ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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めーたんてい再び

「ふんふん…………ここで冒険者にチョコを渡したな。その後冒険者は………喜びのあまり転げ周って夢か確認するためにあそこの岩に頭を打ち付けた」

「本当ね………芝生が少し荒れて、岩に血が………大丈夫なのかしら?」

 

 ダンジョンで馬鹿なことする冒険者を心配してあげる心優しき獣人エウロペ。異端児(ゼノス)ではない、調教(テイム)した深層種(パワー・ブル)に乗っている。

 

 本来獰猛で第2級の彼女がそうそうに従えることができる種ではないが、たまたま強化種にやられていた所を助け治癒したところ、懐いた。夕陽に憧れたリザードマン、空に魅せられたハーピィ、抱きしめ合う人間を羨んだセイレーン………リド達の前世のように、憧憬の種を宿すモンスターだったのだろう。

 

「仲間の人はよく放置しましたね」

「数は一人」

単独(ソロ)で中層来れる方がそんなバカなことをしたんですか!?」

 

 中層の中でも上の方とは言え、単独ともなると間違いなくLv.3…………そんな男が一体何してんだ。馬鹿なのか。

 

「男とは、チョコを貰えない年月が続いた果てにチョコを貰えると、知能が著しく低下するのだ。私もそれで後悔したよ………優秀な弟子だったのだが」

「あの人と結婚した後、しばらく皆にあげていなかったのだけど、近所の奥様方の集まりで作りすぎてしまって配った時に何人か興奮してその場で奇声を上げていたわね。男の子って、幾つになっても子供っぽくて可愛いわよねえ」

 

 バレンタインは神が齎した文化。当然過去の人間とは言え英雄時代と呼ばれていた古代ではなく神時代のフェルズは経験があるらしい。

 

「……………骨からのチョコで?」

「肉も皮もある時だ」

 

 ていうか上げる側なのか。いやでも、女性から男性だけでなく男性から女性、或いは同性同士で渡すと聞いたこともある。男は、と言っていたから相手は男なのだろうが。

 

「ここでは男達がチョコをめぐって殴り合ったな。箱の匂いは2つ。男も2人…………」

 

 因みにチョコを巡った理由はチョコの箱が2つなら2人に用意されたのではなく、2人が用意したと判断しどちらも自分のだと奪い合ったのだ。

 

「何をしてるんですかその人達!?」

「その後モンスターが現れてチョコを食われて、モンスターを殺してるな。ん、このモンスター強化種? 下層程度の強さはあるな」

 

 強化種のモンスターを中層の冒険者が2人で倒したのか。

 

「チョコを奪われた男は時に信じられない強さを発揮するのよねえ。あの人も、チョコを取り返すために私の同族を殴り飛ばしちゃってねえ」

「私の場合、騎士団長を一兵卒が蹴り飛ばしていたな」

 

 もしかして、エウロペは当然としてフェルズも昔はモテていたのだろうか? 骨なのに。

 

「あ、あのぉ…………ところで、そろそろ私達が何故このような格好をさせられているのか教えていただけませんか? 異端児(ゼノス)の皆様が作られた服。フリフリでフワフワで、可愛らしくはあるのですが状況にそぐわないような……」

 

 因みに春姫のはレイやフィアの様な手が羽根の異端児(ゼノス)用の袖が大きな服の袖を短くして手首から先が出るように改造したものだ。髪はツインテール。

 

「そうですね。兄様があまりに可愛らしくゲフンゲフン! フェルズ様も着替えるものだからリリ達も勢いで着てしまいましたが………」

 

 因みにフェルズは何時もの黒いボロ布風の魔道具(マジックアイテム)ではなく白と藍色のローブを着ている。

 

「ああ、もしもの時の為だ。レイ達の正体がバレる前に、我々がチョコを配っていた真犯人だと名乗りでる」

「はぁ!?」

「フェ、フェルズ様!? まさか、最初からそのつもりでわたくし達にお声がけを!?」

「ははっ! 何のこと分からないなー!」

「こ、この外道ー!? ただの生贄じゃないですかー! しかもフェルズ様なんて中身が骨じゃないですか!? 骨がチョコを配っていたなんて、ホラーでしかありません!」

 

 そうなの? とエウロペを見るリリウス。そうかしら? と首を傾げるエウロペ。

 

「なに、魔道具(マジックアイテム)さえあれば美少女の声色も造作もない…………『みんなー! 私のチョコもらってね! きゅるるん☆』」

 

