ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「〈
「ああ。【
「…………まあ、こっちも微精霊が集まって一つの世界を創っちゃうし、大精霊と同等の異世界の精霊さんの力でも、出来るのかなあ………」
士道達も前に閉じ込められたことがあるらしい。
相撲に負けてアーディを背に乗せる熊は『きんたろう』、寝間着を着ていた狼は『赤ずきん』に出てくるらしい。
「だが、私は前のように『ももたろう』になったりしてないぞ?」
前回士道達はそれぞれ
「赤ずきん? ももたろう?」
「私達の世界で有名な童話。熊と相撲取ったり、おばあさんに化けた狼に襲われたり、犬とか連れて鬼退治にいったり………」
「犬とか…………」
アーディの脳裏に2匹の猟犬と大鷲を連れたリリウスが思い浮かぶ。薪にくべているのはオーガの肉。もう鬼退治終わってた。
「そういうお話だったら、私たちの世界にも……極東に似たような物語がありそうですね」
「鬼退治と言えば極東だもんね」
問題は誰がどのような目的でこの空間を作り出したのか、だ。前に士道達を【
「………もしかして、ココを作った『犯人』っていうのが、私達をこの世界に呼び寄せた…………とかだったりする?」
「ありえるな。というか、そう言われた方がしっくり来ちまう………」
少なくとも士道達がこの世界に偶然迷い込んだ、なんてことはないだろう。黒幕にしろ、協力者にしろ、利用されているにしろ、関わっているのは確かな筈だ。
「グオオオオオオ!!」
「!? こ、今度は何だ!?」
「み、見てください! 今度はドラゴンです!」
「ドラゴン!? こんどは何の物語だ!?」
「ドラゴンってだけじゃ、わかんないってば!」
ドラゴンなんてそれこそ世界各地の物語に登場するのだ、なんのドラゴンかなどわかる訳がない。
「……………!」
「ベル? どうした!?」
ただ、ベルは血の気が引いた顔でドラゴンを見ていた。アーディもこれまで以上に警戒している。
「…………そんな………あれは……」
「何か知っているのか!?」
「挿絵でしか見たことないけど、間違いなく! 竜殺しの英雄『ジェルジオ』が討った………『毒を吐く悪竜』!」
「『ジェルジオ聖伝説』………シレイナの湖畔に住み着いた悪竜………私達の世界の物語まで蒐集されてるんだ!」
「ゴアアアアアア!!」
ゴバァ! と吐き出される黒紫の炎。
口元から漂う黒い霧は、触れた木々を枯らしていく。
「オオオオオオオオオ!!」
「うわわ!?」
爪を振るう。尾が撓る。
一つ一つが尋常じゃなく脅威。
「待って待って! こいつ、めっちゃ強い!!」
「〈
第一級冒険者の魔法にも匹敵する異界の精霊の氷結を受けても、直ぐに氷を砕き襲いかかってくる悪竜。
「はあああ!」
「てやああ!」
十香とアーディの斬撃にも、その堅牢な鱗には傷一つ付かない。
「シドー! このトカゲ、硬いぞ! どんな攻撃も跳ね返してしまう!」
「だから、国の人達は生贄を与えて大人しくさせてたわけだしね…………おとと!!」
というか、硬いだけじゃない、とアーディは剣の感触を確かめる。当たっているのに当たっていないと言うか…………存在そのものが攻撃の威力を下げている?
「よし、じゃあ物語にならって口を狙う! 気を付けてね、毒の炎を吐く瞬間にしか向けてこないから!」
噛みつき攻撃すらしてこなかった。
基本的な攻撃は爪か尾。距離が出来れば毒のブレス。
「グアアアアアン!!」
天に向かい吠え、大気が揺れる。
「この、〈
瞬間、悪竜の足元が泥沼に変わり沈み込む。
「〈
『いっくよ〜ん!!』
巨大な兎の怪物となったよしのんが吐き出す吹雪により泥が凍りつく。通常の氷よりも硬い凍った泥に拘束された悪竜はガバッと大口をよしのん達に向ける。
「ブ、ブレスが来ます!」
「待っていたぞ!」
「いくよ!!」
十香とアーディの斬撃が喉奥に毒を揺らめかせていた悪竜の口内へ迫り、先程までの頑強さが嘘のように後頭部の鱗まで破壊する。
溜まっていたブレスが爆発し、悪竜の身体はダンジョンのモンスターよろしく灰となって崩れた。
「やったー!」
「十香さん、アーディさん、凄い!」
「えっと、最後っ屁みたいなブレスが爆発したけど、大丈夫なの?」
「大丈夫だぞ! 霊装がボロボロになっただけだ!」
「私もヘーキ! 英雄譚でも、聖騎士の鎧をボロボロにしたって知ってたからね!」
「さ、先に言ってくださいよぉ…………うう、見ないでください〜!」
