ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「あなたのこと、知ってる………確か、狂三さん。リリウスさんの、お姉さん」
「…………………まさか貴方までいらっしゃるだなんて。流石に分が悪いですわね………それに今、こうして対峙していると………ええ、ええ、全くもって妙な気分になりますわ」
「…………? 何を言ってるの?」
愉快そうに笑う狂三の言葉にアイズは困惑する。前回、黒幕の思惑だったとはいえ一度は敵対した仲だ。
「きひひ………折紙さんの力を奪えただけでも上出来。欲張り過ぎるのは愚策ですわね。メインディッシュが、まだ先にございますので……」
ズズ、と狂三の姿が影に沈んでいく。逃げた、のだろうか?
「見逃されたようにも思える。何と不気味な精霊じゃ………それはともかく、うぬは何者じゃ?」
「ムックちん待って! 私に名誉挽回のチャンスを頂戴! いくら異世界でも、目の前にいる人物ぐらいなら……!」
と、二亜は何処からともなく本を取り出す。彼女の〈天使〉である〈
「うおおおお、唸れ〈
「すこぶるやかましいのじゃが、そこまで叫ばなくてはならんのか?」
「雰囲気よ、雰囲気!」
なんか活躍してるっぽい雰囲気出しとかないといたたまれない役立たず二亜さんであった。
「おおっ、キタキター! この子の名前はアイズ・ヴァレンシュタイン! 二つ名は【剣姫】! ふひゃあ! コイツはカッケー! 絶対強キャラですやん!」
なんだか、神様みたいな人だな、とページを捲っていくテンションの高い二亜を見て思うアイズ。
「趣味は鍛錬、武器、膝枕! 好物はジャガ丸くん! スリーサイズは──おばぉ!?」
他にも精霊とか『ダンジョンの子』とかセルディアとか、なんか色々あったのだがそこに至る前にセクハラをかまそうとした為アイズの手刀が胸に当たりふっ飛ばされる二亜。
「あ………ごめんなさい。ロキと同じ気配がして、体が勝手に………」
「今のは二亜が悪いのじゃ」
「ごほぉ、ゲホォ! ごめんごめん、冗談が過ぎた………ムックちん、この子、少年達が言ってた異世界の住人だよ………」
「むん? そうなのか?」
士道達が体験したという異世界転移。その転移先オラリオの冒険者。
「えっと、前に、色々あって………折紙、さんとは………一度会ってます」
「って、そうだった! オリリン、大丈夫!?」
異世界交流という作家なら大抵が記憶したい事柄にテンションが上がっていた二亜はその言葉に倒れている折紙に駆け寄る。
「ん、んん………いたたた………はい、大丈夫です………」
折紙の姿は、白から黒の花嫁衣装にかわり胸元など僅かな布でしか隠していない。頭上のリングは禍々しい黒にかわり、しかし折紙本人は何処か普段の人形めいた気配が消え儚げな雰囲気を醸し出す。
「…………? オリリン、キャラ違くない? ていうか、その格好」
「えっ? あ、あれ、わたし………どうして! それに、この霊装」
それは〈魔王〉と呼ばれる精霊が深い絶望を味わい反転した姿。
「………そっか。狂三さんに力を奪われたせいで、
「なるほどのぅ。むくが記憶を奪った時と一緒か。強い
その折紙は、士道が彼女の親が殺されるという過去を改変した結果生まれた清楚()な折紙なのだ。士道の使ったスプーンなめたりするが士道が関わらなければとっても清楚(笑)な正統派(爆笑)ヒロインである。
え、ヒロインなら士道に関わらないことは無理だって? だから()(笑)(爆笑)がつくんですかねえ。
「そこはかとなく世界そのものから笑われているような……………?」
「…………………折紙、さん?」
アイズはそんな折紙を見て、んん〜? と首を傾げる。
「はい………またお会いしましたね、アイズさん。とは言っても、会ったのは
「おかしくない………」
「……………………え?」
「おかしくないのが、おかしい………? 折紙さんは、確か………ペロペロとか、クンカクンカとかよく言ってた、おかしい人………」
実は事件の後、反転後の記憶が断片的に戻ったアイズ。折紙がベルの前で士道とまちゅぴちゅ? したいとか言ってた記憶が………。
「やめてぇ!? 残酷な事実で胸を抉らないで! あれは私じゃなくて、もう一人の私がぁぁ!」
「………それじゃあ、やっぱり、偽物?」
「違うのぉぉぉぉぉぉぉ!」
「ふむん。なんじゃ、ややこしいのお………」
「とりあえず、てきとーに双子とかって説明しとく? 話、進まないし」
「このダンジョンは、私達の世界じゃない。ペロペロって言わないけど、折紙さんは本物………ん、わかりました」
「なんだか引っかかる理解の仕方をされて、複雑ですけど…………でも、また異世界に呼び出されちゃうなんて……」
「アイズたんも私達同様呼ばれた側なんじゃろね」
「アイズたん…………やっぱりロキみたい……」
「二亜のような輩は一人で十分なのじゃが………しかし二亜? その口振り、何か解ったようじゃな?」
「まあね。まず、ここの【
在り方は
呼ばれた、というのは『何者かの意思』が関わっているのだろうと予想。何者かまでは情報が足りない。
「メタ的というか、漫画の展開に置き換えて考えちゃうと…………ま、きっと碌なことじゃないよね」
「現役の漫画家さんが言うと、説得力が違いますね………」
「ふむん。〈ナイトメア〉が元凶と考えるのが楽なのじゃが………」
しかし狂三は『雇われている』と言っていた。つまり、少なくとも彼女も誰かの意思に従い動いている。
「伏線を張りまくりだよ。意地悪なミスリードはしないだろうし、『黒幕』が別にいるって考えたほうがいい。この流れから言って、少年達が呼ばれてないっていう線はないでしょ」
後は士道の友達のベルも…………アイズが光に包まれる前に一緒にいたらしい。後、折紙のいう『彼』と狂三の雇い主の目的は相容れないという発言………裏を返せば黒幕と『彼』は敵対している?
