ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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真心のチョコを貴方へ

「ふにゃあああ!?」

「のわああああ!!」

「痛いニャ〜。パクっ、モグモグ!」

「俺のチョコがあああ!?」

「テメェのじゃねえから!」

「よくやった小娘! 私という恋人がいながらチョコを貰うなど死にたいようだな浮気者(ダーリン)!」

「ぎゃあああ! 違うんです、こいつが一緒に行こうって!」

「はあ!? お前が言い出して、おいまてくるな、うわあああああ!!」

「テメェこの野郎、チョコくれる相手がいるくせに!!」

「殺せー! なぁにがチョコの数は権威だ、一つで満足しろやああああ!!」

「「それ俺たち言ってない!!」」

「「「待ちなさいこの泥棒猫!!」」」

「「「ほぎゃああああああ!!」」」

 

 大混戦。

 浮気者をもてない男と恋人が狙い、恋人(女)達を見境がつかなくなった依頼者がアーニャ達ごと襲い、モテない男達のチョコをアーニャ達が奪う。

 

「ふぇぇ〜〜〜〜〜」

「無事ですか、春姫様! 早くここから離脱を!」

「みんな元気ね〜」

 

 何とか春姫を回収したリリ。あらあらと1人深層種(パワー・ブル)の背で微笑むエウロペ。パワーブルはリリウス同様引いてた。

 

 そして、少し離れた場所でその様子を眺めるレイとフィアとウィーネ。

 

「こ、これはいったい…………?」

「何時の間にか混戦に…………しかし、フェルズ達には悪いですが、これは好機です! フィア、ウィーネ、今のうちに離脱します!」

「まって、レイ!」

 

 すぐにその場から離れようとするレイをウィーネが呼び止めた。

 

「わたし、みんなにケンカしてほしくない! そんなことのために、チョコを作ったんじゃないの!」

「ウィ、ウィーネ………」

「ですが………あの大混戦です。戦いを止めるにしても、いったいどうすれば………」

 

 ウィーネ達が飛び込んだところで混乱が増すばかりだろう。彼女達はモンスターで、異端の存在。

 

「………………レイ、フィア、お願い……ちからを貸して?」

「「えっ?」」

 

 

 

 

 

「ぐえ〜ニャ〜〜〜。もう何が何だか分からないのにゃ〜…………パクリ」

「そういいながら俺達のチョコを食ってんじゃねええええええ! どれだけの犠牲者を出しやがったぁーー!」

「私達のジョンに色目を使った泥棒猫ぉ! そしてチビと狐とローブ! 許さないんだから〜〜!」

「私以外からチョコを貰おうなどと………私の料理を食べる時以外舌を切り取る!」

「ダメですぅ………やはり収拾がつきませぇん!」

「殺気立ちすぎて包囲網を突破できない! このような場所で窮地を迎えようとは!」

 

 でもリリウスが動かないあたり本気で危険ではないのだろう。と、その時。コツン、とリリの頭に何かが落ちる。

 

「あいた!?」

「…………? これは………っ!」

 

 続いてボトボトと何かが落ちてくる。

 

「リリ様、フェルズ様! 今も落ちてくるこの包みは!」

「まさか…………」

「チョコぉ!?」

 

 リリ達だけでなく、他の者達もその異変に気付き始める。

 

「チョコニャー!? チョコが降ってきたニャー!」

「えっ、なに、どういうことニャ!?」

「ア、『チョコの園(アルカディア)』?」

「何かが、頭上を飛んでいる?」

 

 第3級冒険者では視認できない速度で飛ぶ何か。それがチョコを落としているようだ。

 

「まさか……レイ様とフィア様?」

「みんなっ、ケンカしないでー!」

 

 そして森の奥から響くウィーネの声。チョコの雨に混乱し戦闘を止めた冒険者達がその声に耳を傾ける。

 

「わたし、みんなによろこんでほしかったの! うれしいって、笑ってほしかったの! みんなと、仲良くなりたかっただけなの!」

「この声………ウィーネ様………」

「今度のバレンタインも、たくさんよういするから! だから、みんな! 仲良くして、まってて!」

「今の声………まさか…………」

チョコの精霊(エクアウハ)………」

 

 男達だけではない。

 

