ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
海精霊の加護で水の上を歩く。目指すは古の怪物。
そんな、英雄譚の
「オオオオオオオオオオオオッ!!」
世界を震わせる咆哮。崩れ落ちる巨大な氷塊が更に罅割れ砕け散る。海が荒れ、荒波が弾ける。船を、海岸を、島々を沈めた海の覇王、その咆哮が響く前に力無きモンスターは一目散に逃げ出す。揚陸可能なモンスターは陸へと逃げるだろう。一番近い港町はメレン………シハチやシャバラ達が持ちこたえるだろう。
今は世界を無視して、世界の危機と戦う。
「大きいね。私より大きいモンスターは多々居れど、こうまで見上げるのは初めてだ」
海面を突き破り現れるヴリトラ。その額に乗るマナサー。空を駆けるサーガラとタクシャカ。竜の亜種達の出現にリヴァイアサンは…………我関せず。
「【轟け残光。即ち雄たる十二席】【ブレイズ・オブ・ラウンド】」
「クルオオオオオオ!!」
唱えられる魔法。バサリと広げられる翼を思わせる蒼黒い鰭。学区に備え付けられた壮麗な『
「っ! 散開!!」
エピメテウスが叫ぶと同時に降り注ぐ流星群。リリウスは光の剣を振るい、光を放つ。
空を駆ける残光が流星群とぶつかり合い、打ち消し合う。光の『片手剣』は崩壊。即座に現れる『双剣』。
リリウスの姿が掻き消える。
「──────!!」
次の瞬間刻まれる鱗。舌打ちするのはリリウス。鱗の表面に僅かな傷を刻むのみ。それだけを行い竜に痛苦を与える役目を果たすことなく『双剣』が砕けちる。
「『
光の戦斧を前にリヴァイアサンは光を生み出す己の魔力を尾の先端に溜める…………
攻撃など意に介さずに行われていた
「!!」
その炎は己を焼かないことを知っているリヴァイアサンは炎の壁を突き破りリリウスを食らわんとして、空を噛む。
思ったよりも速く落下したのかと視線を下に向けるが、向けるべきは上だった。
「おおおおおお!!」
光の戦斧から放たれる眩い残光。竜の頭蓋を守る鱗に亀裂が走り、血が流れる。叩き落とされるという屈辱を味わい海中へと沈む竜は身を深く深く沈めながらその体躯を鞭のように振るう。
光の戦斧が砕かれた。
「あわわわわわ!?」
「っ!!」
その衝撃により海は山よりも高い荒波の山脈へと姿を変える。飛び散る水滴の一つ一つが、
フィンは言った。少しでもリリウス達を強化する、と。それ以外は特に。つまり、アーディに求める役割は戦力ではなく強化要員。知っている。分かっていた。
離されていく背中を。最早追いつくことなどかなわぬと。
「アーディ!」
リリウスがアーディの側に降り光の『大盾』を海面に叩きつける。次の瞬間、海面が爆ぜる。
極大な光の柱が海面と空を繋ぐ。光熱により蒸気となった海は空にて暗雲へと姿を変える。
上空で冷えて凍り付いた細かな氷は巻き上がる上昇気流に掻き混ぜられ雷を発生させた。即ち嵐。古来より数多の命を暗闇の水底へと引きずり込む厄災。
地震等比べ物にならぬ感覚を味わいながらアーディは竜の泳ぐ水底に目を凝らす。
輝く偽りの星空。幻想的でありながら神聖さなど欠片も持たぬ禍々しい破滅の光の群。
光の大盾は消し飛んだ。僅か数秒で影から出したのは海の覇王の
触れた相手の魔力を喰らい修復する
修復するのは生きている故。これ以上の行使は盾が
『
敏捷、器用、力、耐久が強化されたリリウスと天の炎を自己強化に全振りするエピメテウス。
「残光」
「
海を切り裂く。分かたれた海の狭間を水の抵抗なく進む閃光がリヴァイアサンの鱗を貫く。
「グオオオオ!?」
海中でリヴァイアサンが暴れる。かなりの深海だというのに
ギョロリと上に意識を向けたリヴァイアサンの真下にて睨み上げる蛇竜が一匹。
「──────!!」
「!?」
水の中にも関わらず、全身に蒼い炎を灯す。リヴァイアサンの光線同様水を蒸気に変える水蒸気爆発。リヴァイアサンの体が海面に近付く。無数の鎖が絡み付き、引き寄せられる。
魔法による強化に加えて、スキルまで再現している。スキル
