ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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元々ゲームでも戦力分散させた上で村々を蹂躙しに行ったりとベヒーモスの性格はかなり悪いと思われる。
そして、モス・ヒュージがモンスターのままでもかなり悪辣になれると証明してくれた。



猛毒の嵐

 ゴウゴウと唸り声を上げ吹き荒れる黒い風。

 間違いなくこれまでのベヒーモスの子供の中で最強の力を持ちながら、村々を蹂躙するでもなく、小国を滅ぼすでもなく、デダインの村の近く………つまりは──

 

「待機してやがったな。冒険者共の戦力が散らばるまで」

 

 しかも移動方向は冒険者達の背後を突く形ではなく、避難の完了していない近隣の村々。

 自身を止められる可能性がある戦力が分散し、間違いなく疲労もしているであろうに取った手段が弱者の蹂躙。

 

「急ぐわよ、皆!」

 

 と、アリーゼが駆け出す。【アストレア・ファミリア】とアーディもそれに続く。

 

「おい、勝ち目はあんのか!?」

「わっかんない!」

 

 ライラの言葉にアリーゼは素直にそう返した。【大型竜巻】でさえリリウスの『精霊の加護』なくしてまともに戦えなかったというのに、今はその炎も剥がされている。

 

 仮にもう一度加護をもらったとして、あの黒風(かぜ)相手に何度耐えられるか。

 

「それでも、他の冒険者が来るまで押し留めましょう! リリウス!」

「言われずとも」

 

 と、再び精霊の炎が【アストレア・ファミリア】を包む。そのまま【アストレア・ファミリア】として共に向かおうとした時………

 

「ガアアアアア!!」

「グルオオオオ!!」

 

 【黒い竜巻】やベヒーモスの子供達が群れとなって現れた。狙いは、リリウスのみ。

 

「こいつ等、アタシ等を無視して!」

「リリウスだけを狙って!?」

「ガアアアア!!」

 

 と、【ヴィーザル・ファミリア】も参戦するが、数が多い。仮に【超大型竜巻】に辿り着いたとしても、こいつ等もついてくる。

 

「先に行け」

「リリウス!? …………解った!」

 

 迷いは一瞬。アリーゼは直ぐに速度を戻した。

 

「え、え!? アリーゼ!?」

「リリウスなら大丈夫!」

 

 戸惑うアーディは、しかしアリーゼの言葉にグッと堪え、速度を戻した。

 

 リリウスは噛みつこうとしてきた個体の首を掴み竜巻を纏う個体に叩きつける。大型級の質量を持つモンスターは竜巻を乱し、中の個体を剥き出しにする。

 

「グル──!!」

 

 再び竜巻を鎧として纏おうとするも、その前に氷の槍が突き刺さる。

 背後から迫る竜巻に炎を放つ。炎を巻き込んだ竜巻は内部の温度を急激に上げ、中の怪物を焼き殺す。

 

「次から次へと………鬱陶しい」

 

 オラリオで群を一掃したように『釣り針』を振るおうにも、風が邪魔だ。釣り針を大きめの個体に引っ掛け、ハンマーのように振り回す。

 

「邪魔な風は払ってやる。少しは役立て、狼」

「上等だ!」

 

 風を失い剥き出しにされたモンスターに蹴りを放つベート。

 

「それと、【中型】は噛むなよ。俺以外が繰り返したら死ぬぞ」

 

 忠告しながら、背後から迫ってきたモンスターの頭部を蹴りで破壊する。アリーゼ達、死ななければいいが…………。

 

 

 

 

 

「これは、近づいているのか?」

 

 あまりに巨大故に距離感が摑めない。嵐の如き【超大型竜巻】の影響を受けて発生したただの暴風が強くなっているのだから、近づいているのだろうが。

 

「!! 来るわ!」

 

 迫る黒い風。リリウスの炎を消費したくはない。ここは回避を…………

 

「あ、これ無理………」

「下がって!!」

 

 回避できない、圧倒的な面攻撃。ドワーフのイスカが盾を構えるも、このまま吹き飛ばされるだろう。

 

「【盾となれ破邪の聖杯(さかずき)】」

 

 迫りくる漆黒の暴威の唸り声が耳朶を打つ中、聞こえるのは清浄なる詠唱(うた)

 

「【ディオ・グレイル】!!」

 