「……………毒気、抜かれちゃった」

「ええ…………こんなバカみたいな真似する女が、ジョンを狙っている筈、ないわね」

「泥棒猫が、こんなに沢山のチョコレート、用意するはずないもの。何より…………」

「甘いニャ〜〜〜! やっぱりこのチョコ、すっごく美味いニャア!」

「こんな美味しいチョコを作るやつが、悪い奴な 筈ないニャア! だからもっとチョコくださぁーい!」

「……………このような娘の前で調教は無粋、か」

「一先ず地上に戻ってから、改めて監禁しよう」

「あんなに殺気立っていたのに………皆さん、戦いをやめて、今は笑って………」

「チョコの魔力…………いや、『本物の真心』、か」

「なんという友愛(フィリア)…………女達が心を開いている」

「古き言い伝えは誠であったか………そのものバレンタインの衣を纏いて、チョコの園に降り立つべし。失われた男女の絆を戻さん」

 

 どんな言い伝えだ、と思ったが、神々なら面白がって残しそうだな、とフェルズは思う。あと安堵している浮気男達、別に助かってはないよね。

 

「…………ちっ。甘ぇ………な。こんなにチョコが甘ぇから………これ以上、喧嘩すんのは、よそうぜ。今日は、バレンタインなんだからなあ」

「バレンタインじゃないがな………」

「あらあら………」

 

 エウロペは微笑む。若者達が仲直りして何よりだと思っているのだろう。

 

「ねぇ………ねぇ、貴方達」

 

 と、エウロペが話しかけるのは依頼者の三人娘。ちょー美人だしちょー胸でかいしちょー良い匂いのする深層種(パワーブル)に乗った美女に色んな意味で萎縮する三人。

 

「貴方達、良くパーティーを組むの?」

「えっと、まあ………」

「組みます、けど……」

「………何か?」

「まあ! 素敵ね!」

 

 パァ、と花が咲くように笑みを浮かべるエウロペ。

 

「す、素敵?」

「だって、同じ人を好きになって、それでも背中を預けられるほどに信頼して…………とても気が合うのね」

 

 他の女だったらジョンに手を出したと勘違いしただけで襲い掛かる彼女達は、しかしパーティーとして行動していた。

 

「それはとても素敵な関係なのよ。だから、どうか大切に、ね…………」

 

 因みに彼女は()()()()()彼女を取り合って仲違いしてしまったのがちょっとしたトラウマだったりする。

 

 

 

 

 

「春姫〜!」

「ウィーネ様!」

 

 隠れ里にて抱き合うウィーネと春姫。

 

「会いたかった、春姫! リリも! わたしたち、また、会えたね! うれしい!」

 

 その姿はまるで親子のようだ、とリリウスが眺めているとエウロペが肩を叩く。

 

 ニコリと満面の笑みを浮かべ両手を広げる。リリウスは無視した。エウロペはしょんぼり落ち込み、ノエルが抱きつく。エウロペに笑顔が戻った。

 

「あのね? 里にもう少しだけ、ベルや春姫、リリ達の分の、チョコがあるの!」

「わたくし達の分のチョコ、でございますか?」

「うん! みんなと仲良くなるのが『ぎり』で、たいせつな人におくるのが『ほんめー』っていうんだって! ベルたちの『ほんめーチョコ』、とってあるの!」

「ふふっ。義理と本命……ああ、その解釈で間違ってはいない」

「だからね? みんなにわたしたいから、いっしょに取りにいこ!」

「……まったく。仕方ないですね〜」

 

 ここまできたら、多少寄り道しても変わらないだろう。ベル達のお土産をいただくくらい問題もない。

 

「ふふふ。私は『だいほんめー』も用意していますが………」

 

 多分、物理的に(だい)なほんめーチョコなのだろうな、と思うリリウス。

 

「アリーゼからほんめーチョコの作法も教わったのです。リリウス、こちらに」

 

 翼で己の膝をポンポン叩くフィア。リリウスはフィアの膝に座る。

 

「逆ですよ、リリウス」

「こうか?」

 

 小柄なリリウスとはいえ、膝に乗り向き合えば顔の位置もだいたい同じ。フィアはゴソゴソと箱を取り出す。

 

「さあリリウス。チョコを私の口へ!」

「ああ………」

 

 食べさせてほしいのだろうか、と包みを解き箱を開け中のチョコを取り出しあーん、と開けたフィアの口の中に入れる。

 

