ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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真心のチョコを君へ

「んじゃ行くぞ。アイズ、修行の続きだ。ついてこい。ベルは………遠征準備があったな」

「ええ………」

 

 モンスターを殺し、そのまま仕切り出す師に相変わらずだなぁ、と思うベルであった。

 

「あ、まって!」

「ん?」

 

 と、ウィーネが急に叫んだ。

 

「はい!」

「え………? これ、は……?」 

 

 アイズは差し出された可愛らしい包装の小包を困惑しながら受け取る。

 

「チョコ、あげる!」

「え、私もですか?」

 

 そしてレフィーヤにも渡される。

 

「はいっ、はいっ、はいっ、はいっ、はいっ!」

 

 フィン、ガレス、ベート、セレニア、アーディにもトテトテと駆け寄り渡していくウィーネ。

 

「…………まいったな。モンスターからチョコなんて」

「がはははは! 何を言っておるフィン、先程お主はこの娘っ子がモンスターには見えないと言っておっただろうが!」

「………ああ、そうだったね。そうだった。言質を取られていたなら、仕方ないな。ありがたく受け取るから、これは僕のだよ」

「…………………」

 

 リリウスはアーディの腕の中で少し不満そうに鼻を鳴らす。何時の間にまた抱きかかえられてるんだ彼は。

 

「…………要らねえよ。もう一つ受け取っただろうが」

 

 ベートはそういうとチョコをリリウスに向かい投げる。何でも食べれるリリウスは包みごとムシャリと食べた。

 

「ざんねん………じゃあ、そこのネコさんたちにも!」

「やったニャ〜〜〜〜! 追い求めていためちゃくちゃ美味いチョコ、ゲットニャ〜〜〜〜〜!!」

「いやー、長い道のりだったー。チョコ一つじゃ割に合わないほどすげー冒険だった………いやほんと、マジで」

 

 アーニャとクロエも受け取り、ウィーネは嬉しそうにニコニコしている。

 

「チョコをもらうとね、みんな仲良くなれるんだって! みんなうれしくなれるの! だから、ハッピーバレンタイン! たすけてくれて、ありがとう!」

「ウィーネ!」

「嗚呼……貴方は私達の中で一番幼くて、そして誰よりも成長していますね、ウィーネ」

「ウィーネ様………」

 

 ベルとレイと春姫が子供の成長を見守る親みたいな目をしていた。アイズも暫く彼女を見つめ、微笑む。

 

「…………うん。ハッピーバレンタイン……」

「って、あ! そういえば、あのミュラーとか言う男は!」

「逃げた」

「すごい逃げ足だった」

「追わないんですか!?」

「? 問題ないだろ」

 

 リリウスはアーディにあ〜ん♪されながら何をそんなに慌てているのかと首を傾げた。

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ…………危なかったねえ。間一髪だったよ………」

 

 まさかの瞬殺。巨体ゆえに大量に舞った灰に紛れて逃げられたが、いつ追いついて来ることかとヒヤヒヤした。

 

「ほ、本当によろしかったのですか? 他の同志はおろか、施設に残っていたモンスター全てを放棄してしまって………」

「賢ければ各自勝手に逃げ出してるでしょ。研究成果も持ち出してさぁ。あんな真性の化け物達とまともにやり合うだけムダだよ、ムダ。スパッと諦めて、命あっての物種と割り切らなきゃ」

 

 同志が心配なのかしきりに振り返る男に対してミュラーは面倒そうに片手をヒラヒラと振るだけ。

 

「それに捕まりさえしなければ、研究は続けられるしね」

「ええそうね! 捕まらなければ、だけどね!」

「「!?」」

 

 聞こえてきた声に視線を向ければ、得意気に胸を張るアリーゼ・ローヴェルの姿がそこにあった。

 

「【アストレア・ファミリア】!? 何故!」

「正義の目は悪党を見逃したりしないのよ!」

「逃走経路見つけたのリリ坊の分身だけどな」

「その経路から人が来るのを察知して待ち伏せ出来たのもリリウスの分身のお陰ですねえ」

 

 ヨッと片手を上げるリリウス。つい先程研究所を蹂躙してくれた小人族(パルゥム)から逃げおおせたと思えば、先回り? いや、彼女達の発言からして分身を用意してたのか。

 

 一か八か、戻って別の道から…………。

 

「ぐはぁ!」

 

 と、ミュラーの背後にいた男が吹き飛ばされる。

 

「そう簡単に、逃げおおせると思ったか」

 

 通路の奥から現れたのはリヴェリア。

 

「…………いいのかなぁ? 僕だけに構って。他の残党が、危険な研究資料を持って今も逃げ出して──」

「その心配なら無用だ」

 

 周囲を取り囲むように現れる異端児(ゼノス)の群に、彼等を率いるエピメテウス。

 

「これだけ人目がなければ此奴等も隠れる必要がない。人目を避けたのが仇となったな、悪党」

「お手柄だ、フィア」

 

 フェルズも追いついてきて、里のリド達を呼んだフィアに労いの言葉をかけた。

 

「はは、こりゃ駄目だね。戦う前から、どうやら詰んでたみたいだ」

「………此処はオラリオだぞ? お前、誰に喧嘩売ることになるか分かってなかったのか?」

 

 リリウスの分身の言葉にミュラーは肩を竦める。

 

「さて、レイを通じて眼晶(オクルス)で概要は聞いていた。ギルドの監獄に入ってもらおう。君には協賛者(スポンサー)のことも含め、闇派閥(イヴィルス)について、たっぷり聞きたいことがある」

「暴れてみろ。その手足を砕き、悲鳴も上げられぬ体にしてくれる」

「それか、この腹黒姫様の拷問でも受けてみるか」

「俺がやってもいいぞ」

 

 リリウスの分身は黒い氷の拷問器具を作り出す。

 

「はい、降参、こーさーん。痛いのも疲れるのも無理だよ。もう連れてっちゃってー」

「……………よくわかんねえ奴だな。まあ、手間は省けるけどよ」

「僕自身は非戦闘員もいいところだし? むしろ連れが倒れた今、君達に保護してもらわないとモンスターに食い殺される。それに………僕の(ここ)は無事だ。なら、生きてさえいればまた知的好奇心を満たすことも、出来るんじゃないかなぁ」

 

 彼は何処までも本気にならないのだろう。一応の仲間が死のうと、所属していた組織が潰れようと、今の研究が潰れようとまた何処かで続きや新たな研究が出来ればそれでいい。

 

「…………かつての自分を見ているようで、いい気分にはなれないな。ここまで品性がなかったとは思いたくないが。ともあれ、君を地上に連行する。これで冒険者連続失踪事件も終結だ」

 

 

 

 

 

「そういやフィアのだいほんめーチョコ食いに行くんだった。やっぱいったん解散」

 

 と、正規ルートを目指す道中リリウスが呟く。アーディはハッとした。

 

「そうだ、フィア! リリウス、フィアとキスしてない!?」

「? してない」

 

 あれはただチョコをもらっただけだから違うし、と思うリリウス。ほっとするアーディ。

 

「ウンウン。何より何より。さ、早くアリーゼ達と合流して、フィア達の残りのチョコ食べちゃおうか」

恒例、100話区切りの特別編

  • リリウス、グルメ時代に立つ(トリコ)
  • マクールの竜退治(幼年期の冒険)
  • 迷宮偶像(アイドル)
  • 平行交差(原作時空)
  • 問題児たちがオラリオに来るそうです
  • リリウスは使い魔(ゼロ魔)
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