ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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特別編 リリウスinGOURMET WORLD 後編

「淡泊な味。身はコリコリと硬く、昆布じめのような風味がある」

「ワラスボスは海藻類が死後積み重なって出来た特殊な砂底ダシに住むからな」

 

 因みにその海、飲めるんです。まあこの世界の海にそういうのは結構あるが。

 

「しかし妙だね。ワラスボスはハゼの仲間。本来なら浅瀬を縄張りとする魚なのだけど」

「ハゼだったのか」

 

 そして砂底に含まれた海藻の栄養と、他の魚や時には揚陸して陸の動物を喰い栄養を蓄える肉食魚。

 

「そのキショイ魚共本来住んでるだけでは栄養に困らない海鮮鍋の海に住むが、そいつを含め狩りをするキショイ程食欲に支配されたキショイ魚がキショイ数いるらしいな」

 

 キショイってめっちゃ言うじゃん。しかし、なるほど?

 

「浅瀬、ね…………」

 

 此処大海原じゃなかったか。もちろんワラスボスのサイズの上での浅瀬だろうが………少なくとも少し潜れば海底が見える深さのはず。つまり、島が近々、あるいは…………。

 

「霧が、晴れていく………」

 

 虹色の霧が風に流され薄くなっていき、現れる()()

 

「…………森の中?」

 

 森の中だ。海どころか水辺でもない。船は土に僅かに沈んでいた。

 

「えええ!? なんで、森に!?」

「ゼブラ!」

「全部本物だ」

 

 ゼブラの耳は反響する音からこの辺りの正しい地形を把握する。リリウスが船から降りると地面から巨大なワームが現れる。

 

「くじゅじゅじゅじゅ!!」

 

『アーマーワーム 昆虫獣類 捕獲レベル 41』

「アーマーワーム! 森の食いしん坊の異名を持つ肉食の凶暴なミミズだ!」

 

 と、小松。

 

「脳味噌は珍味だが、普段土を食って地面を掘り進んでるから肉は土臭くて食えたもんじゃねえぞ!」

「まずいのか………………」

 

 リリウスがトリコの言葉に目を細める間にも次々現れるアーマーワーム。食った土の中の鉄分で鎧を形成する食材より素材として狩られる生物。

 勿論リリウスはその程度食えるが…………。

 

「失せろ蚯蚓共」

「「「──────!!」」」

 

 瞬間、その場の全ての生物がリリウスの背後に歪な角を持つ巨大な黒い獣の姿を幻視する。

 

「逃げたか………」

 

 アーマーワームは一匹残らず逃げ出した。

 

「良かったのか?」

「何でも食えるが別に不味いのを進んで食いたいわけじゃねえし。此処にゃ飯が溢れてんだろ」

「おお、この木なんかチョコの木だぞ」

「カカオ?」

「いや、チョコの木」

「……………………」

 

 今更だった。この世界はそういうものだ。

 クッキーの体皮を持つアルパカとかいる世界だし。

 

「ゴロロロ………」

「ん?」

 

『クッ()ー 菓子魔獣類 捕獲レベル57』

 

 鋼鉄の硬さを持つクッキーの体皮を持つ二足歩行の怪物が現れた。

 

「ゴアアア!! ア?」

 

 と、吠えた首が落ちる。リリウスはパクリと食べる。

 

「クッ()ーのクッキーは柔らかくして食べるんですけどね」

「まあ噛み砕ける奴は噛み砕けるからな………」

 

 小松は柔らかくしたほうが美味しいですよ、とささっと調理する。

 

「────!」

 

 リリウスが目を見開いた。美味しかったらしい。

 

「オレも食っていいか?」

「…………小松はお前の相棒」

 

 狩ったのはリリウスだが調理したのは小松だ。リリウスは小松がトリコの分を調理する様を観察して、真似した。

 

「しかし妙だね。アーマーワームは臆病な性格で、自分より捕獲レベルの高い猛獣が住む森に近づいたりしない筈」

 

 と、ココが言う。リリウスはクッキーを食いながら周囲の植物を見る。

 

「匂いが違う」

「お、お前も気付いたか? アーマーワームはともかく、クッ()ーからはこの森の植物や土の匂いが馴染んでなかったよな」

 

 もちろん縄張りを移動してきた可能性はあるが、大陸ならともかく島で住処の移動などあるだろうか? ない、とは言わないがアーマーワームの群はクッ()ーからしても避けたいはずだ。近付かないだけで、既に縄張りとなっているならアーマーワームとて戦うのだし。そのアーマーワームも逃げ出すリリウスの威嚇は、人間界でも有数の実力者であることを示す。上位3桁には入っているだろう。

 

「ところでこれは食えるのか?」

「丼ぐりの木ですね。あれ、でもチョコの木がなる途上になりましたっけ?」

「食えるんだな?」

 

 リリウスはヒョイヒョイ木に登り丼ぐりの実を素手で割る。鋭い針を気にも止めない。中身はカツ丼だった。

 

「おおい、俺にもくれ〜!」

「………………ん」

 

 ガン、と木の幹を蹴るリリウス。ボトボトと丼ぐりの実が落ちる。

 

「お、これは海鮮丼!」

「ほぉ、薔薇のように(つく)しいローストビーフ丼」

 

 因みにココは天丼でゼブラはステーキ丼だった。

 

「ところでこれを食うのは草食なのか肉食なのか………」

 