「ふぁい、ろうぞ!」

「…………………?」

「く()つしで(ふひえ)す!」

「何を教えているんだアリーゼ・ローヴェル。リリウス、気にし──」

 

 くれるというならリリウスは貰う。フィアの後頭部と背中に手を回し唇を重ねた。

 

「あ、ま………〜〜〜!? んぐ、んむぅ!?」

 

 想像するのといざ実践するのでは全然違う。リリウスの顔が接近した瞬間慌てて止めようとするが遅い。

 

 口の中のチョコを捉える舌。どころか、溶けて唾液に混じったチョコまで貪欲に…………フィアの口内は蹂躙された。

 

「レイ? 見えないよ」

 

 レイは顔を真っ赤にしながらガン見しウィーネの顔を羽で隠す。エウロペはあらあら、と微笑みながらリリの視界と耳を遮る。

 

「んぇ………」

 

 顔を真っ赤に目を回すフィアから口を離したリリウスは唾液の橋を拭い取る。

 

「リ、リリウス! その、今のようなのは教育に悪いかと!」

「え? え? 兄様、何をしたんですか?」

「百合の花が、咲き乱れていた」

「何をおっしゃってるんですかフェルズ様!?」

「す、凄かった。なんか、どんどん気持ちよく………」

「フィア様!?」

「しかし、こういったことで潔癖種族(エルフ)のフィルヴィスが大人しいのは珍しいな」

 

 と、フェルズはフィルヴィスの反応を見ようとして……………。

 

「…………………フィルヴィスは?」

「? 最初からいねえぞ」

「え、最初から? じゃ、じゃあ私達が今まで話してたフィルヴィスは、幻?」

「そこまで最初じゃない」

 


 

キャラ紹介

マクール

基本的にはスペックは素で第一級相当。魔眼込みでLv.8〜9(精神状態により最低値Lv.7最高値それ以上)。恩恵のないフィアナ達があの強さだからね。素のスペックが高いマクールはよりやばい。あの2人も素のスペック高そうではあるけど。

身長もリリウスより高いので当然リーチは長く、武器も槍なので攻撃範囲は広い。自己流で斬光の様な技も開発している遠近隙のない戦士。実は生前本気を出したことは幼少期ぐらいしかない。

リリウスがあらかた持っている才能は基本的に持っている。加えてリリウスが持ち得ない戦闘の才能もある。自分から娘に移ろうとした槍を押さえつけ無理矢理へし折った際、魂に消えぬ傷が残され以降転生を繰り返しても本来なら長生き出来ない。リリウスは恩恵がうまい感じに噛み合った。

因みにマクールはもし恩恵を得た場合『魔力』を通してエルフ達の扱う『恩恵を必要としない先天魔法』を解析して独自に開発したりとエルフや魔法大国(アルテナ)に中指立てるが如きの所業を行う。ただし本人は「? なら自分達でも作りゃいいじゃん」と、何時かのリリウスが美味しい料理の作り方を聞かれた時みたいな反応をする。前世と今世だからね。

鬼滅の縁壱とか呪術のダブラみたいなハズレ値。ブラフマーストラもみただけで感覚は理解している。嫁には勝てない。

 

アズライグ・ルイン

マクールが幼少期殺し合った竜の遺骨(ドロップアイテム)から作られた槍。骨同士をぶつけ合わせ削り合わせ最後に残った一番硬い部分に布を巻き付け持ちやすくしただけ。折れず曲がらず良く撓りマクールの力に耐える。実は血を吸うとマクールが付けた罅などを自動修復したり硬度が増したりするのだが、マクール自身特に言及せず《マクールの書》に記載されていない為、物語のマクールが振るう槍は硬いだけの槍。

 

《紅竜》アズライグ・ゴッホ

マクールと殺し合った竜の強化種。

全てが紅に染まるマクールの視界の中、一際強い紅の鱗を持っていた竜。

マクールから逃げ魔石を喰らい、マクールをとり逃がしてはより強くなったマクールに殺されかけ、を繰り返していた末にマクールが勝利。マクールは殻を破り古代英雄達同様自らの器を昇華させたマクールと縁強い竜。

より強い竜に生まれ変わることを願いながら死んだ。(ダンジョン)が聞き入れてくれていたら階層主にでもなったかもね。骨は最初は白かったが魔物の血を吸う内に紅に染まった。

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