサンの肚の中にいた仔か、或いは一部残った骨を態々彫刻したのかもしれない。

 

「そうなると………ん?」

 

 ピクッと肩を揺らしたリリウスはテケテケと曲がり角に向かい奔る。エピメテウスが首を傾げ、しかし彼もすぐに気付く。

 

 何者かの気配。モンスターではない。さりとて人ではなく、精霊に近く『魔界』の尖兵かとも思ったが禍々しさはない。後リリウスが微塵も警戒していない。

 

「狂三お姉ちゃん」

「あら、あら………私の気配を察して、出迎えですか? いい子、ですわね」

 

 現れたのは時崎狂三。異界の精霊。

 この世界の理の外から現れた故に理を超えた時間を操る力を持つ時の精霊だ。

 

 霊装とは別のゴスロリ服に眼帯。神々の言葉を借りるならシンイショーと言うやつだろう。

 

「はい、柿ですわ」

「あむ………もぐもぐもぐ」

 

 何故ダンジョンで柿、とリリウスの頭を撫でる狂三を見ながらエピメテウスは思った。

 

「…………時崎狂三、だったか。また会うとはな…………また貴様の世界と繋がったのか?」

「いいえ? 私は()()()()()()()()()()()()()()()

「なに………?」

 

 確かに帰還する姿を目撃したエピメテウスはその言葉に首を傾げる。

 

「それで、俺に会いに来てくれただけ、じゃないよな?」

「…………ええ、まあ。用事はもちろんありますわ………少々面倒なことになっていますの。また少し、お力を貸していただけます?」

「いいよ」

「あら、そんなあっさり………」

「またというが、前回助けられたのは俺だ。だから、今度は俺の番」

「まあ、まあ………では、世界の危機ではありませんが頼みますね」

「何をすれば?」

「はい。少々我儘な子を、懲らしめてもらえれば」

 

 と、狂三の影が広がる。リリウスとエピメテウスが沈んでいく。

 

「見つかると厄介なので、離れた場所に送りますがどうぞお気をつけて」

 

 

 

 

 

 

「ここは、森か?」

「森だな。ふむ、モンスターの匂いはするがダンジョンじゃない………」

 

 リリウスは不意に飛んできた何かを見ずに掴み取る。

 

「…………青い柿」

「きー、ききー!」

「……………柿の木に猿」

 

 飛んできた方を見たら柿の木に猿がいた。何やら此方を嘲るように叫んでいる。

 

「これは…………さるかに合戦?」

「なんだそれは?」

「狂三お姉ちゃんに聞いた向こうの世界の物語…………子育て中の母ガニがおむすびを見つけて、柿の種しか見つけられなかった猿がこれを育てれば柿が食べ放題だよ、と交換するところから始まる」

「擬人化、という奴か…………」

 

 神々のせいで姿を人間化させるのが主流の意味になっているが、性格、感情、動作を人間っぽくすることも擬人化だ。

 

「で、カニが柿の種を脅迫して一日ずつ芽、木、葉、実と成長させて………パク。それを見たモグモグ猿が木に登れないハグカニに代わりに取ってやると木にジャグジャグ登って、独り占めして下で騒ぐカニに硬い青い柿を投げつけモグリ」

 

 とんでくる青柿を受け止め食べていくリリウス。因みにこの青柿、何気に恩恵のない人間なら怪我する速度でとんでくる。

 

「成る程、青柿…………物語なら、悪は討たれるのか?」

「確か、元々嫌われ者の猿のその話を聞いて怒った栗、臼、蜂、牛糞が懲らしめに行った」

「蜂はともかく、栗? 臼? ……………牛糞?」

「因みに近年は牛糞はワカメに、蜂は小蟹に変わったりするらしい」

「つまり………元々()()()()合戦なのに猿とかには戦わないのか。オチは?」

「弾けたくりが猿のケツ焼いて冷やそうと水瓶に尻突っ込んだら潜んでた蜂に刺されて慌てて飛び出したところを牛糞が転ばせて臼が潰して殺した」

 

 それ臼も牛糞塗れだろう絶対。

 

「でも蟹いないな」

「きー、きき! きぃー!」

「……………あ?」

 

 猿が何か叫ぶとリリウスは受け止めた青柿を猿に向かい投げつける。爆音とともに猿と青柿は世界に散らばった。

 

「なんて?」

「頭砕いてやるって…………しかし、ここはさるかに合戦の世界なのか?」

 

 と、茂みがガサガサ揺れて狼が現れた。

 

「こんな藁の家など、一息で吹き飛ばしてやるううう!!」

 

 藁の家何処?

 

「ふうううう!!」

 

 しかし実際藁の家程度なら吹き飛ばせそうな息を吐く狼。リリウスは狂三お姉ちゃんの聞かせてくれた物語を思い出す。確か、この狼は………

 

「鍋にすると、美味い!」

「は?」

 

 何言ってるんだ、と問うまもなく狼へ襲いかかるリリウス。近くの池に狼を落とし焼いた石を投げ入れて狼を茹でていく。

 

「貴方が落としたのはこの優しい狼と銀の原石ですか? それともこのかっこいい狼と金の原石ですか?」

 

 と、ピクピクしていた狼が勢い良く沈んだと思ったら泉が光り女が現れた。

 

「鍋にすると一日で平らげるほどおいしい狼と焼けた石」

「あなたは正直者です。お礼にすべてをあげましょう」

 

 リリウスは3匹になった狼を食べた。

 

 

 

 

 

「ごくん。ぷは………しかしどういう世界だ、ここは? 以前迷い込んだ精霊の作った世界に似てるが」

「気になるのは、さるかに合戦と先程の三匹の子豚だったか? どちらも其の主人公が現れず悪役だけが現れたことだな」

「確かに………」

「見つけたぞ、フィアナァ!」

「ん?」

 

 騎士姿の男が現れた。リリウスを見ながらフィアナと叫んでいる。これは、フィアナ騎士団に出てくる悪役ということだろうか? エピメテウスがそう思った瞬間リリウスが男に飛びかかり首を掴み声帯を抜き取り脚をへし折り地面に倒れゆく男の頭を踏みつけ潰した。

 

「なんだこいつ…………よくわからんが心底ムカつく」

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