 と、声だけでこの声の持ち主は美少女に違いないと思わせる猫なで声(CV小◯未◯子)を出すフェルズ。

 

魔道具(マジックアイテム)すげええ!?」

「さらに! 有名人のリリウスがチョコを配っていると知られるのは色々、ホント色々不味いと思うので君達の髪飾りには『認識阻害』の機能がある。顔を見て造形を認識したはずなのにある程度の友情、好感度がなければ記憶と一致させる事は不可能!」

「もはや何でもありでございますね……………!」

「神々はリオンの友達を『ネコ型ロボットと同じ青いだけあるな』とかよく言うが、フェルズは昔青かったのか?」

 

 とはいえ骨格は獣人ではなく人間だが。ロボットの意味が分からないので神々の齎したケモノミミでもつけていたのだろうか?

 

「いや、私も知らない。何それ…………それより、急ぐぞ。フィア達の腕であれば、第3級冒険者程度なら気取られることもなく、闇に乗じて何とでもなる………しかし情報を精査したところ、例のハンターはLv.4(レベルフォー)とのことだ」

Lv.4(レベルフォー)!? そこまでの実力者が、こんなくだらないことのために!?」

「いったい、どんな方なのでしょう………?」

「………………………」

 

 こういった事に面白がって参加するLv.4。ふと『めーたんてー』を名乗る猫を思い出す。

 

 

 

 

 

「人の数だけ秘密がある。秘密の数だけ謎がある……尻尾がなければ猫ではない。耳がピクピクしていなければ、猫でいる資格がない。名探偵アーニャ! さっそーと、けんざんなのニャーー!」

 

 ダンジョンの中で当たり前のように大声を出すのは、アホ猫アーニャ!

 

「ミャーたちの活躍は陸海空! そして地下と変幻自在なのニャ!」

「海も空も記憶にないし、『達』とか一緒にしないでほしいニャぁ!」

 

 付き添い、バカ猫クロエ!

 

「にゅふふ、今頃犯人はミャーの美少女名探偵っぷりに恐れおののいているニャ」

「うわぁー、自分で美少女とかまでいっちゃったー。ミャーもよく言ってるけどー。お、モンスターにゃ」

 

 あれだけ大騒ぎをすれば当然モンスターも寄ってくる。クロエは特に慌てた様子もなくモンスターを見る。

 

「でたな! よーぎしゃ!」

「うにょ!? 何言ってるのニャ、アーニャ。モンスターがチョコ配ってるわけないニャ! お願いだからミャーに余計な仕事(ツッコミ)増やすんじゃないニャ! いやほんとマジで」

「ふっ…………まだまだクロエは甘いニャ」

「うーん、殴りたいこのドヤ顔。とりあえず説明してみるニャ。3分間待ってやる」

 

 モンスターが襲いかかる状況でも3分間待ってやるつもりらしいクロエ。後ろから襲いかかってきたモンスターを「ほっ」と軽く蹴り殺す。

 

「ミャーは『よーぎしゃ』と言ったニャ。まだ奴は犯人とは確定してないのニャ!」

 

 ヒュン、と槍が閃きモンスターの魔石が破壊される。

 

「これからミャーの鋭い推理で奴が犯人かどうかハッキリするニャ!」

「や、やべぇ…………色々言いたいことはあるけど、アーニャが容疑者の意味を理解していることに戦慄を禁じえねぇ…………マジパネェ」

 

 最初に現れ吠えたモンスターは二人の強さに引いていた。

 

「サー、覚悟するにゃ、よーぎしゃモンスター! ミャーの鉄槌で自白するニャー!」

「まー結局言ってることもやってる事もアホなんですけどねー」

「!? キャイ~ン!」

 

 

 

 

「「…………………」」

 

 その様子を見てポカンと口を開けるフィアとレイ。

 

「「………………なんですか、アレ?」」

 

 

 

「名探偵の背後を狙うとは、みすてりーの風上にも置けないモンスターなのニャ! 推理も聞かずに迷宮入りしたらどうするニャ! ダンジョンだけに!」

「うわ、コレ絶対言いたかっただけだろってネタをドヤ顔で言うアーニャ、本当アホーニャ一直線」

「ウニャー! ミャーはアホーニャじゃないニャ! 名探偵アーニャだニャア〜! リリウスも言ってくれたのニャ!」

 

 因みにどんな感じかというと、遊女借金事件の後『流石ミャー、名探偵らしく、冴えた推理だニャ!』と胸を張ったアーニャに『ん? え? お前、タケミカヅチ達の店を直して………………あ〜、うん。そうだな、頑張った』と頭を撫でながら言った。多分、面倒くさくなった。

