ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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喜劇再演(デアラコラボⅡ)

因みにマクールが海を割ったのは斬光的な技です。常に強化状態だからね。

自分で編み出した。

 


 

「アルゴノゥト…………アルゴノゥト!? え、嘘、ほ、本物? では、ないんだっけ? でも、うわぁ、うわぁ、やっぱりベル君、アルゴノゥトにそっくりだったんだぁ!」

「……………………」

 

 頬を上気させ興奮するアーディをジッと見つめるマクール。

 

「雷霆の(つるぎ)よ!」

 

 アルゴノゥトが黄金の剣を掲げる。黄金の雷が走り、倦怠感が消えていく。

 

「こ、これは………?」

「おお………! 体の怠さが消えたぞ!」

「〈時喰みの城〉の呪縛を、弾いた!? どういう事ですの!?」

「も、もしかして………『大精霊の加護』?」

「アルゴノゥトが契約してた、雷の精霊だね!」

 

 アーディがキャー、とテンションが上がる。マクールはジッとアルゴノゥトを見る。

 

「感じるぞ、忍び寄る破壊の足音が! 聞こえるぞ、恐ろしい魔物の咆哮が!」

「『アルゴノゥト』冒頭の台詞だー!」

 

 ただし風車の軋む音であった本の内容と違い、ここには本当に魔物の群れが存在しているが。

 

「ならば私が呼び出されるのも道理! 精霊達よ、歌ってくれ! アルゴノゥトは此処にいると!」

「そ、その声…………それにその顔………ベル、なのか?」

 

 士道がアルゴノゥトを名乗る青年に尋ねると、アルゴノゥトはニコリと振り返り見目麗しい少女達に気付く。

 

「って、おやおやぁ!? よく見れば可憐な美少女ばかり! いぃやったぁ! この奇跡の出会いに感謝ぁー! ヘーイ! 女神も羨む乙女達、一緒にイチャイチャしなーい!? 英雄色を好めと、神が私に言っているゥー!」

「ベルじゃない! 顔は似ていても、絶対にベルじゃないッ!! やめろー! その顔でナンパな台詞はやめろぉー!! ピュアでほっとけない俺の友達を汚すなぁー!」

 

 純朴な笑みを浮かべた親友と同じ顔をしながら、余りにも正反対な行動をするアルゴノゥトに士道は叫んだ。

 

「主様! 落ち着くのじゃ! 精神を崩壊させてはならん!」

 

 かなり精神的ダメージを負っている士道を六喰がなんとか落ち着かせる。

 

「どういうことですか? なんで英雄がここに!?物語から現れるのは、魔物だけの筈!」

 

 或いは端役。マクールのようなイレギュラーなら兎も角、アルゴノゥトは始まりの『英雄』の二つ名を持つ。

 

「おかしいです! ずるい! どうして! 私が存在を許した英雄は、ベルだけなのにぃ!」

 

 大事な約束を汚されたかのように駄々をこねるリングアイズ。この世界は彼女の世界。そこに現れる英雄は、まるで自分がベル以外の英雄を認めたかのようで不愉快なのだろう。

 

「心苦しい限りだが、私は貴方の『なぜ』に答える術を持っていない。けれど、あえて言うならば………貴方が英雄と認める者が、私と同じイケメンか、或いは()()()()()()()()()()()()()()のかもしれない」

「!?」

 

 アルゴノゥトは剣を突き立てる。戦場はアルゴノゥトの舞台。観客は、その場のすべて。故に喜劇役者の言葉は止まらない。

 

「だが、そんなものは些事だ! 何故なら、私が来たのだから! さぁ、枯らす涙は何処だ! 笑顔を欲するのは誰だ! 神々よ、ご照覧あれ! 私達が織りなす劇場を!」

 

 おー! とアーディが拍手を送る。が…………

 

「大ピンチに助っ人キター! って、盛り上がったけど…………なんか、滅茶苦茶テンション高くない? あの青年」

「なんていうか、舞台役者みたいだねー。カサンドラちゃん、アーディちゃん、あの人はどんな英雄なの?」

 

 よしのんの言葉にカサンドラは言いにくそうに告げる。

 

「え、ええっと………『アルゴノゥト』は、喜劇の物語と言われてて………なし崩し的に英雄になった………多分、最弱の英雄です」

 

 盛り上がっていた場の空気が冷える。それは例えるなら、ヒーローショーで役者の仮面が取れた、みたいな空気。

 

