ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
前回のあらすじ(真)
ヘイズ「むにゃむにゃ。外が騒がしい? あ〜、
窓ガラスが割れリリウスが入ってくる。
「え?」
「行くぞ」
そのまま担がれる。
「エ?」
夜のオラリオをかけ市壁を超えメレンへ駆け出す。
「ヱ?」
「むにゃむにゃ。もう休めない〜……はっ、夢か! ………………………………
存分に休暇を満喫したあり得ざる夢を見たヘイズは今日も今日とてお仕事があるのかと二度寝を決行。しかし扉がコンコンとノックされ仕方なく現実に戻ってくる。
「………………んぅ?」
よくよく見れば自室ではない。
広い部屋の中に天蓋付きの寝台。壁には鏡台、大きな窓から朝日が差し込む。高級宿?
何故? あ〜、隣に女神様が寝てないかな〜? はい、誰も寝てませんね〜。
再び扉がノックされる。
「は〜い、どうぞ〜」
あ、鍵空いてるのかな? と思ったが扉が開く。現れたのはエルフ…………ハーフエルフの少女。
見覚えがない。『
「朝ご飯が出来ました」
「朝ごはん〜? ん〜?」
普段用意するのは自分達の仕事なのだが、はて?
そもそもなんでここに? そうだ、昨晩リリウスが自分を誘拐したから。その後は、働かされたな。それは何時もの事だが。
「あ、起きたか」
少女に促されるまま部屋を出て移動すると廊下、そしてリビング、なかなか広い部屋のようだ。そこには一人の男が居た。一柱の神だ。
「改めて礼を言わせてくれ。お陰で怪我人は無事、死者はいない」
「はぁ…………」
彼はニョルズ。オラリオでも稀に見かける第一次産業の一つに携わるファミリアの主神。じゃあここ、メレンか。そう言えば汽水湖が見えたような気がする。
「飯だ」
「あ、リリウス」
扉を開けリリウスが食事を持ってきた。朝から食べやすい料理。みそ汁に米に、大根おろしをのせた焼き魚。美味しい。う〜ん、嫁に欲しい。
「シル様から許可は取ったとのことですが、今日の予定は?」
「オラリオに戻る。今日の
「それぇ〜、絶対後に備えてですよね〜。は〜、激務激務」
「大丈夫か? 頭撫でる? 後でシルにもお願いしてみるが」
「ん〜、シル様のヨシヨシ〜は後に取っておきましょう」
要するにリリウスは先払い、と。
椅子を持ってヘイズの背中にトテトテ移動すると、ヨイショと椅子に立ちヘイズの頭を小さな手で撫でる。
「…………………」
幼子に頭を撫でられる成人女性のようなその光景にニョルズは微笑ましく見守りハーフエルフの少女はやはり髪の隙間からドロリとした何かを向ける。
「…………私、貴方になにかしました〜?」
「………………だって、傷」
「はぁ、傷?」
少女は己の首に触れる。
「貴方が、リリウスさんからの
「うわぁ〜…………」
倒錯してるな、この少女。
恐らくリリウスが傷を癒すために彼女の血肉を食らったのだろうが、その時の
「あの子に何したんです?」
「故郷………というより種族全体で蔑まれて初めての友に利用されてたところを救った」
外での英雄的活動の一環ということか。そう言えばエルフの
そりゃもう、散々に蔑まれ否定され拒絶され罵倒されたに違いない。自分もちょーっとだけなら分かる。
「……………ところでリリウスは、やっぱり私に
「うん」
「あら、即答」
「才能ないから、お前」
死地を乗り越えランクアップを果たしたリリウスと違い、ヘイズはLv.1の時3度の致命の炎禍を超えて尚ランクアップを果たせなかった。まあリリウスの致命的な行動は階層主挑んだりLv.7に挑んだりとそもそも致命度が違うが。それでもリリウスはヘイズを己より才能がないと断じる。ベルのようにステイタスとの相性がいいわけでもない。器の底に、引き出される『可能性』が眠っているわけでもない。
