ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
轟雷。轟音。
ただぶつかり合った余波で階層が蹂躙される。
「きゃあああああああ!?」
「凪沙! クソ、なんて戦いだ!」
雷放つ2匹の獣。片や黒雷でその身を形成した獅子。片や雷神の如き雷禍を振るう冒険者。
「本当に彼は人間なのですか。破壊の規模、それを維持する絶大なエネルギー。まるで、真祖の眷獣同士の戦い」
「直前に食べた僕の
戦慄するラ・フォリア。楽しそうに笑うヴァトラー。
「さっきみたいに食べないのかしら?」
「まあ
と、ヴァトラーが目を細める。
「弱体化しているらしい体ではあれが限界なのか」
「────」
ゴボッとリリウスの両目と口から鮮血が流れる。雷光が消え失せ、漆黒の雷に飲まれるリリウス。
『!! GOAAAAAAAA!!』
唐突に力を失い雷に飲まれたリリウスに、この様な決着など認めぬと言うように吠える漆黒の獅子。叩き起こさんと雷を放とうとする。
「させるか! “
『RUAAAAAAAA!!』
ぶつかり合う黄金と黒の獅子。先ほどの焼き回しのように階層が蹂躙されていく。
「クソ! 此奴、いつも以上に!!」
眷獣の中でも制御の難しい暴れん坊である黒い“
「2体の“
暴れ狂う二重の雷が魔法も矢も掻き消す。凡百な雑兵も、名の知れる冒険者達ですら介入出来ない圧倒的な破壊の渦に、その男は飛び込む。
「ふっ!!」
『GAA───!?』
エピメテウスの斬撃が黒い獅子の腕を切り飛ばした。
「えええ!? 魔力の塊である眷獣を、斬った!?」
「精霊もどき程度、『
神をも斬り殺す神造武器。神殺しの吸血鬼の力といえど、12分割されていて、ましてや担い手は大英雄だ。因みに暴雨の如く振り注ぐ雷は素で避けた。誰もが驚愕する中、エピメテウスは視線を逸らす。余裕とも取れるその反応に黒獅子の誇りが刺激された。
『SIAAAAAAAA!!』
「こ、今度は何!?」
新たに響く怪物の咆哮。枯れ木を飲み込みながら現れるは、尾の先端にも顔を持つ双頭の蛇。
「森を、呑み込んでいる?」
「おお!!」
エピメテウスが振るった剣が蛇の牙と触れ合い………触れ合う前に止まる。
「空間の断絶…………いやっ、空間ごと消滅させてる……?」
「そんな………あれは………
それもまた、古城………第四真祖の眷獣の一体。何もかも食らう、友を思い出させる蛇にエピメテウスは笑う。
「来るがいい、竜退治は、一匹を除き得意とするところだ」
「俺達は『
再び階層が揺れる。現れたるは黒紫の炎に包まれた人食い虎。枯れ木を燃やし、大地を腐らせながら駆けてくる。
「“
「三体目!? 気をつけてください、あれは毒を操って………」
空間ごと全てを喰らえるはずの竜の牙は英雄により止められている。逆に言えば、彼以外相手出来ないがために獅子と虎はフリー。古城は混戦の中新たな眷獣を出せないでいる。
「瞬間的な火力が足りない。このままだと、不味い」
「一体、どうすれば………」
もし更にもう一体現れでもしたら、エピメテウス以外は全滅する。しかしあの破壊の嵐の中に飛び込める者など………
「君だ」
と、ヴァトラーはヴェルフに向かい告げる。
「僕の眷獣を退けたように、君が何とかするしかない。その手に持つ、魔剣とやらで」
「ヴェルフ………!」
「………ああっ、クソったれめ! 許してくれ、
苦々しくは思いながらも葛藤はない。秤にかけるまでもなく、優先すべきは仲間の命。
「
吹き荒れる白銀の吹雪が時間すら凍てつかせながら人食い虎へと迫る。吹雪が進行方向の全てを飲み込み、過ぎ去った後に動く者は何一つない。
「黒い“
「本当に、なんなのよあの男の力!?」
「一匹は潰した! 後は思う存分にやり返してやれ!」
「っ!! 行けええええ!! “
仲間がやられ、主が動揺したのか命令が途切れた黒獅子はリリウスが埋まっているであろう瓦礫を睨み、己の前に隙を晒す黒獅子を黄金の獅子は雷を伴う咆哮で掻き消した。
「残るは一体です!」
雪菜が振り返る。攻撃範囲はともかく、攻撃による対象の破壊力という点で見れば防御不能と言う厄介な眷獣。如何に冒険者が雪菜達の世界から見ても規格外とはいえ…………
「終わってる…………」
両の首を切り落とされた
「やったの?」
「………視認もできなければ、魔力も感じられない。見える範囲では、撃退しました………」
「けど終わりじゃない。間違いなく、ね………」
「此方もな………」
ヴァトラーが意味ありげに笑う中、エピメテウスは剣を構える。次の瞬間、リリウスが埋まっていた瓦礫の山が吹き飛ぶ。
「ふぅぅぅ…………!!」
口元から唾液を垂らし、紅の魔眼で睥睨する。
「!!」
「ちょ、嘘でしょ!? 空間の断裂そのものを食べて!!」
「
【
スキルとなった今、その調整はリリウスの意志のみで行われる。飢餓感と凶猛の魔眼が合わさり、加えて押し合いに負けた怒りと共鳴し暴走している。
「どうすれば………」
「生存本能を抑えれる程度に回復させるしかあるまい」
「どうやって!?」
「此奴は食えば回復する。だが下手に力ある何かを食わせれば、器が傷ついたままの此奴の身が耐えられず更なる食料を求める」
「つまり、弱いお肉、ですね!」
不意に聞こえた声にリリウスが振り返る。声に反応したのではない。匂いだ。
「はい、リリウスちゃん。今日のご飯よ〜」
「!!」
「消え!? え、もうお鍋に顔突っ込ん出る!!」
「気のせいか、鍋から人の手が」
「ゴブリンだな」
「ゴブリンか」
ダンジョンリザードもいるのに何故そのチョイス。いや、上層のモンスター適当に突っ込んで煮込んだだけだな。
巨大な寸胴鍋の縁に腰を引っ掛けていたリリウスは下へと首を伸ばし中に落っこちた。ガタガタと揺れる寸胴鍋。
「ショート動画で似たような光景を見たことあります」
猫を思い出し雪菜がちょっと頬を赤くしていた。やがて鍋の縁を小さな手が掴みヒョコリと顔を出すリリウス。あ、引っ込んだ。
「弟子の前で暴走するような痴態をみせて合わせる顔がないようだ」
「え!? 師匠にそんな事気にするようなまともな感性が……ソゲブ!?」
カァン! と音を立て寸胴鍋がベルの額にぶつかった。