ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
肉体が悲鳴を上げる。骨が軋み、肉が千切れそうな程張り、血流は轟々と耳障り。視界は赤く染まり、過ぎた力が器を壊して溢れ出そうとしている。
それはつまり、今の自分はいずれ到る自分に追いつけていない証拠だ。だから、追いつけ。少しでも!
「グオオオオ!」
「カァ!」
海竜の
そのまま腕を振り上げると轟雷が無数の槍を象る。否、それは雷霆の矢。腕を振り下ろすと同時に降り注ぐ千を超える雷戟。
「【
鱗を砕き肉を焼き神経を縛る雷戟の雨。地上に振り注げば地形を変えるであろう、竜の命を削る破壊の雨だ。
「ギ、ガ……ガアアアア!!」
「────!!」
先程以上の竜王の咆哮が雷戟を散らしリリウスを吹き飛ばす。鱗粉のように広がる魔力がリリウスを覆う。生み出される禍々しき破滅の星空。
「此奴………!」
ある程度の距離にも光弾を出現させられたらしい。上下左右前後、全方位からただ一つの命を狙う星々。ギョロリと瞳を象る額の
縮小する星空。中心に向かい降り注ぐ流星群。
大爆発の光にリヴァイアサンは目を細める。やったか?
「──────ギッ!」
ズバッと首筋のうろこが肉ごと引き裂かれる。
宙に奔る血を追えば、無傷のリリウス。
避けた? 馬鹿な、避けられるわけがない。何という動体視力! 本当に? 見て避けた?
リヴァイアサンは再び広範囲に光弾を生み出す。本体から離れるほど威力と 速度が落ちるそれを、先程は囲い、着弾を一箇所に纏め其れ等を補った。
今度は威力を落とし、破壊範囲を増大。
無数に振り注ぎ夜闇を引き裂く流星が彩る幾何学模様。光熱に氷が溶かされ、リヴァイアサンが身動ぎして砕かれた氷から姿を覗かせる水面の範囲が広がっていく。
ぶつかり合い砕かれる氷の大地の影響を受けぬ上空で光弾を回避しながら迫るリリウスの背後に
リリウスが方向転換するのと同時に、その軌跡を追うように高速で迫り…………回避された。
「──────」
魔力で探知? ありえない。周囲にどれだけ魔力が散っている。
音で察知? 音よりも疾い。
第六感………といえばそれまでだが、
あの目…………未来を見ている?
(……………気づかれたか)
津波のように押し寄せる流星。面制圧による破壊にリリウスは距離を取る。
リリウスの額………曼荼羅が変化した瞳を象る
その応用として自分の周囲の未来を数秒だけ見通す
何故距離を取る。
魔力を吸収出来る筈。だから先程は大量に、食い切れぬほどと予想して撃った。事実避けたのだから食い切れないのだろう。今は? 面に広げたぶん、一つ一つの威力は落ちているはず。
一度に吸収できる量に限界があるように、そもそも許容量があるのか。
「………………此奴」
また気付いた。
今のリリウスは器を超過する力を行使する。故に、これ以上の強化は不可能。十把一絡げな魔道士の魔法や竜王の牽制程度なら食えるが殺意を込めた竜王の流星を喰えば砕けぬまでも肉体に亀裂が奔るだろう。同じ理由で【ラーフ・シュールパナカー】も陸の王の猛毒を初めて食ったあの時と同様、肉体を壊される。既に限界を超えているのだからあの時のように戦闘にすらならないだろう。
無数に現れる光弾。全てリヴァイアサンの周囲に浮かぶ、威力の減少しない光。数秒の蓄積時間により魔力を溜め込み………
「視野が狭いな」
「残光」
「放て!」
光の斬撃と魔法の雨が撃ち落とす。
ドワーフやアマゾネス達が魔法の雨に紛れ飛び込み銛を突き立てる。
「ベヒーモス復活の後に、備えていて良かった。対竜の銛だ。懐かしいだろう?」
「グルル………グガアアアアア!!」
苛立つように暴れるリヴァイアサン。ただ鬱陶しい羽虫を払う程度の動きは、しかしその巨体故に海を荒らし、飛び散る
攻撃ですらない、戦う資格なきものを振るい落とす洗礼。
故に、倒れる者は一人もいない。
その巨体の身動ぎに吹き飛ばされたドワーフやアマゾネスも健在。全身の骨が砕かれた彼等に
戦場に訪れようと『船』が破壊されるだけなのを知っている。だから備えた。
生半可な実力者では死ぬのを知っている。だから生徒達を置いてきた。
「こっそりついてくる
降り注ぐ流星群を切り捨てながら、
ランクアップにも等しい強化を完了したレオンは一歩踏み出す。巨大な氷塊が粉々に砕け散り、海が陥没する。
跳んだ。
ただの跳躍。ただし、Lv.8に比肩するステイタスとなった騎士の、だ。
海竜の知覚速度をぶち抜き接近し、ドワーフの怪力を以って振るわれるは覇竜の
「おおおおおおお!!」
ゴガァン! と世界を揺るがすような轟音が響き海面に頭部を叩きつけるリヴァイアサン。学区の教員達は沸き、二度目とはいえあまりに現実離れした光景にアーディやコリガンは再び唖然とする。
「いけいけいけ!」
「突き立てろ!」
前衛の教員達が頭部や首に銛を突き立てる。
「リリウス! 魔法を撃て!」
「!!」
【
「【訪れる厳冬。吹き荒ぶ風、突き刺す
ドグンと心臓が脈動し、溢れ出る魔素が冷気に変換され雨や海が凍り付いていく。背後から迫る海竜が王に仇をなす不届き者を噛み砕かんと迫り、触れること叶わず凍りつく。
「【フィンヴルヴェトル】」
スカディの大元たる女神、スカジ………ロキと同郷の神々にとって大いなる冬を意味する魔法名。
吹き荒れる冬の暴風がリヴァイアサンへ襲いかかり、銛を通して鱗の内側へ。氷瀑。
うちから血液混じりの赤い氷が現れ鱗を破壊する。
銛にミスリルの芯があったようだ。
「グギャオオオオ!!」
だが爆発の衝撃で銛が吹き飛び、再び突き立てようにも警戒される。リヴァイアサンは、学区の教員達もまたあの時のように敵であると認めた。認めたが故に警戒する。
心臓となったスカディの魔力を媒介にした魔法。エルフを超えた
「【盃を掲げよ。これより此処は盃に浮かぶ月。即ち虚像。満たされた酒は
ならばこれら、己の身に刻まれた神の血を以て扱う御業。理屈の上ではステイタスに魔力がある眷族は先天魔法を行使できる筈で、これもまた理屈の上では出来る………魔導の絶技。
「【死の大地。息なき空。反転せし不死、即ち死。故に不死の加護を与えよう。崇めよ、これなるは夜の王】」
「【