 ドゥルガーはふと、そんなことが気になった。

 

「おお、見てみろ小松! シャーベ林檎!」

「わぁ、氷のように冷たい実に下ろしたかのような食感の天然のシャーベット! 夏に人気の果物ですね!」

「幹まで美味い」

 

 普通はシロップを取るのだがリリウスは木の幹ごとメキメキ食べている。

 

「いや、まあシロップ含んだ幹も美味いだろうけど…………チョコの木はともかくそれは普通にセルロースが………」

 

 普通なら人間にはセルロースは消化できない。なので木は食材ではないのだがリリウスはセルロース? なにそれ美味しいよと森を食っていく。

 

「……………古代、デスゴールが進んでいく景色ってこんな感じだったのかもしれませんね」

「見事に森の生態系そのものがかわりそうだ」

 

 だが、誰も止めない。

 獣が草木を踏み潰して進んだ獣道ならぬリリウスが食い尽くして進んだ食事道を進み一同は森を出た。

 

 

 

「お、おおおお!?」

 

 次に現れたのは花畑。

 色鮮やかな花々が咲き乱れ美しい羽を持つ蝶が飛び交う。

 

(つく)しい………んだこれ、(つく)しぃ………」

 

 サニーが感動の涙を流す。

 

「あー! ローズトビーフ! 天然でなってるの初めて見ました!」

「あま~い水あめの蜜を持つアメリリスも咲いてるじゃねえか!」

「クックックッ、ガキかよ」

「ん? 何だこの蜜、甘い炭酸? 知らない味」

「コーラッパスイセンだな。ほらゼブラ、コーラ好きだろ?」

「ふん、ガキじゃあるメェし」

 

 と言いながらも裂けた頬からダラダラと流れる唾液。リリウスはスンスンと鼻を鳴らしながら巨大な花の上に蜜がプールのようになっているのを見つける。

 

  花の上に乗り蜜を舐めた瞬間花が閉じた。

 

「主様!?」

「あれは、1000本に1本が雌しべを持つ花『サウザンドネクター』! しかも花それぞれに約五十年ごとの繁殖周期がありその時期は種の栄養を求め恐るべき肉食花になるという」

「お〜、初めてみた。つか、その時期蜜に不純物が混じって味が落ちるんじゃなかったか? ウンのねヤツ」

 

 小松以外が慌てない中、リリウスが花托を突き破り現れる。同時に種の元であろう塊がゴロゴロと落ちる。

 

「これは…………食材です!」

 

 ハッと駆け寄った小松が身体についた蜜をペロペロ舐めるリリウスの足元に落ちた種の元を見て叫ぶ。

 

 蜜が美味いサウザンドネクター………味が落ちる時期にわざわざ狩る者もおらず知られなかった知られざる食材。リリウスがそうなのか、と食べる。

 

「………………渋い」

「調理しないと食べられませんよ。そっか、君も、美味しく食べてほしいんだね」

「此奴何いってんの?」

「食材の声を聞いてるのさ」

「お前何言ってんの?」

 

 リリウスは耳を澄ませる。別に妙な音は聞こえないが。

 

「ふん。お前も料理人としては小僧に劣るようだな」

 

 と、セブラ。え、なに? この世界では食材が話しかけてくるのが普通の事と認識されているの? いや、言い方的に食材の調理方法を理解する超直感、的なものだろうか?

 

「……………ん?」

 

 しかし、実際にただ渋いだけの種の元が明らかに気配を変えた。匂いが変わった訳でも見た目が変わったわけでもない。これは一体?

 

 と…………

 

「ん?」

 

 花畑を燃やしながら迫る炎が見えた。

 

「なんだぁ!? くっ、フォークシールド!」

 

 指を四本立てたトリコが腕を振るうと曲がったフォーク状のエネルギーが現れる。え、あれどうやってるの?

 

 炎はフォークシールドに当たりはじけるもフォークの表面がグツグツ沸騰した。因みにフォークは実体化しているわけではなく、存在しているエネルギーと、イメージを共有させられているだけだ。

 

「ボォォォォォ!!」

 

 赤い象が口から炎を吐きながらドスドスと迫ってきていた。

 

『ファイヤータスク 哺乳炎獣類 捕獲レベル 112』

「グルメ界入り口………三途の道でも見かけたな」

「つまりグルメ界の猛獣か。確かに強そうだ…………………ん?」

 

 妙だ。トリコ達へ攻撃しておきながら、敵意を感じない。まるでそう、何かから逃げる際障害となる物に火を噴きつけただけかのような慌てよう。

 

「……………あ」

 

 リリウスが何かに気づいた瞬間、炎の蛇がファイヤータスクを飲み込む。自らも高温の炎に包まれたファイヤータスクの体が焼かれていく。

 

 骨すら残さず、灰すら散らず焼き尽くされるファイヤータスク。炎の蛇は嚥下するかの如く一部を一瞬膨らませ、視線を向けるはトリコ達…………否、リリウス。

 

「ボイスカッター!」

「フォーク釘パンチ!」

 

 ゼブラとトリコの攻撃が当たりはじける炎の蛇。しかし直ぐに再生した。

 

「んん? 実体がねえな。この蛇、嘘をついてやがるのかぁ〜?」

「何処かに炎を操る猛獣がいるってことか? しかしさっきの猛獣を焼き尽くす火力………強いくせに慎重な奴だな」

 