「だけどお前は剣を取った。あの女を守れる勇士になりたいと、あの女のような黄金になりたいと言った」
「あの女って…………女神様にその言い方は失礼ですよ〜?」
「あの女が許してる」
むぅ、と唸るヘイズ。
『街娘』が自分を叱ってくれる『
「ちょ!」
「ん?」
「ヘイズ、撫でにくい」
気付けばヘイズはリリウスの首を絞めていた。ハーフエルフの少女が何処からとも無く三叉槍を取り出しリリウスが片手で制する。
この程度なんでもないというように、その態度が慌ててないが抜こうとした指の力を抜かせてくれない。うん、だからこれはリリウスが悪い。
「………そういうところ
「…………続けて?」
「怒られないことをいいことに、結構甘えてる」
ヘイズは何も言わずリリウスをジッと見つめる。
「彼奴は俺に、で、お前は彼奴だけどな」
「……………はい、そ~で〜す」
ぱっと手を放す。
「離れて!」
ハーフエルフの少女がリリウスを抱き寄せ後ろに跳ぶ。そのまま顔に手を当てる。あれは、髪の毛を持ち上げようとしてる? リリウスが止めた。
「お前やアミッド、アーディやフィアが居なきゃ、俺はもっと前に死んでたからな。だからお前が望む限り、ある程度の願いは叶えてやるよ。強くもしてやる。今は色々忙しいから無理だが」
「まって、フィアって誰です? また知らない女」
「……………そう言えば俺の恩人って基本的に女。まあ
母性本能でも刺激するのだろう。
「ところでうちの団長になるのは………」
「脱退は神が決める事だから俺の領分外」
まあソーマならリリウスがどうしてもと望むならインドラ以外ならギリギリ認めるかもしれないが。
コリガンというらしい少女と同じ馬車に乗るヘイズ。あの後リリウスはヘイズを港に連れていき、Lv.4のシャチ達がお礼だと真珠くれた。
へ〜、シャチが私と同じ位階なんだ〜と少しやさぐれかけたヘイズだったが、そういった経験がリリウスの発展アビリティ『育成』として目覚めその恩恵に預かれるのだから彼等にも感謝………う〜ん、妬ましい。
しかしシャチって近くで見ると目ぇ怖いな。
「……………………」
この子は目を見せないけど。ただ嫌われてるな。傷を癒やしたのもそうだし、リリウスの首を絞めたのが致命的。
ニコ〜と手を振ってるがべー、と舌を出された。あら、かわいい。
「……………お姉さんは」
子供ゆえに沈黙に耐えかねたのかコリガンが話しかけてくる。
「リリウスさんと、仲がいいんですか?」
「う〜ん。まあ、良い方ですかね。師でもありますし」
戦い方の教導? なにそれ、見て覚えろよな
かつてのヘイズがそうしていたように限界を超過して肉体を動かす
「リリウスさんは、やっぱり女の人に好かれてるんですか?」
「まあ世界最強ですからね。モテますよ〜」
「そうですか………」
「あなたも頑張ってくださいね〜。お化粧とか教えてあげましょうか?」
「別に、化粧とか頑張らなくても、私が一番綺麗だし………」
なんと傲慢。エルフらしい発言。だが、エルフの高慢と言うには少し違和感。そう確信している。なんだかその態度が愛しの女神を思わせる。
「見えてきたぞ」
と、リリウスの声が外から聞こえた。実はこの馬車、リリウスが文字通り引いている。馬よりもリリウスの方が速いからだ。
ギルド会議室。
「オラリオは大混乱だ! どうしてくれる!」
「黙れよ豚」
「吠えるな豚」
「騒がしいぞ豚」
「何も出来ないんだから静かにしろよ豚」
「そもそも責任を
5人の
