ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「──2つの世界の物語が、集められてる?」
「ああ、ダンジョンの階層もそうだけど、こっちの童話や、そっちの英雄譚の怪物が出てきただろ?」
この【
ベル達の世界は有名な物だと『古代』が起源の冒険譚や英雄譚が多いので、恐らくは先程の悪竜のような凶悪な魔物が現れやすい。
「俺達が閉じ込められた【
正真正銘の怪物が住まう世界において英雄とされる者達は、当然それに相応しい功績を成し、それはつまりそれだけの怪物と戦ってきたという事。
「だが、ここに来た原因を調べるには進むしかないぞ」
「ああ、そうだな。泣き言を言ってても始まらない」
ひとまず何かありそうな城に向かうことにする一同。
「う〜ん。それにしてもさっきの悪竜はともかく、やっぱり途中であったモンスター、戸惑ってたよね。あっちもダンジョンから呼ばれたのかな?」
「無作為と言われればそれまでですけど…………何か理由があるんでしょうか?」
と、不意にベルの体が揺れる。
「………なんだか、怠いような。身体が鉛に覆われているみたいっていうか…………疲れてるのかな?」
「さてさて、これからどうしたものでしょうか。思ったより早く見つかってしまいましたし………生憎わたくしが英雄導く
まあいざとなったら力づくで突破するだろう。彼等2人を殺すためだけにダンジョンが全力を出して、その上で人類再建の為の足掛かりを残してから死ぬ様な規格外の二人だし。
「一先ず、賽の目に身を任せるのも一興………かもしれませんわね? きひっ、きひひひ………」
一方その頃、別の場所。
「すごー! 霊装だよ、霊装! 悪の親玉に力を奪われてたけど、二亜ちゃん復活ぅー! イエー!」
神々のようなハイテンションで騒ぐのは、何処か修道女を思わせる、しかし若干透けてる服に身を包む女性。迷惑そうに顔を歪めるのは腰より長い金の髪を伸ばし背は低いのに胸が大きなどこぞの紐の女神を思わせる少女。
「二亜、うるさいのじゃ…………しかし、むくも主様の封印前と同等の力が漲っておる………」
彼女達も異世界の精霊。二亜と呼ばれた方は違うが、むくと名乗っていた少女は士道に力を封印された、士道とキスした精霊だ。
「この、わけのわからぬ場所に放り出されたのが原因か? 見慣れぬ景色じゃ。少なくとも天宮市ではない。ここは一体………」
「たぶん………【
厳密には〈天使〉ではなく反転した〈魔王〉の作り出す世界。本来は二亜の持つ力故に、彼女はそこにいるだけで世界の正体に気づいた。
「ふむん? ならばコレは、うぬの力を奪ったというアイザック・ウェストコットの仕業か?」
「いやぁ………勘に過ぎないけど、何か違うような気がするなぁ。あのラスボスが、二番煎じみたいな真似するかねぇって」
あれは人でない『ナニカ』が人の皮を被り人のフリをしようとして、失敗して悪意を振りまく、そういう存在だ。一度やって失敗したら、たとえ性能を上げてより強固な策にしても
人を苦しめるのも世界を壊すのも、あれは愉しむためにやっているのだ。
「それに、あたしの知ってる【
と、その時、ビキビキと音を立て壁に亀裂が走る。崩れた壁の中から此方を睥睨するのは人外の瞳。
「げげっ!? なにあれっ!?」
「怪異の類いか?」
「いやいやいや! ムックちん、なんでそんなに落ち着いてんの!? あたしあんま強くないから、早くなんとかしてー!」
瞬間、無数の光が壁から生まれたモンスターの群れを一掃した。
「……………ほへ?」
「二亜、六喰、無事?」
「おりりん!」
そこにいたのは鳶一折紙。彼女もこの世界に来ていたらしい。
あの場にいた者達となると、士道達も来ているのだとは思うが二亜達も折紙も、残念ながら合流していないようだ。
3人は士道達を探すべく移動を始めた。
【
「………この霊力が溢れる感じ、覚えがある。それこそ、ここに来る前に士道達と話していた『異世界』………あの時と同じ」
実は士道達は再びこのベルと会う前に、ちょうどベル達について話していたのだ。士道がジャガ丸くんを作ってみたくなって作ったのだ。
家庭で食べれるジャガ丸くん、アイズちゃんが他所の子になりたそうな顔をするかもしれない。
「えっ? それじゃあ、ここってもしかして………」
「御明察、と言ったところですわね」
「「「!!」」」
不意に聞こえた声に三人が振り返る。特に折紙が強い警戒心を見せる。
突如吹き荒れた吹雪の奥から、一人の少女が姿を現す。
「時崎………狂三!」
「久方ぶり………と、わたくしが言うのは違うかもしれませんが、お久しぶりですわね、折紙さん」
「〈ナイトメア〉………主様達が言っていた、悪名高い『最悪の精霊』か」
「あらあら、ご挨拶ですわね。まあ、そのような中傷も慣れてしまいましたけど」
名を聞き警戒しながら睨む六喰に、狂三はクスクスと微笑む。
(時崎狂三………うーん………? あたしが前に会ったくるちんとは、何か違うような……?)