 と、四天王が臨戦態勢に入る中リリウスはスタスタと炎の蛇に向かい歩く。

 

「ん、リリウス?」

 

 警戒も敵意も目の前の蛇に感じていないのをそれぞれ匂い(嗅覚)(聴覚)電磁波(視覚)と直感で感じ取る。

 

 炎の蛇もリリウスを焼くことなくその身を分ける。トリコと小松は顔を見合わせた後、取り敢えずついて行ってみることにした。

 

「………………剣?」

 

 炎の蛇の首を遡れば煌々と燃え盛る炎の草原にたどり着く。燃える草『フレアリーフ』の草原、レッドカーペットの中央に1本の剣が突き刺さっていた。

 

「こんなところにいたのか」

 

 と、リリウスが剣に近付く。と、ズンズンと地面が揺れた。

 

「バオオオオオオ!!」

「ぎゃあああ!? さっきの象!?」

「数倍はデカいぞ! 親か!?」

「あれ子供だったんですかぁ!?」

 

 決して弱いとは言えない猛獣達の出現に四天王は誰一人慌てる事はなかった。それは四獣の手足と同程度の相手に警戒をする必要がないと言うことではなく………『優先順位』の違い。

 

 カマキリが鎌を掲げるように、鹿が角を向けるように、猛獣が牙を剥く様に、鳥が爪を晒すように………動物が己の武器たるそれを見せた瞬間、露わになる脅威度。四天王の誰もが燃える牙よりも、剣を一本抜いたリリウスをこそ、より脅威と判断した。

 

「バオオオオオ!!」

「残光」

 

 山すら断つ英雄の一撃が放たれた。ファイヤータスクの鼻が斬り飛ばされ、リリウスが飛びかかる。

 

皮剥ぎ(スキニング)骨すき(ボーニング)………骨断ち(クレバー)!」

 

 皮を剥ぎ、関節を断ち、最後に頚椎を裂きながら首を落とす。心臓が数度、最後の鼓動を刻み全身から血を噴き出す。

 

 高温の血液が振り注ぎ炎の草原により蒸発した。

 

「す、すごい。1本でいろんな用途に使える包丁だ。誰の作品だろう」

「っぱ料理人じゃん」

 

 肉の解体と手際の良さにサニーが呟く中リリウスはまさか、と返す。

 

「俺はただ自分が美味い飯食いたいだけだ。料理を振る舞うのも、身内かそれ以外だとヘイズやデメテルぐらいか」

 

 ヘイズやデメテルは身内外。弟子でもなければ元同派閥や一時期主神という訳でもないからだ。

 

「しかしその炎は一体…………」

「…………………強いて言うなら、俺の食欲?」

 

 リリウスの血と天の炎が混ざり生まれた貪食の炎蛇。リリウスの魔力を喰らい姿を表し、エネルギー尽きるまで周囲を焼き尽くし喰らう。

 

 リリウスがこの世界に来てから行方知れずだったマーダだが、随分と長い間燃えていたらしい。此処の炎を食っていたのもあるのだろうが…………或いは()()()()()()()()()()

 

「食欲………なるほどなあ。良い食欲だな」

「納得するんだ」

 

 まるで食欲が肉体から出て勝手に飯を食うのを見たことあるような納得具合。この世界ならおかしくない、のか?

 

(アヒ)、ベタベタするから蜜燃やせ(食え)

「……!」

 

 リリウスの言葉にアナコンダ程度のサイズになっていた炎の蛇はリリウスの身体に絡みつく。蜜だけが燃え尽きていく。

 

「便利な炎だな。それ、例えば皮下の黒ずみだけとか燃やせるの?」

「? 皮下に、黒ずみ?」

「……………お前、肌の手入れとかしたことは?」

「手入れ?」

 

 因みにリリウスは余計な栄養は使わないので余分なメラニン色素は存在せず、角質なんかも出来ないモチモチツルツル肌とオラリオの全女冒険者達が嫉妬するケアいらずの美肌の持ち主だったりする。激務によるストレスで最近肌荒れが気になるヘイズはモチモチと両頬をもんで虐める。

 

 命の恩人じゃなければ今頃彼女の手はリリウスの腹の中である。

 

「おま、この肌で何も手入れしてないとかマジか!?」

「………………あ…………ぐ」

 

 リリウスは己の周りを見た後空中を噛む。

 

「ん(いっ)!?」

「もぐもぐ。舐め回すな気持ち悪い」

「サニーの触手を噛み千切った?」

 

 目に見えないほど細いサニーの触手。細さに対してとてつもない強度を誇るそれをリリウスの牙は噛み千切った。

 

「薄味…………」

「オレの触手は食いもんじゃねえからなぁ!」

「口直しだ口直し」

 

 と、リリウスはフレアリーフを食い始めた。一応食材であるがそのままは食べれない特殊調理食材なのだが…………。

 

 同時にマーダから(アヒ)が取り込んだエネルギーをリリウスが改めて取り込む。炎は消えていき後には剣が残った。

 

 リリウスは早速ファイヤータスクを切り裂いていく。

 

「あ、手伝います!」

 

 小松と2人がかりで解体していく。小松…………ただの人間なのにとんでもない疾さで捌く。技量が尋常ではない。無駄な動きが一切なく正確。食材にとても向き合っている。

 

 

 

 

「辛っ!? いや、ん? 熱い!?」

「痛みに似た熱を感じるな。飲み込んでも胃の中から身体が温まる。これ61階層とかに持っていきたいな」

 

 ファイヤータスクの肉は焼いたから、とは別の熱を持っていた。辛いのも得意なドゥルガーが涙目でハヒハヒと舌を出す。火傷するような温度ではない。だが熱を感じる。不思議な味だ。のみ込んだあとも腹の底からカッカと熱を保つ。ぼんやりと身体が赤く光っている?

