ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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厄災(ストブラコラボ)

 敵は大精霊クラスの魔力の蛇を操る。確認しただけで3種類。混ぜることで力を増したが、蛇の数、混ぜられる数は不明。

 

 蛇を破壊した際に、復活したが魔力が大きく削られていた。逆に、自身の意思で消した場合は魔力は回収されていた。しかし本体の魔力は絶大。エルフの女王よりも上だ。発言からして不死。

 

 推定レベルは低く見積もって9。

 恐らくはあの世間知らずと同種なのだろうが………別種レベルで力の桁が違う。氷漬けにしたところで破られるだろう。

 

 対処法は顕現した蛇を破壊して魔力を消費させるといったところか。

 

「いいね。少ない情報から、こちらの弱点を推測するその目………純粋な力のぶつけ合いも楽しいけれど、技と知恵と駆け引きを以て語り合うのも楽しいものさ」

「チッ」

 

 なんか発言の一々が気持ち悪い。そして、あれだけの力を持ちながら本人も駆け引きを行える。才能と…………歴戦で培われた経験から来る戦闘勘。

 

 脅威度は穢れた精霊と同等かそれ以上!

 

「ヴァジュラ!」

「徳叉迦(タクシャカ)」

 

 雷と蛇が目から放つ光線がぶつかり合い弾ける。

 

 

 

 

「ふむ……」

 

 主な攻撃手段は雷に炎。先程の名も知らぬ吸血鬼を封じた氷も考えれば三属性。まあもっと持っているだろう。

 

 雷は魔力を感じない。過適応能力者(ハイパーアダプター)に近いか? 規模は比べ物にならないが。

 

 何より厄介なのは炎の蛇。草木は勿論石や鉄、果ては魔力すら焼き呑み込む。単体の性能で真祖に匹敵すると自負している2体融合の眷獣と互角。3体融合で焼き尽くされる前に打ち勝てる。

 

 一度だけ地面………影に手を向けやめていた。周囲の確認………広域破壊可能な何かを出そうとして周囲の被害を考えた?

 

「さて…………」

 

 少年の動きも明らかに誘導。全力を出しやすい場所に向かうつもりなのだろう。無論彼の力の底は見たい。だが、果たしてそれは全力で戦っていると言えるだろうか?

 

「誰を前にして考えこんでやがる」

「!!」

 

 僅かな思考の隙間。一瞬で距離を詰めた少年。

 掌打が腹に叩きこまれ吹き飛ばされる。空気の壁を何度もぶち破りながら男が吹き飛んだのは巨大な塔。

 

 設けられた入り口の扉を破壊し中に入る。

 

「ここが、そうか………」

 

 闘争を求めて絡んできた冒険者とやらから聞き出した戦いに溢れるダンジョン。モンスターが湧き出て、下に向かうほどに強くなると聞いたが………。

 

 螺旋階段を昇り降りしている連中は有象無象。先程の少年と近くにいた褐色の偉丈夫が群を抜いて強い。

 

 やはりいい出会いだ、と微笑むヴァトラーを追い掛け現れる少年。

 

「落ちろ」

 

 柄頭から炎が噴き出す剣が勢い良く迫る。腹を貫かれたまま階層をぶち抜き下へ下へと落ちていく。

 

「ぐぁぁ!」

 

 内から炎に焼かれながら、魔力が燃やされていく。不老不死たる吸血鬼でも、若い世代どころか古き世代でも場合によっては焼き尽くされる。

 

 脇腹を抉りながら剣から体を離す。剣はひとりでに浮かびヴァトラーと共に開けた穴から戻っていく。

 

 

 

 

「………………?」

 

 ダンジョンに足を踏み入れたリリウスは訝しげに周囲を見回す。ダンジョンが苛立って……いや、張り詰めている? 厄災を生むべきか警戒しているような………誰だか知らないが派手に暴れてくれたらしい。

 

「っ!!」

 

 と、地面を突き破り光線。

 リリウスの捕食器官の延長である以上、リリウスの弱体化の影響を受ける炎蛇(アヒ)とはいえ、あれだけ栄養が詰まっているなら燃料としても最適なくせに随分としぶとい。

 

 しかも追撃はない。誘ってやがる。まだまだ余裕………なのもあるだろうが単純に戦いが好きなタイプ。面倒だが放置すればまた上がってくるだろう。リリウスは穴に飛び込んだ。

 

 

 

 

 侵入者たる2人へと襲いかかるモンスターの群れ。互いに目にも入らず雷と蛇がぶつかり合う。モンスターが一瞬で消し飛び階層が崩落。

 

「ドゥルガー!」

「ああ!」

「へぇ、それは守護者かい?」

 

