ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
リリウスがダンジョンに滞在するのは珍しくない。
補給をその場で行えるリリウスは、何ヶ月もダンジョンに潜れるのだ。
「うん、探すの無理!」
そんなリリウスは、オラリオの中でもダンジョン内に慣れている。彼が本気でダンジョンに隠れれば、見つけ出すことなど不可能だ。
「飯たくさん用意したら来ねえかな」
ライラの言葉に動物じゃないんだから、と思うものは残念ながら居なかった。全員リリウスならそれで来るから、と思ってしまった。
「まあ、リリウスがやってくるほどのご飯用意しながらダンジョン深くを歩けるとは思えないけどね」
ほぼ間違いなく深層辺りにいるだろう。少数精鋭たる【アストレア・ファミリア】なら、必要分の食料を持って行くなら潜れるがリリウスを呼び寄せるほど食料を持っては潜れない。
「では放置するので?」
「う〜ん。リリウスったら、多分私達に迷惑かけないために離れたのでしょうし……2ヶ月後には戻って来るのも本当だろうしね」
リリウスのオラリオからの心象は最悪と言っていいだろう。もちろん、冒険者たるものをわかっている者達も多いが、冒険者の街であるオラリオも民衆の方が圧倒的に多い。
それに自称『リリウスのファン』を名乗る一部の神々が「あの頃のリリウスちゃんをみてみたーい」と民衆や己の眷属を煽っている。
神は数に流されないが、数を流すのは大好きなのだ。
そして、そういう神ほど「冒険者を弁えている」善神より余程人々を煽るのが得意なのだ。
「2ヶ月より少し前に一度地上に戻ると思うけどね」
と、そう呟いたアーディに視線が集まる。何気にアーディも参加していたのだ。
「それは、どういう……」
「ほら、そろそろグランド・デイがあるでしょ?」
『グランド・デイ』。それは【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】の偉業を讃える祭り。残党が暴れたこんな時に、と思うかもしれないが、むしろだからこそだろう。
冒険者は救世の英雄候補であると印象付けたいのだ。
でも同時にギルドの印象も下げたくないので、先日の
家族を人質に取られたらしいそのギルド職員は既に自殺しており、家族の救助だけでもと動いた【アストレア・ファミリア】が見つけたのは
ギルドは改めて職員の調査を行い、職員の家族を守り、異変にすぐ気付けるよう手を打った。その辺は本当に優秀なのだ、ロイマンは。
「その豚が許可した祭りか。事実として被害を出したババア共は称えるくせに、責を押し付けられた子供は助けんらしい」
「ま、まあ正確には【ファミリア】をだし…………」
「解っている。そのうえで、ムカつくだけだ」
アルフィアとザルドが暴れたからといって、それで【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】の功績が消えるわけでもない。改めて彼等の偉業を讃えるのは、別に否定しないが今を生きる冒険者にだって目を向けてほしい。
「元々あまり好かれてなかったので、本人が気にしてねえからって放置しやがって………」
と、ネーゼが吐き捨てた。
「あ、うん。で、でね………その、グランド・デイで私も警備に回るんだけど、ご飯とかは回りながら買ってよくって………」
一緒に回ろうと、約束をしたのだ。リリウスは約束を破ったことはないので、多分その日は地上に出てくる。
2ヶ月経ってないから【アストレア・ファミリア】には訪れないだろうが。
「皆で待ち伏せする?」
「臭い消しを用意しねえと」
「だ、駄目だよ! それで気付かれたら警戒してまた潜っちゃう!」
「え、これなんか動物の話?」
「小動物ではあるな」
アストレアはそんな光景をニコニコ笑顔で眺めている。
「ハァ、クソ…………復活がはええ」
マリィと別れ、
鱗に傷を負いながらも炎を纏いスパルトイを焼き尽くし骸の王の宮殿を蒼炎の地獄に変えていた蛇はリリウスに気付くと未だ健在のウダイオスを無視して襲い掛かってきた。
間違いなくヴリトラだ。名乗ってたし。
いたらそれこそ何度殺されても人間に関わりに行くだろう。なにせ死なないのだから。
だからヴリトラは
それでもLv.6階層主を餌と定める程度には規格外の強さを持っているが。まあ階層主にも匹敵しうる
だがそれはゴライアスなどを対象にした話であって、深層の階層主に匹敵するモンスターなど神殺しの漆黒の怪物を除き確認されたこともない。
「こっちの鱗は食えんな」
ガリボリとヴリトラの鱗を食うリリウス。中々、良い糧になりそうだ。前回の戦いはアビリティこそ大幅に上がれど、昇華はなかった。
格上を殺した、だけでは足りなかったのだろう。それこそオッタルが因縁の格上を倒したような特別な
