ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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第一次進攻②

 進攻は順調。

 門を次々と使用不可能にし、敵を討つ。

 

 ダンジョンから侵入した異端児(ゼノス)達もモンスターを生む生産所(プラント)を破壊していく。

 

 脅威たるLv.7を超えるステイタスを振るう怪人(クリーチャー)レヴィスもアイズが釣った。精霊の風を使うアイズが魔法を広げれば精霊の分身(デミ・スピリット)達が騒ぎ、その場所が露呈する。

 

 ()()に必要な精霊達を儀式が始まる前に失うわけにもいかず、何より1柱失っただけで『あれ』が目覚める可能性がある。

 

 そしてアイズを止められる実力を持つ構成員は闇派閥(イヴィルス)に存在しない。故に最強戦力であるレヴィスが相手するしかない。

 

「レヴィスちゃんなら【剣姫】を潰せる。それは確か………でもすぐには無理」

 

 その間に出来る限り地図作成(マッピング)を終え人造迷宮(クノッソス)を丸裸にする気だろう。タナトスは攻勢にも見える進攻の僅かな違和感から、本命が次であることを神の全知を以て見抜く。

 

「また面倒な連絡手段を手に入れたみたいだね。【万能者(ペルセウス)】の新作かな?」

 

 アイズとレヴィスが接敵した瞬間、進軍速度が上がった。分けた部隊を各個撃破しうる戦力の居場所が判明した今、律儀に退路の確保に時間をかける理由はない。

 

「これ、君の戦い方じゃないね。別の指揮官が…………いやぁ、【ロキ・ファミリア】が従うわけないか。となると、方向性変えたのかぁ………」

 

 犠牲を許容した動きではない。少しでも減らす………可能なら出さないという強い意志をその動きから感じ取るタナトスは、しかしそれでフィン・ディムナの脅威が薄れたとは微塵も思わない。

 

 

 

 

「おらぁ!」

 

 ダンジョンの壁を破壊し現れるのはベート。ダンジョン3階層、北東エリアに出たようだ。

 

「え、ダンジョンが冒険者生んだ?」

「でもあれって【凶狼(ヴァナルガンド)】」

「【凶狼(ヴァナルガンド)】はモンスターだった?」

「どうりで滅茶苦茶凶暴なわけだ」

 

 モンスターと戦っていたLv.1パーティは成る程と納得した。

 

「ぶっ殺すぞテメェら!」

「「「ひっ、さーせん!!」」」

 

 そして脱兎のごとく逃げ出した。

 

「テメェ等は此処で見張ってろ」

 

 と、ベートは元【ディオニュソス・ファミリア】の連中に言う。結局、来たのは半数ほど。それを各部隊に分けて、外への扉発見の度に残しだいぶ減った。

 

 その分【ロキ・ファミリア】は残せているが、そもそも戦いを恐れてダンジョンから逃げた落伍者を使うのはベートからすれば気に入らない。

 

「お、俺達は………まだ、ディオニュソス様に………」

「 文句を言わねえって条件でついてきてんだろ。テメェ等如き死ぬだけだ。解ったら雑魚らしく此処で震えてろ」

 

 要約すると危険だからこっちに来ちゃ駄目だよという意味だ。

 

 

 

 

「この、魔女めえええ!!」

 

 狭い横穴から飛び出し後衛のアミッドへ襲いかかる闇派閥(イヴィルス)。少しでも傷をつけることさえ出来たなら失血死させる呪いの装備を無効化され、同胞の決死を尽く無為にされた怒りに顔を歪めた強襲。潜む為に自爆装置をつけられなかったことを既に匂いで見抜いていたシュヤーマが飛び退く。呪装備は背に乗っていたアミッドに掠ることなく空を切る。

 

「ヴウゥ………ガァ!」

 

 遠吠えと同時に奔る閃光。雷速の魔法が悲鳴を上げる暇すら与えず闇派閥(イヴィルス)を焼き付くす。

 

 Lv.5にランクアップした際に得た【雷電咆哮(バジリー・ナルダ)】というスキル。精神力(マインド)を魔力に変換し、詠唱を介さず雷に変えるスキル。

 

 ソーマ曰く魔素を介さず変換するエピメテウスとリリウスが特別らしい。精霊だって魔力で出してるとの事だ。

 

 故に魔法反射、無効化には効かぬがそんな上等な装備など持つはずもない構成員は即座に焼き尽くされた。

 

「あの犬私より強くね?」

「Lv.5ですもの………」

「メレンで見たシャチはLv.4で、鳥は3だっけ? 私もリリウスさんのペットになったら強くなれるかなあ」

「いろんな意味でやめておくことをお勧めするよ。エルフィは人格ごと作り替えられそうだ」

 

 エルフィの言葉にフィンはとても遠い目をして呟いた。

 

「っ! 総員、横の通路に飛べ!」

 

 と、フィンが叫んだ瞬間軽口も瞬時に止まり横に飛ぶ。通路を小さな何かが無数に横切った。

 

「アハァ〜…………キャハ、アハハハハハ!!」

 

 通路の奥から現れたのは精霊の分身(デミ・スピリット)。苔に覆われ、木の根のような骨格で四足獣を騙るモンスターの上に生えた少女の体躯。

 

「ヒハ、アハハハハ!!」

 

 知性は感じられない。

 リリウスが外で戦っていたという劣化品だろう。魔法は使ってこないが素体となったモンスターの能力を凶悪なまでに高める。

 

 恐らく苔の巨人(モス・ヒュージ)。その能力は…………分身だが、先程打ち込んできたものは……?

