ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「きゃあああ! 暁古城っ、助けて! 破廉恥なモンスターが私を責め立ててくるぅぅぅぅ!!」
「誰が破廉恥なモンスターじゃあああああああ!! というか、その声真似、本当にやめなさいよ!」
「ああっ、服がビリビリに破れちゃった! 私の大きな胸に、モンスターの触手がー!」
『ふっ、服が破れた!?
『先輩!? 何鼻血を流しているんですか! 一体どんなあられもない姿の
『ま、まて
通信越しにも騒がしい。あちらもこちらも
「どうしてこんな事に…………」
「全部このワンコロのせいでしょうがぁ! 暁古城! 全部忘れなさい! 忘れなかったら殺すわよ!?」
『お、おい
ブツンと通信が途切れた。
「はぁー、はぁー……………どうしてくれんのよおおお!? 雪菜にも誤解されちゃったかもしれないじゃない!」
「仕方がないことだった。反省はしている。でも、後悔はしていない……」
「どの口が言うのよ!」
「大丈夫………決して理解されなくても、私だけは
「ねぇ、殴っていいのよね? 私は貴方を本気で殴っていいのよね!?」
「………………あの」
と、怒り心頭の
「取り込み中よ、後にしてちょうだい! 今はこのワンコロに制裁を……!」
よく分からないこと言ってる時のティオネぐらい怖い、と思うアイズ。でも、コレだけは言わなくちゃと勇気を出す。
「……………眷獣、でました」
「「「………………えっ!?」」」
『GAAAAAAAAAAAAA!! ……………』
「あ?」
バチバチと黒い雷を放つ
あの猫、俺を敵と認識しなかったな?
「上等だ。タロス、合体だ!」
「え、合体?」
「アイズ? 何故ワクワクしているのです?」
5メドルは優に超える
タロスの首筋から、蒼い氷が全身を覆っていく!
冬の大精霊の力を受け継いだリリウス…………その分身が己を構成する大精霊の魔力の大半を鎧へと転じさせた形態。ちなみにヴリトラにやってみてもデカいから魔力食うしそもそも炎属性だし冬眠するしで無しになった。
『GRUOOOOOO!!』
「オオオオオオ!!」
漆黒の巨獅子と蒼白の巨人がぶつかり合う。雷が階層に流れる水に落ちると大量のモンスターが浮き上がり、冷気が階層を突き進むと異変に気づき水面から飛び出しかけたモンスターが凍り付く。
『!!』
高密度の魔力で練られた氷の鎧により眷獣の身に触れ合う事が出来る。
「なんて魔力………!」
「まるで大精霊同士のぶつかり合い! ですが………」
わざわざタロスに力を貸したのは………つまりリリウスの分身単体では
「むきゅう………」
「え?」
足元から声がした。見れば手の平サイズのリリウス。
「かわいい…………」
アイズがそっと拾い上げた。
「魔力使いすぎた………」
分身なのでその身を形成するのは冬の魔力。分け与えれば当然縮む。
「ていうか戦わないの?」
「ああ、だって俺が戦ったらアイズとギリギリでアリシアしか生き残らないだろうし」
死因は凍死。27階層は数日は凍りつくだろう。だから魔力を圧縮して鎧に変換したのだ。
「俺だけ武装しても、ナァーザあたりが危険だしな」
「意外と仲間のことを考えるのね」
「意外? それは心外」
と、精霊の氷で出来た籠手で覆われたタロスの規格外の拳が獅子の頭を殴る。吹き飛ばされるもダメージ自体は少ない。魔力の密度が、文字通りケタ違い。
「いきます」
アイズも参戦する。Lv.6とはいえ短文詠唱とは思えぬ威力の風が獅子の巨躯に絡みつく。
「ふぅ………」
飛び散る魔素を喰らい40セルチ程のサイズにまで回復するリリウス。幸いにもモンスターは戦いの余波に巻き込まれ死ぬか、怯えて逃げるかで余裕はある。
「とりあえず2人の援護だな。とはいえ、迂闊に近づけば凍るか焼かれるかすり潰されるか」
冬の精霊の凍気、獅子の黒雷、アイズの風が川を凍らせ地を砕き岩をすり潰す。
「なんであの子、あそこに割り込めるのよ」
「アイズですし」
「【剣姫】だからね」
「アイズだからな」
「我々も出来ることをしましょう! 魔剣を!」
改めて第一級冒険者の規格外を思い知る
「出し惜しみしている場合ではありませんね」
アリシアが取り出したのは小型の魔剣。
「彼から渡されたこちらの魔剣は、『鏃』として用いる分には申し分ない大きさです」
「それを『矢』にして、
少なくとも生半可な冒険者では立ち入るだけで死ぬ災害の如き破壊の応酬に飛び込まずに済む。ただし……
「外せないね。魔剣も無駄打ちしたくない。一発勝負だ」
「問題は、誰が撃つか、ってことだけど…………偶然にも、ここには
「ええ、私は使えないわね…………」
エウロペがシュンとしながら言う。なお、理由は邪魔なものがあるからだ。
「さっきのお詫びじゃないけど……私、やろっか?
