ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
アダマンタイトの壁床を貫く光線、容易く破壊しながら突き進む強靭かつ力感あふれる肉体………を、叩き落とすリリウス。
「「づぅ!!」」
鱗が罅割れた。
無論あの時よりも『力』の上がったリリウスの拳だ。アダマンタイトを顎で砕きながら下降する竜はギロリとリリウスを睨みつける。
グルンと身を捩る。あまりの巨体に
本命は尾。
「えええ!? リ、リリウス!?」
「撤退しろ! 巻き込まねえ自信は──」
魔力の高まり。竜の口内に灯る光。
「
髪が漆黒に染まり角が生え、手足や頬を黒い鱗が覆う。
リリウスの肉体が光の柱に飲み込まれる。光圧がリリウスを高く高く空へと打ち上げ、リリウスは雲を上から見た。
「………………」
リリウスの体内から膨大な熱が灯り蒼炎が溢れ出す。口内が青く輝き、光が臨界。再び地上から登った光線と地に落ちる熱線がぶつかり合い、弾けた。
夜空が消え失せ昼が数秒訪れた。竜はリリウスの気配を探す、と体に違和感。緑肉が張り付いて来ていた。鬱陶しいので身を捩る。ブチブチとちぎれガラガラと周りの石が崩れる。その際に、人間の巣が見えた。
母の上に纏わり付く虫けら共の巣。であるなら、やるべき事は一つ。光が放たれ…………炎が飲み込んだ。
「………!?」
そのまま炎が竜を包み込む。
「……………チッ。あの時のよりも随分と小柄だが、忌々しさは変わらずか」
煌々と燃える炎に包まれながらその鱗に火傷一つ負わない竜に、エピメテウスが眉間に皺を刻んだ。
「な、なんだよあれ………」
「なんなの、なんなのぉ!?」
「まだいたのか。足はくれてやった。さっさと逃げろ」
と、炎に包まれた元【ディオニュソス・ファミリア】達に告げるエピメテウス。第2級冒険者程度の力をくれてやった。その言葉に正気に戻った彼等は慌てて逃げる。
「オオオオオオ!!」
どれだけ光を放とうと、炎が焼き尽くす。苛立った竜はエピメテウスに尾を振るい、斬られた。
「!!?!!」
「多少頑丈な剣としてなら使えるか。見た目は似ていても、脆くなったな、リヴァイアサン」
三大
尤もエピメテウスの記憶にあるリヴァイアサンは
「あれは、まさかリヴァイアサン!?」
「ええ!? でも、メレンの骨よりおっきいよ!?」
ガレスの言葉にティオナはロログ湖で見た
「骨の一部から彫刻したからね、あれは」
と、フィンがレイに捕まりながら降りてくる。タナトスが開けた大穴からの脱出途中、横穴から現れたモンスターからロキを庇うために投げたフィンは反作用により勢いを失い緑肉に落ちていき、それを救ったのがレイなのだ。
「あの、ここにいては危険なのでは?」
「あれが6年前のベヒーモス同様、リヴァイアサンの力を取り込んだ…………取り込まれた怪物だというのなら、一先ず踏み潰されない位置にいればいいよ。それ以外の危険度は何一つ変わらないからね」
ならば最低限対処できるように背を向けず、何時でも行動に移れる位置で備える。飛んでくる瓦礫の矢を撃ち落としながらフィンは動かない。下手な刺激は、自分以上にオラリオそのものを壊しかねないのを理解しているからだ。と………
リヴァイアサンが再び地面に頭を打つ。地平線がなだらかな曲線を描いていたことをその目で見た後空から戻ってきたリリウスが
「カッ………」
鱗に亀裂が広がる。すぐに癒えた。だが脳が揺れたのかグラグラと揺れるリヴァイアサン。
「エピメテウス! 繋げろ!」
リリウスの言葉にエピメテウスが天の炎を燃やす。ふらつく視界の中、効きもしない、だが忌々しい気配を感じる炎を操るエピメテウスを睨みつけるリヴァイアサンだったが自分にはそこまで脅威ではないと判断し優先順位をリリウスに変更した。意識からエピメテウスを消し…………故に