ただ一人、人の内面を見過ぎて人間不信にまでなっていた二亜だけは違和感を感じる。
「貴方も巻き込まれて、この世界に来たの?」
「いいえ、折紙さん。わたくしは貴方方と共に、呼び出されてなどいませんわ。何しろ──士道さん達が帰った後も
説明は終わったとばかりに、響く銃声。明確な敵対行為。
「…………どういうつもり?」
「きひっ、きひひひ………もともと馴れ合う関係ではなかったでしょう? 何より………〝
ビキビキと壁に亀裂が走り、新たに現れる異形。
「ちょちょ!? また怪物!?」
「正確には『物語の中の魔物』………御三方、ここで
「っ! 今回も、『彼』はいるの?」
「…………………さあ? 雇い主の目的と、あの子は相容れない可能性が高いですわね」
つまり、再び彼と敵対する可能性は低い。
脳裏に過るは精霊の力の集合体をただただ純粋に、絡め手でもなく力で空間ごと消し飛ばした規格外。
「それを聞いて、安心した」
「まあ……あまり、なめないでほしいですわね」
「「「オオオオ!!」」」
怪物が襲いかかる。その動きは深層のモンスターにも匹敵しうる、推定Lv.4以上の怪物の群。
しかし大精霊にも迫る力を持つ折紙の敵ではない。
モンスターの群れは直ぐ様光の雨に一掃され、同じく異界の精霊たる狂三の凶弾が折紙へ迫る。
光と銃弾をばら撒きながら飛び回る白と黒の精霊。置いてけぼりの二亜と六喰。
「ああ、ダメー! 世界が変になってるせいか、〈
『全知』の天使の力を使おうとするも、上手く世界の情報を蒐集しない現状に二亜が叫ぶ。
「まったく。二亜は力が戻っても役に立たぬの」
「ムックちん! ひどい!」
「むくが守ってやる。下がっておれ」
「ムックちん、イケメン………!」
「【
六喰が鍵のようなものを構えると、空間が歪む。
「!?」
「空を切った折紙の閃光とうぬの銃弾、まとめて利用させてもらおう。爆ぜるがよい」
互いに回避し、何もない空間を過ぎ去るだけのはずの閃光と銃弾が消え、かと思えば狂三に迫る。
閃光と銃弾が狂三を中心にぶつかり合い轟音を響かせ爆ぜる。
「やったぜ! 流石ムックちーん! 〈
封印を司る天使。折紙達の攻撃を封印し飲み込み、狂三に向かい解放した。二亜の言う通りかなり無法な力だ。
「………む? 待つのじゃ。手応えがない?」
「! 〈ナイトメア〉は分身を生む! まだ終わってない!」
と、周囲を警戒しようとした折紙だが不意に力が抜けその場で膝を突く。
「気づかれぬ程度に時を喰み、仕掛けに仕掛けを重ねて漸く五分。やっと〈天使〉を使えるようになったと言っても、『
ヌルリと折紙と背後に現れる時崎狂三。
「
「影から…!? がっ!」
「折紙!」
「オリリン!」
「それではいただかせてもらいますわ」
狂三が手にしている何かを折紙に押し付ける。それは折紙から霊力………否、
「これで1人…………残るは貴方がた──」
狂三の瞳が二亜達に向けられた、その瞬間。
「【
「!?」
一陣の風が吹いた。
「…………あらあら。これはこれは。貴方にも、『お久しぶり』と言ったほうがよろしいのでしょうか? ねぇ、アイズさん」
金の髪を靡かせた【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタイン。再び、異界の精霊と接敵した。
「!?」
無数の光と銃弾がリリウスの影から飛び出してきた。
「……………何故?」
「…………狂三お姉ちゃんの影を再現した『時喰みの指輪』が、どうにも狂三お姉ちゃんの影と繋がってるらしいな。攻撃を取り込んだか、影に潜って躱した際の一部がこっちに来た」
「……………ドゥルガー、この影を通して出ることは可能か?」
エピメテウスの言葉にドゥルガーはふむ、とリリウスの影に触れる。