 リリウスの言葉に現れたドゥルガーを見て楽しそうに笑う男。ドゥルガーが出した無数の武具を規格外の膂力で投げつける。音速を優に超える武具を前に新たな蛇の姿が現れる。

 

 光線、雷撃、氷、炎、氷塊、水流がぶつかり合い階層が崩落し二人は更に下へ。リリウスは周囲を把握すると人の居ない場所へ殴り付ける。

 

「つれないなぁ、僕に集中しておくれよ!」

「!!」

 

 殴りつけた腕が掴まれる。尋常ではない怪力。リリウスは即座に己の腕を切り男を蹴りつける。

 

 首の骨を圧し折った。

 が、蛇は消えない。先程だって内臓を潰し背骨を砕いた筈なのだ。不死身………再生能力は此方より遥かに上。ヘイズの魔法を思い出す。あれより上か。

 

「ドゥン!」

 

 ドゥルガーの魔力で編まれた虎が蛇に食らいつく。負けじと噛み付く蛇。その衝撃で崩落する瓦礫を男に向かい蹴りつける。

 

 剣の如き鱗を持つ蛇に己を守らせる男に、リリウスは切断された腕を向ける。

 

「なに!?」

 

 切り離した腕が男の脇腹に指を食い込ませる。切断面が引き合い男がとぐろの隙間から引きずり出され、リリウスが反対の腕で殴り付ける。

 

「ごぁ!!」

 

 肋が砕けた。肺が破裂した。心臓が潰れた。しかし、死なない。血を吐き出しながら獰猛に嗤い、崩落する瓦礫と共に落ちたのは17階層。

 

 広大な広間(ルーム)は王が不在。代わりにミノタウロスを始めとした中層のモンスターの大群。基本的に、階数主がいないこの階層に冒険者は留まらず、また討伐されたばかりのため編成隊が近くにいることもない。故に、全力。

 

「いいね………」

 

 紅く輝く瞳に男は笑う。2体の蛇が絡み合い融合し吐き出される炎。しかし既にそこにリリウスはいない。

 

「がぁ!!」

 

 地を駆けたリリウスが蛇を殴(・)り(・)散(・)ら(・)す(・)。膨大な魔力の塊であるはずの蛇を本来物理的に破壊するのは不可能だ。

 

 ただ、魔力の塊であろうと物理的に接触できる。触れられるなら殺せる。

 水道の水を手で弾けるのだから川の流れも………いや、津波も殴り飛ばせるというような暴論だが出来るものは出来る。

 

「紅(くそ)がよ…………さっさとくたばれ。ダンジョンが苛立ってんのも、どうせまたてめぇら異邦人のせいだろうが!」

「ははは、僕以外にも来ているのかもねぇ!? だけど、さっさとそちらにいきたいって態度は頂けない。今は僕と戦いを………戦争(ケンカ)をしているのだから」

 

 現れる6体の蛇。3体ずつ融合し、尋常ならざる魔力を放つ。

 

「ドゥルガー、炎蛇(アヒ)………殺し尽くして焼き尽くせ」

 

 モンスター達は恐慌し逃げ出していた。

 

 階層が、再び崩落した。

 

 

 

 

 

「なんだ!?」

 

 18階層。

 

 モンスターの大群に襲われたかと思えばモンスターは自分達を無視して、何かから逃げていると察したパーティ。

 

 冒険者、異端児(ゼノス)、更には一般人まで混ざったダンジョンに似つかわしく無い彼等はモンスターが逃げ出す何かに警戒していたが、次の瞬間天井の一角が崩壊した。

 

「あれは………蛇の眷獣!?」

「おい………嘘だろ、なんで彼奴がここに!?」

「炎の蛇と、多腕の少女? あれも、眷獣でしょうか?」

 

 叫ぶ灰色の髪を持つ男。男には蛇に見覚えがあった。ただ、その蛇と争う炎の蛇は知らない。そして、同じように魔力の体を持つ多腕の少女。主は何処に!?

