ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
『捕食者』
獲物と認識した相手に対して能力値の補正。特に『敏捷』と『力』。
『悪食』
経皮毒、負傷による毒に対しては同ランクの『耐異常』に劣るが経口摂取なら逆に1、2ランクは上がる。通常人間が消化できないセルロースなども消化可能になる。【毒獣王牙】の効果でステイタスに反映されないが発現した『耐異常』も合わさりオラリオで一番毒に強い。
『強食』
格上に対して能力値補正。獲物と認識すると効果向上。
『毒牙』
毒の生成。任意で切れる。毒の強さは調整可能、現在最高はポイズン・ウェルミスより弱いがスキルと併用で猛毒になる。
『咆哮』
モンスターの
他の場所でも【黒い竜巻】は狩れているだろう。
オラリオの総力を以てすれば、ただの【黒い竜巻】程度なら勝てる。
死者は果たしてどの程度出ているのかは解らんが。
「また【中型】か…………」
【大型竜巻】と呼称される竜巻には及ばず、しかし通常の【黒い竜巻】に比べ規模も威力も強い竜巻に臨時で名付けた仮称。
中にいるモンスターはピンからキリ。大型級のモンスターをはるかに凌ぎ、階層主にすら匹敵する個体も居る。
「気のせいじゃなけりゃ、【黒雲】に近いほど強くねえか?」
「単純に子供に守らせてるだけなら良いがな………」
ネーゼの言葉にライラが目を細め呟く。つまり、
流石に【大型竜巻】に匹敵するのは早々産まれないと信じたいが………。
「もっと最悪な情報があるぞ」
と、リリウスは黒い灰の中から何かの欠片を取り出し口に含む。
「わー! 変なもの食べちゃ駄目だよ! ペッてして、ペッ!!」
「俺に毒は殆ど効かねえよ」
特に経口摂取なら。
下層でポイズン・ウェルミスを食ってライラ達をドン引きさせていた。
「やっぱ竜の鱗だな。多分、竜の谷の」
「──!」
カラコロと口の中で転がし飴のように味わい鑑定結果を呟くリリウス。一瞬【
「竜の谷の? それが何だって此奴の灰から」
「喰ったんだろ」
「「「────」」」
モンスターがモンスターを食う。その意味を知らぬ冒険者はいない。
それが意味することはつまり…………
「強化種だと!?」
「此奴はな………此奴だけとも限らねえが」
他の【中型】も実は強化種………というのは流石にないだろう。地上で採れる魔石の質を考えれば、通常種があの強さ、あの数増えるのには相当数のモンスターを食う必要がある。なら、流石にオラリオに報告が来ていたはず。
「時間をかけると不利になるのはこちらか………」
輝夜の言葉に冷たい空気が流れる。今まさに増えている通常の【黒い竜巻】に加え、3本もあるということは今後も増える可能性が十分ある【大型竜巻】。
それに加え、強化種。強さはともかく、殲滅力という意味では先代のベヒーモスより上かもしれない。
「知ったことじゃねえ。なら殺し尽くせばいいんだろうが」
「…………………」
たかがLv.3の言葉。大言壮語も甚だしい。しかしベートの言葉に【ヴィーザル・ファミリア】の眷属達の目に確かに闘志が宿る。
事実として、彼等は【アストレア・ファミリア】率いる連合軍の中で唯一【アストレア・ファミリア】の力を借りずに【中型】を倒してみせた。
アーディのスキルの加算があるとはいえ、Lv.3とLv.2の集団としては快挙も快挙。
特にベートの成長が著しい。いや、成長というよりは
他の【ヴィーザル・ファミリア】の何人かも、この件が終わればランクアップを果たせるかもしれない。
「まあ、その狼の言うとおりだ。殺し尽くさねえと面倒なことになる。なら殺す。それだけだ……………」
リリウスは竜の鱗の欠片を飲み込みながらベートの言葉を肯定した。
「【アストレア・ファミリア】! 村があった! あった、んだが……………」
村に訪れると、立ち上がれる人間が1人も居なかった。
畑の作業中だったのか、畑の上に倒れ伏した農夫、家の近くで倒れた女子供………。
苦しそうに呻いて、動くこともままならないようだ。
「大丈夫!? 一体何があったの!?」
リューやアーディと言った治癒魔法が使える者達が村人達に魔法をかける傍ら、アリーゼが比較的症状が軽い者達に問いかける。
「か、風………黒い風が………!」
「黒い、風?」
「急に、そしたら、皆………一瞬で!」
「フィンの予想通り、毒持ちの風が出て来やがったか………」
【中型】もその身と朽ちた灰に微弱な毒を持っていたが、風には毒はなかった。ましてや村一つを一瞬で飲み込む程とは。
しかし恩恵のない一般人が死んでいないあたり、そこまで強い毒ではない?