 

「しかし松、思い出すな。俺達の最初に手に入れよとした食材」

 

 と、サニー。

 

「ああ、ジュエルミートですね」

宝石(ジュエル)? 食える鉱物?」

「いや、宝石のヨに輝く肉さ。オレのフルコースのメイン」

「フルコース?」

「人生のフルコースですよ」

 

 何でもこの世界の人間は自分にとって最高の食材を集めた人生のフルコースを用意しているらしい。

 

「食いたい? オレのフルコース。今度ごちそうしてやるよ」

 

サニーフルコース

オードブル(前菜)[美肌キャビア]捕獲レベル30

スープ[カリスロブスター汁]捕獲レベル19

魚料理[美肌マグロ]捕獲レベル25

肉料理[完美牛]捕獲レベル21

主食(メイン)[ジュエルミート]

サラダ[もち肌もやし]捕獲レベル19

デザート[   ]

ドリンク[カリスドラゴンの鱗酒]捕獲レベル35

 

「見事に美容に効果ありそうな…………オレはともかくアフロディーテが喜びそう」

美の女神の名を持つ女(アフロディーテ)? オレと気が合いそうだな」

 

 神の名を持つというか神そのものなのだが。というかアフロディーテの名前あるのか。まあカリスも確かアフロディーテと同郷の美の女神だった筈だし。

 

「ふん。やめときなガキぃ。そいつはオレらの中で一番の偏食家だからな」

「うっせ! てめーのフルコースなんて適当に気にいったの入れただけだろ」

 

ゼブラフルコース

オードブル(前菜)[鬼神のはらわた]捕獲レベル91

スープ[赤道スープ]捕獲レベル87

魚料理[   ]

肉料理[BBQ(バーベキュー)島]捕獲レベル不明

主食(メイン)[]捕獲レベル

サラダ[   ]

デザート[だるま仙人の献上品]捕獲レベル不明

ドリンク[メロウコーラ]捕獲レベル92

 

「フルコースってのはそういうもんだろ」

 

ココフルコース

オードブル(前菜)[   ]

スープ[リードラゴンの涙]捕獲レベル21

魚料理[ブレオカジキ]捕獲レベル18

肉料理[G2(ジーツー)フェニックス]捕獲レベル25

主食(メイン)[   ]

サラダ[ネオトマト]捕獲レベル12

デザート[ドムロムの実]捕獲レベル30

ドリンク[   ]

 

「ゼブラの言うとおりだよサニー」

 

トリコフルコース

オードブル(前菜)[BBコーン]捕獲レベル35(人間界)

スープ[センチュリースープ]捕獲レベルなし

魚料理[   ]

肉料理[   ]

主食(メイン)[   ]

サラダ[   ]

デザート[虹の実]捕獲レベル12

ドリンク[   ]

 

「いいじゃねえか。誰かが美味いと思ったもんただで食わせてもらえるチャンスだぜ」

 

 全員実力は似たり寄ったり。その上で捕獲レベルに差があるのを思うに、捕獲レベル=味というわけではないのだろう。

 

「リリウス君にはないんですか? 思い出に残るフルコース………」

「……………」

「人生のフルコースだからな。それ食えば、ほぼ確実に細胞のレベルが上がったと思えるような適合食材とか」

「思い出………レベル………」

 

 

リリウスフルコース

オードブル(前菜)[酒神の酒粕粥]

スープ[正義派閥の気ままスープ]

魚料理[学区日替わり海鮮盛り]

肉料理[母の味]

主食(メイン)[美神の宴]

サラダ[フィア特性ダンジョン盛り]

デザート[アミッドの特別ポーション(甘め)]

ドリンク[神酒(ソーマ)]

 

「……………こんな感じ?」

「別に無理にこれだ、と思うのを今思い出す必要はないんだよ」

 

 と、ココが笑う。実際一つ消してるし。

 

「フルコースを作ると決めた日からこれだと思って、作ると決める前に食べた物をふと思い出して………そんな感じに決めればいいんだ」

「すいません! 言い方が押し付けがましかったですかね」

 

 小松も謝罪する。

 

「何度でも食べたいと思える、そんなフルコースを決めればいいんだよ」

「じゃ、やっぱりこれはなしだな」

 

 リリウスは肉料理をさらに踏みつけ消した。

 トリコは興味深そうにリリウスが地面に書いたフルコースを見る。

 

「神の字を関する食材達か。食ってみてえ」

「メインはただのバカ騒ぎだがな」

「いいじゃねえか。誰かと食うのが()()()()()()だったんだろ?」

 

 トリコの言葉にリリウスはオーホッホッホッと高笑いする女神とワイワイはしゃぐ喧しく、飲めや歌えやと食材や酒を持ってくる眷族達を思い出す。

 

「ああ、この思い出は、俺が知る何よりも美味い」

「なら、それでいいさ。因みに、オレのメインは凄いぞ」

「空白だけど?」

「まあ聞け。オレは、GODをフルコースのメインに入れる予定なのさ!」

 

