ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

50 / 386
ちなみにリリウスはLv.2になってスキルに目覚めてからは常に飢えている=栄養を摂っても足りないので、糞すら出さず全部栄養に変えてたりする。


グランド・デイ

 オラリオ市壁。通常の城壁、市壁と異なり、外からではなく()()()世界を守る壁。

 モンスターが出て行かないように建てられた壁は、何時しか強すぎる冒険者を余程のことがない限り許可なく出せなくなっていた。

 

 そんな市壁の外に、沢山の冒険者が集まっていた。街の警護として【ガネーシャ・ファミリア】の一部や【イシュタル・ファミリア】、【フレイヤ・ファミリア】のほぼ全ては都市内に残っているが………。

 それでもここにいる数百数千の冒険者は【オラリオの総力】と言ってもいい。『強制任務(ミッション)』故にサポーターを除いたLv.1……【ソーマ・ファミリア】も参加している。

 

「てめぇが何の役に立つってんだチビ」

「てめぇこそ女神(ママ)の膝に甘えてろクソ猫」

「あの二人、相変わらずすっごく仲が悪いわね!」

 

 リリウスとアレンは相変わらず仲が悪い。特にアレンは、レベルが並ばれているのも気に入らないのだろう。2人共「とにかく生理的に受け付けねえ」と嫌っている。

 

「でも駄目よリリウス。皆で力を合わせなきゃ。はい、ご飯あげるから」

 

 アリーゼはリリウスを抱えてアレンから離す。リリウスも()()()にちょうどいいかと、食い物のために大人しくされるがままになった。

 

「全員、注目してくれ!」

 

 そして、フィンが冒険者達の前に立ち叫ぶ。オラリオ中の冒険者の視線にさらされ、物怖じしない者はオラリオでも数人しかおるまい。

 

「今回の討伐指令(ミッション)の指揮を取ることになった、フィン・ディムナだ! これから作戦概要を改めて説明する! 各【ファミリア】に配られた地図を見てくれ!」

 

 フィンの言葉に各々地図を開き、リリウスも身長差から見れないのでアリーゼに抱えてもらう。

 

「まず、昨日オラリオを襲った【黒い竜巻】だが、既に数え切れないほど発生していることがわかった。これを全て叩いていく! 1本も残すことは許されない!!」

 

 学区を含む「世界勢力」も殲滅に動いているだろうが、先日の強さ的に、確実に殲滅するにはやはりオラリオが必要だろう。

 

「更に通常の【黒い竜巻】とは別の【大型竜巻】の存在が3本確認された! この3本の【大型竜巻】は東と南、南東に1本ずつ! 3つのルートで進行してこれを叩く!」

 

 【大型竜巻】………間違いなく毒持ちの竜巻だろう。それが3つ………数が少ないのは作れないのか、或いは復活したてでまだ産めないだけで、これから増えていくのか………。

 

「東のルートは僕ら【ロキ・ファミリア】が担当する! そして南のルートは、オッタル率いる連合部隊、南東ルートは【アストレア・ファミリア】率いる連合部隊が! 他の者達は、大きく分けてこの2つのルートと共に進行しつつ【黒い竜巻】を発見次第、即時排除してほしい!」

 

 【フレイヤ・ファミリア】の幹部達につく連合部隊が死にそうな顔をする。怖いのだろう。逆に【アストレア・ファミリア】と向かう冒険者達は急に髪とか気にしだした。

 

「何が起きるかわからない! 臨機応変に対応が求められるだろう! 各自の奮戦を期待する! 僕達が目指すのは『デダインの村』。その村の先に、今回の『大元』があると考えている」

 

 ちなみにベヒーモスに関してはまだ隠している。臆されても困るからだ。

 

「よってこの村を拠点に据える。3本のルートで【大型竜巻】を各個撃破した後、全ての冒険者は目的地に向かって進行。途中、遊撃のために離れた部隊もそこで再集結だ。以後の作戦はまたその時に伝える」

 

 兎にも角にもデダインの村で再集結しなければならない。最悪、()()()()()()事を思えば、作戦はその時に立て直す必要があるのだろう。実に合理的。

 

「本来ならここで質問を受け付けるんだけど、なにせこの数だ。今回ばかりは控えてほしい。世界の命運がかかっている。この言葉は間違いじゃない。今オラリオは、いや世界は、未曾有の危機に晒されている」

 

