ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「【ブレイズ・オブ・ラウンズ】」
告げられる魔名。顕現する光の剣。
何か効果を発揮する前に潰しにかかるザルド。剣が砕けた。
「!?」
打ち合うか、流されるか、どちらにも対応するつもりだったザルドは意表を突かれ迫る蹴りに対処が遅れる。ていうか、『
「『
「ん?」
リリウスが呟いた言葉に一人の眷属が反応した。
「『
「ん?」
「お前じゃない、寝てろ」
「!?」
反応した双剣使いの眼前に一瞬で移動するリリウス。双剣使いはまるで何時の間にか目の前に現れる
金属音が響き、全身から血を吹き出し双剣が斬られる。
「ぬおおお!!」
と、巨大な戦斧を振るうドワーフが双剣使いを蹴り飛ばし距離を取らせながらリリウスへ一撃。双剣が砕ける。
「『
「儂の斧!?」
驚愕するドワーフの戦士が光に飲まれて吹き飛んだ。
「ダルバ!?」
「この!」
迫る魔法を掻戦斧の一振りで消し飛ばす。その衝撃の津波を越えてきたエルフの魔法剣士。パンと大気が弾ける音が響く。
しかしその魔法はリリウスの体に触れる前に掻き消えた。驚愕するエルフは地面に叩きつけられるように踏みつけられた。
地面が砕けその衝撃で追撃しようとしていた戦士達が吹き飛ばされていく。
「武器を砕くほどに強く……!?」
「厄介な……!」
それを知り、尚も迫る【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】。
斧が砕ける。『力』が増した。
人の形をした災害。明確な意思を持つ嵐。
あれは化物だ。
ヴァースキと言う名を与えられた蛇は自らの主となったリリウスをそう判断していた。
生まれた瞬間に目についた人類に襲いかかり、しかし人の皮を被った怪物だった。服従を強いられ、地上に連れて行かれ、戦わされた。あれを相手するよりまし。
そう思える程度のくせに、何故挑める。何故戦える。
自棄ではない。恐怖がないわけでもない。それでもその恐怖を乗り越え突き進む。その姿に、蛇は己が酷く小さな存在に思えてしまう。
力に怯え屈服した自分。
力を思い知りそれでも戦う戦士達。
──嗚呼、己も………その様にありたい
「オオオオオオオオッ!!」
「!?」
響くそれは、竜の産声。大気を震わす咆哮にリリウスは動きを止め振り返り尾の一撃に吹き飛ばされる。
「…………………」
魔法を解除し蛇殺しの雷を纏うリリウス。ビクリと身を震わせたヴァースキは、しかしそれでもリリウスへと敵意を向けた。
「…………これだから竜は」
獰猛に牙を剥く。怪物であり蛇であり
「こい、クソガキ」
「ッ! シャアアアアアア!!」
同胞を見る目を向けられた事は当然なく、ただ使える駒を見る目から、初めて向けられる敵意。
嗚呼、そうとも。己はお前の敵である。
今度はその身を震わせることはなかった。
ぶつかり合う巨躯と矮躯。
山の如く巨大な蛇竜と雷を纏う
「俺達を、忘れるな!」
「!!」
迫る炎牙。ごとすり潰そうとする音の破槌。「え」と言う声が聞こえた気がしたが気の所為だろう。
「シャアアアアアア!!」
ヴァースキの吐き出す毒が吹き飛んだリリウスへと襲いかかる。黒い風が毒を絡め取りヴァースキへ迫る。
鱗を削り肉を溶かす竜巻を超えながら迫るヴァースキ。
「!?」
リリウスの身体がブレる。
存在ごと世界から引き剥がされるような感覚。
「っ! やりすぎたか………」
条件さえ揃えばブラフマーストラと合わせることで空間そのものを消し飛ばす轟雷。いまだ健在のはずの陸の王から奪った力。
世界に見つかった。修正力によりあるはずの無いものはあるべき時代に戻される。
「いいや、まだだ。もう少し続けさせろ」
剣を振るう。パキィンと何かが砕けるような甲高い音ともに薄れていたリリウスの存在が世界に固定される。というかしがみついた。
神の鏡で見ていた神々はえぇ、と引いた。ガネーシャは叫んだ。あれはガネーシャだ!