 GOD………この世界最大の偉人アカシアが見つけた食材の王だったか。その味だけで戦争を止めたという、なんかすんごい食材。

 

「そうか。頑張れよ」

「おう! とはいえ、この島の飯もかなり美味い。ここでオレのフルコースも決まるかもな」

「世界中のあらゆる食材が揃うと言われる島なら、僕らのフルコースもあるかもね」

「そうと決まれば行くぞウス! オレのフルコース食わせてやる!」

 

 サニーの触手がリリウスの肌に触れないように絡みつく。口元には近づけない。

 

 

 

 

 

「魚が死んでる」

 

 グルメ界産BBコーンとかネオトマトの畑とか天然物のリーガルマンモス(グルメ界の個体)とか様々な食材に出会いながら、はらわたを取るために殺され残りの肉を引きずりながら食べていたリリウスはふと小さな水溜りに既に死んでいる魚を見つけた。

 

「油の泉? 溺れ死んだか」

「………………いや、これはモルス()。本来モルス山脈に存在し、この魚はそこに住む」

 

 魚の泳げる油。ペロリと舐めてみれば、なるほど美味い。

 

「サンサングラミーは()()一キロの滝に守られて一生敵に遭わない。だから敵と合うとショック死しちまうんだ」

「何その滝…………しかし、そんな魚が」

「ああ、つまり………サンサングラミーもモルス油も、本来ならこの島に存在しない。したとしても、もっと洞窟の奥だろう」

 

 なのにここにある。それはつまり…………

 

「オレと同じ………外から連れてこられたんだろ。此奴に」

 

 リリウスはザフザフと地面を蹴る。

 

「んだ、気づいてたのかよウス」

「全員だろ」

「くく。喧しい心音が聞こえていたからな」

「この電磁波は鉱物ではなく、意思を持つ生き物のもの。活性化し始めているようだ」

「オレたちが気付いたのに気付いたってとこか? なあ…………島の主…………いいや」

 

 と、小松だけが困惑する中、四天王とリリウスの視線は大地に向く。瞬間、島全体が鳴動する。

 

「…………蜃気楼。その字の由来は、かつて中華の者達は水平線に映る何処かの景色は巨大な蛤、蜃が吐く(いき)に映る楼閣だと信じていたからだ」

「どうした急に」

 

 突然説明を始めたココにリリウスが尋ねる。ところで中華ってなに? この世界で中華料理は見かけたし、神々の齎したレシピにチューカ料理もあるけど。

 

「この島は虹の霧の中に存在する、蜃気楼の島。ならば、その主は…………」

 

 周囲に虹色の霧が立ち込み始める。岩に擬態した管から出ている。

 

「炭酸カルシウムと、硬質タンパク質………貝獣類の貝殻と似たような匂いだ」

「か、貝殻?」

「虹色の正体は構造色ってわけね。ま、真珠作るのも貝だし」

「古くなり剥がれた真珠層を蓄えているんだろうな。つまりこの霧は島の主のフケや垢」

「もっとマシな表現はねえのか」

 

 リリウスの言葉にサニーが呆れる中、揺れは強まり、遠くで海が膨らむ。

 

「ふっ、あれだけ(つく)しい霧を吐くんだ。さぞや立派な蛟龍(こうりゅう)なんだろうな」

 

 蜃は龍の一種ともされる。龍としての名は(みずち)、或いは蛟龍(こうりゅう)。サニーはワクワクと姿を期待する。

 

「グジュルルルルル」

「あれがこの世界の竜か」

 

 ギョロリとこちらを見つめる巨大な目がついたヌラヌラとした触手。ジュパジュパと蠢く穴の空いた触手は口だろう。牙生えてるし。

 

「キッショオオオオオオ!?」

「ブジュジュジュ!!」

 

 と、触手が伸びリーガルマンモス(天然物700歳)を捉える。そのまま飲み込んだ。

 

「あ、あれは!」

「知ってるのか、小松!?」

「ピラミッドで見つけたあのレシピに書かれてました! 巨大な島を背負う貝……数十年から数百年ごとに時空を歪める霧を使いその背に生態系を作り、グルメ細胞の熟成した食材を一気に捕食する!」

 

『蜃 貝獣類 捕獲レベル467』

 

「特殊調理食材です! リリウス君が帰るためにも、虹の粉末は確保してください!」

 

 と、叫んだ小松の背後の管から口付き触手が伸びる。リリウスの髪が黒く染まりゼブラが口を開く。

 

 黒い鎧に弾かれた触手が千切れビチビチ暴れるとドロリと溶け崩れた。

 

「指示を続けろ、小僧ぉ」

「どう調理する?」

 

 ブラックポイズンサウンドアーマー。

 

 リリウスの致死性の猛毒の風を付与したゼブラのサウンドアーマー。触れた相手を削りその肉を万物を殺す猛毒が侵す。

 

「は、はい! まずは、貝の中央に強力な衝撃を与えてください!」

「つまり島の中央な! 行くぞ、トリコ!」

「おお!」

 

 トリコとサニーが駆け出す。それを脅威と感じたのか或いはただ腹が減っただけか襲い来る触手。

 

ボイスバースト!

残光

ポイズンマシンガン!