 最低でもLv.4クラスのモンスターが地上に於いて大量発生。【大型竜巻】も、恐らく第一級なくして勝つことは不可能だろう。それがまだ増える可能性もある。

 

「これを止められるのは、奇しくも僕達だけ。『世界の中心』と呼ばれるオラリオの、冒険者達だ」

 

 勇者の言葉に、一同は耳を傾ける。よく通る声、一見矮軀な容姿、それでいてこれまでオラリオを支えた実績……全てを使いこなし、人々の心を掴む。

 リリウスとアレンが同時に舌打ちし、お互い気付いて睨み合う。

 

「ここに望まず立っている者も居るだろう。怯え、戸惑い、状況に置いていかれている者も多い筈だ。だが、敢えて言おう。奮い立て!!」

 

 

「今から始まる、『偉大なる英雄譚』のために!!」

 

 

 空気が変わる。歴史に記される英雄譚、その一部に己の名を残せるかもしれないという事実に言葉通りに奮い立つ。

 

「世界を証人にしよう! 僕達が救世の偉業をなしえたと!! 神ウラノスが示したように、男神(ゼウス)女神(ヘラ)の伝説を塗り替え、僕達が新たな歴史となる!」

 

 ピクリと肩を震わせるリリウス。脳裏に浮かぶのは、灰色の長髪。

 

「胸に刻めよ! 忘れるな! 今、この時が新たな『グランド・デイ』だ!!」

「………俺達で何とか出来るってことは今回の陸の王者は前回の陸の王者の遥か格下ってだけだろ」

 

 それで偉業を塗り替えるとは笑わせる。

 

「水を差さないの。ほら、皆やる気になってるんだから」

 

 鬨の声が響く。オラリオに、世界に向けて。

 世界を蝕まんとする【黒雲】の支配者を打ち倒し、世界に己の名を知らしめる為に戦ってみせると。

 

 

 

 

 

「目標捕捉! 方角北西、数は4! 半数は東北東に移動!」

「各個撃破する。東は任せるわ! 行くわよ、皆!」

「「「おう!!」」」

 

 アリーゼの言葉に部隊を2つに分ける。黒砂混じりの竜巻に、リューの魔法が打ち込まれる。そのままアリーゼの炎が竜巻を完全に消滅させ中の黒き獣を引きずり出す。

 

「………………」

 

 リリウスももう一つの竜巻に向かい、手を突っ込む。

 

「!?」

 

 力任せに風の暴威を突き破り、黒き獣の体に鎖を巻きつける。

 

「グルアアア!!」

「やかましい」

 

 魔力を通せば無数の棘杭(パイル)が鎖から生え黒き獣の体を貫く。

 肉が裂かれ、骨を抜きつけられる黒き獣が最期に見たのは、己を喰らおうと迫る牙。

 

「こっちも終わった! 東の援護に…………って、あら?」

「ここは任せんぞ!!」

 

 と、仲間を置いて一人の狼人が駆け出す。何事かとそちらを見れば、炎が上がる村と村を破壊していく【黒い竜巻】。

 

 Lv.3上がりたてと言ったところか。つまり勝ち目はない。時間稼ぎにもなりはしない。

 

「ルアアアアアアアア!!」

 

 裂帛の如き咆哮を上げ竜巻を蹴りつける。竜巻は揺るがず、男を吹き飛ばした。それに気付きもしないかのように逃げ惑う村人を追う。

 

「クソが! 待ちやがれ!!」

 

 蹴撃を放っては吹き飛ばされる。それでも止まらぬ狼に、【黒い竜巻】は漸く速度を緩めた。つまりはこの男が死ぬ。

 

 誰もここに訪れなければ、だが。

 

 『敏捷』に特化しているであろう身体能力に優れた獣人。されど他の【黒い竜巻】より少し大きめの竜巻を蹴り一つで貫くリリウスの姿を視認出来ず、音だけが聞こえた。

 

 雷鳴が鳴り響き、竜巻の中から無理矢理吐き出された大型級のモンスターよりも巨大な黒き獣。雷に体を蝕まれ動けず、喉に鎖が巻き付く。

 

 棘に貫かれ、鎖が引かれると肉と骨が引き裂かれながら首が落ちた。

 

「身の程弁えろ。隊列乱すな、阿呆が」

「ああ!?」

「少し強くなるだけで足止めできねえ。でけえのは俺等が当たる。てめぇ等は小さいのを相手してろ」

「巫山戯んな! 弱え奴だけ相手して、強い奴は他の誰かに任せろってかあ!?」

「そう言ってんだよ。聞こえなかったか?」

「てめぇ!!」

 