カサンドラも巻き込まれて服がボロボロだ。逆に毒の症状は、見たところなさそう。
「口の中がやけに脆かったり…………なんだろうね、物語の性質が如実に出てる。わっとと、そんな事よりごめんねカサンドラさん! 言う暇なくて! ええと、私の服……」
これ脱いだら下着になるな。まあ神々の言うすぽーつぶら的なやつだしいっか、と服を脱ごうとするアーディ。
「!? ちょ、アーディ!?」
「し、士道さん、見ちゃ駄目、です!」
「わ、私! 私が着替えさせるから!」
と、七罪が叫ぶ。因みに十香は霊装をチョチョイのチョイで士道達が通う学校の制服に変えていた。
「…………いや、考えてみたら私がやるとか失礼だったかも」
「いいんじゃないか。カサンドラと声、似てるし」
「七罪さん、カサンドラさんと魂の波動が似てるって言ってましたしね………」
「そんなこと…………言ったけども!」
「七罪さ〜ん!」
「…………あー、もう! 分かったわよ。でもこんな事やったことないし………どうなっても知らないからね。えーい!」
ポン、とカサンドラが光に包まれ、全身にピッチリ張り付く六芒星のタイツに2つのスリットが入ったミニスカート、水着のようなトップ。そして魔女帽子を被りマントを羽織った姿へと変わった。何故か箒を持ってる。
「…………えっ」
ベルが顔を赤くして息を呑む。
「おー、見事なボン・キュ・ボンだねえ」
「ひゃあああああああ!?」
カサンドラは第2級の身体能力を遺憾無く発揮し茂みに飛び込む。
「ど、どうして、こんな服に〜!?」
「ええっと…………カサンドラって着痩せするような気がしたから、イメージがこっちの方に………」
「なんでそんな事知ってるんですかぁ!」
「魂の波動なら仕方ない」
「うむっ!」
「そこのお嬢さん。林檎はいかが? 赤ぁい林檎だよ」
「見るからに怪しい魔女が出たな」
ここまで怪しいなんてある? ってレベルの怪しさだ。しかし、なんともうまそうな林檎だ。思わず食べたくなる………片方の赤が鮮やかだ。
「モグモグ。向こうの、モグ、白雪姫はなんだって殺されそうになったモグモグ後にこんな怪しい奴からのモグ林檎を食うのかね」
「鏡を見ろ」
「俺は良いんだ。毒が効かない」
リリウスはおかわり、と魔女の格好をした老婆から林檎を受け取る。
「確か、姫の美しさに嫉妬して狩人に殺させようとしたお妃様って奴だな。猪の肺臓と肝臓で騙されて食った悪役だ」
「人の内臓だと思っていたんだよな?」
「?」
「ああ、いや。お前に聞いても無意味か。狩人は良識があったらしいな」
「いや、かわいいから殺せなくて森の獣に食い殺させるつもりだったらしいぞ。まあ小人の家に来て…………勝手に人んちの飯を食い漁りやがったが」
小人のリリウス的にはそのシーンはアウトだったらしい。まあその後ただ助けて貰うだけじゃなくちゃんと働いて家にいるだけ、マシな性格だが。
「しかし、白雪姫とやらはこの林檎を食ったのか。では………」
「死んだけどなんか腐らなくて、死体好きの王子が召使いに棺ごと運ばせたら召使いがムカついて死体蹴った」
「……………まあ、重い棺を運ばされたら苛立つか」
「そしたら生き返った」
「何故」
「リンゴの芯が喉の奥に引っかかってたんだ。いやしい女だ」
芯まで食べた白雪姫も、林檎の入ってた籠ごと食べるリリウスには言われたくないだろうな、とエピメテウスは思った。
「というか芯以外は吐き出さなかったんだよな?」
「事前に絞殺されたり毒殺されても原因どければ生き返るし、たぶん不死身なんだろ」
因みに白雪姫を3度も殺そうとするお妃、近年では継母だが狂三お姉ちゃん曰く元々実母の設定だったらしい。
「実の娘が生まれて国で2番目になったのが気に入らないんだと。器の小せえ王族だ」
「小娘がああああああ!!」
2番目という言葉が我慢できなかったのか襲いかかってくる魔女。リリウスはペロリと平らげた。
「この辺、魔女多かったな」
お菓子の家の魔女、触れたものを石にする枝を持った魔女、足をやるから声を寄越せと言った魔女など。
お菓子の家ごと食われ、石像となった魔女はゴリゴリ食われ、足あるからいらないとまたねした。
「どいつもこいつも一目でわかる怪しさだがな」
「物語を集める特性上、子供達にわかりやすい形になっているのだろう」
「しかし何故こうも……」
「迷宮の性質を考えれば、『怪物』が打ち倒されれば正解のルートにたどり着きかねん。怪物以外の悪役で邪魔をしているのだろう」
ドゥルガーの言葉に2人は成る程、と納得した。