ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
バルカに死神への忠誠心はない。
ダイダロスの手記と言う呪われた書を見たダイダロスの血族はその心を始祖の宿願で支配される。
バルカ・ペルディクスは母の肚から出てきたその時に父だったかもしれない男に手記を見せられた。自我なき赤子に『ダイダロスの思想』がそのままねじ込まれ、その時からバルカはダイダロスの虜囚。
精神が成長することなく、初老でありながら幼少期の子供のそれ。
バルカは地上に出たことがない。
バルカはまともな道徳を有した神や人と交流したことがない。
バルカは愛と友情、道徳の倫理を知らない。
爪を失いながら岩盤を削り、餓死寸前まで
ダイダロスの運命に耐えきれず自害した同胞から瞳を抉り新たな『鍵』とした。
バルカ・ペルディクスの全ては
「
故にバルカに冒険者を始末する以外の手段はない。その為の仕掛けは存在する。
バルカの異父兄弟……ディックス・ペルディクスが残した自壊装置。支柱を取り外し
以前
だが
全ての冒険者があそこまで規格外な訳では無い。仮に生き残るとしても第一級が数人程度だろう。やる価値は十分にあると、自壊機能を起動させる台座までやってきた。
だが、躊躇う。
度重なる破壊を憐れんだタナトスにより与えられた
自分の代で
その迷いが、運命の分かれ道。
「っ!!」
グシャリと片腕が食いちぎられる。
何もない空間から垂れる赤い血が床を汚しながら離れていき、バルカは反射的にダイダロスの手記を手放しナイフを投げつける。
金属音と共に兜が外れ、姿を現す巨躯の猟犬。咥えていたバルカの腕を牙の隙間から覗く蒼炎で焼き尽くす。
「間一髪、と言ったところでしょうか………」
空間から滲む様に姿を現すのは猟犬がつけていたものと同じ黒兜をもつ美女。
「【
靡く白のマント、アクアブルーの髪、銀の眼鏡。アスフィ・アル・アンドロメダが、バルカの前に姿を現した。
「バルカ・ペルディクスですね。神イケロスの情報にあったディックス・ペルディクスの異父兄弟にして、
アスフィの背後から次々と姿を現す【ヘルメス・ファミリア】。全員があの黒兜を片手に持つ。あれで姿を消し、移動していたのだろう。
「どうやって、この場所を…………」
「幹部らしき何名かに共通する匂いを、そちらのシャバラに辿ってもらいました」
「ワフ!」
本来ならアミッドの護衛。しかし、リリウスを通して自壊機能について聞いていたフィンにアミッドを守る為に
「まさか、最初から………」
「ええ、【
この第一次侵攻の真の目的は
つまりフィンは自分達を含めて全ての突入部隊を『囮』に使った。怒涛の快進撃も、部隊を複数に分けたのも、【ヘルメス・ファミリア】の存在を気取らせぬため。
「…………『鍵』は、どうした?」
【ロキ・ファミリア】が確保していた6つの筈だ。前回の出撃で4つ、女神イシュタルが確保していたのが一つ、
「
「────」
告げられた言葉を、バルカは理解できなかった。
「作戦決行までの10日間、私達も何もしなかったわけではありません。【
ドロップアイテムやダンジョンの採取物などで、再現可能。微弱な魔力波長を放ち扉を開閉する。
この10日間、【ロキ・ファミリア】は
「覚えた!」
アスフィの背後で獣人の女が叫ぶ。その手には先程バルカが手放したダイダロスの手記。
「手記は確保した! 道筋は全部把握したぞ! 敵の拠点は、9階層だ!」
「リリウス?」
スクリと立ち上がるリリウスは下を見つめる。死神の盟約は有効。バルカが対峙している今、もはや崩落装置は起動不可能だろうが、タナトスへの義理で待機。
だが、時は近い。
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