「あの小娘と
「……………迷った挙句ここから出たのか」
「迷宮に入る分には迷わん。まあ、それはそれとしてここに出たのは偶然だが」
「そうか。狂三お姉ちゃんが嫌がらせしたわけじゃないのか………」
ならいいや、とリリウス。そのまま進んでいると、人面のデカいライオンが鎮座していた。
「私の名前はスフィンクス。貴方達に謎掛けをします」
「……………おいドゥルガー。何だコイツ? 怪物? 殺せば正解のルートが出るか?」
「ふうむ。『迷宮』の属性が混濁しておるな。これは元々この迷宮には存在しなかった要素………難易度を上げるために追加された『迷宮攻略に必要な謎解き』の概念だ」
異世界では迷宮に謎解きがつきものという認識があるのだろうか、とエピメテウスが思う。
「そういや学区で潜った遺跡にも謎解きの石板あったな。壊したけど」
「今回はやめておけ主様。迷宮の概念たるここにどのような影響が出るか解らぬ」
素直に謎を解くしかないようだ。
「『朝は4本足、昼は2本足、夜は3本足』、なーんだ」
3人は顔を見合わせる。スフィンクスは勝ち誇った顔。
「…………人間だろう」
「ぬっ、正解!」
「神々が人類に出した最初の難題と言われているあれだな」
「パクリかよ」
「まあ待て主様、異世界にも似たような謎を考えた者もいるのではないか?」
「だとしても絶対有名な謎掛けだろうに、馬鹿なのか? ああ、所詮は本の台詞をなぞるだけってことか」
ビキビキとスフィンクスの額に血管が浮かんでいく。
「156789008×56795543÷43は!?」
「は?」
「誰が一問だと言った! 二問目じゃ二問目〜!」
「だとしても、もはや謎掛けじゃないだろ!」
「やっかましい! 答えがわからないならそれは謎だぁ! さぁ〜答えてみろ! 貴様等のような低能に出来るものならなあ!」
焼き尽くしてぇ、とエピメテウスは思った。異世界には謎を解かれるとムキになって難易度を上げる門番でもいるのだろうか。
「おいリリウス、一先ず紙でも──」
「207091089437008」
「………………え?」
「? だから、二百七兆九百十億八千九百四十三万七千八」
「……………………」
「…………?」
あってるだろ、と言う視線をスフィンクスに送るリリウス。
「まさか答えの分からない問題を出したのかてめぇ」
「そ、そんなわけがないだろう! 出す問題の答えは全て知ってるわい! せ、正解! すぐに答えられて驚いただけだ!」
「じゃあさっさと通せ」
「ふん。馬鹿め、お前はやはり馬鹿! ば〜かば〜か? お前の母ちゃん」
「あ? 殺されてえのかてめぇ」
「………………すいません」
スフィンクスは額を床に擦り付けた。
「貴方達は3人いるので3問目です。境界を持たないコンパクトな2次元曲面が、どのようなループであっても連続的に引き絞れば回収できるようであれば、その曲面は2次元球面に同相である。同様のことが3次元についても成り立つと証明せよ!」
「なに?」
「また内容が………」
「これは…………
「なんだそれは?」
「昔、フェルズが生涯をかけても解けなかった難問を集めた問題集。今は幾つかといたらしいが、これはまだ答えが出てなかった」
因みにリリウスは正解したら飯をくれるというから考えてみたが途中で腹減ったので帰った。骨のくせに何処か悲しそうな顔をしていた気がする。
「ふむ……………」
ドゥルガーはスフィンクスの耳元に口を寄せる。
「…………あ、そういやドゥルガー、
スフィンクスは崖から飛び降り自殺した。異世界では謎を解かれた怪物は身投げするようだ。
「あ? 殺されてえのかてめぇ」
この台詞を覚えておきましょう。後にあるキャラが言うよ。
スフィンクス
リリウスにこの台詞を言わせる為に出て来た