現在集まったのは【ロキ・ファミリア】、【フレイヤ・ファミリア】、【ガネーシャ・ファミリア】、【アストレア・ファミリア】、【ディアンケヒト・ファミリア】の幹部陣と【ソーマ・ファミリア】のリリウスとエピメテウス。それからリリウスの影に隠れるコリガン。
「…………………」
王族の証したる緑髪にリヴェリアが視線を向けているがコリガンはその視線から逃げるように視線を逸らした。
「で、状況は?」
「第一次侵攻は
最初の目標であるバルカ及びタナトスは処理。どころか
が、
「ウラノス曰く、
ディオニュソスの本来の狙いとしては元【ディオニュソス・ファミリア】と
タイミング的にはタナトスの帰還後。おそらくはタナトスが事前に言い聞かせていたのだろう。
その自爆とリヴァイアサン・オルタ、リリウス、エピメテウスにより大きく被害を受けた魔城は栄養失調。この後計画していた何かは、『食事』が出来ないという事をディオニュソスが予見していなかった場合2日は猶予が出来るらしい。それでも2日。短いな。人間の命はあの魔城には軽いらしい。
「あの魔城には
未だ地上召喚の兆しがない。
「何か別の目的がある…………」
フィンの懸念をアリーゼが言葉に変える。
「そんな事はどうでもいい」
それを切り捨てるのはオッタル。
「【
「ああ、リヴァイアサンなら真の遺骨に取り込まれてサイズをオリジナル並みに戻したぞ。ベヒーモスは縮んでたらしいが、今回はオリジナルと同サイズだな」
「リヴァイアサンの戦いには俺達も向かう」
「却下だ猪」
「勝手に決めるな脳筋」
オッタルのキリっとした視線にリリウスとヘディンは養畜舎に紛れ込み暴れる猪を見る目を向けた。
「【ゼウス】と【ヘラ】が挑んだ。ならば、次に挑むべきは俺達だ」
「違うな。次は俺だ」
世界最強の冒険者はそう告げる。円卓の上に乗りコツコツとオッタルの下まで歩く。
「そもそも向こうが指名した敵は俺。遺骨を取り込ませねばと思わせるだけの力を示したのも俺。そこを違えるな」
Lv.7のフィンにも目をくれず、リヴァイアサンが敵と認識したのはリリウス。それとエピメテウスぐらいだろう。
「戦場に立てないのはお前等が俺に認められない程度の実力だからだ」
ならば示さん、とばかりに振るわれたオッタルの拳をリリウスが踏みつける。間近で花火でも爆発したような轟音がロイマンを吹っ飛ばし書類が吹き飛びエルフの暴君の舌打ちを掻き消す。
体重差なんて無視して、オッタルの拳を受け止めたリリウスの足がそのまま腕を押し込んでいく。
「お前達はお前達の戦場で戦え」
どう動くかまでは知らないが。
「…………戦力は?」
「俺とエピメテウスは確定。それからシハチとモハチ………後、コリガン、頼めるか?」
「……………はい!」
リリウスに頼られたコリガンはビクッと肩を震わせた後満面の笑みで答えた。
「まて、そんな少女をリヴァイアサン戦に駆り出すのか? そもそもその子は幾つだ? レベルは?」
「此奴はコリガン。そういや、レベルは?」
「リリウスさんと、同じ派閥がよかったから」
またかよこいつ、見たいな顔を向けるライラ。
「0だって」
気にせず報告するリリウス。
「眷族ですらないのに連れて行くのか!?」
「安心せよ」
と、筋骨隆々の海パン姿のおっさんが現れた。気配で分かる、大精霊だ。
「儂の愛を受けたコリガンたんは、お前達で言うLv.4の強さがある! 水場と言う環境に限ればLv.5!」
只人に第一級に匹敵する力を与える。それこそが神なき時代数多の英雄と共に駆け抜け伝説を刻んだ大精霊の力。
「ネプトゥヌス、五月蝿い」
コリガンが迷惑そうに言う。
「大精霊…………いや、しかし………」
「……………貴方に心配されたくない」