「………………クソが」
リリウスは顔を歪め舌打ちする。遅れてネーゼ達獣人も気付いた。
「総員、構えろ! 風下から………こいつ等、
「グオオオオオ!!」
「グルルルル!」
風を纒わず、風下で息を潜めていた通常の子供から【中型】の群。村人達を動けなくして、助けに来る冒険者を待っていた。
悪辣な知能。かつてのベヒーモスが持っていたとは思えない。弱体化したからこそ知恵をつけたのか、或いは今回の騒動と発端となったベヒーモスのドロップアイテムを食わされたモンスターが人に
「馬鹿が。てめぇ等如きが風も纒わず勝てるわけあるか」
瞬間、爆砕。白い軌跡が駆け抜けた。
Lv.6の生粋の狩人。格下であるため『強食』は発動しないが、『捕食者』は発動する。
尋常ならざる『俊敏』の能力値。
地面が吹き飛ぶほどの脚力は初速すら第二級冒険者には目視不可能。気付けばモンスターは砕かれ、潰され、抉られ、切り裂かれ屍をさらす。
「つっよ…………」
「あれが、第一級………」
多くの冒険者達が慄く中、ベートだけは拳を強く握る。オラリオ有数のLv.6。目指すべき頂点の一人。
弱肉強食の世界に抗う力を得た『牙』。
「おもしれえ…………」
目指すべき影に昂るベートを見て、副団長の少女は微笑む。リリウスは積み重ねた死体の上に登り周囲を見回す。
「…………見つけたぞ。【大型竜巻】」
「オッケー! 村人達の治療が終わったら向かいましょう!」
幸いというか、一般人でも死なない時点で当然というか、既存の解毒薬でも対処できる程度だった。さて、それはあの【竜巻】の毒が弱いのか、距離があって弱っていただけか…………。
通常や【中型】の【黒い竜巻】が柱と例えるなら、これはさながら塔の如き。
唸り声や咆哮のような風音がこちらにも聞こえてくる。と………
「!! 来る、皆姿勢を低く口を塞いで!」
アリーゼの言葉に即座に口を押さえ屈む冒険者達。黒い風が通り過ぎ、漸く息を再開する。
「ッ! はぁ、はぁ! くそ、この毒……肌から!?」
「あらかじめ解毒剤も服用してきたってのに…………」
『
「『耐異常』のアビリティを持つ者だけで突撃しましょう。他は後方支援!」
「俺は行くぜ!」
「ちょっとベート、貴方の『耐異常』はまだ評価最低じゃない!」
「それでも少しは耐えられる。問題はねえ!」
副団長に止められるがそれでも向かうつもりのベー卜。リリウスは騒ぐ彼等に火を放った。
「ぐあああ!? てめ、何を!?」
「えええ!? 何してんのリリウス!!」
「燃えてねえよ」
よくよく見れば、炎に包まれてる彼等は確かに焼けていない。反射的に叫んだ後その事に気付き困惑しながら己の身を包む炎を見る。
「貸してやる。それで少しは毒を防げる。あとモンスターは普通に焼ける」
『古代』において瀕死の英雄を幾度も助けた『精霊の奇跡』……に近い加護。上位精霊や大精霊のような奇跡は、さすがに使えない。
「俺は片方を叩く」
「片方?」
どういう意味かリューが尋ねようとするが、直ぐに理解した。【大型竜巻】が2つに分かれたのだ。
「ついでに余計なのも………」
森や丘の向こうから天に向かって伸びる【黒い竜巻】。ただ控えていたようだ。
「【ヴィーザル・ファミリア】以下連合軍は通常、【中型】の処理お願い! アーディ、彼等の強化! 私達は【大型】の片割れを討つ!」
「「「了解!!」」」
「わかりました! 行くよ、ベート、皆!」
「「「おおおおおお!!」」」
リリウスも即座に離れていく【大型竜巻】の後を追う。
「【アガリス・アルヴェシンス】!!」
開幕、アリーゼの紅炎が輝き、即座に火球と炎の濁流も風の壁へと襲いかかった。火精霊の加護を得た火炎が竜巻を揺るがす。
