ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
迷宮街。総称される入り組んだダイダロス通りには普段響く子供たちの声はなく、住民の代わりに冒険者達が揃っていた。
『武装したモンスター』との戦闘で大きな被害を受けたダイダロス通りは、現在修繕中。入り組んだそこは物資の搬入もままならず、住民達は仮設住宅に避難している……………というのは建前とは言い切れないが本命ではない。
「何故我々は第一次侵攻に参加できん! あの
「我々の任はダイダロス通りの警備だ。一般人を立ち入らせないのはもちろん、内から外に逃れようとする者も見逃すわけには行かない。これは『包囲網』の一環だ」
赤髪のアマゾネス、イルタをなだめるのはシャクティ。
「それに我々のほかに【ヘファイストス・ファミリア】も第一次進攻から外されている。」
因みに【ヘファイストス・ファミリア】の
「俺は外されなかったがな」
因みにダイダロス通りに一番の被害を与えたのは鐘の音。誰の仕業なんだろうなー。目撃証言によると灰色の髪の
「お前に関しては他の団員の手前も何もないだろ
何せ世界最強。比喩なく、オラリオの総力とも渡り合えるであろう怪物。使わない、などと言えるわけもない。言う団員がいたとしても無視される。
「来たか……………何をしている」
「運ばれてる」
「あ、リリウス!」
と、副団長として他の団員達に頑張ろうね! と激励を送っていたアーディが駆け寄ってくる。
「…………いいの輝夜、その運び方で」
「何か問題が?」
リリウスは輝夜の脇に抱えられていた。
「何故そいつを小脇に…………」
「新しいスキルが暴走の危険があってな。此奴は身内に甘いから、触れ合っておけば抑えられるだろう、とアストレア様が仰った。事実スキルが暴走仕掛けても団長のおかげで事なきを得た」
「あれ、じゃあ輝夜留守番? リオンも遠征で、第一級がますます減っちゃうよ」
「いや、私も突入組だ。というわけで、ほら」
と、輝夜はアーディにリリウスを差し出す。されるがままのリリウス。
「いいの!?」
「地上に残る者で此奴が気を遣う者など限られているからな」
アーディはリリウスが傷付けぬよう気遣う一人。そう言われるとなんだか照れくさい。
「えへへ〜。ほら、リリウス。おいで〜」
と、手を伸ばすアーディ。リリウスは輝夜を一瞥して、ん、と手を伸ばす。アーディはリリウスを抱きかかえる。
「…………………はぁ、わかっていると思うが不埒なことはするなよ」
「もうお姉ちゃん! リリウスはそんなことしないよ」
「いや、信用してないのはお前の方だ」
「え、私?」
なんで? と言いたげなアーディ。リリウスを抱きしめ頭に顎を乗せている。フワフワの髪の毛から子供特有の香りが…………しない。そもそもリリウスは体臭がほとんどない。体から老廃物が全然出ないからだ。ダンジョンに長期潜ると血と灰の匂いがつくがアリーゼに風呂にぶち込まれたばかり。
「私、リリウスが嫌がることしないよ!」
「嫌がらなかったらするのか」
「なあ姉者、典型的な子供をそういった目的で狙う犯罪者のだいたいの言い訳ではないか、『
「イスタまで!? 私、そんなことしないもん」
鏡を見て言え、と輝夜は思ったが輝夜も輝夜でさっきまで誘拐犯みたいだったとはシャクティは言わないでやる。
「アーディ、あっち」
「は〜い」
アーディはリリウスを抱えて地下へと向かった。
「アミッド」
「リリウス? と、アーディさん……………何をしているのですか?」
「抱っこ!」
「それは見れば分かります」
なんで抱えられているか聞きたいのだ。
アーディは輝夜から聞いたままの報告をする。
「シャバラ、シュヤーマ」
「わふ!」
「ワン」
リリウスの言葉にシャバラとシュヤーマが前に出る。世にも珍しき、第一級の獣だ。
「護衛」
「…………私はLv.4です。貴重な戦力を割くよりも」
「俺が心配。駄目か?」
「…………………………わかりました。元より、予定にない戦力ですしね」
アミッドは二匹を撫でてやる。二匹はペロリとアミッドの手を舐めた。因みにアミッドの汗が混じった湯は仄かにしょっぱさがあり甘酸っぱい。浸かれば疲労回復、しもやけ、腰痛、神経痛、肩のこり、薄毛に肥満の解消効果があるとか。
「総員、準備」
手に持つ水晶へと語りかけるフィン。後は作戦開始と伝えるだけ。しかし一度、そこで言葉を止める。
「……………団長?」
「【魔槍よ、血を捧げし我が額を穿て】」
「え!?」
叫んだのはティオナだが、誰もが同じ意見。その魔法は短文詠唱でありながら切り札であり、
それはほんの数日前の事。
「じゃあ理性を手放すな」
高揚魔法を使いながら高揚を抑え理性の手綱を握れと無茶振りな暴論。しかしフィンは直ぐに無理だと言えなかった。知っているから、似たような状況を。
「だけど、あの時は怒りが振り切れて………」
「関係ない。やれ」
「ええ…………」
「
「オリジナル? 出来ていた?」
何の話か見えてこない。【
「それとも、
奇しくも何時か自分が仲間を鼓舞した時に使った時のような言葉をリリウスから投げかけられるフィン。
「それでも難しいなら、高ぶらせろ。魔法ではなく、己の意思で。お前は何のために戦って、何をしたい?」
何のため…………一族の再興。いや、下を向く同族にこっちを見ろと、顔を上げろと叫ぶ声を届かせるため。その為にしたいこと……………英雄になる。なりたい………フィアナのような、リリウスのような………ベル・クラネルのような。
魔法は発動した。しかし、目を開いたフィンの紅眼に灯るは確かな理性。
「今から振るう一撃が、開戦の合図だ」
フィンは槍を構える。扉が開いた今、ただ空間が広がるだけの眼前に突きでも放とうというのか。
「
斯くして放たれる槍の一突き。走る一条の閃光。
アダマンタイトの壁床を光が蹂躙し尽くし、光が消えれば広がる円形の闇。果ての見えぬ刺傷。
「作戦開始!!」
阻むものなき横穴へと、フィンが駆け出した。
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