ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
やる気に溢れたベルとレフィーヤの奮闘によりモンスターの群れは蹂躙された。Lv.4とはいえたった2人で、護衛しながらこの速度で進める冒険者がどれだけいるか。
「なんつーか、息ぴったりだなぁあの二人」
「お互いがお互いを信頼しているな。その上で負けないという意地も感じる。いいライバルじゃないか」
「フィルヴィス、戻ったか」
偵察に向かっていたフィルヴィスが戻ってきた。
「しかし、レフィーヤ………いささか前に出過ぎではないか?」
「最近前衛の訓練もしてるんだとよ。お前についていけなかったのが余程応えたらしい」
「焦ってんなぁ」
「レフィーヤはよくやっているが………」
「周りが凄くて自分の成長の実感がわかないんだろ。ヘイズ何かが昔患ってたらしい」
その時のことを思い出すだけでストレスなのかリリウスの後頭部に顔を埋めてグリグリしながら話してた。
「……………仲、いいよな」
「ヘイズは甘えられる奴には基本的に甘える。普段から疲れてるんだ」
リリウスだけではなく、同じ『
「あら………あらあら、なるほど。リリウスさん、そのヘイズという方について教えてもらえます? フィルヴィスもどうにも気になる様子」
なっ、と顔を赤くするフィルヴィス。リリウスはそうだな、と彼女の特徴を思い浮かべる。
「お前の二つ名がフレイヤの再来と知ったら真っ先に殺しに来る」
「まあ………」
因みに他の眷族はまず比べるまでも無いと思いながらもラ・フォリアの容姿を見て貶してから行動するため一歩遅れる。もう一人、その名を知った瞬間動くのもいるが彼女はヘイズより足が遅い。
「神が実在し、人とともにある世界ですものね。確かに、私の呼び名は不敬というものでしょう」
「まあ、本神は楽しみそうだが」
「仲がよろしいのですね?」
「いいわけねぇだろ」
即答であった。リリウスは自分の本心を隠してやたら神の矜持にこだわるくせに…………まあ、兎に角街に出て笑ってりゃ可愛げもあるのにお高く止まるあの女神は好きではない。
アフロディーテと同じく美の女神と名乗るのなら、他人の定めた『美しいあり方』なんて無視して気ままに振る舞えばいいのだ。周りの評価を気にするイシュタルもだが、オラリオの美の女神って自分中心に考えるくせに周りを気にしすぎじゃない。
「さて、話している間に見えてきましたね」
進軍する内に、大樹の海により目視が敵わなかった目標の懐に何時の間にか辿り着いたらしい。少し前から響いていた酸素が食われる轟々という炎の唸り声。
壁のような木の根を乗り越えた視界の先で、階層の一角が炎に包まれていた。
その炎の中心に立つ眷獣にベルは目を見開く。
「………! アイズさん、あれを見てください!」
「ベルっち、そのメスはアイズさんじゃねえ………」
今、緊迫した場面なんだよ?
「見えますよ。ベル、あれは………」
溶岩で構成された10メドルの巨躯を誇る牛頭人身の魔神。己の体躯を超える巨大な戦斧を持っていた。
「“
「……………………っ! アイズさん」
「なに、ベル………?」
と、ラ・フォリアは眷獣を睨むベルの目を見て美しく微笑む。
「なんて、お巫山戯をするのもやめましょうか。『戦士の顔』を見せる今のあなたに失礼と言うもの」
憧れ続けているアイズ(アイズではない)の声援を前に少しでもかっこいいところを見せようとしていた年相応の顔ではなく、戦う相手を前に己をかけることを誓った冒険者の顔に、ラ・フォリアも王女として居住まいを正す。
「どうしましたか、ベル? 望むことがあるというのなら、言ってみなさい」
「あの『ミノタウロス』は、僕が倒します」
「──いいでしょう。いきなさい、この魔剣を持って!」
クロッゾの魔剣をベルへと突き出す。それを受け取るベル。その姿は英雄譚に語り継がれる伝説の剣を英雄に授ける姫の如く。受け取ったベルは即座に燃え盛る大地へと駆け出す。
「ちょ、ちょっと!? 一人で行くなんて、いったい何を考えて!!」
らしくない特攻。冒険者としての活動した日は浅く未熟なところはあれど、ベルを一人前の冒険者として認めているレフィーヤは思わず叫ぶ。
「ベルっち………もしかして、アステリオスとの戦いを思い出しているのか?」
「えっ?」
「………燃えちまったんだろ、雄の心ってやつが。もう『
つまりは、あのレベルの存在を相手に、ベルにとっては前哨戦。越えるべき壁…………ではなくそこに向かう為の道にあった練習台。眷獣を前にしながら、映るのは別の雄牛。
「………! わ、私が先に『
納得いかない、とプリプリ怒るレフィーヤ。
「待ちなさぁーい、ベル! 一人で格好をつけようだなんて、そうはいきませんよー!」
レフィーヤもそう言って飛び出してく。
「ははははっ、面白えなぁ! 本当にニンゲンって奴は! オレっちも行くぜぇ!」
リドも駆け出す。
「ええ、勇者達には敬意を。そして勝利の祝福を。参りましょう!」
「前に出すぎるなよ、
リリウスは周囲のマグマを凍り付かせ道を作る。魔力を消費し縮むが、今回、眷獣を倒すのは彼の役目ではない。
「…………今、名前を?」
「お前がベルを使える駒から冒険者としてみた。なら、俺もちゃんと向き合うべきだろ」
最初に銀のアイズと読んだのは、アイズからそう紹介されたからだとして、その後も頑なに名を呼ばなかった理由って………
「
「…………………」
「ふふ。アイズも嫉妬してましたが、似たもの親子なのですね」
「だから母はアイズが勝手に名乗ってるだけだっての」