ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
アーディは【ヘラ】化した女冒険者達にも攻撃されません。ヘスティア枠です。ティオネでさえ、オラリオに来たばかりで荒れてた頃世話になっており団長関連でもそんなに強く出られない。神々のあいだでついた異名は【
アーディ「その、ああいう格好は、やっぱり見てほしい人に、最初に見てほしいから」
神々「「「俺/私のことかな?」」」
さて、地上にてフェルズに緊急事態と連れてこられた春姫とリリの2人はリリウスと合流した。
春姫はチョコ欲しさにダンジョンに潜るような男達にウィーネが捕まってしまえば『あ〜れ〜』されて色々な目に遭わされるのではと焦り、必ずやあ〜れ〜な目から守るとやる気だ。母は強し。
「と言うか今更ですけど、アーディ様やアリーゼ様達のお力を借りたほうがいいのでは?」
ハンターが第2級だろうと、彼女達は第一級だ。普通に考えて彼女達の方が戦力になる。
「彼女達はここ最近また増えてきた冒険者達の行方不明事件の調査でね。【
なので
「フィアも楽しそうだったから心苦しいけど、騒ぎが大きくなりすぎているものね」
困ったわね〜、と笑うエウロペ。常にダンジョンに潜っている彼女は今やLv.3。回復魔法で
「まあ兄様がいる以上リリ達は安全ですが、フィア様達は………」
「ウィーネ様を『あ〜れ〜』な目に遭わせないために、皆さん、急ぎましょう!」
あ〜れ〜な目ってなんだろう、リリウスは訝しんだ。
「先行しているレイとフィルヴィスの匂いを追うぞ…………今日はダンジョンの各所で甘い匂いがすんな。
「流石に駄目ですよ、兄様」
「駄目か………………駄目か?」
仕方ないと肩を竦めたかと思えば、ふと己の服装を改めて確認したリリウスはリリより低い身長をさらに利用するように手を腰の後ろで合わせ、腰を曲げリリを見上げながら首を傾ける。
「かわいい!!!」
(かわいい!)
リリウスの後ろに『当然よね!』と高笑いするアフロディーテを見るフェルズ。間違いなく彼女に教わった技術だろう。
「私はとんでもないモノを生み出してしまったのかもしれない…!」
「ハッピーバレンタイン! また一人、地上のお方を幸せにしましたね!」
袖の大きく何処か極東の服を思わせる服を着たフィア。髪の毛を双丫髻の様に結い耳を覆う。スカートも長く、上手くモンスターの特徴を隠している。
「うん、さっきのひと、うれしそうだったよ!」
ウィーネは大胆に肩を出したオフショルダー。髪の毛は後ろで2つに束ねたお下げ。2人とも髪にはハート型の髪飾り。
「この調子でバレンタインを続けましょう! ウィーネ、チョコはあとどれぐらい残ってますか?」
「いち、にい、さん…………まだまだいっぱいあるよ! 両手のゆびより、もっともーっと!」
「ラウラに頼んで少々作りすぎてしまったかもしれませんね………ですが、余らせるのは勿体ないですし! 頑張って皆さんに配りましょう!」
「おー!」
「ウィーネ、フィア!」
元気に返事するウィーネ。そこに響く呼び声。振り返るとこれまた大きな萌え袖の衣装を着たレイ。何時も通りのローブではなくチョコレート色のゴスロリ服を着たフィルヴィス。
「漸く見つけました」
「おや、レイ、フィルヴィス………? どうされたのですか?」
「どうもこうもありません! 貴方達を止めに──」
「あ! 二人共、チョコを配りに来てくれたの?」
ウィーネが花が咲くような笑顔で問い掛ける。
「「え?」」
「だって、レット達がつくってくれたバレンタインの服、着てるもん!」
「こ、これは違います! 冒険者に見つかる可能性を考慮し、やむなく………! ラウラ達に無理矢理着せられただけで、決して『おしゃれ』に興味があったわけではありません!」
「そーなの?」
「何やら自爆しているような気がします!」
「語るに落ちる、だな………」
とはいえ実際モンスターの特徴を隠しているし、ダンジョン素材を使っただけあり下級冒険者や上級冒険者でもLv.2でとどまる冒険者の装備より性能がいい。
「とりあえず、隠れ里に──」
「戻りませんよ!」
フィルヴィスの言葉を遮るように叫ぶフィア。
「な……! 何を言っているのですか、フィア! あなた、今の状況がわかっているんですか!」
「私は、気付いてしまいましたから」
「気づいた? 一体何を………」
「地上のお方………ベルさんたちを見て、私は思いました! 私達の今までのやり方は手緩かったのではないかと! もっと積極的に交流を図るべきでは!」
「何を言っているのです!? あれはベルさん達が特別だっただけで………!」
因みにリリウスはもっと特別だ。出会った頃は人とモンスターの違いを種類でしか認識してなかったし。
「いいえ! 愛こそすべて! 愛は世界を救う! ラブ&ピース!」
「何処でそんな言葉を覚えたのですかぁ!?」
「らぶ・あんど・ぴーす♪」