「ガッ!?」
アダマンタイトが融解し、リヴァイアサンが
リリウスが歯茎から血が出るほどに噛み締め、目から血涙が流れる程に力みリヴァイアサンの巨体を引き寄せる。
「ヴリトラ!!」
ダンジョンの果てを破壊し、マグマの海となった地下を泳ぎ現れたヴリトラがリリウスの鎖に噛み付く。リリウスは鎖の上を駆け上がるとリヴァイアサンへ向かい剣を振るう。
「残光………」
鱗が一部切り裂かれる。肉に達し血を吹き出させるが内臓へは至らず、それでも巨体は後ろに弾かれる。
「残光、残光……………
連続して放たれる無数の残光に押し込まれバランスを崩すリヴァイアサン。その隙を逃さずヴリトラがリヴァイアサンをダンジョンへと引きずり込む。
「…………20階層。まだ高いな」
リヴァイアサンの背を蹴り跳ね上がり天井に着地したリリウス。
加速、急速落下、踵落とし。
バギィと階層の床に亀裂が走りリヴァイアサンの体が21階層に落ちる。反作用で飛び上がったリリウスの口内に炎が灯り、ヴリトラもまた蒼炎を口から漏らす。
二重の熱線が混じり合い、増幅し、リヴァイアサンの肉体を床に押し付ける。床を破壊しながらリヴァイアサンはさらに下層へと落ちていく。
26階層。リヴァイアサンは尾を巨蒼の滝(グレート・フォール)に叩きつける。無数に飛んでくる水の散弾。
水を得た魚のようにリヴァイアサンの動きが良くなる。滝を一気に昇りリリウスに噛み付く。
「!!」
巨大な歯の隙間に手が挟まり、リヴァイアサンは水底に沈む。尋常じゃない速度で泳ぎ、水がリリウスの体を押し付ける。まともに動けない、溺死させるつもりか!?
荒れ狂う海流からなんとか抜け出たリリウスはゲホゲホと海水を吐き出す。
巨大な横穴を通り
「
煎餅のようにあっさりと一部を噛み砕きながら、海竜は大海原へと突き進んだ。牙に引っかかっていたリリウスは並の冒険者ならそのまま押し潰れるであろう圧力で水を押し付けられながらなんとか牙を圧し折り海面に出た。
「…………………」
一部。そう、
「…………見つからねえわけだ」
さしものリリウスも息が出来なければ長く生きることは出来ない。酸欠でより暗くなる暗黒の夜の海中深層で、Lv.9という規格外の位階、
確信するにも、あまりに現実離れした、
今のオラリオの総力をもってしても届かなかった【ゼウス】と【ヘラ】、それに加え海戦に優れた【ポセイドン】の派閥をして数多の死者を出した………順序を考えれば、ベヒーモス戦よりも位階の高い英傑達をして敗色濃厚だった正真正銘の怪物。
あれを取り込むにしても時間がかかるだろう。その前に殺さなくては、世界が詰みかねない。ベヒーモス・オルタ同様オリジナルに劣るだろうが、それでも十分な化け物。
雲でも退いたか、強くなった月明かりを浴びながら息を大きく吸い潜ろうとするリリウス。水底に目を向け、気付く。違う、光源は
光が昇る。夜の闇を照らす幻想的で禍々しい破滅の光。神の送還を思わせる光の柱が無数に空と海を繋ぐ。
「あづ………!!」
光熱により急激に膨張した海が爆ぜ、吹き飛ばされるリリウス。液体から気体と姿を変えた海が空へと昇る上昇気流。光から逃れた巨大船があったとしても、空へと巻き上げられ砕かれていたことだろう。
海から昇る上昇気流が何を生むかなど、船乗りでなくとも知っている者は知っている。上空で冷えて凍り付いた水分が乱気流の中周囲の熱を奪い、冷えた空気がリリウスを海面へと叩き落とす。
たった一体の怪物が復活した。それだけで天は星々も月の明かりも忘れ、代わりに雷光を灯す。海は恐慌するように荒れた。
地の上にそれに並ぶものは他になく、恐れというものを知らない。何者も戦い、それを屈服させることは出来ない。
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