ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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ご対面(デアラコラボⅡ)

 己の龍鱗を切り裂いた二人に警戒するように距離を取り唸る邪竜。出現して初めての行動。リリウスは心臓が導くまま、四糸乃の下へ移動する。

 

「借りるぞ」

「ふぇ?」

「あー!?」

 

 ズブリと〈氷結傀儡(ザフキエル)〉と化したよしのんの頭部にリリウスの手が沈む。

 

「よ、よしのん!?」

「な、なんだか力が湧いてきたあああ!! くっらえええ!」

 

 よしのんが吐き出した吹雪が邪竜の巨体を凍らせた。

 漆黒の邪竜は白に染まり、時ごと凍り付いたかのように動かない。

 

「や、やったの!?」

「そのつもりだったが…………怪物だな」

 

 ビキリと亀裂が走り、4つの目がリリウスを睨む。すぐ隣の四糸乃がひっと悲鳴を上げるが亀裂が僅かに広がるばかりで邪竜は動かない。

 

「…………精霊の氷、だけじゃないわね…………『怪物封じ』の概念でも宿していたのかしら」

 

 四糸乃は異界の精霊だとして、なぜか精霊の力を宿しているリリウスを見ながらオルナが呟く。あの力の源たる精霊は強力な怪物を封じた逸話があるのかもしれない。

 

「状況を…………リリ?」

 

 下手に攻撃すれば封印を破られると判断し、現状を確認すべく周りを見回したリリウスはフィアナを見て一瞬で移動する。

 

「お前、なんでここ………ん? 背が伸びたか………」

 

 と、そこで目を細める。

 

「………誰だ、お前?」

「過去の影………………きっと、貴方のいう方と縁があるのでしょう。貴方が父と──」

「リリウス〜!」

 

 と、アーディがリリウスを背後から抱きしめる。

 

「さっきの、すっごく格好良かったよ、古代の英雄達にも負けないぐらいに!」

「古代の………? 英雄が現れたのか、この世界に」

「あ、その言い方、リリウスってこの世界のあり方に気付いてるんだ」

 

 だからこそ古代の英雄がいるのが疑問なのだが…………ドゥルガーに確認しようとすると………。

 

「マクール! お前、マクールか!? 誰にも記されない物語、この世界にはいないと思っていたが………!」

「ああ、誰だてめぇ?」

「お前の、ファンだ! ずっと、ずっと、お前をもっと早く見つけられなかったことを悔いていた!」

 

 マクール……つまり彼奴がドゥルガーが目をつけていたというリリウスの前世。

 

「「………………」」

 

 リリウスはドゥルガーに擦り寄られるマクールを、マクールはアーディに抱きつかれるリリウスを見る。必然、視線が合う二人。

 

「「なんだあ、てめぇ………?」」

 

 リリウスはマクールの前まで移動する。身長差20C以上。

 

 成人した小人族(パルゥム)で例を挙げるならフィンは119C、ガリバー兄弟は117C。小人族(パルゥム)としては大柄なマクールと、小人族(パルゥム)としては小柄なリリウス。

 

 互いに見上げ、見下ろし、睨み合う。

 

「…………同族嫌悪」

 

 ポツリとフィンが呟く。

 

「チッ。まあいい、現状を教えろ」

「あ、えっとね………」

 

 

 

「『英雄殺し』……また面倒な概念を………」

 

 リリウスの魔法【サンサーラ・マンダラ】はリリウスにとって『英雄』とも呼べる存在の力を下ろす性質上効かない可能性があるか。

 

 異界の精霊達ではそもそも地力が足りないらしい。となればリリウスとエピメテウスでやるしか………。

 

「………………」

「エピメテウス?」

 

 と、エピメテウスが一人の古代の英雄を見ていた。ベルに良く似た、アルゴノゥト…………。

 

「…………よくも、まあ…………俺の前に顔を出せたものだな、虚言だらけの詩人気取り」

「知り合いなのか?」

 

 まあ知り合っていてもおかしくはないか。リリウスがそう思っているとアルゴノゥトはフッ、と微笑む。

 

「いいや、知らないさ。盲目の詩人は、貴方との約束を(たが)えどこぞで死んだ。私は、ただの道化。アルゴノゥトは道化なのだから」

「……………そうか。そうだな………忘れろ。俺もお前のような道化は知らん」

「……………? ………!! えっ、あ! えぇ!? ま、まさか、そうなの!? 襲名でもなくて………ええ〜!?」

「アーディさん?」

 

 アルゴノゥトとエピメテウスを交互に見て首を傾げていたアーディはハッ、と気付き叫ぶ。

 

「余計な事は広めるなよ。面白がって騒ぐ神を殺さなきゃならねえ」

 

 つまり向こうがどれたけ眷属を集めて攻めてきても、返り討ちにする自信があるようだ。

 

「エピメテウス、ニーズホッグだったか? 弱点はあるのか?」

「少なくとも、『対策前』の怪物。俺の炎も効くのは確かだ…………後は……そうだな、6柱の精霊がその命と引換えに滅ぼした、と」

「6柱の精霊…………いや、命か」

「ふむ、誰も知らぬ状態でなら兎も角、こうして明言してしまった以上、同じ事をするには同じ対価が必要になるでしょうな」

 

 ドゥルガーやフィネガスに加えて、異世界の精霊を合わせて七柱の精霊達。語り部達もいる今、術式の再現も可能だったかもしれないが、今この瞬間から命と引き換えにしなくては発動出来なくなった。

 

「ど、どうすんのよ…………!」

 

 ビキバキと亀裂は広がり、パラパラと細かい氷の破片が落ち始める邪竜の氷像に怯えながら七罪が叫ぶ。

 

「決まっている。ここにいるのは、冒険者」

「そして、英雄達」

 

 リリウスが雷を纏い、エピメテウスが炎を纏う。

 

「成る程成る程! ならばやることは決まっていますなぁ! なにせここは物語! 英雄は剣を取り、詩人は琴を奏で、冒険者は未知に挑む! 我等の前に竜が現れるというのなら、竜退治こそ英雄の常! 詩人の歌! 冒険者の冒険!」

「皆ガンバレー! 私達も陰から応援するぞー! あいったー!? 何故蹴る、マクール殿! あいた、いたいいたい!」

 

 マクールが一緒にするなというようにゲシゲシとアルゴノゥトの足を蹴る。

 

「まあようするに、いつも通りじゃな」

「違うのは、直接ダメージを与える事が出来ないだけ」

「絶望、か………無効化(その程度)、絶望する理由には弱い」

 

 ガルムスが髭を撫で、ユーリが目を細め、エルミナが剣を構える。

 

「攻撃を弾き、鱗を叩き、邪魔する程度は可能です」

「単眼の王の時より少ないけど、向こうも一匹。不足はない」

 

 フィアナとフィンが槍を構え敵を見据える。

 

「わ、私たちも、手伝います!」

 

 異界の精霊も宣言すると同時に、氷の戒めが完全に砕ける。

 

「オオオオオオオオオ!!」

 

 パラパラと氷の破片をばら撒きながら英雄達………主にリリウスを睨む邪竜。

 

「さあ、英雄達よ、邪竜退治だ! やってしまえ〜!」

「って、あんたが仕切んのかーい!」

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