 

「そんなこと言ったら、クロエなんて…………クロエなんて…………! …………………………………………………………………」

「碌な悪口も浮かばないアホーニャ先輩チーッス」

「フニャーーーっ!! 思い浮かばないんじゃないニャー! 今日はこれぐらいにしておいてやろうってヤツニャー!」

「ハイハイ、アホーニャアホーニャ。どうやらこの名探偵にはミャーがいてやらないと駄目みたいだニャー」

 

 仕方ないニャアと肩をすくめるクロエ。明らかに馬鹿にしている態度にアーニャはぐぬぬ、と唸り、感情を爆発させた。

 

「ムシャーーーッッ! クロエのアホー! バカー! マヌケー!」

「って、こらー! 悪口を幼児レベルまで下げるんじゃないニャー!」

 

 ダンジョンの中で喧嘩を始めた2人。それを見つめる3つの視線。

 

 

 

 

「………一体何なのでしょう、あの方々は? 空前絶後レベルで知能指数の低い会話をされているような………」

「ねぇ、レイ。めーたんていって、なぁに?」

 

 ウィーネはレイの服をクイクイ引っ張りながら上目遣いで尋ねた。

 

「様々な定義がありますが…………真実を暴く人間、という認識…………の筈です………」

 

 レイは何だか自信なさげ。だって真実を暴くには普通、知能が必要だろう?

 

「ということは……探偵は、かなり頭が悪い人間でもなれる?」

 

 レイが濁した疑問を口にするフィア。

 

「失礼ですよ! あの方々は…………き、きっと特殊で、多分ちょっとアレなだけです!」

 

 

 

 

 

「しかし意外だったニャ。アーニャがこんな依頼受けるなんて。嫉妬に駆られた女の依頼なんて浮気調査と大して変わらないニャ。わざわざダンジョンに潜るなんて面倒だし」

「ふっふっふ…………クロエは何もわかってないニャ」

「でたー。またさっきと同じパターン」

 

 クロエは呆れながらアーニャの言葉を聞いてやる。

 

「この事件は………ただのチョコ配り事件にあらずニャ! きっと巨大な陰謀なのニャ!」

「ほほう? 既にツッコミたいけど我慢するニャ。それで?」

「依頼人の話では、消息を絶った冒険者もいると聞いているニャ!」

 

 チョコを求めてダンジョンに潜り、そのまま戻ってこなかった。チョコを求めるあまり自分の身の丈を超えた階層に潜ったのも原因の一つだろう。

 

「なんと! そんな情報が! それで?」

「だからきっと誘拐して、チョコ漬けにした後、洗脳してるに違いないニャー!」

「よっ、アホーニャ! お前がやっぱりアホナンバーワンニャ!」

「そしてずばり! 犯人はこの辺りの階層を根城にして冒険者を狙ってるのニャー!」

 

 

 

「くっ、全然的外れなのに、微妙に核心を突いているのがまた………!」

「はっ! そう言えば最初、逃げる冒険者を執拗に追って、目隠しして連れ去ってチョコを渡していました!」

「ほぼ犯人じゃないですか!?」

 

 何やってくれちゃってんのこの子は本当にもう!

 

 

 

 

「さらにさらに! 実はもうミャーの名推理で犯人の目星はついているニャ!」

「一応聞いておいてやろう。その目星とは?」

「犯人はチョコを配っている…………つまりチョコの匂いを辿った先にいるのが犯人ニャ!」

「ハイハイ、やっぱりアホーニャアホーニャ」

「なんでニャー!」

 

 何でも何も、それは推理じゃなくてただの脳筋だからじゃないかな。

 

「冒険者フィジカルで何とかする脳筋。いい加減推理(物理)はやめるニャ」

「ミャーはちゃんと推理してるニャ! 後ブツリって何ニャ! 推理はブツリなんかじゃないニャー!」

「おおう、アホに鏡を見せてもアホを理解できない典型。ま、とにかくニャ。匂いをたどったところで、チョコ貰った男どもに辿り着くのがオチニャ。もう展開が読めるニャ」

「うるさいうるさーい! とにかく匂いを辿るニャー!」

 

 そう言って駆け出すアーニャ。クロエは嘆息。

 

「くぅ〜! 我が道を行くアホーニャ先輩、マジ面倒っす! 知ってたけど!」

 

 でも追いかけて上げるクロエであった。

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