ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
ベヒーモス・オルタナティブ☆
力
★★★★★★★★
☆☆☆☆☆
毒
★★★★★★★★★★
☆☆☆☆☆☆☆☆
質量
★★★★★★★★★★
☆☆☆☆☆☆☆☆☆
敏捷
★★★★
☆☆☆☆☆☆
知能
★★★★★★
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ベヒーモスの残された身体が黒い灰となって崩れる。
数百年は大地を蝕むであろう呪いの如き最悪の置き土産は、しかし幸いにも不毛の『黒の砂漠』で砂丘を幾つか生み出すのみであった。
もし逃げ出したベヒーモスを止めるのがあと少し遅れていたら『黒の砂漠』は広がっていた事だろう。
いや、厳密にはベヒーモスの
だが、勝った。
「「「うおおおおおおおおおおおおっ!!」」」
勝鬨の声が黒雲が消え去った晴天に向かって響く。
天界に残った神々に、還った魂に届ける勝利の讃歌。
姉に抱きつこうとして止められたアーディはリリウスやリューに抱きつこうと探し、最初にリリウスを見つけた。
後ろからゆっくり近づき抱きつこうとするアーディ。が、その肩が掴まれる。
「え?」
「近づくな。危ない」
肩を掴んだのは目が隠れるほど前髪を伸ばした神。敢えて伸ばしているというよりは、放置した結果伸びたといった、手入れを感じさせない髪。
アーディはその神を知っていた。
「ソーマ様?」
酒神ソーマ。リリウスの元主神。彼が何故ここに? それに、今の言葉はどういう…………困惑するアーディの耳に聞こえてきたのは、ビシャリと液体をぶちまける様な音。
振り返ればリリウスが赤黒い血を吐き出していた。
「リリウス君!?」
「だから、近づくな………」
慌てて駆け寄ろうとしたアーディに足を引っ掛け転がすソーマ。すっ転んだアーディは振り返りながら叫ぶ。
「リリウス君が心配じゃないんですか!?」
「心配だ。だけど、君は友達だろ? 彼奴は、少しずつ変わってきてるんだ………彼奴のせいで傷つくのは良くない」
「どういう…………」
ジュウウウと、音を立て
口から吐き出した血だけではない。血涙、汗に至るまで世界を侵す猛毒となって地面を腐らせていく。
「ご、が…………げは!」
「リリウス!? 『聖女』ちゃん、【
アリーゼに叫ばれるまでもなく、既に詠唱を唱え終えていた2人は即座に魔法を発動する。
リリウスの
「っ!? これは………」
「なんですか、これ……」
まるで意思を持ち抗うように、毒が強まり全身に広がっていく。
吐き出す息すら毒気を帯びる毒の塊となったリリウスに駆け寄ろうとしたアリーゼの肌が焼けるように爛れた。
「うん。こうなる気はしていた………お前が、スキルに目覚めた時から」
上級冒険者すら蝕む毒の中、歩み寄るのはソーマ。爛れた皮膚は、しかしヘイズとアミッドの魔法で癒えては爛れるを繰り返す。
魔法自体は発動している証左。
「か、神ソーマ! 危険です、離れて!」
冒険者が止めようとするが、ソーマは止まらない。
「神の勘………俺のような飲んだくれでも、割と当てになるようだ。だから、この勘も当たると助かる」
纏っている服すら溶け始めたリリウスの背に、ソーマは指を這わせた。
「前提として、お前は【暴食】と異なり経験と、模倣したスキルがある。それが未知を引き寄せると………まあ、勘だが」
今日で一年。
「隠せ、アストレアの眷属」
その言葉にハッとしたアリーゼ達は距離を保ちながらもリリウスとソーマの周りに立つ。
元々1年経てば『
「器の新生…………喜べ、リリウス。お前は今、世界最強の一人となった」
新たなLv.7の誕生。歓声は、上がらなかった。
アミッドとヘイズは食われる魔力量が増えたのを感じつつも、毒の抗いが消えたのに気付き直ぐ様魔法を強める。
青ざめていたリリウスの顔色はもとに戻り、立ち上がる。体の調子を確かめるように動かし、視界に映る髪の一房が黒から白に戻っていない事に気付いた。
「調子は?」
「…………普段のランクアップと違いがわからん。が、ああ………」
掌に小さな竜巻を生み出し
「この状態でなら、併用できそうだな。色々変わってる」
「そうか………」
アミッド達の魔法で完全に傷も癒えたリリウスとソーマ。
冒険者達は戦いに参加できなかった獣達の咆哮に竦んだ冒険者を回収してからデダインの村に戻る事にした。