 

「キャア、ハハハハ!!」

 

 飛んできた何かを槍で弾きながら一発を槍の穂先に突き刺す。

 

「種………」

 

 種皮が割れ根と蔓が絡みつく。フィンに向かい伸びてきた蔓と根を払うように槍を回し切り裂く。

 

「宿り木か………」

「もし寄生されても癒せますよ」

「問題ないよ。当たらなければどうということは無い」

 

 ニタニタと笑う精霊の分身(デミ・スピリット)が再び種を発射する。

 

 広範囲にばらまいた種の雨。閃燕(イグアス)の如き速度の無数の種を、フィンは僅かな動きで避けて精霊の分身(デミ・スピリット)へ迫る。

 

「キャハハ!!」

 

 モンスターの下半身がフィンを踏み潰そうと動くが、その前にフィンが精霊の分身(デミ・スピリット)の背後に移動した。

 

「さて、先を急ごう」

「え、でも………」

「大丈夫。もう倒したよ」

 

 ザァ、と、フィンの言葉に死を思い出したかのように精霊の分身(デミ・スピリット)の身体が灰へと散った。

 

「総員に通達。精霊の分身(デミ・スピリット)の劣化がいる。各隊の第一級であたれ」

 

 

 

 

 

「第一級で当たれってよ」

 

 フィンの報告をライラが伝える。【アストレア・ファミリア】の部隊の連絡係は彼女だ。報告だけでも十分な作戦を立てられるからだ。

 

「確かに、第一級じゃないと面倒な力はありましたねえ」

「ふふん。それでも私の炎の前には悪は燃え尽きるまでよ!」

「アリーゼちゃん、装備燃えてる! アリーゼちゃんが燃え尽きちゃうよ!?」

「!!?」

 

 床を転がり消火するアリーゼ。

 

「ふぅ。さて、先を急ぎましょう!」

「なかったことにした」

「なかったことにしたな」

「なかったことにしましたねえ」

「リリウスはあれと外で何度も戦ってたんだよね。流石、可愛くて強い! 戻ったらその時の話、たくさん聞かせてもらおう、ベッドで!」

 

 皆が呆れる中イスカは改めてリリウスの強さを再認識しアマゾネスの本能を暴走させる。何名かがピクリと肩を揺らした。

 

「まあ、リリウスちゃんは寝る時は話をするより聞く方が好きだけどね」

「そろそろ寝るかなと思って言葉を止めると無言で服の裾掴んで無言で続きを強請るよね〜」

「全員経験済みの事で姉マウント取るなバカ共」

 

 ライラが呆れながら肩を竦める。アリーゼもウンウン、と頷いた。

 

「そうね。自慢するなら皆が経験したことないような事でするべきだわ!」

「戦場でする話ではありませんねえ。せめて地上に戻ってからするべきでは?」

 

 各隊、余裕がある。

 ()()()()()。アリーゼだってこの違和感に気付いている。

 

「どうみる?」

「……………扉、開いてる?」

「聞こえる範囲でなら、今はまだ遠隔操作されてねえな」

「う〜ん……………あの冒険者を養分にする緑肉が何処かで使われると思ったんだけど…………このタイミングでもなかったわね。じゃあ…………」

 

 チラリと元【ディオニュソス・ファミリア】を見るアリーゼ。地図作成(マッピング)よりもどちらかといえば攻勢を目的としている彼女の部隊には最初から少ないが、ベートの部隊と比べ残っている。

 

「この近くでダンジョンの出入り口って発見されてる?」

「西に一つ」

「よし。送るから、貴方たちはそこで待機」

「お、俺達はまだ!」

「命令よ。従わないなら、今残っている他の隊の【ディオニュソス・ファミリア】全員此処から出ていってもらう」

 

 有無を言わせぬアリーゼの言葉に元【ディオニュソス・ファミリア】は言葉を飲み込んだ。

 

 

 

 

「結局、ディオニュソス様には会えずじまいか」

 

 ベートの隊にいた最後の元【ディオニュソス・ファミリア】の団員達。

 

 因みに、アリーゼに真っ先に声をかけたかつて仲間を見捨てて逃げた後戻ってきた仲間にボコボコにされ派閥を追い出された男はそもそも来てない。怖かったのだろう。

 

「あまり文句を言うな。儂等は元より足手まといになっていた…………」

 

 役に立たないわけではなかったろうが、自分達を置いていった後の【ロキ・ファミリア】の速度は明らかに速かった。

 

 それを自覚し俯く中、ふと嗅ぎ覚えのある匂いが鼻腔を刺激する。

 

「……………ああ、この香り」

「ディオニュソス様の、酒………」

 

 ステイタス更新の度にお祝いだと出された酒の匂い。嗅いだだけで高揚し、飲めば天にも昇る心地の極上の美酒。

 

 記憶が思い出すより先に体がその酒を求める。

 

 

 

 

「……………分かれた後に誘い出しても、意味など無い気がしますが」

 

 酒を撒いてくる様に命じられ、その通りにしてきたアウラはしかし何故今になってなのか分からなかった。ディオニュソスはああ、と笑う。

 

「私の可愛い眷属達に、素敵な詩を歌ってほしいからね。別に【ロキ・ファミリア】に痛手が与えられなくとも構わないさ。彼のオルギアを聞くまでの前奏さ」

 

 

 

 

「…………………」

 

 魔法を解除しないまま再び白髪に戻ったリリウス。結局のところ一番探索能力に優れているのは元の自分なのだ。

 

 懐から取り出した晶眼(オクルス)は、突入組の誰とも繋がっていない。

 

「……………エピメテウス」

恒例、100話区切りの特別編

  • リリウス、グルメ時代に立つ(トリコ)
  • マクールの竜退治(幼年期の冒険)
  • 迷宮偶像(アイドル)
  • 平行交差(原作時空)
  • 問題児たちがオラリオに来るそうです
  • リリウスは使い魔(ゼロ魔)
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