ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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望まぬ再会

 時を少し遡る。

 フィルヴィスは己の分身をレイに同行させた。何気にフィルヴィスのステイタスはLv.8と、位階で見ればオラリオ2位の実力者。中層では過剰と判断したのだ。

 

 そろそろ分身の目も怖かったので今回は本体が闇派閥(イヴィルス)関連で動く。とはいえ怪人エインはあまり信用されていないので関われることは少ないのだが。

 

「ここか…………」

 

 そして見つけた、緑肉の領域。

 本来緑肉の維持のためには栄養が必要で、食糧庫(パントリー)を中心として広がるはず。未開拓領域とは言え、食糧庫(パントリー)ではない。モンスターが集まる都合上、真っ先に発見されるからだ。

 

 少なくともこの向こうに食糧庫(パントリー)はない。つまり、何か別の方法で維持するための栄養を賄っている。

 

 一応調べておくか。

 『門』を破壊し内部に侵入するフィルヴィス。仮面とローブで正体を隠したまま内部を進む。

 

「…………………来たか」

 

 侵入した者を葬るべく現れるモンスター。だが、食人花ではない。

 

「…………なんだ、此奴は」

 

 食人花を体から生やしたモンスター。

 コボルトの様な小型種から、ライガーファングなどの大型種まで。

 

「【一掃せよ、破邪の聖杖(いかずち)】【ディオ・テュルソス】」

 

 しかし、詠唱どおりに一掃。この程度なら彼女の敵ではない。と…………

 

「何をしている、エイン」

「……………お前は」

 

 現れたのは似たような格好をした人物。種族、性別も解らぬエニュオの側近である怪人(クリーチャー)。確か名前はエリゴネ。

 

「………魔石を求めて彷徨っていてな。たまたまここを見つけた………余分な魔石があるなら分けて欲しいが」

「……………………」

 

 まあ、信用されてないよな。本当に面倒だ。

 と、エリゴネは唐突にフィルヴィスに魔剣を振るう。

 

「!! 貴様………!」

「ああ………面倒だ。煩わしい…………怪物のくせに、醜い化け物のくせに、人のつもりかあああああ!!」

「!?」

 

 唐突に向けられた怒りの感情に戸惑うフィルヴィス。エリゴネはフィルヴィスに接近し拳を振るう。回避した背後で緑肉が弾け、むき出しになった岩壁がひび割れる。尋常ではない『力』。

 

 そのまま禍々しい魔力を放ち魔法を放ってくる。

 かなりの高威力に間違いなく素体は魔法種族(マジックユーザー)

 

 エニュオ…………ディオニュソスの側近の魔法種族(マジックユーザー)。ディオニュソスと共に姿を消したエルフが一人いる………。

 

「…………………お前………アウラか?」

「────」

 

 その名にエリゴネが止まる。やはり…………

 

「…………るな」

「アウラ?」

「見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見ないで見るな見るな見るな! 私を見るなあああああ!!」

「!!」

 

 激昂。

 猛攻。

 

 獣のような雄叫びとともに迫るエリゴネ。技も駆け引きも捨てた怒りのままの攻撃はしかし並外れたスペックで脅威へと変わる。さらに追加される融合種。Lv.4の今の自分ではすり潰されるのは時間の問題。仕方ない。

 

「【終わる幻想、還る魂──引き裂けぬ貴方(きずな)】」

 

 魔法を解除する。魔力で構成された分身が消え去りフィルヴィスに戻る。同時に分身との記憶の共有。え、バレンタイン? 何やってんの彼奴等。

 

 湧き出す膨大な魔力にエリゴネが吹き飛ばされ、仮面に亀裂が走り砕ける。

 

「…………フィルヴィス?」

「………………ああ、久し振りだな」

「なんで、生きて…………あの時? あの時から、貴方も汚れて? な、なんで………どうして! 貴方が………お前が! お前が戻っていれば、私はこんな、こんな……うぅ、うううううっっ!!」

 

 怒り泣き出し、情緒が不安定。頭をガリガリと掻き毟る。

 

「私じゃない私じゃない私じゃない私じゃない私じゃない私じゃない私じゃない私じゃない私じゃない私じゃない私じゃない私じゃない私じゃない! 全部、全部愚かな娘(エリゴネ)が! 私は悪くない!」

「アウラ?」

「ディオニュソス様、ディオニュソス様………が。だから、私は…………ディオニュソスが、お前を見つけていれば私は! あぁ、あぁ………違う。違うの………! 生きてて憎い(うれしい)! 死んでいれば(会いたかった)! 見ないで、私を…………」

 

 アウラはふと葡萄の香りを思い出す。ピタリと動きを止め立ち上がる。

 

「アウラ………?」

「………………くだけ」

 

 響く轟音。フィルヴィスの足元の緑肉が消え、むき出しになる縦穴。一階層分ではない、緑肉を伸ばし掘削した下層まで続く縦穴。

 

 穴の奥底から響く轟音と、見える炎。階層が爆破されている?

 

「アウラ!」

 

 地の底へ落ちながらフィルヴィスは叫ぶ。万が一フィルヴィスが登ってこないよう監視するためか顔をのぞかせるアウラは首を傾げた。

 

「必ずお前を救い(迎え)に行く! 私のように、あの精霊から解放する! だから、待っていろ!」

 

 グチャリと緑肉が閉じる。

 

「………………もう、遅いんですよ」

 

 

 

 

 炎の中に落ちたフィルヴィスは改めて周囲を見る。炎の中から何かが物凄い速さで飛び出してくる。

 

 黒い骨の様な体をしたモンスターだ。

 鋭い爪を持つ動く化石のようなモンスターはこの階層唯一の異物であるフィルヴィスを破壊せんと睨む。

 

「………………邪魔だ。そこを退け(失せろ)

 


 

アウラちゃんはね、フィルヴィスと違って目の前で仲間が死ぬ光景を見せられてないからギリギリ耐えられたよ。なので主神にお酒に誘われた。

 

マクールの魔法解析

 前回のマクールが『魔力』を通して魔法を開発するというのは、わかりやすく言うなら『とあ魔』の一方通行が未現物質を解析したのと同じ。そこにある情報を再演算して操る。なので詠唱を唱えて魔力を構築する過程を省く【無詠唱魔法】も扱える。ただし威力は下がる。

 因みに天の炎を借りたとしてもこちらは人が扱える力ではなく人に与えられた力なので解析、支配は出来ない。魔力も無限というわけではないので黒竜を傷付けるような大精霊の魔法も再現不可能。あれはエピメテウスやアルバート&アリアが凄いのだ。

 マクールはこの2人につぐぐらいのスペックのつもり。どっかの神が落とした『誓の剣』の様な神の道具に抗うには『瞋恚の魔槍』の濃度か経験が足りなかった。ずっと押さえつけてただけだからね。

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