「時間がねえ。これを以て、終幕だ!」
リリウスから放たれた雷が見渡す限りの天へと広がる。雲に宿らせた本来の出力を超えるエネルギーを改めて収束。顕現するは無双の雷槍。魔力は込めない。消されるから。
「
相対するは
「……………お腹空いた」
焼け焦げた大地。地に伏せる英雄達。
その中心で腹を撫でるリリウスは、炭化した肉体を持ち上げるヴァースキを見る。闘志は衰えず、誇りを取り戻した竜に、加減は不要。
「じゃあ約束通り、黒竜の討伐は………そうだな、Lv.8が最低でも6人ぐらいが目安。お前達ならその時にゃLv.7も更にいるだろ。後聖地の解放だろ。それから聖女の誕生に眷属広域強化のスキル持ち………あ、後
『
「しかしこの蘇生一歩手前の回復魔法の使い手に、所属関係なく眷族全強化……しかも
「
「マジか。下界の可能性ヤベー」
「いっそ世界の抑止力でも働いたかのように、あの時代に集まった。竜殺しとかな。ベヒーモスの毒すら癒やせる聖女とかも、この時代にこそ必要だろうに」
後周囲を引き上げる英雄。ただ強いだけの【ゼウス】や【ヘラ】には示せぬ、立ち上がる姿を見せる『弱き強さ』は最強の二人を失った後に一番必要な存在だったろう。尚正義の派閥や衛兵のある少女にとってそれがリリウスである事を本人は知らない。
「まあ、少なくとも黒竜が生きたままお前のような奴も残るわけだしな」
「ああ、そこは期待するな」
リリウスは己を撫でるヘラの手をどけ告げる。
「お前達がいる以上俺はお前達の前に現れない。あれ、そもそも生まれるのか………?」
なにせ酒に酔ったカス二人が酒の代わりの快楽求めて寝た結果生まれた第一子。そもそも酒を共に飲める子供がいない頃のソーマは放任主義過ぎでゴミカス共が好き勝手したわけで………アルフィア辺りが『不快』の一言で潰しかねない。いやまあ、ゼウスとヘラがいても活動自粛なだけで
「まあどちらにしろ、お前達がいるなら此処の俺はそんなに強くなろうとしないだろ」
「まあお主、才能なさそうじゃしな。理を超えるほどの執念は持ってなさそう」
「まあ他に強くなりたい理由があれば可能性はあるが…………」
ベルだって恋慕と憧憬から才能以上の成長をしているわけだし。
「そりゃお前、女じゃろ」
「アフロディーテが強い男好きだって言えば…………いや、俺がアフロディーテに惚れたのあの過去ありきだしなぁ」
「アフロディーテ………」
「ひっ」
名を聞いただけで殺気を放つヘラにゼウスがビビった。リリウスも扉まで飛び退いた。
「と、とにかく、黒竜には挑むな。挑むのは十分過ぎる以上に備えろ。結果を考えりゃ、それで漸く備えが足りるか足りないか。お前達は確かに黒竜と戦うことを求められてるが、それは勝てると思われてるからだ」
そう言うとリリウスは部屋から出ていった。因みに余計な聞き耳を立てられぬよう【ヘラ・ファミリア】のホーム。一人取り残されたゼウスは、さて、風呂でも覗いてから帰るかと立ち上がり肩をつかまれた。
「……………?」
肉を叩き潰すような音が聞こえた。というか怖いならさっさとこの世界にしがみついている手を離せばいいのに、あえてまだ残るリリウスは無意識にある匂いを追う。
「来たか」
「……………来た」
「やってくれた」
「……………俺もお前にすごくやられたし」
「何? いや…………そうか」
訝しみ、しかし納得する暴君。普段ならわけの分からないこというなと理不尽な暴力を振るうであろう彼女の姿に周りの数名が戦慄していた。
まだ多くの眷族は休養中なのかアルヴァはいない。
「それで? お前は何時まで残っている。力を示した男にここは危険だ」
「…………………」
リリウスが周囲を見回すと肉食獣みたいな目を向けられた。強いからと恐れられる【ヘラ・ファミリア】のフリーはなら強い男を見つければよいのでは、と思ってたりする。
「そうだな。すぐ帰る。けど…………最後に、別れのお願いがある」
「………………なんだ、言ってみろ」
「!? あのアルフィアちゃんが、妹以外のお願いを聞いた!?」
「明日は雷が降るぞー!」
「【
蹂躙された。多分いつもの事だろうに懲りないのだろうか。
「早く願いを言え」
「………………あ…頭を、撫でて欲しい……です」
「「「──────」」」
何名かが胸を押さえて倒れた。
「…………そんなことでいいのか?」
「…………」
コクリと頷くリリウス、アルフィアが手招きすると駆け寄ったリリウスは膝に体を預ける。
「こうか………?」
妹以外撫でたことなどないアルフィアは少し戸惑いつつも妹によく似た白髪をそっと撫でる。
「………もっと」
「こうか?」
「うん…………♪」
嬉しそうに笑うリリウス。アルフィアも知らず笑みを浮かべていた。
「あの時、ずっとお願いしたかった事だ」
「……………そうか」
「うん」
■■■■は消えた。
闘った記録も記憶もあるのに、顔も名前も声も、何一つ思い出せない。刻まれた敗北の記憶。しかし、不思議と屈辱は感じていない。
「ゼウス………」
大神の眷族は今日も今日とてヘラにボッコボコにされた主神に告げる。
「ヘラ」
女神の眷族は今日も今日とてゼウスを探し彷徨う女神に告げる。
「「俺/私達は、強くなりたい」」
ちなみにこの世界ではヘラが健在な為アイズはヘラ・ファミリア。ベルはまあ一途だから問題ないけどね!
どっかの両親は虐待はしないけど稼ぎが無いので普通に捨てる。その後アーデ兄妹は原作よりマシなファミリアで過ごした後とある孤児の守り神に拾われる。