「よし、いける!」
「待ってアリーゼ、炎が弱まってる!」
「え、嘘。この炎有限なの!?」
別に血を与えられた訳ではなく、ただ力の一部を借りただけ。炎の魔法の威力を底上げするが、その分消費も早まるらしい。
「中の奴の強さが解らねえんだ、取っとけ!!」
と、ライラが叫び無数の瓶を取り出す。
「とんだ大赤字だ、後でフィンに請求してやる!!」
そう叫び、Lv.3の腕力を以て未だ炎が巻き付く竜巻に向かい投げ付ける。
「リオン! 詠唱唱えとけ! ビビって暴発すんなよ!」
「誰に言っている! 【今は遠き──】」
「ライラの爆薬か…………」
響く轟音に耳を傾けながら、リリウスは振り下ろされた巨大な足を回避する。
階層主級の超大型巨体を持つ漆黒の怪物。自らの竜巻を力任せに突破したリリウスに警戒心と共に牙を剥き出しに唸る。
風に含まれる毒よりも強力な毒が蔓延する竜巻内。リリウスはフィンの言葉を思い出す。と言うよりは、命令。
【
とは言え現状『精霊の力』以上の出力なのだ。必要とあれば使う。まあ………
「お前程度には必要ないが」
角に『釣り針』を引っ掛け、大質量の怪物を無理矢理跪かせる。地面に顎から落下した怪物の頭蓋にマーダを突き刺すリリウス。このサイズだ、針が刺さるようなもの。
「オオオオオオオオッ!!」
首を振り上げリリウスを天高く飛ばす怪物。竜巻の一部が円の動きから離れ、リリウスへ襲いかかる。
「遅え」
パリッと走る紫電。次の瞬間、槍の如き雷が怪物の頭蓋を穿つ。
「────!?」
体内を駆け巡り神経を焼き尽くす雷。風の操作は途切れ、竜巻が掻き消える。それでも死なないのは、流石の生命力。
痺れる体を無理やり動かしリリウスをその大顎で噛み砕かんと動き、しかし響くのはグチャリと肉を噛み潰す感覚ではなくブチブチと舌を引き千切られる感覚。
「ゴォ!?」
口内で怪物の
「死ね」
額に突き刺さったままのマーダを蹴りつける。頭蓋を貫き、砕き、脳を破壊しながら脊髄まで突き進む剣。例えるなら神経締め。
それでもまだ生きているのは、やはりベヒーモスの子だけはある。
リリウスは額に空いた穴に手を突っ込み、炎を放つ。口から、目から、背中から炎が噴き出し、漸く黒い灰へとその身を崩した。
「あっちは…………終わったか」
アリーゼ達の方も終わったらしい。リリウスも漸く感覚に慣れてきた。
「ザルドめ、妙な約束を残しやがって…………」
死ぬ間際オッタルに己の死体をリリウスに食わせるように言っていたらしい。リリウスの
結果として元々後は『偉業』を成すだけといったステイタスは極まり、
元々Lv.5から6の時は1週間という短い期間のせいで
「…………………あ?」
リリウスは、アリーゼ達の向こうにある光景に思わず声を漏らす。
リリウスは周囲の黒い獣の気配を感じていたのだが、増えた数に隠れていた
「なに、あれ…………」
「馬鹿な、あんなの今まで何処に!?」
アリーゼが思わず呟いた言葉をリューが補足するように叫ぶ。突如現れたのは、【大型竜巻】を超える巨大な漆黒の風の渦。
【大型竜巻】を塔と称するなら、それはまさしく城壁。遠近感がおかしくなりそうな巨大な黒い渦はさながら天まで届く黒い城壁だった。
「………見てやがる」
リリウスがスキルを発動せずともその力を感じていたように、漆黒の竜巻………漆黒の嵐の向こうに潜む怪物は、確かにリリウスを認識していた。
リリウスがゴブスレコラボに参戦した場合、ゴブスレはリリウスを見てゴブリン料理を作ればゴブリン退治がもっと積極的に行われるのでは的な事を考えるも察した仲間にやめてと言われる。
ちなみに金床森人からは複数の精霊が混じった変な感じで落ち着かないと思われる。