「じゃあダメじゃんっ!? オワッター!」

「フハハハ! 概ね間違ってないが後世の評価ツラーーイ!」

「そ、そんなことないよ! アルゴノゥトは、始まりの英雄とも呼ばれててね、この明るさが絶望に染まっていた世界に笑顔を振りまいたんだよー!」

 

 アルゴノゥト大好きアーディ必死な擁護。

 

「ありがとう、お嬢さん。その言葉だけで………」

「確かに、弱いけど! 英雄なのに凄ーく弱いけど! そんな弱くて何もできないアルゴノゥトが頑張るから、『オレもやらなきゃー!』『やってやるー!』って、皆が頑張ったんだよ!?」

「その言葉だけにして欲しかったなぁ!? 必死に弁明しながら見事なコークスクリュー・ブロー! さてはボーイッシュ元気っ娘を装った天然だネ!?」

 

 だが悲しいかな、それは事実。マクールが鼻で笑う。

 

 アルゴノゥトはマクールのように知られざる英雄ではなく多くが知る英雄であり、当然、どれほど再現度が高くとも物語のアルゴノゥトは『最弱の英雄』である。

 

「…………現れたのは、たった一人。それも最弱の英雄。それなら、何も関係ありません」

「ええ、そうですわね。〈時喰みの城〉の力を打ち消した事には驚きましたが…………マクールさんは何故か再起できていない、彼より十香さん達のほうが遥かに強い。滑稽な道化に、この魔物の海は越えられませんわ」

 

 唸り声を上げる魔物の群れに、アルゴノゥトは怯えることなく笑みを浮かべる。

 

「果たして、そんな事を口にしてよろしいのですか? 美しい瞳をお持ちのお嬢さん?」

「…………何を仰っしゃりたいんですの?」

 

 まるで眼帯で隠れているはずの片目まで見透かしたかのようなアルゴノゥトの問い掛けに、狂三は何処か不愉快そうに問を返す。

 

()()()()()()()()ではありませんが…………私はアルゴノゥト! 『英雄の船』! 笛を吹き、帆を張って、多くの希望を連れ立つ航路(軌跡)そのもの! この世界に、既に『錨』は下ろした!」

 

 何故ならここに()()()()()()()()()()()()()

 

「さぁ、来るぞ! 来るぞ! 勇ましい英雄達が!」

「「「!?」」」

 

 先程のアルゴノゥトの顕現と同様の光が周囲を照らし、新たに現れる数人の人影。

 

「なっ………!?」

「新しい、英雄!?」

 

 縁を手繰り寄せ、英雄の船に乗ったアルゴノゥトに縁を持つ『始まりの英雄達』が現れる。

 

「まったく、これは一体どういうことじゃ」

「決まっている。あの傍迷惑な道化に巻き込まれたのだろう」

「死してなお…………(ページ)に綴られる存在に至ろうとも、結局はヤツの戯曲に振り回されるか」

「まぁ、兄さんのやることですし………」

「いやはや、つかの間の夢に過ぎずとも、またこうして一堂に会する日が来ようとは! 感激のあまり、竪琴(リラ)も鳴り出すというもの!」

 

 なんだか聞き覚えがある声。

 

「それでは一曲、奏でては歌いましょうか。彼が望む、とっておきの『茶番』を」

「ああ、頼む! 英雄達よ! 魔物に苦しむ者がいるというのなら、我等は笑い、踊らなくてはならない!」

 

 雷纏う雷霆の剣…………炎を放つ、紅の魔剣を構え、アルゴノゥトは宣言する。

 

「さぁ────『喜劇』を始めよう!」

 

 現れた英雄達を飲み込まんと迫る怪物の津波。村を飲み、街を飲み、国を踏み潰す絶望の氾濫。されど、此処にいるは英雄達。

 

 人狼の青年が駆け抜ける。爪で引き裂き、拳で潰し、蹴りで打ち砕く。追いつける魔物は居ない。

 

 ハーフエルフの少女が歌う。炎が焼き、風が引き裂き、雷が貫く。耐えられる魔物は居ない。

 

 女戦士の女が舞う。剣が血に染まり、足が頭蓋を潰し、指が喉を抉る。原型を保つ魔物は居ない。

 

 土の民が吠える。鱗を割り、骨を砕き、肉を潰す。破壊されぬ魔物は居ない。

 

「つっっよぉーー!? 見て見てムックちん! 敵がバターみたいに溶けてく!」

「先程のマクールとやらもそうじゃが……霊力や、魔力も用いていないにも関わらず、人知を超えておる。一体何者じゃ、あやつ等は?」

 

 何かもう笑えるほどヤバかったマクールのような地形破壊を伴うほどではないが、それにしたって強すぎる。冒険者として区分するなら第一級……()()()()

 

「ただの『英雄』よ。アマゾネスの争姫(そうひ)エルシャナ、獣人の狼帝(ろうてい)ユーリス、ドワーフの大戦士ガルムーザ……その名で後世に伝わる、『英雄時代』の幕開けを担った傑物達」

「そそっ、争姫(そうひ)エルシャナにっ、狼帝(ろうてい)ユーリスっ? それに、大戦士ガルムーザ!?」

 

 『古代』人類反撃の礎を築いた亜人(デミ・ヒューマン)の誇り。なぜ、そんな英雄達が?

