ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
20階層。
「ベル、あっちに敵が………」
「はいっ! すぐに!」
「レフィーヤ、ベルを助けてあげて。レフィーヤのかっこいい詠唱、見たいな?」
「任せてください!!」
ザシュザシュザシュ!! ズドォォォン!!
モンスターが駆け抜ける白い影に刻まれ、振り注ぐ火矢に焼かれる。2人ともアイズの声にやる気を出している。でもここにはアイズはいないわけで………。
「………………」
「………? どうしたの?」
「………いや、オレっちには、その声真似しても意味ねぇぞ」
「あら、そうでしたか? 無意味と仰るならやめておきましょう」
ニコリと美しい笑みを浮かべアイズの口調を真似するのをやめるラ・フォリア。
「…………なぁ、なんでわざわざ【剣姫】のモノマネして指示を出しているんだ?」
「『何で』? 視界に広がるこの光景を前に、説明が必要ですか?」
「「うおおおおおおお!!」」
斬撃と魔法。ファイアボルトに杖術。物凄い速度でモンスター達が溶けていく。
「戦意高揚のためです♪」
「高揚どころの話じゃねえよ! いや効果があるのは認めるけどよ………!」
「あのお二人がアイズに憧れを抱いているのは、火を見るよりも明らか。ならば、それを活用しなければ王族の名が廃るというもの」
「え、オーゾクってそうなの? 同じヒトの心も操っちゃうヤヴァイもんなの??? ねぇ、ねぇ?」
「アリィは違ったがなあ」
リドの頭に頬杖をつくリリウス分身体は疑問に答えてやった。
「王族とは国が戴き、君臨するもの。たとえ己自身が非力であっても統治の術だけは見失ってはならない。そして統治とは支配であり………そこに必須なのは『脳』と『耳』、あとは『声』。一を聞いて十を知り、号令をもって万人を動かす」
「なんかもうこの時点でそこはかとなく怖い」
リリウスは納得してたがリドはオーゾクという人種に恐怖を覚えた。
「つまりは適材適所ですよ、リド。眷獣のもとに向かおうにもモンスターの大群が邪魔をしている。それを蹴散らすのは、兵と将の仕事。ならば後方に立つ
「はーーーーーーいっっ!!」
『敏捷』の優れた前衛が茂みから飛び出したモンスターを蹂躙する。
「レフィーヤ、魔法まだ?」
「【撃ち放て妖精の火矢雨の如く振り注ぎ蛮族共を焼き払えヒュぜレイド・ファラーリカぁ】!!」
通常詠唱より難易度が上がる高速詠唱をこなし、モンスターを焼き払う。
「ベル、レフィーヤ、がんばって。上手く倒せたら、ごほうび、あげるよ?」
「「やってやりますぅううううううう!!」」
「ふふふっ。冒険者というのは本当に素晴らしい。ぜひわがアルディギアに客将として迎え入れたいほどです」
「……………」
ちなみに、リリウスやヴァトラー達を除いたチーム分けはラ・フォリアの采配。ベルもレフィーヤも本物のアイズでもやる気を出すだろうが、アイズは自分より弱い二人を冒険者と認めつつも自分が前線に出るだろうからここまでやる気を引き出せはしなかっただろう。
「ふふふっ。しかし、こうまで二人に想われるアイズには、いささか嫉妬してしまいますわね」
「アイズはまたお前に嫉妬すると思うけどな」
時を少し遡る。ヴァトラーをしのいだ後のこと。情報のすり合わせ中のことだった。
「そういえばなんでナァーザ、中層まで降りてきたんだ?」
彼女はモンスターにトラウマがあるはずなのだ。
「
ナァーザのトラウマはモンスター相手。つまり効果を調べるためにはダンジョンに潜る必要がある。
上層でも良かったのだが、どうせなら希少な素材を取りに行こうと思ったらしい。その護衛としてヘルメスが雇ったのがアイズ。
薬を狙う『さんぎょーすぱい』に知られぬよう、秘密の
「ごめんね………」
同派閥のレフィーヤ達にまで秘密にして申し訳なさそうなアイズ。慌てる二人。
「べ、ベル、なんとかしてください!」
「僕ぅ!? ええと………その、アイズさん、その服似合ってますね!」
「ほ、本当ですね! もうアイズさん自身、本当に王族みたいです!」
ナァーザ、アイズ、
「では、王族のように振る舞ってみては?」
「……………え?」
「ラ・フォリアさん?」
「わたくしの服を着たついでに、王族気分を味わってみる。ちょっとしたお遊びです」
ニコニコと話に入ってくるラ・フォリア。雰囲気が悪くならないよう、助け舟を出してくれたのだろうか? さすが銀のアイズさん! と心の中で感激するベルとレフィーヤ。
「幸い…………というか、声もそっくりですしね。わたくしの声を真似てみて……そうですね。威厳を持って、彼等に指図してみてください♪ 出来るだけ傍若無人な無茶な内容で」
((あ、楽しんでいるだけだ………))
突然無茶振りをしてみろという無茶振りに戸惑うアイズ。無茶なこと…………普通は出来ないような事を命じると、急に言われても…………。
「…………………ジャガ丸くんより美味しもの、持ってくるがいいー」
すごい棒読み。しかも内容がすごく個人の価値観に溢れてる。
ベルもレフィーヤもナァーザもアリシアもこれには苦笑い。
「………………ぐすん」
「……王族の威厳なんて、そう簡単に身につくものじゃないし。落ち込むことじゃ………」
いじけるアイズを元気づけようとするナァーザ。アイズはでも、とラ・フォリア達を指さす。
「……ベル、好きだよ………」
「ほあああああああああああ!?」
「大好き、レフィーヤ」
「いやああああああん!?」
「私に、なりきってる」
元々声がアイズと似ていた。口調まで真似すればアイズさん大好きな2人もすっかり籠絡。腹黒…………強かで器用そうだし。
「ふたりとも……仲良く、ね?」
「「はいいいぃぃぃぃ!!」」
「……………ベルとレフィーヤ、とられた。ぐすん………リリウスさんは、お母さんひとりにしない?」
「だからお前俺より年下だろ。寂しくなると甘えようとするとは幼女め」
などと言いつつ座り込むアイズの頭を撫でるリリウス。
「やはりお二人をお借りして正解でしたね………」
「…………………」
「どうしたの、リリウスさん?」
「俺にもそれは効かねえって。いや………シルと同類だな、と」
笑顔を振りまく腹黒な街娘の顔が脳裏に過る。彼女とラ・フォリアは間違いなく噛み合うだろう。
「シル、ですか?」
「因みにそいつの声真似しても俺は操れねえからな。ただのめ街娘だ」
「め? それにしても、街娘。ふふ、女神の再来と言われたことはあっても、街娘なんて言われたのは初めてですね」
うふふ、と楽しそうに笑うラ・フォリア。
「女神の再来?」
「ええ、こちらの世界にも同じ名を冠する方がいらっしゃるとか。フレイヤ様なのですが………」
「………………………………………ああ(納得)」
リリウスはなるほど、と頷く。
「あの女が女神の表の合わせ鏡なら、なるほどお前は奥底の写し身。ヘイズ辺りが暴れそうな…………まさしくお前は
でもフレイヤの派閥に知られると面倒だから口外しないようにと言い含めておいた。