と、コリガンはリヴェリアを見つめながらいう。
「あなたは私に何もしてないけど、やっぱり私はエルフが嫌い」
「………………何処の森だ」
エルフ嫌いのハーフエルフとなれば察するものもある。リヴェリアは何処の愚かな里がと尋ねる。
「お前の親父が住んでる森」
「…………………っ」
目を見開いて固まった。
「取り敢えず恩恵を刻むぞ。有用なスキルや魔法が目覚める可能性があるし、俺の
「つきっきりですか?」
「そうなるな」
「頑張ります!」
コリガンは嬉しそうに笑う。ネプトゥヌスは槍へと姿を戻し、コリガンの中へと消えた。
「待て! 俺はまだ!」
参加できないことを納得していない、と立ち上がるオッタル。リリウスがため息を吐きながら机の上に立つ。
「来いよ、認めさせてみろ」
「オオオオオオオオ!!」
出し惜しみはなし。獣化を使い吠えるオッタル。
大気を唸らせ迫る拳を回避し腕に逆立ちしたリリウスは膝をオッタルの頬に叩き込む。
「ぐ、う!」
オッタルの獣化が齎す超域強化はランクアップと見紛うレベル。即ちLv.8。対するリリウスはLv.9。
種族差もあり、耐えるオッタルは腕に乗るリリウスへと反対の拳を振るう。
轟音と共に吹き飛ぶリリウス。壁を破壊しギルドを突き抜け、ギルドに殺到していた人垣を越えて漸く地面に落ちた。
ペッと血の混じった唾を吐く。なんてことはない、リリウスの方が確かに強者であるが、オッタルもまた先の時代に真っ先に追いついた傑物の一人。
だが、リリウスの方が強者であることに代わりはない。
「余計な時間取らせやがって」
倒れ臥すオッタルはそれでもリリウスを睨みつける。リリウスはオッタルの頭を石畳に叩きつけるように踏みつけた。
蜘蛛の巣のような亀裂が広がりオッタルの頭部がなくなったと錯覚するレベルで埋まる。
「そこまで、そこまで〜!! もう、誰ぇ!? こんな時まで喧嘩してるの! って、リリウス!?」
大きくなった騒ぎにやってきたのは【ガネーシャ・ファミリア】。因みに会議の場にアーディは居なかった。彼女は街を駆け回った方が民衆を安堵させられるのだ。
「リリウスさん!」
そんな彼女を追い抜きリリウスに飛び付く少女。
リリウスよりは身長があるが、それでも小柄な少女はリリウスと並ぶと見た目お似合いに見えて…………。
「だ、誰!? 離れて〜! 職権乱用で逮捕するよ!」
「職権は乱用するなよ」
リリウスが突然殴り飛ばされるわ邪魔されるわでムッとするコリガン。本当なら早くリリウスのファミリアに行って同じ主神に恩恵を刻んでもらいたいのだ。
早々に黙らせるべく髪をかきあげ、老若男女、人類怪物問わず全てを魅了する『下界の未知』たる『美貌』を解放する。
「う、ぁぇ…………?」
クラリと、マーメイドの魅了を受けたみたいにフラつくアーディ。
「コリガン」
「っ!」
リリウスの静かな言葉にコリガンはビクッと肩を揺らし髪を下ろす。アーディがハッと正気に変える。
「あれ、今の…………ええっと?」
「悪いアーディ。それで、なんだ?」
「あ、うん。昨日の戦いから行方不明って聞いてたから…………大丈夫なのかな、って」
「ああ、問題ない」
「……………その子は?」
「コリガン。旅してた頃の知り合いだ」
「そっか。よろしくね、コリガンちゃん! 抱き締めていい?」
コリガンはサッとリリウスの後ろに移動した。
「今後についてフィンからも連絡があるだろ。それまでに、俺もやることがある」
「そっか……………うん、お互い………ううん、みんなで頑張ろうね!」
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