 

「アルゴノゥトの声に導かれただけのこと。『英雄の船』に続いた者達の中でも、アルと彼等の縁は殊に深い」

「そっか………そうだよね! だって皆、アルゴノゥトと時期が近い英雄達! 大穴攻略に乗り出て『骸の王』と『光の魔物』を倒したのも、その後のはずだし! うわぁ、うわぁ〜! 凄い、凄い! やっぱりアルゴノゥトは、沢山の人に勇気を与えたんだね…………でもな〜んかみんな見たことがあるような? って、あれ、ティオナ?」

 

 英雄達を見ながら小首を傾げるアーディは彼等について説明してくれた人物に振り返り、やはり見知った顔。

 

「大人っぽくなったね! すっごく綺麗……って、そっか。貴方も、別人なんだよ………ね?」

「……………ええ。私に縁のある誰かを知っているのかしら?」

「うん! 英雄が大好きでね、笑顔のとっても素敵な女の子!」

「………………そう」

「あ、貴方の笑顔も、とっても素敵」

 

 微笑を浮かべる女性に満面の笑みを返すアーディ。女性は気恥ずかしそうに顔を反らした。

 

「おお、初対面でオルナをあそこまで動揺させる女の子がいるなんて」

「オルナ…………オルナ!? 『語り部のオルナ』!? だ、大ファンです!」

「そう、ありがとう」

 

 こうして会話の余裕ができるほどに、魔物の群れが蹂躙されている。

 

「よ、よくわからないけど…………英雄のバーゲンセールってこと? 士道?」

「あ、いや…………なんか、前に会った【ロキ・ファミリア】に似てる奴が多いなって」

「うむ。ベルとそっくりなアルゴノゥトという男といい、初めて会った気がしないぞ」

 

 と、英雄達を眺める士道達のもとに岩礁に弾かれる荒波の如く吹き飛んでいた水飛沫たる魔物が一匹。

 

「やべ、こっちにも敵が!」

「【ゲイル・ブラスト】!!」

 

 しかし妖精の魔法が吹き飛ばす。

 

「大丈夫ですか?」

「おお、レフィーヤ! レフィーヤ………で、あっているか?」

「ごめんなさい。私はフィーナ。貴方のご友人とは別人です」

 

 耳の長さが違うハーフ。それでもまるで魂なんて物が同じかの様に、良く似た少女は申し訳なさそうに謝罪する。

 

「む、むぅ……………そうなのか? 久しぶりに会えたと思ったのだが………顔だって、そっくりだぞ?」

「ふふっ………もしかしたら、その方は私と縁が深い人物なのかもしれませんね」

「そういうもの、なのか………では、フィーナ。お前も他の者と同じ、この世界では有名な英雄なのか?」

「うーん…………どうでしょう? こういう場合、私も詩人の一人になるんでしょうか?」

 

 十香の問い掛けにフィーナは顎に指を当て考え込む。

 

「…………でも、私はエルミナさん達のように凄い伝記みたいなものは残ってないですし……………うん。それなら私はやっぱり、ただのフィーナ。お馬鹿なアル兄さんのおもり役です」

 

 

 

 

「リリウスさんやベルだけじゃなくて、ティオネにガレス、ベートさん…………ティオナに、レフィーヤまで?」

 

 知った顔ばかりに困惑するアイズ。でも、ガレスは兎も角皆、なんだか雰囲気が違う?

 

「ベル? いいえ、アルとお呼びください! 麗しいお嬢さん! 因みにコレから私とお茶でもどうですかムフフフ!」

 

 あ、ベルとは違う。そう思っているとアルゴノゥトはフィーナに殴り飛ばされた。

 

「何やってるんですか、バカ兄さーん! お姉様に似ている方にナンパなんかして!」

 

 でもやりとりは似ているかも?

