ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
【
【マハーヴィーラ・トリムルティ】を発動した状態のリリウスが発動出来る魔法。つまり未来では発動可能な魔法。ただし、恩恵に刻まれたものではない。エルフの先天魔法と同じ。
恩恵を刻んだエルフが使わなくなるほど魔力制御が難しいそれを並行詠唱で行えるなど、我が事ながら未来の自分はどれだけ魔力を究めたのか。やはり体を動かすよりも頭を使うほうが余程向いている。腹が減って集中続かないけど。
「………………っ!?」
リヴァイアサンは目を見開き固まり、水から弾かれる。水上歩行ではない。僅かに水に浸かってはいるし、何より魔力を燃やし魔法や加護の影響は受けない様にしている。これは、自分ではなく空間に作用している。
種別するなら『領域魔法』。
効果範囲を真空に、範囲対象の『質量を6分の1』に換える魔法。空から見下ろす夜天の主………月の如き環境にて真空に晒された水が蒸発していく。
「──────!!」
咆哮は響かず、されどギョロリと魔法の発動者であろうリリウスを睨み無数の光を放つ。その巨体を振り回す。
ヴリトラがその身で、マナサーが再生させた竜種の肉壁で咄嗟に近くの冒険者を守るが範囲が広すぎる。
貫かれ焼かれ潰される。
「こ、これは………傷が……」
「痛む間もなく………」
「噂に聞く【
これも【
むしろ対象外で平然としているリヴァイアサンがおかしいのだ。
「!!」
放たれる光弾。リリウスがこれ以上
「!?」
領域魔法……発動し続ける限り魔力を消費するリリウスは、故に空いた器に魔力を喰らう。触れるよりも早く魔力が吸収され魔法の形を保てず消える流星。
取り込んだ魔力は、当然使用可能。
「【
「!! ────!!」
その魔石を死体をごと食らいながら突き進む。
「!?」
その巨体がガクンと不自然に止まる。見れば天の炎を身体強化に全振りしたエピメテウスが尾鰭基底を掴みリヴァイアサンの巨体をその場に縛る。体重が6分の1にされたからこそだ。
「【
尚も続く詠唱。高まる魔力。
臨界を迎え放たれるであろうそれに怯えるように唸る。
魔力が高まるほどに、人類が動かなくなるのを知っているリヴァイアサンは無数の光を生み出し、魔法や弓、投槍がその身へ襲いかかる。
「【
落ちる速度は6分の1。尾鰭基底を掴んでいたエピメテウスが更に投げ飛ばす。
「オオオオオオオ!!」
響かぬ筈の海竜の咆哮が響く。溢れ出る魔力が空間に満ちるリリウスの魔力を揺るがしたのだ。
星空の如く輝く全ての魔力がリヴァイアサンの眼前に収束していく。ただ一点、最強の一撃。
「【
リリウスの背後に光輪のように円を描き現れる八本の雷の矢。
詠唱を以て練り上げた魔力から生み出された雷に【
「【アシュタ・シャクラダヌス】!!」
「──────!!」
放たれる雷の矢。海竜の滅殺の光。
ぶつかりあった衝撃だけで神殿が消し飛び教員達が吹き飛ばされる。光が四方に飛び散る。
残るのはヴリトラ、エピメテウス、レオン。彼等でさえ動けぬ程の魔力の圧。海が陥没し嵐が消し飛ぶ。その際に槍が3本砕けた。
「ぐっ、ぐ………っあああ!」
さらなる力を込めるも槍がこれ以上光の奔流を突き進めない。4本目、5本目に亀裂が走り砕けた。
「……………!!」
光線も威力が落ち始める。リヴァイアサンとて、魔力は無限ではないのだ。6本目を捨て残りの魔力を2本に注ぎ込む。裂かれる光の拡散が狭まり一部がリリウスの肩を貫く。
「これ、でも………!!」
押し切れない!
7本目が砕け、最後の1本。僅かに突き進み始める。リヴァイアサンの方にも限界が来た。
神の送還を思わせる莫大なエネルギーの塊である光の咆哮が途切れる。最後の槍は、砕け散った。両者直ぐ様次の行動に移ろうと動き………
「が────っ!?」
ブシュッとリリウスの顔中の穴から血が噴き出し動きが止まる。魔法が解けた。体を破壊すると同時に強化もしていた魔法が消えた事によりリリウスの体が崩壊。
迫るリヴァイアサン。レオンもエピメテウスも間に合わない。リヴァイアサンもそれに気付いていた。だから…………
「やらせない!!」
サーガラに乗るアーディ。あの魔力の渦を越えてきたのだろう。火傷に裂傷、飛び散る水粒に貫かれた傷もある。
「!?」
後から現れた連中のように自分に対抗するため武器を用意していたわけでもない。海を操ることも、この身を削る力もない。自身の脅威にならないとリヴァイアサンの意識から完全に外れていた強化要員のはずの女。
「【ガーナ・アヴィムサ】!!」
「!!」
ギシリとリヴァイアサンが
「【昇れ、神聖の階段! 照らせ、癒しの月光!】【ディア・カウムディ!!】」
リリウスへ回復魔法。同時に、能力の強化。
リヴァイアサンが戒めを破る。
「っ!! リリウス!」
両手を交差させるアーディ。意図を察したリリウスはアーディの腕を蹴り、加速。空気を蹴るより遙かに速度が速い。
己自身とマーダに竜殺しの雷を付与。
「滅竜………奥義!」
対黒竜想定の、スキルを併用した武技。
「天雷・
幾十もの雷撃が竜の鱗を砕き竜の内臓を焼き、竜の
勝敗を分けたのは……アーディ。何故気付かなかった!
油断ではない。リリウスが、エピメテウスが、ヴリトラが、コリガンが、レオンが、学区の教員達が………無視出来ぬ存在達がリヴァイアサンの警戒を削ぎ、たった一人を隠した。
ただ一人を滅ぼさんとするリヴァイアサンを止めようとした前世の戦いとは真逆………しかし結果は同じ。
「オオオオオオオォォォ!!」
「えっ!? 嘘、なんで!」
灰へと崩れ行くリヴァイアサンの崩壊が止まる。命が、終わらない。
「っ! 取り込んだ、竜の魔石か!」
先程傷を癒すために融合した海竜の群の魔石。集めたところで自身の魔石に及ばぬ其れ等で肉体を無理矢理繋ぎ止める。
しつこいなどとは言うまい。勝ちたいと足掻く事が惨めや無様であっていいわけがないのだから。
「!!」
光は放てない。その巨体でリリウスを叩き潰さんと迫る。リリウスは咄嗟にサーガラとアーディを蹴り飛ばす。反作用で逃れようとするもリヴァイアサンはリリウスを追う。
その額にリリウスを押し付け海を裂きながら突き進み、津波を生みながら大地に叩き付ける。
「がっ!!」
全身が軋む。視界が赤から黒に染まる。燃えるように熱いのに、内は凍えるほど寒い。久方振りの死が近付く感覚。
「ぐ……づ、ぁ………!」
指一本動かせない。鎌首擡げるリヴァイアサンがリリウスを見つめる。待っているのだ。立ち上がるのを。敵が強くなくては満足出来ないのだろう。竜というのはこれだから………誇り高さが面倒だ。無茶振りを押し付ける。
「………………!」
「………………ぁ?」
不意に、聞こえた。
オラリオの方角から…………