 

 消し飛ばされ、斬られ、溶かされる。サニーとトリコは島の中央に到達し、トリコが()()()()()()()()()()()()

 

「100連………ツイン釘パンチ!」

「んぬぁ! 30倍、スーパーフライ返し!!」

 

 トリコのパンチの衝撃が地面を叩く。それ自体大した一撃だが、その一撃と同等の威力が連続して襲う。まるでハンマーで釘を打つかの如く深く深くめり込み大地が砕けていく。

 

「ジュアアアアアア!?」

 

 蜃が身震いし背中に乗せた地面が次々剥がれていく。

 

「もぐもぐ。これが蜃」

「猛獣食べてる!? この状況で!?」

 

 リリウスは衝撃で吹き飛んできた猛獣を食い殺していた。これには小松もビックリ。

 

「あ、そ、それから、次は生えてくる触手の内、赤いのを自切させてください! 自切です!」

「僕達の出番だね!」

 

 ココの言葉にリリウスは猛毒の牙を舌で何本か圧し折り、噛み砕き細かい毒の欠片を作り出す。

 

 発展アビリティ『毒牙』、【獣王化身(ベヘモット・アヴァターラ)】で猛毒化した唾液と血液を混ぜる。

 

ダブルポイズンマシンガン!!

 

 猛毒の雨が赤い触手に襲いかかる。ビクッと震えた触手が全身に毒が回る前に切り離された。

 

「ジュジュジュ!!」

 

 と、触手の先端が膨らみ虹色の霧を吐き出す。現れるのはグルメ界の猛獣。ただし、蜃を脅かさない程度。

 

「此奴等、全部捕獲レベル200はあるぞ! 食用に向かなさそうな奴も!」

「トリコ、俺全部食える」

「うぉぉ! フライングナイーフ!」

 

 と、今度は虹色の霧がリリウスを包み込み………

 

「……………ん」

 

 蜃上空二千メートル。

 リリウスは上空に転移した。驚異的な視力で()()()()()()()()を見た。時間がズレてる? 成る程、あの霧は空間というより、()()の流れを乱して結果として空間を歪めているのだろう。

 

「ただいま」

「うわっ!? ぶ、無事だったんですか!?」

「俺等を食う気なんだ。そりゃここから離れた場所には転移しない」

 

 たかだか2000程度で最上級冒険者が死ぬものか。レオンやオッタル、ガレスだって着地するだろう、たぶん。

 

「あ、えっと次は殻にある霧の排出口を押さえてください!」

「ふん。下がってな、お前ら」

 

 コルクボイス

 

 ゼブラの声が排出口を押さえつける。殻の、と言うことは今霧を吐き出す触手は関係ないのだろう。

 

「ビュジュジャジュ!!」

「次に、他の触手より巨大な触手を2本、ノッキングしてください!」

「うおらぁ! ヘアマリオ!」

 

 サニーが神経に触手を差し込み動きを止める。もう一本………!

 

「神経締め」

 

 リリウスが取り出した槍で触手の一部を貫く。

 触手に伸びる神経の集合する神経節を破壊された触手が一時的に麻痺する。この世界ではノッキングと呼ばれる技術だ。

 

「次に左右、端の触手は全部切り落としてください!」

「おおおお!!」

 

 フライングナイフ

 ボイスカッター

 ポイズンブーメラン

 残光

 

 島の端…………厳密には貝の端に生えていた触手が斬り裂かれた。

 

「次に巨大な排出器官の継ぎ目に斜め54度で強烈な貫通攻撃! かなり硬いです!」

「むぅ、ネイルガンでいけるか!?」

「トリコ、合わせる!」

「…………おう!」

 

 リリウスの言葉にトリコがニカッと笑い拳を構える。

 

「小松!」

「もう少し、海側に向けてください!」

「こうか!」

「はい、そのまま!」

 

電磁加速!

 

50連レールフォークネイルガン!!

 

 打撃音はない。チュインという貫通音だけが響く、一切余計な力が散らない貫通攻撃が貝殻を貫く。

 

「次が大変だ………! 貝柱2本に、殻の上から衝撃が広がるような響く攻撃を! そこと、あそこです!」

「え、こいつ二枚貝?」

 

 巻貝かと思ってた。触手伸ばして食うし。

 

「ガキィ!」

「ちっ、合わせろよ」

「違うな。お前が俺に合わせるんだ」

 

ダブルボイス!!

 

 小松の指示した場所に響く音の砲弾。着弾と同時に振動が広がる。

 

「隙間が空いた! 貝柱を同時に切ります!」

「任せろ! レッグ……!」

「繊細なのでリリウス君、お願いします! 合わせます!」

「俺の仕事多くない?」

「料理人と食材なので!」

「料理人じゃないがな」

 

メルク包丁

剣閃

 

 貝柱が斬られた蜃が身を震わせる。

 

「貝殻を開けます!」

 

 トリコとサニーが開きかけた隙間へと移動する。隙間と言っても大きめの島サイズの貝だ。数百メートルはある。目指すは貝の裏。

 

60連釘パンチ

スーパーヘアショット!