 あれだけ吹っ飛ばされたのに元気なものだ。中々打たれ強い。だが、それだけ。掴み掛かろうとする狼人に、リリウスも目を細め──

 

「はいはいそこまで!」

 

 アリーゼが2人の間に割り込んだ。

 

「ぜぇ、はぁ……ちょっと、タンマ…………はぁ〜、ふう。よし! 喧嘩はやめやめ! 仲間同士で争うなんて馬鹿みたいだわ!」

「馬鹿なのは身の程を弁えねえ此奴だ」

「あら、でもLv.3で推奨Lv.6の階層主に挑んだもっと馬鹿を私は知ってるけど?」

「………………………」

 

 リリウスはチッと舌打ちした。

 

「あ、あの………」

「ああん?」

 

 と、村の子供が狼人の少年に話しかける。背中には隠れるようにこちらを見つめるより幼い少女もいる。

 

「助けてくれて、ありがとうございます!」

「…………てめぇは、兄貴か?」

「え、あ………は、はい!」

「なら礼なんて言ってんじゃねえよ。弱い事を死ぬほど恥じろ」

 

 あら、とその物言いに意外そうな顔をするアリーゼ。

 

「そんで、次はてめぇで守れ」

「っ! ………はい!!」

「よし………」

 

 フッと笑う狼人の少年。兄の頭を撫でてやる。

 

「意外ね。可愛いところあるじゃない【灰狼(フェンリス)】!」

「誰が可愛いだ、ごらあ!?」

「そうなんです! ベート、こういう可愛いところがあって!」

 

 女が増えた、とリリウスは面倒な気配を感じ取り黒き獣の死骸を掴む。魔石を砕いてないので灰にはなってない。取り敢えず腹拵えに持って行く。

 

能力値(アビリティ)が昨日と今日で別物だな」

 

 輝夜がリリウスに話しかける。リリウスは【狂餓禁食(プレータ・ナンディン)】の効果で成長が他の冒険者より速いが、それにしたって今回は1日にしては、という言葉はつくも劇的だ。Lv.6に至ったリリウスは、それこそ深層の竜の大群でも喰らわぬ限りこうはならない。

 

「……………………」

 

 農作物に被害を与える程度の毒を持った血肉を貪るリリウスは、その言葉に不機嫌そうに目を細める。

 

「勇者と豚に残飯処理させられたんだよ」

「残飯?」

「燃やすも埋めるも出来ねぇ、汚染された死体」

 

 強者を喰らうことが成長条件に刻まれているように、力を求めるリリウスはしかし格下殺しで力を得ようとは思っていない。

 自分より強い相手が他の何かに殺されていた場合も、その何かを殺した奴を殺してから食う。本来ならお断りだったが、これから相手取る陸の王者に備える時間がないのも事実。

 

「あんなまずい肉は後にも先にもあれだけだろうよ」

「…………そうか」

「おーい、輝夜〜、リリウスく〜ん! そろそろ行くよ〜!」

 

 と、アーディが呼ぶ声が聞こえてきた。少数精鋭で第一級冒険者が一人のこの部隊には神の眷属を無条件で強化するアーディも同行している。

 【正義巡継(ダルマス・アルゴ)】………このレアスキルを持つが故に、大抗争では活動範囲を制限されていた。アルフィアやザルドを強化してしまっては目も当てられないからだ。

 

「………………」

 

 リリウスは伸びて(パイル)も生えている鎖を丁度いい長さで引き千切って死体の魔石を砕く。

 千切った分はガリガリと噛み砕きながら飲み込んでいく。

 

「あいつ、どんなウンコするんだろう」

「ちょっと、やめなさいよ!」

 

 狼人の【ファミリア】の一人が金属を喰らうリリウスを見ながらそんなことを呟き副団長の少女に引っ叩かれていた。

 

「あら、リリウスはトイレいかないわよ?」

 

 遠征で1回も行ったことないもの、とアリーゼが笑顔で答えた。




ちょい出し情報

原作開始時リリウス

ヴリトラ(6年もの)と階層をぶっ壊しながら遠征中のロキ・ファミリアと遭遇

Lv.8

契約精霊『ドゥルガー』

なおドゥルガーはリリウスが生まれる前から攻略済み系ヒロイン

古代の英雄(或いは愚者)を従えている

諸君らの感想は『情報量の暴力』と書く
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。