「その、良かったのか? お前達の同胞なのだろう?」
「話ノ通ジン奴ダッタ。我々トテ、大人シク殺サレロナドト言ウツモリハナイ」
リリウスの力で消火の終わった
魔石を口に放り込む。
「そういやお前はどうなんだ?」
「それは…………」
それをしてしまえばそれこそ本当にモンスターになってしまったような………と思ってしまう自分に嫌悪感を覚えるフィルヴィス。
それはつまり、彼等を侮辱することにほかならないのにエルフとしての矜持がどうしたってそんなことを考えてしまう。
「ところでお前の恩恵は
「っ! 私に、派閥を変えろと言うのか!?」
「どうせ戻れねえと思ってるくせに何を嫌がる」
神によっては、とても珍しいが抜けたくなったら何時でも抜けていいようステイタスを『
実を言えば今のリリウスもその状態。一年経てばアストレアの許可なく
「今のお前はLv.2でありながらLv.3に匹敵する。再生能力も合わせりゃ、Lv.4にも相手次第なら勝ち目がある。こうして深層にいるんだ、更新しない手はない」
「だが、私は……」
「それにあの神………気持ち悪い。いや、
意外だった。
噂で知るリリウスは狂犬であり、強者であろうと噛みつく。実際一ヶ月ほど過ごした感想は、無闇矢鱈に噛みつく訳では無いがやはり狂犬と言うイメージのリリウスが地上においては全知であれど零能な神を恐れるなど。
「そも零能というのが間違いだ。神は己が司る事柄においては恩恵なくして恩恵持ちを超えるだろうが」
神の力なく鍛冶の神が打った武具は、それでも鍛冶師を魅了し一種の導になり、デメテルの野菜はとても美味かった。ソーマの酒は言わずもがな。
「彼奴はなんの神だ?」
「確か、酒だったはず…………」
「酒………」
ソーマと同じ。ならあの時の匂いは、神の酒? 製法が違うのだろう。あれは葡萄………ワインの匂いに近かった。
まあ酒の神なら酒好きということ。おかしくはないのか?
「ディ、ディオニュソス様は、素晴らしい方だ」
「
善意と愛を持って人を人殺しにする神も居れば、悪意の愛を持って復讐者を諌める神も居る。人間とはそもそも精神構造が違う。
大陸に影だけで恐怖を振りまく暗殺集団の主神も、常々殺し合いをしているという
「神の判断は、その神を知ってから出す」
「近付きたくないと言っていたのにか?」
「だから俺は、あれが気持ち悪いと思っても悪とも善とも判断しない」
でも生理的に受け付けないからなんか怪しい動きがあれば取り敢えず疑うとは思う。
「んなことよりお前だ。せいぜいが相手次第でLv.4に勝てる程度の雑魚。これから
最近はリリウス達が把握出来なかった
そうでなくとも
モンスターへの憎しみも有るだろうが、それ以上の理由として冒険者が死ぬから。ここに来る途中、フィルヴィスも何度かモンスター相手に躊躇っていた。
「大丈夫! フィルヴィスは私達で守ります!」
「甘やかすなフィア」
「…………………」
「私モ守ルワ!」
「甘やかすなラウラ」
実際、その時が来れば彼女達は本気でフィルヴィスを守るのだろう。ここに来る途中だって、相手は一級冒険者に程遠いとはいえ、その爪や牙からフィルヴィスを守っていた。
フィルヴィスは落ちている魔石を拾う。
「…………………!」
バキリと、噛み砕く音が聞こえた。
グチャリグチャリと、咀嚼音が響く。
鎖に繋がれたモンスターは、黒い砂漠で黒い肉を貪っていた。
一人の男が苦労して発掘したそれをモンスターに食わせることに怒り、
面白いことが起きるらしい。そう神に聞いた。一体何が起こるのか、彼等は知らなかった。或いは、神すらもこの後のことを完全には予想していなかった。
「お、おい? なんか、暗くなってねえか」
「ああ? そりゃ、ここが黒いからそう感じ………あ、いや。なんだ?」
「暗く………いや、あたりが、
「!?」
ダンジョン深層の『隠れ里』。リリウスが唐突に飛び起きる。
「きゅう〜!」
「? どうしたリウっち、トイレか?」
腹の上で寝ていたアルミラージが頭から落ち、その音で近くで寝ていたリドも目を覚ます。リリウスはキョロキョロと周囲を見渡し、首を傾げる。
「…………今、誰か吠えたか?」
「? お前が起きるまで、精々寝言程度しか聞こえなかったが………」
と、フィルヴィス。リリウスは再び首を傾げる。
「明日、お前は地上に向かうのだろう? ならもう寝ろ」
「………………ああ」
何処か納得がいってないリリウスは、しかし結局どれだけ周囲を探っても異変を見つけられず、目を閉じ眠りについた。
リリウスの秘密
大食い、早食いなので時折しゃっくりが出る。その際の音は「きゅ」または「きゅい」。
「別に死ぬわけじゃねえきゅ。ほっとけば止まるっきゅい」
アリーゼ達を暴走させた。
美の神について
現在リリウス「知らん」
原作時リリウス「アフロディーテ」