 

 貝柱を失った殻が開く。

 貝の裏が陽光を浴び虹色に輝く。

 

「あー、あっちは(つく)しいのになあ………」

「グジュルルルルル!!」

 

 露わになる蜃本体。ブヨブヨとした肉の塊に複数の触手が生えた見るものの正気を奪いそうな見た目。

 

「赤い目に電気を当ててください!」

「サンダーノイズでいいのか!?」

「雷なら俺が持ってる!」

「次は、身全体を引き締めるために大量の氷を!」

「「「ねえよ!」」」

「あるぞ!」

 

 リリウスが大量の氷を落とす。

 

「炎!」

「音!」

「融解性の毒!」

「もっかい氷!」

「大量の針を刺したままに!」

「これは妾じゃな」

「そこに電気!」

「俺だけ仕事多いな!」

「このタイミングでリリウス君に会えたのは、すごい幸運ですね」

「それも小松、お前が食材に愛された食運を持ってるからだな」

 

 と、その時。触手の1本がリリウスに迫る。疾い!?

 

「気をつけてください、ここからが本番です!」

 

 虎は傷付いてからが本物という言葉があるように、手負の獣は、恐ろしい。生きようと足掻く猛獣こそ真に警戒するに足る怪物である。

 

 

 

 

 四天王、リリウスにも疲労が見て取れるほどの戦闘が続いた。蜃の動きもだいぶ鈍くなっている。

 

「料理手順は?」

「完了してます! 後は、倒すだけです!」

「十分だ」

 

 リリウスはそう言って剣を構える。

 

 この世界にブラフマンは存在せず、ゆえにリリウスはブラフマーストラを使えない。だが、この世界の何かにリリウスはずっと呼応していた。

 

 それは、食欲。

 喰いたいという原始的な欲求。常に飢えるリリウスには満ち満ちた願望。

 

 グルメエネルギーと呼ばれるそのエネルギーがリリウスの食欲と呼応する。もっと食いたい。満たされない臓腑に次の食材(エサ)を。

 

「────!!」

 

 蜃はその生物にあったことはない。だが、宇宙を満たし巡るグルメエネルギー…………その歴史の何処かを、別の宇宙に繋がることすら可能な蜃は『食の記憶』として細胞に刻んでいた。

 

 全てを飲み込む漆黒の食欲。

 星を喰らい銀河を喰い尽くしても尚止まらぬ食欲旺盛な『黒の宇宙』。

 

王食晩餐(グルメストラ)

 

 放たれるは莫大な食欲(エネルギー)

 

 アギトを開いた蛇のごとく突き進む食欲の塊に蜃は大量の虹の霧を放ち空間ごと断絶するも、それすら喰らう。止まることなきエネルギーが蜃の身を喰らった。

 

 

 

 

 蜃の身を食ったグルメエネルギーはとぐろを巻くように球体となり、貝殻の上に落ちた。

 

「おお、これが蜃の身………濃厚な潮の香りに加え、様様な海で溜め込んだ旨味が凝縮されてるな」

「はい。本来は毒素なども溜め込むんですが、先程の調理過程で除去も完了しました。味にも影響があったので、これで最も美味しい状態になった筈です」

 

 本を完全に暗記している小松だが、先程の料理手順の中には本には存在していない調理法が存在し一部の手順は破棄していた。それは小松の料理人としての勘がそれが最も味を高める調理法と判断していたからだ。

 

「それじゃあ早速、いただこうぜ!」

「あ、待ってください! ええと、この辺に………」

 

 小松が包丁を入れるとヌルリと虹色に輝く巨大な球体が現れる。

 

「蜃の真珠か?」

「はい。虹の霧の元です。調味料にもなりますので、半分ほどもらえたら…………」

「まあ、皆で狩ったしな」

 

 リリウスは真珠を2つに割った。

 

 

 

「それじゃあ、この世のすべての食材に感謝を込めて、いただきます!」

 

 まずは刺身。トリコ、ゼブラは豪快に、サニー、ココは行儀よく、リリウスは口が小さいので繊細に食べる。

 

コリュ

 

 凄い弾力だ。だが決して顎を疲れさせるだけではない。噛め、噛め!

 

 コリュコリュ

 

(うおおお! 噛めば噛むほどに味が染み出す! 酒海。これは、出汁海? 旅した海の味が染み出し、しかし決して不愉快な混ざり方をしない!)

 

 ゴリゴリ

 

(そして奥から染み出すのはキショイ見た目から想像もできない濃厚で上品な旨味………貝の甘みが味海の塩味と調和する!)

 

 ゴクン。

 

(! 飲み込んで尚香る濃厚な海の匂い。胃の中に海が広がったかのようだ)

(とんでもない旨味だ。明らかに細胞のレベルが跳ね上がった。オレに………いや、オレ達に適応する食材だったわけだ)

 

 四天王達が舌鼓を打つ中リリウスもゴリュゴリュと身を噛み切る。鋭い牙を持つリリウスでも噛み応えを感じる食感。

 

「美味い! この貝も美味いな!」

「主様テンション高いな。だが確かに」

「次は、焼いてみました」

「おお、香ばしさが増してるな!」

 

 直接炭火で焼く他にも貝殻の一部を皿にして身を乗せ謎の生物ショーUMA(ユーマ)から採れた最高級の醤油を垂らす。確認されているのに未確認とはこれ如何に。

 

「貝殻に残った出汁に酒を…………でも、並の酒じゃ味に負けちゃいますね。次郎さんからもらったエメラルドドラゴンのエメラルドワインなら……」

「…………………」

 

 リリウスは影の中から神酒(ソーマ)を取り出しまだ七輪の上に乗った貝殻に酒を垂らす。

 

