ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「なあヘファイストス。どうして今さら魔剣を打てなんて言ったんだい?」
地上。とあるカフェテラス。
ヘスティアは
今更、妙な課題だとヴェルフも不服そうだったらしい。
「…………確かにヴェルフは、意地と仲間を秤にかけることは止めた。以前よりは魔剣への抵抗も薄らいでいるし、認めてもいいものを造った……………認めてよかったのに…………もう!」
「? ヘファイストス?」
どうしたんだろう? なんか告白の応えを言おうとしたのに勝手に納得して返事を聞く前に去られた乙女みたいな反応だ。
「んん! あの子は『鍛冶師』としてはまだ、魔剣に忌避感を持っている」
「よく分からないけど、ヴェルフ君の魔剣アレルギーを何とかしたいってことかい?」
「間違ってはいないわね。でも、正しくもない。魔剣鍛冶師としての自分を受け入れろ、だなんて私も言うつもりはないけど………憎んで欲しくないのよ。自分の可能性を………そして『血』っていうものを」
23階層。
「はぁ、はぁ…………お前等、平気か?」
「生きてはいるな。でたらめな眷獣相手に連戦する羽目にはなったが。この階層だけで、三体も交戦するとは………」
「頭の上からバカでかい剣が振ってきた時は、どうしようかと思ったぞ」
と、ヴェルフ。
つい先程、刃渡り100メドルはある巨大な剣が重力を歪めながら落下してきたのだ。
「
とはいえ、いくら重力を操作できてもやはり閉鎖空間では落ちてくる前にリリウスの残光5連撃、残光・十握により速度が落とされクロッゾの魔剣に吹き飛ばされた。
「ひとまず、少し休憩を取りましょう………
「ああ、眷獣が出てない間に体を休めるのが賢明だろう………この調子では魔剣を使い尽くす前に、我々が潰れる」
「鍛錬が足りねえんじゃねえの。なまじ才があると切り抜けられちまうから基礎がおろそかになるんだ。相手が弱かろうがとりあえず魔石食うだけで強くなれちまう
「………………………」
エピメテウスの背中に張り付いているリリウスにグロスは何とも言えない顔を向ける。でもリリウスもエピメテウスも毎日走り込みはしているのだ。
「みんな、じっとしてて! あたしが甲斐甲斐しくお世話してあげるよ。お水いる? 食べ物は? 肩を揉もうか!?」
「んあ」
カパッと口を開けるリリウス。凪沙がヒョイヒョイと食べ物を放り込んでいく。
「あ〜、味方でも敵でも疲れやがる。たく、本当につくづく厄介だぜ。第四真祖の力っていうのは」
「なんだ、その言い草は? まるで自分の力じゃないみたいだな」
ドカリと腰を下ろしながら愚痴る古城にヴェルフが訪ねる。
「そりゃそうだ。正真正銘俺自身の力じゃないからな、これは」
「なに………?」
リリウスはやはりか、と思いながら凪沙の差し出す干し肉を噛み千切り聞き耳を立てる。
「言ってなかったか? 俺は元々吸血鬼なんかじゃない。ただの人間だ」
先代の第四真祖アヴローラから、たまたま力を受け継いだらしい。祖とはいったい。
「真祖とは不死の術式を受けた者をさす。どのような方法であれ、それを取り込んでいるのなら古城が真祖となるのさ」
「へー」
ヴァトラーが説明する横で古城の話は続く。
テロリストに襲われた際、凪沙を守るために第四真祖の“血の従者”になったこと。なんやかんやあり第四真祖と殺し合いその力を受け継いだこと。
「テロリストとの戦いに、第四真祖との殺し合い………そんな事があったのか」
「波乱万丈だな」
「それで片付けていいのか、それは。後お前が言うな」
「…………?」
「ああ、酷い目にあったぜ。いろんな連中に狙われる、変な力も押し付けられた。ヴァトラーとか筆頭にな」
リリウスがヴァトラーに視線を向ければ笑みを向けてきた。
「だからこれは俺の力であって、俺の力じゃない」
「…………………」
その会話にエピメテウスは目を細める。事情を知るリリウスと、何かを察したのか凪沙がジッと見つめると頭を撫でられた。
「『俺の力であって、俺の力じゃない』…………か」
ヴェルフもまたその言葉を反芻していた。
「………俺も同じだ」
「同じ………?」
「ああ。クロッゾの始祖………俺達は『初代』って呼んでるが、そいつは『精霊』に血を分け与えられたらしくてな」
その時から、初代クロッゾは魔剣を打てるようになった。そしてその力は子々孫々に受け継がれ、ヴェルフもその一人。
「! つまり、『クロッゾの魔剣』は、精霊の力によるものだって言うのか?」
「そうだ。冒険者も鍛冶師も腐らせる、過ぎた力だ。鍛冶一族の俺の家族も、あの力に魅せられて、堕ちた」
「
「炎の大英雄もな」
「炎の大英雄?」
「すごい強かった」
「おおー」
聞きたい、と目を輝かせる凪沙。話そうとしたリリウスの頭をエピメテウスがグシャグシャと乱暴に撫でる。
「『
その力は簡単に名声を得ることができる。簡単に勝利を得ることができる。なるほど、人を腐らせるとはよく言ったものだと、自嘲するエピメテウスの脛をリリウスが蹴る。エピメテウスを蹴ったリリウスを凪沙が正座させて説教を始めた。
「だから、俺もお前と同じだ。俺は、こんな力なんて要らなかった」
「………………なんつーか、浸ってるところ悪いんだけど」
古城は言い難そうに、しかし伝えるべきことを伝える。
「俺はお前と同じなんかじゃないぞ。一緒にするな」
「なっ! 何でだ、お前もさっき言ってたろ。変な力を押しつけられたって………貰いもんの力を、嫌に思ってないのか?」
「そりゃあ、ある。日の光はキツイし、朝はとことん苦手になった。吸血衝動なんて厄介なものもあるしな。いつも疲れてばっかりだ」
「それなら………!」
「それでも、俺はこの力を憎んじゃいない」
エピメテウスは古城を見つめ、リリウスもそんなエピメテウスを見て説教中によそ見した事を凪沙に怒られる。
「確かにアヴローラから貰ったものだけどよ、此奴のおかげで俺は誰かを守ってこれた。それは変わらない。知ってる奴を守れるなら、俺はアヴローラから貰った力を使うぞ」
「古城………お前」
「………ま、確かに眷獣どもは暴れ馬だけどな」
「……………………尊敬している女神に、私を満足させる魔剣を作ってこい、そう言われたんだ」
「…………? なんだ、いきなり」
唐突に話題が変わり首を傾げる古城。ヴェルフはふっと笑う。
「いや………お前もいれば、何か掴めるしれない。何となくだが、そう思った」
「そうか………だといいけどな」
「ああ、だと助かる。見えなかった何かが見つかれば…………初代は、こんな力を精霊に与えられて、どんな気持ちで魔剣を打ってたんだろうな」
そんな時だった………
「おい、どうした!? 何が起こっている!」
グロスの叫びが場の空気を一変させた。