 

「ちょうどいい」

「へ?」

 

 不意に後ろから響く声。振り返ると異端児(ゼノス)と共に現れたフィルヴィスという名の少女の背に飛びついた白髪の子供。

 

「少し貰うぞ」

「づぁ!?」

 

 そのまま首に噛みついた。牙によって貫かれた肌から出る血をジュルジュルと啜る。

 

「此奴、吸血鬼!?」

「フィルヴィスさんから離れなさい!」

 

 黒髪の少女が槍を振るうも指で挟まれ受け止められる。そのまま片手を軽く振り吹き飛ばす。

 

「雪菜! てめぇ………!」

 

 睨みつける男を無視し森の奥、蛇を睨む白髪の子供。

 

「全力には程遠いが、9程度には戻ったか…………」

「「「!?」」」

 

 バチチと雷が弾ける。自身の操る『獅子』を思わせるエネルギー量。周囲の草木が焼け飛ぶ。

 

「おや…………? へぇ、こんなところで君達と出会えるなんて」

「ヴァトラー!! なんでてめぇが此処にいやがる!?」

 

 森の奥から現れた金髪の貴公子。男の言葉に楽しそうに微笑んだヴァトラーは、しかし視線を子供に戻す。

 

「済まないね、今は彼との逢瀬を楽しみたいんだ。君との時間は、後でたっぷり濃厚の一時を過ごそうじゃあないか」

「気持ち悪いこと言ってんじゃねえ!」

 

 と、子供が人差し指の先を親指の爪で裂く。吹き出した血が意思を持つかのように蠢き紅の魔槍を象る。

 

「武器型の眷獣!?」

「何者ですか、彼は。尋常ではない魔力を感じますが………」

「こちらで知り合った友人だよ」

「勝手に友人認定すんな殺すぞ紅(クソ)カス」

「今日の師匠怖!?」

「魔眼を発動しているからな」

「え、知り合いなのか?」

 

 などという会話をしている間に子供は地を蹴り駆け抜ける。振るわれた槍を受け止めようと片腕を構えるも元は不定形の血液。防御をすり抜け顔面を叩く。

 

「っ!! はは!」

「爆ぜろ」

「!!」

 

 パチッと紫電が走りヴァトラーの頭部の血液が沸騰する。通常雷は体表を流れるため、ジュール熱で血液が沸騰することはない。先の一撃でヴァトラーの頭部に電荷を付与し内部に通りやすくしたのだろう。

 

 脳を失い倒れかける体を蹴り飛ばす。轟音と共に森の一部を破壊しながら吹き飛ぶヴァトラー。

 

「っ!」

 

 子供もガクリと崩れかける。顎に傷。あの一瞬で拳か蹴りを食らったらしい。頭に指ぶっ刺して揺れる脳を止めた。

 

「うぉ!?」

 

 槍が解け、周囲に散らばるモンスターの死骸に突き刺さる。

 

 ボリボリグチャボキと死体が血に包まれ質量を失っていく。

 

「血が、モンスターの死骸を食べて………」

 

 血液が再び収束し赤い球体となる。それを呑み込む子供。先程以上の雷が弾ける。

 

「はははははは! なるほど、食えば食うほどに強くなるのか! まるで吸血鬼(僕達)の様じゃないか!」

「ええ!? 生きてる!!」

 

 あれだけの傷を完治したヴァトラーは楽しそうに笑う。現れる蛇の群れ。子供が忌々しげに睨みつけ、多腕の少女が笑い炎の蛇が牙を向く。

 

 次の瞬間、世界が震えた。

 

「……………あ」

 

 ベルの顔が蒼白に歪む。

 

「な、なんなんですか、これは!?」

「なに、これ……まるで、世界が哭いている、ような!」

 

 女が世界に匹敵する大きさだとしたら、こんな声で哭くのだろうかと思わせる高音域。紫の漿液を流しながら、それは現れる。

 

「骨……?」

 

 恐竜の化石を思わせる巨大な爪をもつ怪物。深紅の眼光が子供とヴァトラーを睨みつける。

 

「気をつけてください! そいつに、魔法は効かない!」

「なんだそれだけか。つまらないなあ」

「失せろ」

 

 蛇が尾で地面を叩き大地の欠片を飛ばす。雷により発生した磁場で金属片を放つ。どちらも純粋な物理的暴力。ベルがとても追い詰められた厄災は原形残さず擦りつぶれた。ベルは知ってた、と遠い目をした。余計な心配だった。

 

「さ、続きと行こう」

「ああ、さっさと死ね」

 

 ヴァトラーの蛇に対して、炎の蛇、多腕の少女、更には氷の巨人に魔神を象る雷。

 

 両者が再びぶつかり合おうと動き………。

 

「そこまでだ」

 

 更なる火力が落ちてきた。

 

 轟音と共に広がる火柱にヴァトラーの蛇と炎の蛇は焼き尽くされ、子供とヴァトラーは即座に距離を取っていた。

 

「……………君は」

「エピメテウス………」

「これ以上暴れるな。ダンジョンにて異常事態(イレギュラー)が起きている。リリウス、お前はそちらの対処。貴様も、これ以上続けるようなら…………俺達を相手に戦いを楽しめると思うなよ」

 

 炎の大英雄は異界の吸血鬼を見据え、静かに告げた。

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