 酒と海の香が広がった。

 

「っ! お、おお!?」

「!!」

「ぬぅ!」

「!?」

「ん?」

 

 リリウスが感じた気配に振り返るとトリコ達の顔から別の顔が現れる。

 トリコは赤鬼、ココは亡者、サニーは毛の塊、ゼブラは黒い口の裂けた化物。今にも襲いかかってきそうな化物共をリリウスが叩く。酒しか見てない隙だらけの化物共は赤鬼以外はぶっ叩けた。

 

「リ………リリウス君、今のは!?」

「酒。俺の…………フルコース? 飲む?」

「ああ!」

 

 

 

 

 

 

「確かに美味かったけど、フルコースはこっちの世界で決める」

「そうか。ところでこれ、どう使う?」

 

 蜃の真珠の一部を削り粉に変えてみたが、使い方が分からない。一度霧のように撒いてみたが時間の流れが狂うだけだった。

 

「所長に連絡してみたけど、フェスが近くて準備が大変だから研究はフェスの後だと」

「まあ時間の流れも操れるなら過去にも…………なんか前にもこんな事があったような?」

 

 リリウスの脳裏に金髪の少女を筆頭に三人の少年少女、兎人(ヒュームバニー)の女性が浮かんだ気がしたが、このリリウスは知らない人なので気の所為だろう。

 

「ギャンギャラクルクル」

「……………ん?」

 

 と、不意に聞こえた声に振り返る。そこには妙な生き物がいた。4本のトカゲの足みたいのが生えた球体に目が3つ。口(?)から国旗の並んだ糸が出ている。

 

「何だ此奴、キッショ!?」

「バークルンクゥアだと?」

 

 確かに食ったはずのバークルンクゥアだ。リリウスが混乱する中バークルンクゥアは何やら鳴く。

 

「え!?」

「ん?」

 

 小松が何やら驚いたような反応をする。

 

「小松、どうした?」

「この子が、自分に任せてほしいと言っています」

「あ、言葉わかんの?」

「はい、食材なので」

 

 食材なんだ…………四天王、精霊、冒険者の心は一致した。

 

「どうやら、リリウス君がこの世界に迷い込んだ理由が自分にあるので元の世界に帰る手助けをするとのことです」

「え、こいつ?」

「ギャンギャラ」

 

 バークルンクゥア(小松翻訳)曰く、自分は美味しく食べて欲しいという思いから作り出された料理(?)。しかしあの時のリリウスは食材が勿体ないので仕方なく食べようとしていた。

 

 故にバークルンクゥアはリリウスの胃に落ちる前に、食道で逃げようと()()()()()()()()

 

 結果として時空を歪め、捕食者を求めこの宇宙に流れ着いた。同じく時空を歪める蜃の霧がその穴に反応し、リリウスはこの世界に訪れたらしい。

 

「腹にものが入らなかったか分からねえのお前」

「俺は常に腹減ってるから。今回は体調不良ねえしシルも少しは成長したな、としか」

「ギャンギャラクルクル」

「えっと『私はこの世界で私を美味しいと言ってくれる者を探そう。貴方は貴方の世界に帰りなさい』って言ってます」

 

 自分をまずそうに食ったリリウスにもこの配慮。なんて出来た食材(?)だろうか。

 

「ま、兎に角帰れんだな。良かったなウス」

「ふん。そっちは酒はともかく大した飯ねえ見てえだが、せいぜい飢え死にしねえように適応してけよ」

「君の旅路に幸があることを祈ろう」

「所長に頼んで虹の霧研究してもらえりゃ、往復も簡単になるかもな。そん時までにゃ、俺の最高のフルコース食わせてやるよ」

「あ、リリウス君、サイン貰えます?」

 

 そんな別れの挨拶を済ませ、バークルンクゥアは虹の霧となる粉を舐め取る。そしてバークルンクゥアは光の速度を超えた。

 

 

 

 

 

 

「………………帰ってきたな」

「最後はもう本当にカオスじゃったな」

 

 と、ドゥルガー。

 

「異世界土産も沢山あるし、暫くは主様の食生活豊かになりそうじゃな」

 

 リリウスはふむ、と虚空を見つめる。

 

誰かと食うのが()()()()()()

 

「………………ジュエルミート、まだ余ってたな。あれは美味かった」

 

 その上で特殊な料理過程は必要ない。誰かにやるならこれが一番だろう。

 

 後日、とある神は言う。

 【アストレア・ファミリア】とアーディたんと聖女様と魔女と『豊穣の女主人』の店員達と【ヘスティア・ファミリア】が輝いていた。いや、物理的に………と。

 

 

 

 

 

「神は光らないのか」

「不変だし、神。しかし、天然の酒が沸く島か。バッカス諸島というのもあるのだったか? ソーマはないのか?」

「知らね」

 

 


 

蜃「戦闘は?」

サラマンダースフィンクス「ナカーマ」

 

因みにリリウスとソーマが会話中に食っていたのはソーマの酒粕粥。リリウスやリリが幼少期ソーマに与えられていた食い物という設定。

恒例、100話区切りの特別編

  • リリウス、グルメ時代に立つ(トリコ)
  • マクールの竜退治(幼年期の冒険)
  • 迷宮偶像(アイドル)
  • 平行交差(原作時空)
  • 問題児たちがオラリオに来るそうです
  • リリウスは使い魔(ゼロ魔)
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