 

「小娘、お前も戦士ならば戦え」

「あ、はい…………」

 

 このティオネっぽい人、ちょっと怖いな。と、アイズは思った。

 

 

 

「おや、お久しぶりですなマクール殿」

「今度はリオンのそっくりさん!」

「リュールゥと申します、笑顔の素敵なお嬢さん」

「わぁ、絶対リオンじゃないね!」

 

 こんな歯の浮くような台詞、彼女だったら恥ずかしくて言えないだろう。

 

「時にマクール殿、貴方は戦わないので?」

「お前がご丁寧に俺の死因まで記したんだろうが」

 

 マクールは『力を奪われた後、王に嵌められ、操られた親友に刺されて死んだ』。そして力を奪われなければ不意を突かれたとはいえ親友に刺されることはなかった。

 

 その事実が記されており、ここが物語の世界である以上力を吸われたマクールはこれ以上戦えない。

 

「そもそも何で俺なんか記した。何も成せず、救えず、最後には王に裏切られ死んだ間抜けなど語りもしねえだろうが」

「まあ、絶望を晴らす英雄を欲していた私にとって、貴方の武勇を伝えたくとも時代が悪かったので…………」

 

 人が英雄に希望を持てなくなる………それはリュールゥからすれば避けたい事態。

 

「それでもやはり、貴方は英傑でありました。それに、何より、ここには()()()()()()()()! ()()()()()()()()()()! 二番煎じで申し訳ありませんが、それでも、ええ、私は貴方達親子に会って欲しい。成長した彼等彼女等を、どうか貴方に見て欲しい!」

 

 リュールゥはそう言って竪琴(リラ)を奏で、3回目の光。

 

「俺としては、フィアナにはもう休んでほしいんだけどなぁ〜」

「気遣いは無用です。この身は、そうあった頃の名残。既に過ぎ去った歴史の影法師なのですから」

 

 仮面を被った2人の男女。女は士道が知るより背が高く、男は十香が知るより少し若い。

 

「リ、リリ…………なのか?」

「フィン! では、ないのだったか?」

(フィン)…………そう名乗っているんだね、()のそっくりさんは…………ああ、いや、気取る必要はないか。そうだね、()はフィンだ。君の知る人物とは別人だろうけ──」

「フィ〜〜〜ン!!」

「げぇ! エルミナぁ!?」

 

 戦っていた魔物もそっちのけでアマゾネスが小人族(パルゥム)の男へと飛びかか…………訂正、襲いかかる。

 

「あ、ティオネだ………」

 

 アイズはポツリと呟いた。

 

「フィン! フィ〜ン! 会いたかった、会いたかったんだ、また、お前に!」

「エルミナ…………」

「さあ、子を作るぞ」

「あ、おい待て! この状況で俺を茂みに連れて行こうとするじゃない!」

「しかし、初めてをお義姉(ねえ)様とお義父(とう)様に見られながらなど…………私は兎も角フィンは恥ずかしいだろう?」

「「「戦場で盛んなつってんだよ!?」」」

 

 マクール、フィン、フィアナの怒号が飛ぶ。エルミナはフィアナに蹴り飛ばされた。

 

「ぐっ………つぅ、この、威力……まさしく、フィンの姉………」

「ディム………どういうことですか? 私がいない今、こんな発情した獣と懇意になるなど。女を見る目がないその目、いっそ抉り出したほうが」

「怖ぇよ!? 違うんだ、フィアナ!」

「力で屈服させられた………私の意思を無視すべく振るわれた力は、もう」

「ディム?」

「余計なこと言うな、エルミナァ!! あ、ほら、父さん! 俺は覚えてないけど、フィアナは話したいことあるんじゃないか!?」

「「気をそらすのに家族使ってんじゃねーよ」」

「フィアナの性格、父さんに似たのかよ!」

 

 とはいえ、父と話したいことがあるのも事実。フィアナは改めて向き直り、マクールを抱えるアーディを見て僅かに固まり、口元が微笑む。

 

「……………お久しぶりです、父様」

「…………そうか。結局、お前は………」

「どうか悔やまないで。私は、これでよかったのです。辛いことも、苦しいこともあった。貴方を失ってから、幸せな記憶なんて、殆どなくても、後悔していないんです。何より、今は嬉しい………」

 

 悲痛に顔を歪めるマクールの手を取りながらフィアナは告げる。

 

「何もできなかった無力な少女は今、確かに戦う力を手にしました。貴方のいる戦場で槍を振るえる。どうか、ご照覧ください…………貴方の娘の勇姿を」

「じゃ、フィアナも見てくれよ。俺、結構強くなったんだぜ」

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