「ウィーネまで変な言葉を………」
純真無垢なウィーネが神々の齎した言語に汚されていく姿にフィルヴィスは己の無力を恥じた。
「こんな事を続けていては、何時かバレてしまうに決まっています! 私達の正体は気付かれてはならない!」
「ああ、その通りだ」
「冒険者にチョコを配りたいなら、フィルヴィスにでも任せればいいでしょう!」
「そうだ………………………待てレイ、私に押し付けるなぁ!?」
「仕方ないでしょう!? 私達を知られるわけには!」
「それなら、問題ありません。見ていてください………ウィーネ!」
「うんっ、がんばるよ!」
ウィーネとフィアはピューッと駆け出した。
「あ、待ちなさい!? フィア、ウィーネ!」
向かった先にて冒険者が2人。両方男。
「くそっ、ありえねぇ…………!」
「ああ、まさか【無チョコ】に先を越されるなんて、あっていいはずがねえ!」
因みに、モルドが【無チョコ】として有名なだけで『先を越された』という事は、つまり彼等も【無チョコ】である。いや、一つは貰ってる。欲しい欲しいと泣けばバレンタインの聖女がチョコをくれるのだ。だけどそれはカウント出来ない。それをカウントする恥知らず故に、モルドは【無チョコ】達の代表となったのだ。そのモルドが、チョコを貰った。
「探すんだ。俺達の
んなもんはない。そんなのを求められたダンジョンだって困惑するだろう。チョコレートで出来た化け物でも探していろってね。
「もし…………もしもし………」
「何だあ? 何処かから声がするじゃないか」
「かわいい声だなあ。でも姿が見えない」
不意に聞こえてきた声。ザワザワと葉擦れの音が響く密林の中、発生源も特定出来ない。
「もしもし……そこの、チョコを一つももらえなさそうな、冒険者の方々」
「「余計なお世話だ!」」
「私は恥ずかしがり屋のモンスター………ゲフンゲフン、兎に角女の子。貴方達にチョコを差し上げます」
ピューンと素早い蒼い風が通り過ぎ、男達の足元には何時の間にか可愛らしい包装がされた箱が置かれていた。
「なっ、これは…………!?」
「チョコ、だと………?」
「ハッピーバレンタイン………ハッピーバレンタイン………」
「うおおおおおっ! チョコゲットだぜ!」
「やべぇ! 超嬉しいー!」
「人懐っこいモンスターがいたら、戦わないで、仲良くしたら、もっとチョコを貰えるかもしれませんよ……」
「「はい、します!!」」
人懐っこいモンスターなんて居るのか、なんて突っ込みも忘れ即答する
「俺達モンスター傷つけない!」
「ラブ&ピース博愛主義者!」
「ふふふ…………さらば、さらば………」
声はそのまま去っていく。男達は雄叫びを上げながら走っていった。
「「ふぅー!」」
やり遂げた顔のフィアとウィーネ。風の正体は竜種の
「ふぅー、ではありません!!!! あれはチョコを貰えない可哀想な方を狙った」
「言うなこいつ」
フィルヴィスは思った事が口に出た。
「ただの洗脳です! 真の融和ではない!」
「でも、よろこんでたよ?」
「そうです! ラブ&ピースは草の根から! 千里の道も一つのチョコから!」
「………………………チョコによる冒険者の洗脳。我々は今、恐ろしい計画に片足を突っ込んでいるのでは…………」
「それで洗脳出来るのはチョコを貰えぬ哀れな冒険者だけだ」
此奴も言うじゃん。
「………………オラリオの大半の冒険者がそうだな」
「レイ、とフィルヴィスは…………チョコをくばるのはいや?」
「ウィーネ?」
「チョコをもらえると、みんな笑ってくれるよ? みんな、うれしいんだって! みんなうれしくなれば………ひとも、わたしたちも、仲良くなれるよ!」
「…………!」
「ベルとね、またいっしょに暮らそうって、約束したの! だからわたしも、がんばりたいの!」
「……………ウィーネ。貴方は本当に、純粋ですね。私もそうであればと、信じたい。いや、信じなければ、何も変わらないのかもしれない。ですが……」
ウィーネの言葉に心が揺れるレイ。そこにフィアが畳みかけるように叫んだ。
「悩む事はありません! 全て身を委ねましょう、このビッグウェーブに!」
「ですから、それが洗脳だというのです!!!」
「はぁ、はぁ…………久方ぶりのフィアの暴走。説得も一苦労」
「地上の方々のお話によれば、このような時は『テヘペロ☆』と言うらしいですよ!」
「私に拳があったのなら、殴ってしまいたい……!」
腕がないから抱擁できない。だから、代わりに抱擁されたいと願うレイをして腕を持っても抱きしめるより先に殴るという決意を一瞬とはいえ宿らせた瞬間である。
「レイ、大丈夫? チョコ、食べる?」
「ああ、いえウィーネ。大丈夫です…頭が痛くなってただけで…………いいえ、もはや頭痛が痛いの境地ですが…っ!!」
その時、レイの鋭敏な聴覚がその音を捉えた。
「レイ………?」
「2人共下がって!」
「え?」
「この速度、そして足運び………近付いています、手練れの冒険者が!」