リヴァイアサンの半身ほどが海上へと引きずり出される。再び潜ろうと抵抗するリヴァイアサン。鎖が千切れ始める。
「コリガン!」
「はい! ネプトゥヌス!!」
精霊の加護………祝福を与え溺れぬようにする。即ち水上歩行。
水そのものがリヴァイアサンを拒絶するように弾き飛ばす。一瞬浮き上がるほどの勢いで浮上したリヴァイアサンは直ぐ様海中に潜ろうとしてヌルリと弾かれる。
「……………?」
その巨体で首を傾げたリヴァイアサンは尾を海面に叩きつけるも薄い膜でも張られているかのように水が歪み水しぶきが上がることはなかった。
「畳み掛けろ!」
リヴァイアサンの厄介さの一つを潰す。もっとも、だからといって脅威度は僅かにしか変わらないが。
「【
「【ヘリオス・エリュシオン】!!」
エピメテウスの
炎が象るは古の英傑達。絶望に沈みゆく時代に、剣を取り大英雄と駆け抜けた英雄達の残火。
第一級にも匹敵する不滅の炎の軍にリヴァイアサンは己の身を叩きつける。
何百と潰し、何百かに留められる。
「抑えていろ!」
リヴァイアサンが発生させた嵐により生み出された大量の雷を蓄えたタクシャカの
雷雲の如き黒い靄に雷を放てば蓄積された雷を取り込み轟雷となってリヴァイアサンへ降り注ぐ。
「オオオオオオオ!!」
ダメージは負っているが、健在。海竜の雄叫びは即ち覇王の号。竜の頭と魚のような体を持つ怪物、4本のオールのような鰭を持つ首の長い怪物、リヴァイアサンのように蛇を思わせる怪物………水生の竜種が集う。
炎と熱線が焼き尽くした。はなから期待などしていなかったのか慌てることなくリヴァイアサンは先程までより数秒長く溜めた光を放つ。
リリウスの持つ槍、鉄槌、鎌、大剣が砕かれていき、次に現れるは『
光の雨を躱し掌底から魔導師よろしく衝撃波が放たれる。己に叩き込まれ身を揺らす衝撃に記憶を刺激され……………リヴァイアサンは
リヴァイアサン・オルタナティブが真の意味で目覚めたのは骨に取り込まれてから。それより前の、
何故目覚めた。終わったはずの自分が何故また動くのか。何が起きたか記憶を探れば、脳裏に焼き尽く鮮烈な最期。
命を犠牲にしてでも鱗を貫き、血反吐を吐きながら魔導師を守り、怪我をしていない箇所などない身で己の身を叩き伏せてみせた戦士達との戦いの記憶。
お前達は違う。個々の力で圧倒していようと、奴等の総力はこんなものではなかった。お前達より弱い者達がそれでも挑んできた。誰が己からあの戦士達の戦いの結果を奪った。
ただでさえ苛立つリヴァイアサンはかの戦士達を想起させ、しかし及ばぬ戦力で滅ぼそうとする舐め腐った態度に苛立つ。
現れる光弾。数は減った。代わりに一つ一つに込めれた魔力量が増え、放たれる。
リリウスの片腕、エピメテウスの右肩、アーディの腹、タクシャカの胸、サーガラの顔半分、ヴリトラの各所が消し飛んだ。
無事なのは咄嗟にネプトゥヌスが水底へ避難させたコリガンのみ。
「…………っ!! 滅罪大黒天女! 【
サーガラに至っては即死。故に回復ではなく
「グガアアアアアアアアアア!!」
三大
ベヒーモスと異なり厳選された復活の贄、分身を生まずに削られていない力。決して侮っていなかったリリウス達の、予想の上をいく正真正銘の怪物が世界を震撼させる咆哮を響かせた。
さて、決戦の場は大海原で、そこを観測する手段のないディオニュソスは当然その光景を見ていない。
彼はただ英雄の勝利を声の届かぬ地下深くで応援するだけ。
神の全知を持って、賭けに勝った場合の未来を想像し笑う。
最初こそ海の覇王を討ったとして崇められる。しかし直ぐにそれも消えるだろう。自分の不幸は誰かのせいにしたがる人間達が不甲斐なさを理由に責める。得てしてそういう馬鹿のほうが声がデカく、震えるだけの衆愚は真実よりも声の大きさに傾く。
英雄の零落。過去にいくらでも見てきた光景であり、楽しんできた歴史。ありきたりな筋書きだが敵意に敵意返す世界最強。その光景を見るために
「どうか勝ってくれよ、リリウスきゅん」
それでは皆様ご一緒に
ディオニュソス超うぜええええええ!!