 現れたのは穢れなき純白の障壁。黒風(かぜ)を正面から受け、防ぐ。

 

「誰!?」

 

 何時の間にか立っていた黒衣の人物に向かって叫ぶアリーゼ。彼、或いは彼女の魔法のようだ。

 フードの中は不自然な闇で覆われており、顔が見えない。後声も変だ。変声の魔道具(マジックアイテム)を使っている。結論、怪しい。

 

「何者だ、貴方は………」

「助けてくれたようですが、ずいぶん怪しい」

「あ、えっと………わ、私の名はフェルズ!」

「偽名ね」

「偽名ですね」

「偽名だな」

「う〜ん、これは偽名!」

「偽名以外の何物でもない」

「偽名だろ?」

「………偽名、ですよね?」

「偽名」

「偽名よね〜」

「偽名だ」

「偽名」

「偽名は良くないよ!」

 

 フェルズと名乗った黒衣の人物だったが、誰一人としてその名前を信じなかった。アーディに至っては叱ってきた。

 

「と、兎に角私は怪しい者ではない!」

「怪しいわ!」

「怪しいな」

「怪しさしかありませんねえ」

「怪しい………」

「匂いも消して、逆にこいつはくせえ!」

「み、皆、見た目で判断するのは良くないよ!」

 

 フェルズと名乗った怪しい輩を疑う【アストレア・ファミリア】の面々。アーディが「ほら、守ってくれたし」とフォローするとアリーゼも「そうね!」と笑う。

 

「ごめんなさい、フェルズちゃん。助けてくれてありがとう、力を貸してもらえる?」

「あ、ああ…………()()()?」

「うん」

 

 にっこり微笑むアリーゼに、フェルズは何処か戸惑うような様子を見せた。後ろ暗さ……があるにしろないにしろ、隠し事がある者はアリーゼの鋭さが苦手のようだ。

 

「それから、毒を防ぐ魔道具(マジックアイテム)だ」

「あら気が利くわね!」

「素材元の協力もあり量産には成功したが、嘗てのゼウスやヘラに使用していたものに比べれば性能は低いそうだ。過信はするな」

 

 と、差し出される人数分のブレスレット。もとよりリリウスからベヒーモスの情報は出ていた。毒に対する装備も用意されるとは聞いていたが、となるとフェルズはそこの関係者? だが偽名を名乗る意味は。

 

「っ! 第2射、来るぞ!」

「っ!!」

 

 ハッとネーゼが耳を動かし叫ぶ。防がれた事が気に入らなかったのか、先程より速い黒風(かぜ)。フェルズが再び防ごうとする中、アリーゼは直感的に叫ぶ。

 

「駄目、避けて!」

「「「!!」」」

 

 反応は、早い。先程より範囲の狭い黒風(かぜ)は【アストレア・ファミリア】達が居た場所に吹き込み…………()()()()()()()()

 大地を抉り、突き進みながら木々も岩も彼方へと消えていく。

 

「風の、()()!?」

「なんて威力!」

 

 枷を剥がしたアルフィアの音の砲撃にも匹敵しうる風の暴威。当たればLv.4と言えどグシャグシャに潰されるだろう。しかも吹き飛ばされずに済んだもののへし折れた破壊の跡の端にある木が腐った。

 

 毒の風…………否、猛毒の嵐。しかもこれで黒雲の奥に潜む大元ではない。

 

「まじで世界滅ぶんじゃねえのか、これ」

「そんなことさせない為に、冒険者(私達)が戦うんでしょ!」

 

 戦慄するライラに、アリーゼが立ち上がりながら答える。その言葉に絶望に染まりかけていた【アストレア・ファミリア】達の目に光が宿る。

 

「行くわよ! なんなら、リリウスや他の冒険者が来る前に倒して第一級(Lv.5)にでもランクアップしちゃいましょ?」

「…………アタシはLv.3なんだがなあ」




ちなみにリリウスがもし飢えてなかった場合フィンの評価は
『勇気と蛮勇を履き違えて育ったガキが蛮勇を自覚した後に本物の勇気に憧れて、憧れたまま手に入れることもできずにガキのまま育ったクソガキ』として歳上なのにガキ呼ばわりし、ちょっと憐れむ。

今は飢えてるので評価は譲られた最強の座にぶら下がるだけで君臨できないクソ爺。
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