ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
魔力を使い果たし魔法が解除されたリリウス。
コリガンが慌てて受け止める。
「た、倒したの?」
「一次的な封印だ。全力でも1週間………色々消費した後だから、3日ってところか」
氷塊の中で、時が再び動き出しリヴァイアサンの肉が増えていく。そちらが全身を覆うのもそれぐらいだろう。
「お前、なんで…………」
「旅してて、オラリオに向かおうかなって移動してたら急に嵐になって…」
『そしたらやばい怪物が暴れておってのぉ。おまけに誰かが戦っていると来た!』
ネプトゥヌスが続ける。流石大精霊だけあり、そういうのを感じ取れるらしい。
「それで、私、リリウスさんの力になりたくて」
「よく俺だと思ったな」
『そりゃお前さん。世界の危機に
なるほど道理だ。この上なく分かりやすい。
「まあ、こうして世界の危機から敗走しているが」
備えが足りなかった。或いはリリウスが存在を認識した時点のリヴァイアサンなら、時間はかかるが押し切れた。骨を取り込んだ…………取り込まれた時点でリリウスの予想を大きく超えた。
まさしく『未知』の宝庫たるダンジョンの面目躍如。既知とすればいくらでも対応可能な
「……………あの、私を、食べますか?」
消し飛んだ腕は焼けて血は出ていない。地上に戻ったら何か食って回復を、と考えていたリリウスにコリガンが唐突に提案する。
許可を得たリリウスはコリガンの首に噛み付いた。ネプトゥヌスがウヒョーと騒ぐ。煩い。
「………んっ」
クロッゾの傷を癒した大精霊と異なり、コリガンに流れるのは中位精霊の血。しかし精霊は精霊………リリウスのスキルも相まり傷が癒え魔力も回復する。
己の中に流れていたそれが雄の中に流れ込む様に昏い悦びを覚えるコリガン。
「ええい、離れろ! 妾の
と、ドゥルガーが同族の血を引くコリガンからリリウスを引き剥がす。傷が癒えたリリウスは下を見る。
嵐の領域から逃れ、星々と月の光を反射するもう一つの夜空。少し向こうを見る。
「ドゥルガー、放せ」
ドゥルガーがリリウスの中に戻ると同時にリリウスは空を蹴る。
ダンジョンから溢れようとする原種たるモンスターを竦ませ追い払う、覇王の遺骨………の一部。
鱗の欠片がモンスターから人々を守る竜、
それを利用したダンジョンの横穴の封印。破られれば、当然現れるのは水棲モンスターの大群。
襲われるは港町メレン。
揚陸するサメや水蛇、水晶の棍棒を持つマーマンの群れ、陸を駆け抜け民家を轢き砕くケルピー。
上位派閥なら見慣れた下層の怪物から、何処から紛れたのかピラニアの頭をした蛇やタコの足が生えたサメとか。
「くそぉ! 此奴ら、強い!」
弱体化などしていない原種。オラリオで燻ってる大半の冒険者より腕節の立つメレンの漁師達でも相手にならない。滞在している
困惑するロッドの背後でサメとタコの
アマゾネスが対峙していたデカいワニが弾ける。
揚陸していた鮫が斬られる。
鋭い牙で少女を貫こうとしていたセイウチが投げ飛ばされる。
異変を感じたマーマン・リーダーが叫び、周囲を警戒した群れが雷鎚に焼かれる。
アマゾネスの一部が歓喜に震えた。これを行える強い雄を知っているから。
一際高い塔の上からメレンを見下ろす白い獣。体躯の長い水棲竜が塔に巻き付きながら大口を空け上顎を引きちぎられた。
「…………………」
リリウスは町に入った最後のモンスターを殺すと今度は海に飛び込んだ。
質と数の差に傷つきながら、それでも一匹でも多く足止めしていたシャチの兄弟を一度撫でるとリリウスはそのままロログ湖に居たモンスターを皆殺しにしてダンジョンの横穴を凍りつかせた。
下層のモンスターでも精霊の封印を破れるものはいないだろう。
リリウスは怪我だらけのシハチとモハチ、それからモンスターの群れに襲われていたメレンを見ると、そのまま何処かに向かった。
「はい、皆。もう大丈夫だからね、冒険者様達が向かってたもの」
ダイダロス通りの住人が避難する仮設住宅でシルは子供達を落ち着かせていた。神の送還らしき光の柱、その後すぐに現れた巨大な竜。飛び起きた冒険者、一般人、商人問わずギルドに怒鳴り込みロイマンの胃にストレスというドリルをグリグリする中、シルはまず仮設住宅を見に行った。
一体何が起きているのか、何が起こるのかとオラリオに不安が広がる。と………
「シル………」
「あ、リリウスさん」
「え、リリウス・アーデ!?」
降ってきたリリウスがシルに声をかけ、冒険者に憧れる子供達が反応する。
「ヘイズ貸してくれ」
「? それ、私に尋ねることですか? バベルの最上階の女神様に………」
「
飛んできた銀の槍。受け止めるリリウス。石付きを向けたまま投げ返す! ズドンと何かが吹っ飛んでいった。
「う〜ん。そうですねぇ、リリウスさんが、ベルさんと私を誰も中から逃げられない部屋に案内してくれるなら………いたい!」
コツンとリリウスがシルの頭を殴った。
「うう、ミア母さんに言っちゃいますからね」
「そのミアから馬鹿なことを言ったら殴っていいと」
「乙女にとっては馬鹿にできないことですよ〜だ」
「乙女はそんな事言わないしお前は乙女じゃない」
「あ〜! そういうこと言っちゃうんだ! ふ〜んだ、もうリリウスさんなんか、知りません!」
「………………シル」
と、拗ねたように唇を尖らせるシルにリリウスは嘆息しながら言う。シルはチラリと片目を開き言葉を待つ。
「年考えろ」
「それ、アフロディーテ様に言えます?」
「彼奴は見た目もキャラも合ってるし」
う〜ん、既視感。己の主神全肯定の銀の美の女神の眷族達を思い出すシルは肩を竦めた。
「必要なんですか?」
「範囲がいる」
「じゃあ今度、リリウスさんがヘイズさんの言う事を聞いてあげるならいいですよ」
「所属変えるのと凄いと褒める以外なら、そもそも俺は彼奴の頼みを基本的に断る気はない」
アミッドと同じく命の恩人なので。因みにリリウスはだからヘイズは凄い、とは言わない。頑張ってるとは言っても、凄いとは認めない。
「どうして?」
「
お前が言ってやれよ、とシルを見るリリウスにシルは肩を竦めた。
「…………………ま、いいでしょう。この騒ぎですからね、駆り出される前にお早めに」
「ああ」
リリウスはそう言うとヘイズを攫いにその場を後にした。
そういやヘイズの小説見て既視感があったんだよ、死体動かす茸。読み返したら俺描いてたね、穢れた精霊としてだけど。
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