ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
現状のパーティーで眷獣とまともに渡り合えるのはリリウス、エピメテウス、古城、ヴァトラー。意外といるね、世界最強と恐れられる第四真祖の眷獣相手に戦える奴。
「しかし、真祖…………吸血鬼の始まりにしては随分中身が成長してない」
「悪かったな。なりたてでな、見た目相応なんだよ」
「見た目よりガキっぽそうだ」
「そうだね。古城君は結構だらしのない子供だよ」
「………………反面教師。いや、逆か。しっかり者の妹がいるからのだらしなさ。妹をよく信頼しているし、信頼に応えているな」
リリウスは凪沙の頭を撫でようとエピメテウスから降りて、手が届かないので戻った。
「まあ、兎に角敵は第四真祖とやらと同等どころか同質の眷獣を使う怪物。しかも、各階層に現れている、だったか?」
「はい。同胞達の報告によれば」
「遠隔操作か、或いは一体一体に使い手がいるか………まあ前者だな」
リリウスはそう断言する。
「何故そう思うんだい? 真祖クラスの眷獣を複数所持するより、かろうじて真祖に匹敵する一匹を持つ旧き世代が数人紛れ込んだ方が、まだ現実的だけどなァ」
「その価値観は俺にはない。だから、複数の大精霊との契約みたいなもんと俺は捉える」
「精霊王朝スフィアみたいに、ですか?」
数多の精霊と契約した英雄の一人の名を挙げるベル。リリウスはなんだっけ? と記憶を探る。アーディが話してくれた英雄譚にいた気がする。
「まあ、とりあえずそんな感じ。大本は一カ所だ」
「そう思うに至った経緯は?」
「まず暁古城。お前、眷獣をうまく扱えないって言ってたな」
「お、おう………」
「それが同じ眷獣が2体いるが故だとしたら、それは向こうも同じはず。なら大雑把な破壊の目的は試運転。その上で、被害場所と時間を照らし合わせると、恐らく黒幕はこんな感じに歩いてる」
血を操り立体的なダンジョンの地図を作るリリウス。分かりやすく推測ルートに紫電を纏わせ光らせる。
「それだけなら、吸血鬼が団体で移動している可能性もあるけど」
「それはない。ただ強い力だけ持ってる素人がダンジョンを誰にも気付かれず歩くなんて不可能。ましてや複数ならな。それに眷獣は自意識を持っている。あの
「どうやって第四真祖の眷獣を再現したんだろうね?」
「はっ、それこそ神のみぞ知る。なにせ奴等は全知全能、そのくせピンキリで千差万別。神殺しの武器を作る奴も、技として持つ奴もいる」
その中の一柱がなんか面白そうという理由で異界の神殺しの力を再現したのだろう。後ついでに面白そうだからという理由でオリジナルも呼んだとか、そんな感じ。ダンジョン内に呼ぶあたり、何時かの精霊の複製体を呼んだ奴より分別はつくようだが。
「騒動の黒幕はダンジョンに居ても、本当の意味での黒幕は天界に送還されたかそもそも降りてきてない。俺達が対処するのは眷獣使いで十分だな」
「大丈夫なのですか? 呼び出させ、力を与えた何者かは健在のままなのでしょう?」
「まあ、結果はどうあれ『あ〜面白かった』で数万年は仕事に戻るだろ。それはそれとして天に辿り着いた折には必ず殺す」
エピメテウスも目を伏せ剣の柄に手を添える。チリッと僅かに火の粉がこぼれた。
「この世界の神って、そんな感じなの?」
「何億年も生きて暇なんだろ」
「僕も、まだそこまで生きてはないから少ししか気持ちが分からないかな。いや、やっぱり分からないな。暇なら殺し合えばいいのにねェ」
「どうせ復活する。本物の不滅だからな。あ、でも記憶は失うんだったか?」
名前と司る概念は同じでも全くの別物。それはそれとして、神はそうなることもあまり気にしないが。
「地上に降りてくれりゃドタマに杭刺してセメントで固めて埋められるんだがな」
残念ながらそれは出来ないので、呼び出された真祖モドキの方を対処する。
「ところでこの血を操るのもスキルとか魔法なの?」
「発展アビリティ」
ヴァトラーとの戦いで、リリウスは切断した腕を切断したまま操れた。発展アビリティ『不死身』は己の肉体を切り離したまま生かし続けていたのだ。神経で動かしている訳はなく、斬られた位置的に筋肉で動かしている訳でもない。己の体であるだけで動かせるなら、血でも可能だろう。
「とりあえず俺達は複数に分かれる。眷獣の破壊活動を止めないとダンジョンが鳴く。さっきの骨………ジャガーノート程度なら問題ないが」
「ないんですか…………」
「やりすぎるとこちらを殺しに来るからな。ジャガーノートなんざと比べ物にならない。また俺に当てるつもりで生み出されたら、ベル達が危ない」
経験者は語る。
「そうは言ったってさ、分散すれば………戦力がバラける。あの眷獣っていう相手に生半可なパーティじゃあ、自殺行為。リリウスと【
「俺はリリウスがまた暴走した時に備えて共に行動する」
「俺はそこの吸血鬼が問題起こさないように監視する」
「僕は美味しそうに育った古城の成長を近くで味わいたいかなぁ」
眷獣に対処可能な4人が一チームに纏まることが決定した。
「因みに、私は【剣姫】達と違うから、戦いに駆り出されても役に立たない自信がある……」
「こんな時に変な自信、語らないんでほしいんですけど! じゃあ、他の冒険者に助けを求めるのは!?
「上位派閥が遠征しているという話は聞きません。【
「というか今から連絡しても間に合わないだろ」
「おいおい、どうするんだよ」
リリウスは懐に手を忍ばせる。奥の手はあるにはあるのだが、本当に奥の手。ダンジョン各所で暴れる眷獣すべてに対処は不可能。そんなリリウスをジットリ見つめるヴァトラー。
今必要なのは眷獣に対処可能な『戦力』ではなく共有可能な『手段』。そして、それは………
「ヴェルフ……」
「…………………ああー、くそ! 駄々をこねてる場合じゃねぇ! お前等、この魔剣を持ってけ! 3つに分かれるパーティに3等分、均等にだ!」
「俺やエピメテウス、古城とヴァトラーがいるのに?」
と、ヴェルフが魔剣を渡すもそれ以上の火力を出せるリリウス達が疑問に思う。
「ヴェルフさん………いいんですか!?」
「意地と仲間を秤にかけるのは、もうやめたんだ! それにこれなら、眷獣にも効果があるんだろ?」
「………わたくし達が目にしたあの威力が発揮できるなら、間違いなく。貴方の『魔剣』の瞬間火力は上位の眷獣をも上回る」
ラ・フォリアの肯定にヴェルフは3チームに魔剣を配っていく。顔色の悪い女が一人。アリシアだ。
「ヴェルフ・クロッゾ…………私は…………」
「…………お前達エルフなら、間違っても変な使い方はしない。違うか?」
「………! ええ、違いません。今だけは呪われたこの魔剣を持ち、貴方の信用に応えましょう!」
とはいえ異世界組は魔剣の使い方も知らない。分かれるチームそれぞれに冒険者を組み込むこととなった。
「じゃあ、散らばるぞお前等! 『眷獣退治』だ!」