ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「くっくっく…………待たせたなあ、再びやってきてやったぜ」
と、何故か得意げな男の名はモルド。ベル君の大ファンだ。
「いや何様だよ。チョコ探しに来ただけだろ」
「誰も待ってねーよ」
「う、うるせえ! チョコは男の浪漫なんだよ! だいたいテメェらだって、あわよくば美女からチョコ貰おうって腹でついてきたんだろうが」
「「うぐっ!」」
言葉に詰まる2人の男。どうやら図星らしい。
「ちっ。どいつもこいつも………バレンタインのチョコはな、男にとって『権威』なんだよ」
仮令それが季節外れのバレンタインだとしても、バレンタインチョコとして渡されたのなら、そこに価値が生じる。
「逆に家族以外のチョコを一つでも貰ってねぇ奴は、時代の敗北者なのよ!!」
「「敗北者………? 取り消せよ、今の言葉………! ハァ、ハァ…………!!」」
どうやらこの二人は敗北者だったらしい。息も荒く、怒りの目をモルドに向ける。
「チョコを大量に手に入れれば入れるほど、俺は野郎どもから尊敬を集め、そして………」
おっさん妄想中。
『うわーモルドさん、すごいっす! マジやばいっす! 前に生意気こいてスイマセンでしたぁ! 僕、一生ついていきます! 手始めに、モルドさんのパシリやらせてくださーい!』
おっさん妄想終了。
「──あの【リトル・ルーキー】の野郎も俺に跪くって寸法よ! ふふふっ……ヌハハハハハハハハハ!!」
「何言ってんだ、此奴」
「ていうか【リトル・ルーキー】好きすぎるだろ此奴」
「言うはずがないだろ、そんなこと! オレの憧れが! オレの憧れを侮辱するなああああ!!」
「うお!? なんだお前は!」
通りすがりのベルのファンと一悶着もありつつモルド達は進む。
「と、とにかくだ。取り分が減るのは気に食わねえが、今はチョコの方が先決だ。行くぞ、テメェ等! 俺達の『
んなもんダンジョンで求められてもダンジョンだって困るだろう。チョコで出来た泉とかチョコの体のモンスターとか出せってか? 多分出来るかもしれないけど。
「ふにゃああああああっ! どけにゃああああ!!」
「「「どわあああああ!!?」」」
存在しない場所を求めて歩みを再開した男達は、誰かに跳ね飛ばされた。それはそれは大変可愛らしい猫人であった。
「邪魔ニャア! こんなところで突っ立ってんじゃないニャ!」
「て、てめぇ等は豊穣の酒場の? どうしてここに!」
「「「とぉりゃあああああ!!」」」
疑問を口にするも、彼女達が答える前に現れる三人の女冒険者。
中層ではお目にかかれないレベルの速度で動き回る女達。ナイフが振るわれ、剣が振り下ろされ、杖で殴る。おい、最後は歌えよ。
「「「ええええええっ!? 何起こってんだコレエエエエエ!?」」」
「凶暴化してミャー達の手に負えないニャー! おのれ全身ローブー! 謀ったなー!」
「ハハハハハハ! 安心したまえ、我々も絶賛被害にあっている!」
「高笑いしている場合ですかー!?」
「ですかー!」
「誰も彼も吹き飛ばされてしまいますー!?」
さらに現れるリリ、フェルズ、春姫。リリウスは殺さないよう加減したとは言え気絶する程度に殴ったはずなのに起き上がってくる女冒険者達から距離を取り始めている。
「あらぁ、大混乱ねえ」
「でっか!」(パワーブルが)
「でっけ!」(背が)
「でけぇ!」(槍が)
「「「何より、胸がデケェ!!」」」
マジかよ、あれは、デメテル以上!? 鼻の下を伸ばしていたモルドがこの中で3番目(店ではTOP3)のアーニャにぶつかる。なんでLv.4の彼女がふっ飛ばされるのか? 女の執念だよ。ついでにバレンタインの時期(バレンタインではない)は男のみならず女も魔力に当てられるのだ。
「痛いニャ〜! もうどうなってるニャア〜? ニョニョ? これは!」
「あ、それは俺のチョコ! ぶつかった拍子に落としちまった! 返してくれっ──」
「えねるぎー補給ニャ! パクリ!」
「ッテイヤァアアアアアアアアアアアアアア!? おぉれぇぇのぉぉチョコオオオオオ!?」
無慈悲なるかな。チョコはアーニャの口に消えた。
「うるさっ! って、誰かと思えば出禁野郎! ついでになんかチョコ散らばってるニャ、ミャーもパクリ!」
「モグモグ」
「んあああああああ!? 俺達のバージンチョコまでぇぇぇぇぇ!!」
食わずに大事に取っていたチョコはクロエとリリウスに食われた。
「モルドぉぉー! みんなぁー! 無事かぁ!」
「気をつけろ、ここには俺達からチョコを奪う連中がっ………ってアーーーー!? テメェ等!」
「ここで何をしてやがる!!」
さらに現れるアーニャ、クロエの被害者達。
「ミャー達は! はむっ、パク! ちょこのはんにんをっ! モグモグ、ペロリ! 見つけ出したのニャ!!」
「食べながら喋るんじゃねえ! ちくしょう、俺のチョコをぉぉぉぉ!!」
「ぬあー! 何をするニャ! ミャー達は探偵で犯人を………!」
「ウルセエエエ! チョコを貪るお前等の方が犯人で悪魔だああああ!!」
「「「私達も忘れんじゃないわよ〜〜〜〜〜!!」」」
そして、忘れちゃならないのはギルドにいた女性冒険者達は彼女達だけではないということ。
「見つけた、
「他の女からのチョコを求めて、Lv.1のくせに中層にまで! これはもう現行犯!」
「誰よ手を出した女は! あんたかああああ!?」
「あ、に──姉様が木の上に逃げた!?」
リリの服の襟を嚙み、大樹を四肢でヒョイヒョイ登るリリウス。ウロを見つけその中にリリを隠した。
下では大混戦。
「なんですか、この状況!?」
「チョコの執念が生んだ四つ巴! もはや収集がつかん!」
さらっと透明化して木の上に避難していたらしいフェルズ。お前の言葉も場を混沌に導いたんだけどね。
「で、でもこれはチャンスなのでは? いい感じに潰し合っちゃってますし、リリ達はレイ様達と合流して離脱を…………!」
「……………………あれ」
リリウスが指差した戦場の一角では砂煙の中で目を回す春姫。
「皆様ぁ〜〜〜! あ〜〜〜〜〜〜れ〜〜〜〜!!」
「何やってるんですか、あのヘッポコ狐はあああ!?」
「逃げ遅れて巻き込まれた! しっちゃっかめっちゃか撹拌されて『あ〜れ〜!』な目に遭っている!」
あれが『あ〜れ〜』な目という奴か。リリウスは納得。
「こんなところで伏線回収しないでくださーい!」
「だが助けるしかあるまい! 流石の私とて、ここで見捨てる外道にはなれん!」
「あー、もう! こうなったらやぶれかぶれですー! いきますよ、ノエル、姉様!」
「……………行かなきゃ駄目? 俺、あそこ怖い」
「姉様はここで待っていてください!」
でもリリが危なくなった時のためにウロからヒョコっと顔だけ出すリリウスであった。