「第3級冒険者の貴方に、そんな重責を追わせるわけにはいきません! 弓を任せたとあってはエルフの名折れ! ここは私が!」
「でも、私はこれくらいしか、皆の役に立てそうにないし、やっぱり私が………」
「いいえ私が!」
「え? えっ? ええと…………」
立候補するナァーザ。自分がやると言い出すアリシア。2人を見て
「そ、それじゃあ、私も………」
「「どうぞ、どうぞ…………」」
「なんでそんな息ぴったりなのよ、貴方達!! そんなお約束いらないんですけど!?」
「
「申し訳ありません。私もつい反射的に…………」
満足げなナァーザと流されてしまって恥ずかしそうなアリシア。とはいえ、その流れで
「獅子王機関の『
そう叫ぶと
「“
鏃として矢に繋げた魔剣を構える
「3秒後、距離を取れ。アイズもそれで察する」
「!! おおっ!!」
タロスが両手を右に水平に動かす。即座に意図を察したリリウスが鎧を解錠。代わりに作られるは巨大な大剣。
「!! 【
「ぬぅん!」
吹き荒れる局所的に破壊を齎す圧縮された嵐。耐えようとした黒獅子を襲う大剣。風と衝撃に吹き飛ばされる。距離を取れと言ったくせに、吹き飛ばさせるとは分身だろうと何ともリリウス。
「………そこッ!」
奔る蒼雷が獅子の黒雷を飲み込み、爆ぜる。
「やった………!」
「仕留めた………お見事、ってやつだね」
「ふぅ…………褒めてもらって悪い気はしないけど。でもやっぱりデタラメね、この魔剣っていうのは第四真祖の眷獣を吹き飛ばすなんて。」
「そうですね。ですが、今はこの力が味方である幸運を喜びましょう。さあ、宿主を探すためにも辺りの調査を──」
「……………」
アイズは駆け出し剣を振るう。断末魔を上げる間もなく、モンスターが灰と散る。
「アイズ? どうかしましたか?」
「………モンスターが残ってた。倒した、もう大丈夫」
「そうですか。では、いきますよ。手がかりが見つかるといいのですが………」
「大丈夫、だけど。今日のダンジョンのモンスター………
「そもそもなんで残ってたんだろうなあのモンスター。脚吹っ飛んだわけでもねえのに」
「いい? さっきみたいな声真似、二度としたら許さないわよ」
「私はただ、奥手の
まだやってる。とタロスの肩で欠伸をするリリウスの分身。
「だから、それが余計なお世話って言ってるの! そもそもなんで私が暁古城のことなんか………!」
『──
と、不意に聞こえてくる『暁古城の声』。
『場をわきまえず
『凪沙に言えって言われたから言っただけだろ!? それから俺は古城じゃねえ!』
『問答無用ですっっ!』
『おい馬鹿っ、おま……ふざけろぉ!!』
通信が切れた。
「ふぇ………あ、あかつきこじょうが………あ、ああ、あい、あい、して……………?」
「もう、使い物にならないかも」
どうやら周りからの情報は何も入ってこないらしい。ナァーザが目の前で手を振っても何の反応も示さない。『愛してる』という言葉が彼女の中で何時までも完結しないのだ。
「い、異世界の方は随分と大胆なのですね………」
「でもあれヴェルフの声だったぞ」
後から聞こえた声からして、凪沙に言わされたようだが。どうせ『普段古城君が言ってくれないことを言って』とか頼んだんだろう。雪菜の反応的に、雪菜も言われて舞い上がってたな絶対。で、他の女を口説いたらキレた。
「ヴェ、ヴェルフ・クロッゾ!? 場をわきまえず、知り合ったばかりの女性に愛を囁くなど何を考えているのですか!」
「お、雪菜の真似」
ただし声は
ていうか通信はもう切れているんだけど。
「声といえば、銀のアイズ達はどうしてんだろうな」