「ちなみにその彼って?」
「えっと、リリウスさんです。この世界最強の冒険者で………」
「ああ〜、いろんな天使使える『僕の考えたサイキョーの精霊』消し飛ばしたっていう…………ん? リリウス? ソレってくるみんの弟さん?」
異世界なのに?
「えっと、狂三お姉ちゃんと呼んで、懐いてました………」
「グルアアアア!!」
怒り狂ったかのような醜悪な顔をした巨大な黒い巨人が吹雪をまとい鉤爪を振るう。エピメテウスが吹雪を焼き尽くし、リリウスがその腕を切り裂く。
痛苦の
「じゃあな、
その言葉とともにクランプスの頭部が裂かれ、その巨体が灰となって崩れる。
「…………ふむ、怪物を倒した事で『迷宮』の概念が弱まったの」
「つまり、それを承知で投入した以上、向こうの目的が果たされそうかもしれねえってことだ。急ぐぞ」
リリウス達は駆け足で迷宮を駆け…………行き止まりに当たる。
「……………もうエピメテウスだけ先にいけばいいんじゃない。俺、運ないらしいから」
「拗ねるな」
その頃ベル達。城の中を歩いていたと思えば森に、かと思えば宮殿の庭に出る。未知に挑む冒険者の常識すら通じない滅茶苦茶な世界。本当に脱出出来るのだろうか?
「そう言えば、士道達も前にこの世界に来たって言ってたけど、その時はどうやって出たの?」
「あー………説明しづらいんだけど、その時は『もう一人の俺』に助けてもらったんだ」
「もう一人の士道?」
「物語を飛び出せるようなキャラクターの力を借りるってこと。あの時は私達の妄想をごった煮した同人誌の士道が出てきたの」
「どーじんし?」
聞き覚えのない単語に首を傾げるカサンドラ。
「説明を省くと、とってもレアな本ってこと! 皆のバイブル、それこそ英雄譚的な!?」
「え! 士道の世界には、士道の英雄譚があるの!? すごいなぁ!」
「英雄譚! すごいすごい! そっか、精霊の皆を助けてるんだもんね!」
「ベルやめろ! アーディさんもやめて! そんな無垢な目で見るなぁ! その眼差しは俺に効く………!」
士道は憧れの目を向けられ何故か傷付いている。
「ええっと、つまり………英雄みたいにすごい登場人物が見つかれば、ここから出られるかも知れないって事ですか………」
「………………リリウスじゃない?」(アーディ)
「
「リリウスさんですかね」(カサンドラ)
「うむ! たしかにリリウスならば出来るかもだな!」(十香)
「あ〜、確かに」(士道)
「できそう、ですね」(四糸乃)
「全部壊しちゃいそう」(よしのん)
「何者なのよ其奴」
満場一致で『私達の考えたサイキョーでサイコーにカッコイイ士道』と同じ事が出来る前提のリリウスにリリウスを知らない七罪は引いた。
「まあ、リリウスじゃないとしてもこの【
ヘスティア曰くベルは英雄譚オタクなのだと聞いている十香は期待の眼差しを向ける。
「待って待って! 強い英雄は沢山いるけど、それこそ物語を飛び出す英雄なんて、聞いたことがないよ!」
「う〜ん。黒竜を追い払ったアルバート? それとも大英雄エピメテウス? あ、始まりの英雄──」
「ココに、英雄はいないよ」
と、不意に新たな人影が現れ、ベルはその人影に笑みを浮かべる。
「アイズさん! 良かった、無事だったんですね!」
アイズがニコニコと無邪気な笑顔を浮かべていた。