ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「あのね? 人をいきなり蹴るのはいけないことなんだよ?」
「………………………」
「リリウス君、どうしてエピメテウスさんを蹴ったの? 仲良しさんじゃないの?」
「……………エピメテウスが自分を卑下するから」
「だとしても、暴力に訴えるのは駄目です。リリウス君も、お兄さんなんでしょ? 妹ちゃんの教育にもよくないよ」
お姉さんとして見過ごせません、と怒る凪沙。
「俺の方が年上………」
「じゃあますます駄目でしょ。年下に怒られるようなことしちゃ」
「はい………」
リリウスの力を見て、襲われないと思っている訳じゃない。微かに感じる恐怖の匂い。それでも尚いうべきと判断した事をしっかりと告げる凪沙。しかも正論。こういった手合いに、リリウスは強く出れない。
「おい、説教は後にしろ!」
「どうした?」
何やら慌てた様子の古城に振り返るリリウス。サッと古城の後ろに隠れた。
「どうしたもこうしたも、
「!!」
どうやら
ヴリトラやアステリオスを筆頭に特記戦力が深層に向かっていたのがまずかったか。場所は20階層。
「漸く事態が動くかな?面白いことになればいいなァ」
駆け出す一同の中で、ヴァトラーだけが楽しそうに笑っていた。
「不吉なこと言ってんじゃねえ! 急ぐぞ!」
その頃、地上。
「……………う〜ん」
アリーゼは眉間にシワを寄せて唸る。ダンジョン上層で、急に引き返すと言い出してからずっとこの調子だ。
「さっきから唸ってばかりですが、答えは出ましたか?」
「出ない! でも、何かが起こってるのは間違いないのよ。それが何か分からないけど、まだ予兆」
ダンジョンのモンスターの様子がおかしい………とはアリーゼの勘。
「リオン、連れてきたよ〜」
「ありがと。場合によっては潜るけど、今はバベルを見張るわよ………っ!?」
「地震?」
「今朝から何度かありましたねぇ。たまたま、と言うには不自然な程に」
「……………嫌な揺れ」
20階層。未開拓領域を駆け抜ける複数の影。
「レイ! 通信を聞いたか!?」
『ええ、リド! アリシアさん達と向かっています!』
「オレっち達も向かってる! グロス達もだ! このまま里で合流するぞ、嫌な予感がする!」
『わかりました!』
リリウスはベル達と合流した。後はレイやアイズ、ラ・フォリア達は遅れてくるらしい。
「リドさん、何が起こっているんですか!?
「わからねえ! だが、
「なんで今言い直した?」
「まさか!
「あるいは、眷獣を操る『本人』が姿を現したか………」
「「……!!」」
だとしたら、現状の里のメンツでは一方的な蹂躙。最悪、既に全滅。次善であっても死者が出ている可能性もある。
「兎に角行ってみるしかねえ! 通信が途絶えた里はこの20階層! オレっち達が一番近い! 急ぐぜ!」
が、道中邪魔をするように現れるモンスターの群。リリウスはエピメテウスの背中をよじよじ移動して凪沙の耳を塞ぐ。
「ん? え、なになに?」
「っ! やっべ、皆耳を塞げ!」
その様子に気付いたリドが叫ぶ。リリウスはすぅ、と息を吸うと
「ガアアアアアアアア!!」
「「「「!!?!!」」」」
ビリビリと響く大砲声。王威を示す、覇者の咆哮。
あまりの音圧に壁に亀裂が走りパラパラと天井の欠片が落ちる。モンスター達は硬直し…………
「「「「ガギャアアアア!!」」」」
すぐに動き出した。
「!? 馬鹿な、この階層のモンスターが、リリウスの
「……………恐怖を感じていない?」
「リウっちにビビらねぇとか、此奴等尋常じゃない強化種ってことか!? 階層のモンスター全部!? ありえねぇ!」
「ああ、ありえねえ。ただの身の程知らず共だ」
バチッとリリウスの口内に輝く雷光。
「かっ!」
雷を
「………恐怖を感じない。あえて言うなら、狂乱でしょうか。集団洗脳………いや、
「或いは超大規模な
我を失いただ只管に敵を見つけては襲う。そのような光景を作る術に互いの心当たりを呟くラ・フォリアとリリウス。だが、今回はおそらくラ・フォリアが正しいのだろうとリリウスは確信していた。
「リドさん! ウィーネも里にいるんですか!?」
「……ああ! フィア達と残っている筈だ!」
「っ! ウィーネ、待ってて!」
「………ウィーネって、ベルが私と間違えた子だよね? どんな子なの?」
「お前と似てる」
主に声が。後物怖じせず仲良くなろうとするところも似ているか、とチョコ騒動を思い出す。
「え、ちょ、チョコ? ごめん、何を言ってるの?」
「俺もそう思う………」