「リヴェリア…………」
「アイズ!」
真っ先に飛び出していたアイズは何故か戦場にいなかったのを探していたリヴェリアはアイズを見つけ駆け寄る。
リリウスはそういえば無駄死になると言っていたが、生き残ってみせたアイズに視線を向ける。
「ほらほら、良くやったって褒めてあげなきゃ!」
アイズがリリウスに憧れや羨望、それこそ兄に向けるような感情を持っていることを知っているアリーゼは、あのやりとりが拗れる前に仲直りさせようとリリウスの背を押す。
褒めると言っても何をすれば良いのか………頭でも撫でてやればいいのかと手を持ち上げる。
「アイズ」
「──!!」
リリウスが呼びかければ、アイズはビクッと震えリヴェリアの陰に隠れた。
「…………アイズ?」
らしくないその反応に、リヴェリアが思わず声を漏らしアイズがハッとリリウスに視線を戻す。
リリウスは己の手を見つめ、そのまま下ろす。そのままアイズに声をかけることなくデダインの村に向かう。
「ぁ………ま、まって………違う。今の、違うの………」
弱々しく紡がれた言葉は、しかしリリウスを止めることなく風に流され消えていった。
「……………………」
戦わなかった冒険者達がリリウスに向ける目は、恐怖と嫌悪。後、懐疑。
恐怖や嫌悪、嫉妬の類は向けられたことはあるが懐疑の目などLv.3に半年でなった時以来か。
とは言え彼等は冒険者。レベル差というのを嫌と言うほど理解している。縋るような目を【ロキ・ファミリア】や【フレイヤ・ファミリア】、【ガネーシャ・ファミリア】に向けているのは、どうにかしろということなのだろう。
「お前達、良くやった! お前達こそ間違いなくガネーシャだ!!」
ポーズを取り叫ぶのは眷属達のステイタスを更新しに来たガネーシャ。眷属の一人が背後で魔剣を振るい爆発を起こす。
アーディが拍手し、アストレアやヘファイストスは苦笑い。シャクティは頭痛が痛いとでも言いそうな顔で溜め息を吐いていた。
「本来ならこの場で宴を開きたいが、それはオラリオに戻ってからだ! なので、ここでは踊ろう!」
「何故?」
「おー!」
アーディを含め、何人かの【ガネーシャ・ファミリア】がガネーシャと共に踊りだした。
そういえば何時だったか、アーディが町中でリューと踊っているという噂を聞いたような。
「
ブツブツと呟くソーマからは確かな怒りを感じた。趣味神であるソーマとしては、勝手に酒を持っていた挙げ句騒がしくされるのが嫌いなのだろう。
「楽しそうね! リオン、皆、行きましょう!」
「面白そう!」
「アタシはパス」
「わたくしもやめておきます」
アリーゼやイスカがダンスに混じりに行った。ライラや輝夜は断る。マリューもだ。
リューはアーディに引っ張られていった。
「……………戻りたいか?」
「……………」
「アストレアでは耐えられなかっただろうから俺がやったが、望むなら」
「戻らねえよ」
リリウスは遠目から睨んでくる冒険者達を見ながら、面倒くさそうに呟く。ソーマは「そうか……」とだけ返すと酒瓶をリリウスに渡した。
オラリオへの凱旋。フィンの頭にあるのは、リリウスの噂をどうにかすること。
『怪物の力を使う人間』を人類がどう思うかなど想像するに容易い。
冒険者はまだ良い。彼等は力の差を理解している。早々足並みも合わせられない。
問題なのは民衆。彼等は
厄介な事に、それを無視するのはフィンの望む名声を遠ざけ、かと言ってリリウスを糾弾するのもそれはそれで『勇者』に相応しくないと煽る神々と流される民衆が出る。
理想としてはリリウスが自分から出て行くことだが、強さを求めるリリウスがダンジョンから離れることはない。
「おっかえりいいい〜〜〜〜〜〜!!」
冒険者を讃える声援。勝利を祝う宴。
まだ民衆には知られていない。今日中に何か対策を考えなければと人々に対応しながら考えるフィン。
そう、民衆は知らない筈だった。
「なんでそいつが帰ってきてるんだ!!」
酒瓶片手に顔を赤くした酔っ払いが、リリウスを指差し叫ぶ。
「俺は見たぞ! そいつが、あの黒い化物を呼び寄せていたのを!!」
武神のタケミカヅチが第一級冒険者も投げられるなら、実はアポロンも上級冒険者と殴り合い出来るのかな?
武を司る神ではないけど、ボクシングの祖で城壁をただの拳で粉砕するアポロンも相当な武神だよなあ。
感想待ってます